[経団連] [意見書] [ 目次 ]

自由貿易協定の積極的な推進を望む

〜通商政策の新たな展開に向けて〜

2000年7月18日
(社)経済団体連合会

  1. はじめに
  2. 経団連では昨年5月の提言「次期WTO交渉への期待と今後のわが国通商政策の課題」のなかで、WTO新ラウンド交渉に向けた対応の強化と併せて、自由貿易協定の実現に向けて政府が具体的な検討を行なっていくよう求めた。その後、シンガポールとの間で産官学の研究会が設置されるなど、自由貿易協定の具体化の萌芽が見られつつあるものの、その動きは遅々としており、産業界として憂慮せざるを得ない。
    1990年代に入り、自由貿易協定は、かってない規模とスピードで、世界的に広がりつつある。ASEAN自由貿易地域(AFTA:92年発足)、北米自由貿易協定(NAFTA:94年発足)、南米南部共同市場(MERCOSUR:95年発足)の形成、欧州連合(EU)の拡大(95年)などがその代表例である。現在までに、WTOに通報され発効している自由貿易協定の数は約120にものぼる。
    米国は、2005年を目標に米州自由貿易圏(FTAA)設立構想を進めており、いまや南北米大陸に跨る巨大な経済圏が生まれようとしている。他方EUは、更なる拡大と深化を目指す一方、本年3月にはメキシコとの間に自由貿易協定を締結するなど、米州諸国との間に自由貿易協定のネットワークを拡げつつある。このように諸外国にとって、自由貿易協定は、WTOと並ぶ重要な通商政策の柱の一つと位置付けられており、国際的な通商システムは多国間主義と地域主義が共存するという新しい時代に入った。
    しかし、わが国はこれまで自由貿易協定に取り組んでこなかった。このため、わが国企業が国際的な活動を行なう上で、事業機会を逸したり、既に他国と自由貿易協定を締結している国とのビジネスにおいて、競争上不利な立場に置かれたりするといった事態が生じている。
    わが国は、引き続きWTO体制に強くコミットしていくべきであるが、同時に通商政策の新たな柱として、自由貿易協定を積極的に活用していく必要がある。

  3. なぜ自由貿易協定か
    1. 自由貿易協定は、締約国間の物品の貿易に係る関税や非関税障壁等の障害の撤廃を基本的な目的としている。しかし、最近では、NAFTA等に見られるように、サービス貿易の自由化、投資の保護・自由化、通商ルールの整備、基準・認証の調和及び相互承認、知的財産権の保護、政府調達市場の開放、税関手続面での政府間協力、紛争処理手続の整備等のWTOの範囲を超えた幅広い内容を含む協定が増えている。
      このように、自由貿易協定は、わが国企業が国際的な活動を推進するうえでの極めて重要な制度的枠組みを提供するものといえよう。

    2. わが国が自由貿易協定を推進すべき理由は、次のように整理される。

      1. 相手国・地域とのビジネス機会を拡大する重要なツールとなる。
        国際的な事業活動を行っていく上で、ヒト、モノ、カネ、サービスの自由で円滑な流れが重要であるにもかかわらず、発展途上国を始め多くの国々では、様々な制約が課されている。自由貿易協定の下では、単なる関税の撤廃に止まらず、これまでWTOの自由化交渉では取り上げてこなかった分野を含め高度な自由化を実現することが可能である。協定を通じ、相手国との物品・サービス両面にわたる貿易の拡大、直接投資の促進、様々なプロジェクトへの参加の円滑化等が期待される。
        更に、協定を通じ、相手国政府の政策の透明性を高めるとともに、政権の交代などに伴う政策変更を防止し、ビジネスの予見性を高める効果も期待される。
        EUやNAFTAでは、自由貿易協定は域内の貿易、投資の拡大のみならず、域内産業間の分業の高度化、域内企業間の戦略的な連携強化、域外からの投資の拡大といった様々な効果が現れている。

