日本経団連タイムス No.2754 (2005年2月3日)

関西会員懇談会開く

−阪神・淡路大震災から10年の神戸で/“新たな挑戦”テーマに


日本経団連(奥田碩会長)は1月20日、神戸市内のホテルで関西会員懇談会を開催、奥田会長や西室泰三副会長、柴田昌治副会長、三木繁光副会長、高原慶一朗評議員会副議長はじめ、関西地区会員ら約200名が参加した。今回の懇談会は、「企業のダイナミズムの発揮と神戸経済の新たな挑戦」を基本テーマに、意見を交換した。また、阪神・淡路大震災から丸10年を迎えた神戸の復興状況を視察するため、懇談会に先立って、日本経団連首脳は神戸のポートアイランドを訪問。矢田立郎・神戸市長はじめ関係者から、神戸が創造的復興の中核プロジェクトとして掲げている「神戸医療産業都市構想」について説明を受けるとともに、発生・再生科学総合研究センターなどを視察した。

開会あいさつで奥田会長は、日本経団連が今年積極的に取り組むべき重要課題として、(1)国民の活力を引き出す (2)民間の創意工夫を活かす (3)世界のトップランナーとなる (4)個人の多様な力を伸ばす (5)通商・外交・安全保障政策を再構築する――ことを挙げたほか、阪神・淡路大震災から10年を迎えたことに関連して、防災についても言及。台風の上陸や集中豪雨などの水害、新潟県中越地震、スマトラ沖大地震・大津波など、昨年は自然災害の怖さを思い知らされたと回顧した上で、大規模災害が起きた場合は、近隣地域だけでなく、離れた地域や都市、あるいは国際的な協力のネットワークの中で被災者をサポートしていくとの方針を、国や地方自治体、企業、NPOなどの関係者があらかじめ共有しておくことが必要との考えを示した。

■活動報告

活動報告ではまず、日本経団連が発表した、国の基本問題検討委員会報告1月20日号既報)について、同委員会委員長の三木副会長が説明、次世代の日本の基盤を築くために、憲法を含めた国の基本的枠組みを再検討することの必要性を強調した。

次に、今年の春季労使交渉における経営側の基本スタンスを示した『2005年版経営労働政策委員会報告』1月1日号既報)について報告した柴田副会長・経営労働政策委員長は、「今年の労使交渉は、賃上げを中心とした“春闘”から脱却し、さまざまな経営課題について、労使が真摯に話し合うことが重要だ」と訴えた。

■意見交換

続いて行われた意見交換では、関西地区会員が、阪神・淡路大震災から10年を経た兵庫・神戸の復興に向けた活動を中心に意見表明を行った。まず、兵庫・神戸の現状について、神戸商工会議所会頭の水越浩士・神戸製鋼所会長は、「あれだけ甚大な損害を被った中で、よくぞここまで立ち直ったというのが正直な思い」と語った一方、中小企業や地場産業は依然として厳しい状況が続いていることから、復興途上にあるとの認識を示した。その上で、兵庫・神戸の創造的な復興に向けた取り組みとして、(1)都心に隣接した神戸空港の開港(06年2月16日) (2)研究開発型の医療関連企業を集約する「神戸医療産業都市構想」の推進――を挙げた。

神戸医療産業都市構想について補足説明した神戸商工会議所副会頭の家次恒・シスメックス社長は、03年4月に神戸市の「先端医療産業特区」が構造改革特区の医療分野第1号に認定されたことなど、同構想の進捗状況を紹介した上で、「アジアのメディカルセンターをめざし、医療やヘルスケアを特徴とした、健康を楽しむ街づくりの第2章へとさらに深めていきたい」と語った。

阪神・淡路大震災での経験を踏まえた住宅の安全性向上について、樋口武男・大和ハウス工業会長は、「住宅業界は技術の向上と経営努力によって、より安全で質の高い住宅の普及に努力すべき」「補強を要する住宅建て替え促進のために、建て替え促進税制の早期創設が必要」「住宅政策における基本理念や目標を明確に示す住宅基本法の創設に向けて協力をお願いしたい」と述べた。

関西地区会員の最後の発表者である、西川恭爾・阪神電気鉄道社長からは、公共インフラである鉄道への設備投資に関して、「より一層の補助の拡充が望まれる。日本経団連の支援をお願いしたい」との要望があった。

これらの意見を受けて、高原評議員会副議長は、「神戸の医療クラスターをアジアのメディカルセンターとする“神戸医療産業都市構想”は大変すばらしい」と述べるとともに、国や神戸市をはじめ関西圏の自治体、大学が一体となって、医療に焦点を絞った対応をしていることを高く評価した。

また、西室副会長は、「住宅を極めて社会性の高い、一種の社会インフラと捉え、住宅政策を国家戦略として推進すべき」とした上で、住宅政策の根幹を担う住宅基本法の制定に向けて、同法に盛り込むべき理念や政策目標を提言していく予定であると述べた。さらに、交通インフラの整備に関連して、「利用者の使いやすさに配慮した施策が大切であり、これが結果として地域の活性化につながる」と語った。

懇談会の最後に奥田会長は、これまで重厚長大の産業が中心であった神戸が、「神戸医療産業都市構想」を掲げ、先端分野による復興に取り組んでいることに感銘を受けたと述べるとともに、このような取り組みの先に、21世紀の新しい日本が見えてくるだろうと総括した。

【総務本部総務担当】
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