日本経団連タイムス No.2903 (2008年4月24日)

G8ビジネス・サミット「パネル・ディスカッション」


17日に開催されたG8ビジネス・サミットで行われた三つのパネル・ディスカッションの概要は次のとおり。

■ パネル・ディスカッション1
「イノベーションを通じた競争力の強化」

各国がイノベーションの創出に向け、官民が連携しながら戦略的に取り組んでいることが紹介された。ブロートン英国産業連盟会長からは、イノベーション戦略の展開にあたって、「PUSHとPULL」のバランスが必要であるとの興味深い指摘があった。これは、政府が税制上の優遇措置や資金の提供を通じて民間によるイノベーションを後押し(PUSH)するのと同時に、公共調達などを通じて自らユーザーとしてイノベーションの成果を活用することによって需要を引っ張っていく(PULL)ことが重要であるという、イノベーションにおける官民連携のモデルを示唆した発言であった。

このほか、パネリストの間で知的財産権の国際的な保護に向けて、模倣品・海賊版拡散防止条約の早期成立や特許のハーモナイゼーションの重要性が共有された。この観点から、先願主義への統一が必要との意見が多く出され、米国代表のマグロー・ビジネス・ラウンドテーブル会長からも先発明主義から先願主義への転換について前向きな見通しが示された。

■ パネル・ディスカッション2
「地球温暖化への対応‐ポスト京都議定書の国際枠組み」

ポスト京都議定書の国際枠組みにすべての主要排出国が参加することが何よりも優先されるべきであるという点について、パネル参加者全員の意見が一致した。また、エネルギー効率の改善、公平性、柔軟性、明確性、革新的技術開発の促進が重要であることでコンセンサスが得られた。

日本側からは、途上国支援のためのセクトラル・アプローチの推進がすべての主要排出国の参加を得るために有用であり、公平な国別数量目標の設定に関し、セクター別に積み上げたエネルギー効率に基づく積み上げ方式が望ましく、1990年を基準年として削減率で目標を設定する方法は公平の観点から問題があるとの指摘がなされた。

共同声明には、こうした指摘も踏まえ、北海道洞爺湖サミットで合意形成されるべき事項として、公平な排出削減方法の検討、セクトラル・アプローチの推進、革新的な技術の開発の推進、多国間・二国間の資金メカニズムの確立、自発的な技術移転の推進等が盛り込まれた。

■ パネル・ディスカッション3
「世界の成長センター アジアとの連携‐ダイナミズムと課題」

アジア地域が世界の成長センターと言われるまでに発展した一つの要因は、貿易・投資の自由化を通じてグローバル化に適応したことにあり、その結果、貧困層の削減にもつながったという点が確認された。また、欧米の参加者からは、EUやNAFTAといった経済統合の取り組みが紹介され、アジア地域の経済統合を進めるにあたり、参考になる議論が聞かれた。中国、インドといったアジアの新興国にグローバルなルールをいかにして順守してもらうかが重要といった議論や、アジアで一層の経済統合を進めるにあたっては、外に対して開かれたものであるべきとの指摘もなされた。さらに、各地域における経済統合に並行して、WTOドーハ・ラウンドの年内妥結、投資の自由の確保ならびに知的財産権の保護などの必要性が指摘された。

これらの議論を踏まえて、共同声明では、「貿易・投資の自由化促進」や「経済成長を通じた開発問題の解決」に関する項目を設けて、経済界のメッセージとして盛り込んだ。

【国際第一本部】
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