      2. 欧米諸国が自由貿易協定への取り組みを強化するなか、わが国企業が蒙る競争上の不利益を解消していく必要がある。
        わが国が、既に他国と自由貿易協定を締結している国とビジネスを行なう際に、関税のみならず投資の許可・保護、政府調達への参加など様々な面で域内企業に比べて不利な立場に置かれている。
        例えば、メキシコはNAFTAのメンバーであると同時に、EUとも自由貿易協定を締結した。この結果、欧米企業は関税(自動車や家電で10〜20%)を賦課されることなくメキシコに製品を輸出できる。これに対し、日本からの輸出に対しては関税が課されることから、日本企業の対メキシコ輸出の減少、日本製部品を利用した現地生産の競争力の低下、様々なプロジェクトからの撤退など深刻な影響が出るものと予想される(「日墨自由貿易協定のわが国産業界への影響に関する報告書」(1999年4月経団連発表)を参照)。
        また米国が進めているFTAA構想が実現すれば、わが国企業は北米のみならず米州全域で米国企業に比べて差別的な条件で競争せざるを得なくなる。
        他方でEUは、中東欧への拡大と併行して、ブラジルを中心とする南米南部共同市場との協定締結に向けた動きをみせている。
        このように欧米諸国が自由貿易協定を締結した地域において、わが国企業は極めて不利な条件の下で欧米企業との競争を余儀なくされることから、わが国としても同様の協定を締結し、同等の競争条件を確保していく必要がある。

      3. 域内の競争を促進し、日本国内の経済構造改革を促す。
        自由貿易協定は、貿易・投資の自由化や相手国との規制制度の調和を通じ、日本国内における、諸規制の撤廃・緩和、高コスト要因の是正等、構造改革を促す。加えて、域内の競争を促進させることから、国内産業の活性化、効率化、競争力強化をもたらし、消費者の利益にもつながる。
        更に、諸外国のスタンダードをわが国として受け入れていくとともに、日本のスタンダードを国際的に広げていく重要な機会を提供する。

      4. WTOによる貿易や投資の自由化やルール作りを補完する。
        昨年12月に米国シアトルで開催された第3回WTO閣僚会議では、加盟国の複雑な利害が絡みあい、次期ラウンド交渉の立ち上げに至らなかった。137カ国の加盟国を擁するWTOでは、貿易や投資の自由化やルール作りが容易ではない。また、OECDにおける多国間投資協定(MAI)交渉も失敗に終わった。
        このように多国間の貿易、投資の自由化やルール作りが思うように進まないなか、わが国としても自由貿易協定への取り組みを通じ、WTOによる自由化やルール作りを地域レベルで補完していく必要がある。
        また、自由貿易協定における交渉、紛争処理等の経験をWTOの交渉に活かしていくことも可能となる。

  4. 自由貿易協定を推進する上での課題
  5. 今後わが国が自由貿易協定を積極的に推進していく上で以下の点に留意すべきである。
    第一に、自由貿易協定の締結が世界経済のブロック化の防止やWTOを中心とする多角的な貿易自由化に対するモメンタムの維持・強化につながるようにする必要がある。
    第二に、関税の撤廃等による域内貿易の自由化に向け、国内産業の国際競争力の一層の強化を図るとともに、国内産業の一部に深刻な影響を及ぼさないような対策を講じていく必要がある。

    1. 重要なWTO体制の維持、強化
      1. 包括的な新ラウンド交渉の立ち上げに向け主導的な役割を果たす。
        WTOによる自由化がモメンタムを失うことのないよう、わが国は、WTOを中心とする多角的な通商体制の維持、強化に引き続き積極的にコミットしていく必要がある。
        昨年のシアトル閣僚会議の失敗により新ラウンド交渉の立ち上げの目途は立っていないが、交渉の早期実現に向け官民は努力を倍化していかなければならない。こうしたことから、経団連では、本年3月の提言「次期WTO交渉の課題」のなかで、新ラウンド交渉の早期実現を強く求めている。また、様々な国の産業界との間の二国間会議やABAC(APECビジネス諮問委員会)などの地域フォーラムを通じ、包括的なラウンド交渉の重要性を訴えているところである。

