日本経団連タイムス No.2960 (2009年7月23日)

通信・放送の総合的法体系の在り方で説明聴き意見を交換

−新たな法体系の基本的枠組みなど/情報通信委員会通信・放送政策部会


日本経団連の情報通信委員会通信・放送政策部会(前田忠昭部会長)は7日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、総務省の谷脇康彦情報通信国際戦略局情報通信政策課長から、総務省情報通信審議会の答申案「通信・放送の総合的な法体系の在り方」について説明を聴くとともに、意見交換した。谷脇課長からの説明概要は以下のとおり。

■ 新たな法体系の基本的な枠組み

日本の通信・放送関連の法律は9本ある。内訳は、伝送設備関連の法律として、「有線電気通信法」「電波法」。通信事業関連の法律として、「電気通信事業法」「NTT法」「有線放送電話法」。放送関連の法律として、「放送法」「有線テレビジョン放送法」「有線ラジオ放送法」「電気通信役務利用放送法」である。しかし、近年の通信と放送の境界領域的なサービスが多数登場してきている状況を踏まえ、答申案では、現行9本の法律を再整理し、「伝送設備」「伝送サービス」「コンテンツ」という3つの事業領域に整理、制度の集約・大括り化を図る方向性を打ち出している。

■ 電波利用の柔軟化

現在の法制度では、通信業務用の無線局は放送に使えず、放送用の無線局は通信業務用に使えない。答申案では、通信・放送の双方に利用可能な無線局の免許制度を整備することを提言している。これにより例えば、通信事業者がブロードバンド無線網を用いて放送サービスを提供することが可能になる。また、放送時間の一部をコンテンツのダウンロード配信に利用することもできるようになる。
電波利用に関して、もう一つ提言されているのは、ホワイトスペースの活用である。これは例えば、放送用など、ある目的のために割り当てられているものを、時間的・地理的・技術的な条件によって他の目的のためにも利用可能な周波数を有効活用しようというものである。答申案では、ホワイトスペースの活用について、関係者による検討の場を立ち上げ、具体的なニーズ、利用形態、周波数を共用する際の技術的条件などについて技術的な検証を行い、技術基準の策定などの制度整備を行うこととしている。

■ 放送の名称・概念は維持しつつ法体系を大括り化

これまでは、地上テレビジョン放送などに適用されているコンテンツ規律を、インターネットによる一斉同報のような放送類似の通信サービスまで拡大するかどうかという点が議論となっていた。今回の答申案では、「放送」という名称・概念を引き続き維持することが適当であるとしており、これにより、コンテンツ規律をインターネット等の通信サービスには適用しないこととなった。

■ 放送事業における経営の選択肢の拡大

答申案では、放送事業における放送施設の設置(ハード)と放送の業務(ソフト)の両方を単独の事業者が行うか、複数の事業者で分担して行うかについて、事業者自らが選択できる制度を提言している。これにより、ハードとソフトの組み合わせについて自由度が高まり、経営の選択肢が拡大することが期待できる。

◇◇◇

また当日は、同答申案に対するパブリックコメントの取り扱いについて検討が行われた。委員からは、「2008年2月の経団連提言と軌を一とする内容であり評価できる」との意見が出され、これを踏まえたかたちで、通信・放送政策部会から21日にパブリックコメントが提出された。

【産業技術本部】
Copyright © Nippon Keidanren