経団連タイムス No.3052 (2011年8月4日)

夏季フォーラム2011

特別講演「復興に向けた日米パートナーシップ」

−マイケル・グリーンCSIS日本部長


夏季フォーラム2011の1日目には、米国戦略国際問題研究所(CSIS)のマイケル・グリーン日本部長が「復興に向けた日米パートナーシップ」と題して講演した。概要は次のとおり。

◇◇◇

今回の震災は日本にとって暗く悲惨な出来事だった。一方で、発生直後に100を超える国や地域から支援の申し出があったことは日本が世界各国から尊敬されていることを示すものである。また、震災により、日本国民の協調性や我慢強さ、産業技術力が明らかになった。日米同盟による「トモダチ作戦」では、両国の相互信頼関係を再認識するとともに、周辺国に対し日米安保の緊密性をアピールできた。

CSISは4月11日、ボーイング社のジェームス・マクナーニ会長兼社長を委員長に「復興と未来のための日米パートナーシップ」を立ち上げた。さまざまな分野から約40名が参加している。(1)経済問題(2)エネルギー(3)災害救援(4)市民社会(5)医療(6)日米安保――の6つのワーキンググループを設置し、10月に報告書を提出する予定である。本日はその進捗状況を紹介したい。

経済問題に関しては、復興において日米が協力可能な分野を提案する。財政問題では経済成長が第一であることを強調したい。例えば、東北だけでなく日本への直接投資を増やすためには環太平洋連携協定(TPP)が不可欠である。日本はEUや日中韓とのFTA交渉も進めているが、メンバーからは「なぜTPPを後回しにするのか」との懸念の声が上がっている。震災復興特区については、直接投資が目的なら、東北地域全体を特区とすべきだろう。

また、長期的なエネルギー戦略がなければ、復興どころか復旧もおぼつかない。日本のエネルギー政策や原子力発電所事故の補償問題は、他国にも影響を及ぼす。政治家は原子力の将来を見据えて発言すべきだ。今後はスマートグリッドや天然ガス等についても、日米共同で研究していきたい。

災害救援については、米国のハリケーン・カトリーナにおける失敗から学ぶことがある。今後、日米両国の経験を活かして、災害予防政策の研究や救援活動のシステム化を進める必要があろう。

市民社会では、日本のNGOの規模が小さいことが課題だ。日米の市民社会の連携を強化し、将来的に第三国の災害にも対応できるようになれば、国際社会で日米の存在感を示すことができる。

医療については、福島原発事故の健康への影響や、医療の一体化について対応策を提示したい。

日米安保については、日米の相互信頼、相互運用の深化を研究している。トモダチ作戦の経験を活かした救援活動は、対象国・地域から歓迎され、軍の透明性確保にもつながる。今後、日本の防衛力強化の観点から、トモダチ作戦をケーススタディーとして、周辺事態への対応についても検討していきたい。

日米両国の経済は相互に依存している。日本経済の復興は、米国経済のみならず、北東アジアの安全保障にも影響を与える。何よりもわれわれは家族だ。CSISの取り組みを通じて、日本の早期復旧、早期復興に貢献できれば幸いである。

【政治社会本部】
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