2日目の第3セッションでは、「新生日本の創造に向けて」をテーマに、自由討議を行った。
まず坂根正弘副会長が発言し、わが国の国家的課題は「低成長」であり、「1人当たりGDPがなぜ先進国で最下位なのか」という視点から考える必要があると指摘した。そのうえで、わが国の成長実現のキーワードとして、(1)アジアをはじめとした外需を取り込むこと(2)地方主権(3)女性の活用(4)産業再編――の4つを挙げた。
また、当面は原子力発電所事故の収束のめどをつけることが重要と述べたうえで、民間と復興庁が一体で復興をリードするとともに、復興に向けて強く動ける体制をつくる必要があると指摘した。さらに、被災地の雇用問題が深刻であることに触れ、第1次産業に企業が参入し、若者に魅力をアピールできるような創生モデルをつくる必要があるとの考えを示した。
その後の自由討議では、参加者による活発な議論が行われた。発言の概要は次のとおり。
- 震災やエネルギー問題によって、マクロ経済の前提が大きく変わっている。しっかりした成長戦略を立て、それをベースにエネルギー政策を考える必要がある。
- 経済成長しながらグローバル化を達成しなければ、企業は海外に出ざるを得ない。TPPやFTA、EPAを促進し、アジアの需要を取り込む必要がある。民間が企業家精神とイノベーションを促進し成長を実現していく。サンライズレポートと未来都市モデルプロジェクトを引き続き推進していく。
- ものづくり大国日本にとって、環境・エネルギー・安全・安心が成長に向けたキーワードである。官民を挙げて研究開発に取り組むべきである。その集大成として未来都市モデルプロジェクトを推進すべきである。
- 東北で、スマートシティーと農業の6次産業化に向けたプロジェクトを合わせたかたちで、特区を活かした、自立したモデル都市プロジェクトを検討したい。
- 震災に伴う空洞化を懸念する。エネルギー問題と雇用対策を講じるべきである。成長戦略に盛り込まれている国内投資・輸出の拡大、産業競争力の強化に向けた施策を確実に実行すべきだ。
- 新成長戦略の閣議決定から1年を経たが、実行されたものはほとんどない。定性的な内容では実行されない。予算など定量化した新成長戦略にすべきである。
- わが国の成長の制約となるのは、エネルギー問題と税制であろう。東西間の電力供給の連携も検討すべき。国際競争力をつけるための税制の抜本改革が必要である。
- わが国が強みを持つ人材と技術をブラッシュアップし、東アジアに技術を輸出すべき。一方、観光やメディカルツーリズムなど、内なるグローバル化の取り組みも必要。
- マーケットは政府に財政健全化の意思があるかを注視している。名目成長を実現し、プライマリー・バランスを黒字化すべきである。
- 異文化との交流が少ないがために、新たなイノベーションの機会が生まれない。海外から留学生が来たくなるよう、インセンティブをつける必要がある。
- わが国は、1人当たりGDPのみならず、世帯当たり所得もOECD諸国に比べて低い。生産年齢人口の減少の度合いをいかに緩和できるがポイント。こうした観点から、ダイバーシティ・マネジメントが重要である。
- 産学官の連携を深めながら、グローバル経済にふさわしい人材を育てる必要がある。
- 子どもたちに財政問題等について、財政破綻等のリスクもしっかりと教えるカリキュラムを検討すべきだ。