      2. WTO協定との整合性が十分確保された自由貿易協定をめざす。
        WTO協定には、物品の貿易に関してはGATT24条、サービス貿易に関してはGATS(サービス貿易一般協定)5条が、それぞれに自由貿易協定を締結する際の条件を規定している。
        わが国が自由貿易協定を締結する場合に、WTOの規定を遵守すべきことは当然である。同時に、WTO協定からみて問題があると思われる他国間の協定についてはWTOの場で積極的に問題提起をしていく必要がある。これにより、多角的な貿易自由化を目指すWTO体制に対する信頼性を損なうことなく、自由貿易協定を推進していくことが可能となる。

      3. 様々な国・地域との自由貿易協定を進めていく。
        ブロック化に対する懸念を払拭するためには、わが国としても、特定の地域に限定された協定ではなく、様々な国・地域との協定締結を進めていく必要がある。
        実際、最近のEUメキシコ自由貿易協定に見られるような、異なる地域間の連携が進んでおり、戦前のような形で世界経済がブロック化していく可能性は小さい。

    2. 国内産業に対する配慮
    3. 国内産業は、自由化により一層厳しい競争にさらされるが、自助努力を基本に近代化、競争力の強化に努めるべきである。
      政府は、規制改革、情報通信・物流など社会資本の整備を通じ、わが国の高コスト構造を是正していく必要がある。特に、規制改革については、昨年10月の提言「大胆な規制改革を求める」において要望した事項の早期実現が強く求められる。
      他方で、急激な輸入自由化等により深刻な影響を蒙る場合には、WTO協定で認められる範囲内で、以下のような現実的な対策を講じていくことも必要である。

      1. 第三国からの真性の迂回輸入を効果的に防止できるような原産地規則を定める。

      2. 域内セーフガード措置の発動を可能とする。
        急激な輸入の増加により、国内産業に重大な被害がでる場合に備え、協定締約国のみを対象とするセーフガード措置の発動の余地を残しておくことが考えられる。

      3. 自由化までの移行期間を利用し、当該産業の競争力の強化を図る。
        WTO協定上、自由貿易協定を締結する際、概ね10年以内に域内関税を撤廃することとなっている。この期間を利用して競争力の強化に向けた諸施策を採っていくことが可能である。

      4. どうしても自由化できない品目については、例外的に対象外とする。
        GATT24条(サービスについてはGATS5条)は、協定の締結にあたって、「実質的に全ての貿易」について自由化すべき旨を規定している。従って、可能な限り多くの貿易を自由化していくことが望ましい。しかし、ある産業のなかで自由貿易協定により深刻な影響を受けるためどうしても自由化ができない品目については、他の自由貿易協定の例に見られるごとく、結果的に自由化の対象リストからはずしていくことも考えられる。

        〔注:既に多くの自由貿易協定において、国際競争から守るべきセンシティブな品目については、関税撤廃等の例外扱いとしている。例えば、EUメキシコ自由貿易協定に関連し、欧州委員会が欧州議会に提出したペーパーでは、協定上農水産品の一部が自由化の対象から除外されているが、二国間の全体の貿易額の95%が自由化されるため同協定はWTOに整合的であると説明している(なお、EUの内部基準では少なくとも90%以上を自由化すればWTO協定上問題ないとされている)。こうした例は、今後わが国が自由貿易協定を検討していく上で参考となろう。〕

  6. 包括的な自由貿易協定の推進と対象国・地域
    1. 検討すべき協定の内容
    2. 自由貿易協定は、すべての締約国に利益をもたらす互恵的なものでなければならない。
      また、WTOでは容易に達成し得ない高度な自由化やルール作りを、特定国との間で達成していくことが可能であることから、企業による貿易や投資活動の円滑な推進に資する広範な分野を含む包括的な協定としていくことが望ましい。[参考資料参照]

      1. 物品及びサービス貿易の自由化:
        物品の関税・非関税障壁の撤廃は、わが国からの輸出を促進し、また、輸入コストを低下させていくうえで重要である。
        同時に、輸入自由化を進めるなかで、わが国の経済安全保障を確保していくため、域内の輸出禁止・制限措置を取れないような形で規律を強化していくことも重要な検討課題となろう。
        また、WTOにおけるサービス貿易の自由化は、緒についたばかりであり、多くの国で依然として様々な障壁が残されている。特に、電気通信、流通、金融等の自由化の遅れている国との協定の締結を通じ、当該諸国の自由化を促し、日本企業の進出を支援していくことが重要である。サービス関連のビジネスを円滑化する上で、免許、資格証明等の相互承認も進めていく必要がある。

