日本経団連タイムス No.2975 (2009年11月19日)

提言「アジア経済の成長アクション・プランの実現に向けて」を発表

−アクション・プラン具体化し役割明示


日本経団連は17日、提言「アジア経済の成長アクション・プランの実現に向けて」を発表した。今年10月、タイで開催された東アジア首脳会議に向けて公表した提言「危機を乗り越え、アジアから世界経済の成長を切り拓く」10月22日号既報)において、世界経済が低迷から脱却するうえで、アジアの潜在成長力を顕在化させる必要があるとの認識に基づき、成長のボトルネックの解消を通じた成長基盤の確立のための7つのアクション・プランを包括的に提案した。今回の提言では、アクション・プランを具体化し、アジア各国、わが国、国際機関、経済界等がそれぞれ担うべき役割を明示している。各アクション・プランの概要は次のとおり。

<アクション・プラン1〜地域経済統合による経済の活性化>

経済連携協定(EPA)の面的・質的拡充に言及。面的拡充では、ASEAN+6、さらには米国を含むAPEC規模のFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏構想)を目指す。当面は域内の経済連携協定の空白を埋めるため、韓国、インド、豪州との早期締結や中国との交渉着手を提案。質的拡充については、多くの障壁がいまだ残るサービス貿易や投資分野の外資制限、送金規制等の緩和を求めている。また、現地に拠点を置く外国企業が円滑に事業活動を行えるよう、域内の人の移動に関する障害の撤廃も要求。さらに、日本においても、アジア諸国の人材に活躍の場を提供する観点から、必要に応じて、外国人の在留資格要件を緩和するよう提案。

<アクション・プラン2〜安定した中長期資金の供給>

アジアの経済成長を資金供給の面で支えるという観点から、通貨安定化のスキームであるチェンマイ・イニシアティブ拡充や、アジア債券市場イニシアティブを活用した資本市場の整備を提言。

<アクション・プラン3〜広域インフラ開発の推進>

アジア域内で製造業の水平分業を進め、域内格差を解消する。そのために、広域物流インフラの整備を提言。また、そのマスタープランについては、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)等が策定し、わが国のJICAや各国政府がこれに積極的に協力するよう提言。

<アクション・プラン4〜ソフト・インフラ整備の推進>

現地における民事基本法の整備や知的財産権を保護する制度の確立など、ソフト・インフラを整備することで民間投資誘致の基盤づくりを提言。

<アクション・プラン5〜アジア内需の拡大>

アジアの持続的成長のカギである内需拡大、とりわけ消費需要の拡大のため、例えば、社会保障制度の整備等によって、アジア域内の中間所得層が抱える膨大な貯蓄を消費にまわすインセンティブづくりをする必要性を提言。

<アクション・プラン6〜環境と経済成長の両立>

地球温暖化を防止すべく、CO2の主要排出国である中国、インドが積極的に省エネ対策等を講じることを求めるとともに、各国政府が省エネの推進や環境にやさしい製品の普及に努めるよう提言。

<アクション・プラン7〜ODAおよびその他公的資金改革の推進>

アクション・プラン1〜6を実施するうえで重要となるわが国のODAやその他公的資金の制度の抜本的改革を提言。

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日本経団連では、今月末から、御手洗会長を団長とするASEANミッションが、タイ、シンガポール、ベトナムを訪問するほか、来年3月には、アジア各国の経済団体を招いて、アジア・ビジネス・サミットの開催を予定している。こうした機会に、提言を踏まえ、アジア諸国の政府首脳や経済界とアジアの成長戦略に関する共通認識の形成に努める。さらに、その成果を手がかりとして、来年のG8やAPEC首脳会議等において、世界経済危機の克服とアジアの持続的成長の達成に向け、アクション・プランで示した具体策の推進を求めていく。

【国際協力本部】
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