経団連タイムス No.3051 (2011年7月28日)

夏季フォーラム2011開催

−新生日本の創造〜早期復興と新たな国づくりに向けて


経団連(米倉弘昌会長)は21、22の両日、長野県軽井沢町のホテルで「夏季フォーラム2011」(議長=大橋洋治副会長)を開催した。今回のフォーラムは、3月11日に発生した東日本大震災からの復興と、従前からの課題の克服を同時に推進することを目指し、「新生日本の創造−早期復興と新たな国づくりに向けて」を統一テーマとして実施された。フォーラムには、米倉会長、渡文明評議員会議長をはじめ、副会長、評議員会副議長ら36名が参加。未曾有の震災からの復興に向けた取り組みや、新たな経済成長戦略の実現に向けた方策などについて、活発に意見交換した。討議結果は、「アピール2011−大震災を乗り越え、新生日本の創造に向けて」として取りまとめ、公表した。

長野県軽井沢町で開催した夏季フォーラム2011

<1日目>

1日目午後の第1セッション「未曾有の震災からの復興に向けて」では、東北経済連合会会長の高橋宏明氏、東京大学法学政治学研究科教授の藤原帰一氏がそれぞれプレゼンテーションを行った。高橋氏はまず、津波と地震による被災状況について説明した後、東経連が政府に提出した提言や同会が実施している具体的な活動等を紹介。特に、「モノづくり復興特区」の創設や農業・漁業の大規模化・集約化による競争力強化、災害に強いインフラ網の構築、物産と観光両面からの復興支援などの必要性を訴えた。

続いて藤原氏は、「復旧」だけでは十分ではなく、成長に向けた「再生」のシナリオを提示する必要があるとして、被災地復興と地域経済の拠点形成の両立に向け、重点的・集約的・効率的な資金投入が必要といった見解を示した。その後、岩沙弘道副会長から、経団連の未来都市モデルプロジェクトで得られる知見を活用することの重要性などについて発言があった後、自由討議に入った。

また、セッション後には、CSIS(米国戦略国際問題研究所)日本部長のマイケル・グリーン氏による「復興のための日米パートナーシップ」と題した特別講演が行われた。

<2日目>

米倉会長(左)と大橋副会長

2日目午前の第2セッションでは、「わが国が抱える課題の克服」をテーマに、主にグローバル化への対応、社会保障と税・財政の一体改革、エネルギー・環境政策の再構築について議論を行った。まず、グローバル化への対応に関し、政策研究大学院大学学長の白石隆氏が「東アジアの政治経済とポスト3.11の日本」と題して講演した。白石氏は、東アジア地域における今後の展望として、(1)都市化の進行と中産階級の拡大(2)世界経済におけるアジアの比重の拡大――等を指摘するとともに、中国の台頭による影響等について述べた。そのうえで、日本は、国を開いてアジアのなかに日本を埋め込んでいくことが重要と訴えた。これを受けて、勝俣宣夫副会長が、TPP(環太平洋連携協定)をはじめとした経済連携推進の必要性などについて発言した後、意見交換を行った。

次に、社会保障と税・財政の一体改革について、慶應義塾大学経済学部教授の土居丈朗氏がプレゼンテーションを行った。土居氏は、歳出削減では、社会保障費と地方交付税が重要な改革分野であると語った。税制については、経済成長を阻害しないことや世代間格差の縮小といった観点から、消費税を引き上げ、法人税を引き下げるべきと指摘した。また、渡辺捷昭副会長から、議論の冒頭、政府与党の社会保障と税の一体改革の「成案」の評価と今後の課題について発言があった。

引き続き、エネルギー・環境政策の再構築等について討議を行い、冒頭、西田厚聰副会長から、10〜20年後を視野に入れて、エネルギー政策のプライオリティー付けの見直しが必要との発言があった。

午後に行われた第3セッション「新生日本の創造に向けて」では、競争力強化に向けた基盤整備、民主導の経済成長の実現に向けた企業・経済界のアクションなどについて、参加者が活発な議論を重ねた。

討議の結果取りまとめられた「アピール2011」には、(1)震災からの早期復興(2)活力ある経済社会の再構築(3)強い日本の再生――などが盛り込まれた。

夏季フォーラム終了後には、米倉会長と大橋議長が記者会見を開き、フォーラムの成果について語った(別掲記事)。

【政治社会本部】
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