日本経団連タイムス No.2765 (2005年4月28日)

「グローバル化が進む非製造業の新たな展開」発表

−非製造業の経済活動に焦点


日本経団連(奥田碩会長)は19日、報告書「グローバル化が進む非製造業の新たな展開」を公表した。日本経団連では、経済政策委員会(千速晃委員長、井口武雄共同委員長)において、産業力強化に向けた企業戦略のあり方を検討しており、昨年5月には、製造業の企業戦略に関する報告書「これからの企業戦略―『守りの経営再構築(リストラ)』から『攻めの経営再構築(リストラ)』へ―」を公表している。今回の報告書はこれに引き続くもので、非製造業の活動に焦点をあてた内容となっている。同報告書の概要は次のとおり。

GDPの64%占める

1.非製造業の全体像

非製造業の経済活動は年々拡大し、直近ではGDPの64%を占めている。また、企業数の81%、就業者数でも69%が非製造業に属している。需要構造を見ても、サービス消費が消費全体に占める割合は42%に達している。
このように非製造業のウエートが高まる傾向は、日本だけでなく、諸外国でも同様にみられる。報告書の図表第1―13は、GDPに占める非製造業の割合を、1970年から2000年にかけて捉えたものだが、各国とも30年間で非製造業の割合が上昇している。

積極的に海外展開推進

2.各社の企業戦略

小売・外食・国際航空貨物・保険の4業種について、国内企業と外資系企業それぞれ1社ずつ(良品計画、モスフードサービス、日本通運、三井住友海上火災保険、チェルシージャパン、B―Rサーティワンアイスクリーム、DHLジャパン、アメリカンファミリー生命保険の計8社)から、企業戦略に関する考えを聞いた。その結果、各社とも、海外展開あるいは対日進出を積極的に進め、大きな成果を挙げていることがわかった。

3.非製造業企業における競争力強化の現状と課題

今回調査した企業にとどまらず、日本の非製造業全体を見ると、グローバル競争が盛んになっている。例えば、国際運輸・通信・金融、インターネットサービスなどの「越境取引」や、対内直接投資は、近年大幅に増加している。
こうした中で、各企業は競争力強化への取り組みを進めている。その成果を検証するため、非製造業の競争力を2通りの方法で計測した。まず、一般的な考え方にならい、報告書の図表第3―25のように競争力を「従業員1人あたり付加価値額」で測れば、最近5年間の変化率はマイナス3.0%と、製造業(プラス3.2%)を下回る。

しかし、近年は就業形態が多様化し、非製造業を中心に、パートタイム労働者も増加している。そのため、労働時間や賃金水準が異なる正社員とパートタイム労働者を区別せず、単純に「1人あたり」で測れば、見かけ上、非製造業の変化率は低くなる。これを是正するため、図表第3―30で「人件費あたりの付加価値額」をみると、最近5年間の変化率はプラス4.8%と、製造業(プラス5.3%)に匹敵する伸びを示している。このように、非製造業の競争力は着実に強化されている。
今後の課題となるのは、規制改革である。特に海外に目を向けると、わが国企業が進出する際の障壁となる規制が少なくない。WTOを通じたサービス貿易自由化とともに、東アジア経済圏などでの自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)の締結を急ぐ必要がある。

【経済本部経済政策担当】
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