日本経団連タイムス No.3028 (2011年1月27日)

日本経団連労使フォーラム開催

−持続的な成長の実現を目指して


講演する米倉会長

日本経団連と日本経団連事業サービスは20、21の両日、都内で「第114回日本経団連労使フォーラム」を開催した。全国各地から企業経営者や人事労務担当者ら約370名が参加し、「持続的な成長の実現を目指して」をテーマに、グローバル競争に打ち勝つ経営戦略や人材戦略、春季労使交渉にあたっての課題・対応策などを探った。

冒頭、米倉弘昌会長が開会あいさつと基調講演を行った。米倉会長は、賃金交渉においては、分配の議論に終始するのではなく、労使が一丸となって事業の付加価値を高め、企業の競争力を強化していく視点が欠かせないと強調。また、民主導の産業競争力強化に向けた取り組みとして、経団連が発表したサンライズ・レポートを紹介するとともに、今後の日本企業を支える“グローバル人材”の育成と活用のあり方について語った。

続いて、野村證券金融経済研究所経済調査部長兼チーフエコノミストの木内登英氏が「2011年・日本経済の行方」と題して講演。木内氏は、今年の日本経済について、(1)引き続き緩やかな持ち直し傾向が続く(2)円ドルレートの動きが回復に影響を与える(3)企業における過剰債務の削減が進み、直近では余剰資金が生じている(4)この資金を国内投資へと政策誘導できれば、内需回復の起爆剤となる――との見方を示した。

経団連の川本裕康常務理事が『2011年版経営労働政策委員会報告』 <目次のみ掲載> の要点を解説したのに続き、「持続的な成長の実現を目指して」をテーマに、全日本空輸の大橋洋治会長、東芝の西田厚聰会長、一橋大学大学院の一條和生教授が鼎談。「労使が一体となって企業の課題に取り組む“全員経営”が日本企業の強みであり、これを最大限に活かしていくべき」「多様性を受け入れつつ、自社の価値観を伝えていくことができるグローバル人材が求められる」などの考え方が示された。

1日目の最後は、石嵜信憲弁護士が、「グローバル時代の労使関係を考える」と題して講演。企業内での労使の課題解決能力の低下を指摘したうえで、労使の信頼関係の重要性を強調。「雇用形態の多様化、従業員の意識の多様化が進むなか、契約や約束に基づいた問題解決が信頼関係構築のカギとなる」と述べた。

2日目はまず、「今次労使交渉に臨む方針」と題して、企業の労務担当役員と産別労組リーダーがそれぞれ講演を行った。大久保伸一・凸版印刷常務取締役、朝長宣光・日本電気執行役員、松本智・日本たばこ産業執行役員の企業労務担当役員3氏は、グローバル化の進展などで企業の経営環境が急速に変化するなか、春季のみならず継続的な労使のコミュニケーションによって課題の解決を図っていることを説明した。

一方、西原浩一郎・自動車総連会長、有野正治・電機連合中央執行委員長、落合清四・UIゼンセン同盟会長の産別労組リーダー3氏は、デフレの脱却には家計への成果配分が不可欠と主張したうえで、賃金のみならずワーク・ライフ・バランスや非正規労働者の処遇についても労使交渉の対象とする意向を示した。

続いて、「成長を支える新たなグローバル人材戦略」をテーマに、岩本保・味の素取締役常務執行役員、矢澤哲男・YKK取締役上席常務執行役員をパネリストとして、川上真史・タワーズワトソンディレクターのコーディネートのもとパネルディスカッションを実施。グローバル経営を支える人事・人材育成システムや今後の課題について、実例に基づく討議を行った。

特別講演「政局を読む」では、政治コラムニスト・共同通信社客員論説委員の後藤謙次氏が、今後の主な政治・外交日程を示しながら、通常国会と菅政権をめぐる今後の動向と注目点について説明した。

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