月刊・経済Trend 2009年9月号 巻頭言

国際協力を通じた成長戦略

槍田副会長 槍田松瑩
(うつだ しょうえい)

日本経団連副会長
三井物産会長

グローバル化は、1990年代以降の世界経済における最大の潮流の一つである。2008年終盤からの金融危機の局面において、国際的な金融取引と貿易の面でグローバル化の否定的な部分が浮き彫りとなる場面があったが、グローバル化には大きなメリットがあることは間違いない。多くの新興国が経済発展を本格化させることができたのは、グローバル化を追い風にしてのことである。先進国の企業も、そうした新興国が新たな事業展開の舞台として浮上してきたことで、企業としての成長性は大幅に高まった。

日本企業にとっても、新興国の市場への期待は大きく、その意味で、新興国の順調な経済成長に貢献するODA等の国際協力をしっかり行っていくことの意義は大きいものと考えられる。インフラ整備等の支援を通じて、新興国や途上国の発展に貢献することは、それらの国々において日本企業が事業を展開していくうえで間違いなくプラスに働く。財政状況が厳しい時期にODAの増額に対して理解を得ることは容易ではないが、国際社会におけるわが国の先進国としての責務であると同時に、重要な産業政策の意味合いを持っていることを認識しておくことが必要である。

日本経団連としても、本年4月に提言「官民連携を梃子に国際協力の戦略的・機動的な展開を求める」を建議し、その後政府にも重層的に働きかけ、ODAの増額、円借款のさらなる迅速化、JICAによる海外投融資業務の推進体制整備を要請している。この流れを受けて、官民連携の国際協力の枠組みは順調・迅速に整備されてきている。

今後ますますのグローバル化が進展するなかで、特に世界最大の成長ゾーンであるアジア地域に対しては、地域の一員として主導的に成長戦略を描き需要を創出することによって、わが国の成長に繋げることが重要である。日本経団連国際協力委員会はアジア・大洋州地域委員会と合同部会を創設し、ERIA(東アジア・ASEAN経済研究センター)やアジア開発銀行等との連携を図りながら、秋頃をめどに「アジア政策に関する提言」を取りまとめる予定である。

今後も引き続き関係官庁の積極的なサポートを期待するとともに、民としてもグローバルスケールの大型案件に本気になってチャレンジしていくべき時を迎えていると考える。


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