      2. 投資ルールの整備:
        WTOにおけるルールが未だ確立されていない分野であることから、協定を通じ、わが国からの投資の自由化、保護の強化が図られる意義は大きい。
        特に、外資制限の撤廃、関連制度の透明性・安定性の確保、パフォーマンス要求の廃止、経営幹部・役員等の国籍要求の禁止、紛争解決メカニズムの整備等が実現していくことが望まれる。

      3. 基準・認証の統一化、相互承認の推進:
        基準・認証制度が不必要な貿易障壁とならないよう家電製品、機械機器、食品、医薬品等の基準及び適合性評価方法の調和、評価結果の相互承認を進めていく必要がある。同時に、電子認証制度等、情報技術分野における諸制度の調和も図っていく必要がある。特に後者は、インターネットや情報技術分野で、日本のスタンダードをグローバルなものとしていくうえで重要な手段となりうる。

      4. アンチ・ダンピング等の貿易ルールの規律強化:
        アンチ・ダンピング措置は、WTOの基本原則である無差別原則、譲許税率を超える関税賦課の禁止の例外規定であるにもかかわらず、一部の国で保護主義的な運用がなされている。そこで、WTO協定を基本としつつ、同協定における規律を強化するような内容を協定に盛り込んでいくことでアンチ・ダンピング措置の濫用を防止していくことが望ましい。このように、より公正な内容のアンチ・ダンピングのルールを自由貿易協定のネットワークを使い他国に広げていくことは、次期WTO交渉におけるわが国の立場を強化していく上でも役立とう。
        こうした議論を更に広げ、競争法的な観点を取り入れながら、アンチ・ダンピング措置の相互不発動の可能性を検討していくことも重要であろう。
        原産地規則については、WTOとWCO(関税協力理事会)の連携のもとに、国際統一非特恵原産地規則の策定交渉が行なわれている。よって、自由貿易協定により適用される特恵原産地規則に関しても、同交渉を視野に入れつつ、わが国が従来より主張している関税分類変更基準を基本として構築していくことが望まれる。付加価値基準は、予見性・安定性に欠けるため採用すべきではない。

      5. 政府調達市場の開放:
        WTOの政府調達協定は参加国が限られていることから、特に同協定の非参加国との間で締結される自由貿易協定に政府調達に関する規定を盛り込んでいくことは極めて有効である。

      6. 知的財産権の保護:
        特許、ノウハウを守るため知的財産権の高度な保護を可能とするような制度を確立するとともに、途上国については国内制度の整備、強化に向けた協力を求めていく必要がある。

      7. ビジネス関係者の移動の円滑化:
        社員による長期滞在や、急な出張が必要になった際の、ビジネス関係者の移動に係る手続きを簡素化していく必要がある。

      8. 競争政策、電子商取引等のルールの整備:
        WTOに先駆けて新しいルールを盛り込むことは、企業活動に資するのみならず、WTOにおける今後の議論を日本が主導していく一助となろう。

      9. 紛争処理制度の整備:
        二国間での迅速な紛争処理が可能とするような制度の構築が望まれる。

      10. その他:
        技術協力、研究協力、文化交流といった新たな項目を加えた協定を検討していくことも考えられる。

    3. 自由貿易協定の優先的な対象国・地域
      1. 協定締結対象国の条件
        わが国が自由貿易協定のメリットを最大限に享受するとともに、ブロック化に対する懸念を払拭するためには、できるだけ多くの国との協定を検討していくことが望ましいが、例えば、当面以下の判断基準で優先的な締結相手国を検討していくことが考えられる。

        1. 日本と相互補完的な経済関係にあり、互恵的な協定が結べる。
        2. 自由化が遅れており、高関税や煩雑な規制が維持されている。
        3. 既に他国と自由貿易協定を締結しているため、日本企業が相対的に不利な立場におかれている。
        4. 法制度が確立し政治が安定しており協定の遵守が期待できる。

      2. 優先的対象地域

        1. アジア
          アジア(例えば、ASEAN諸国や韓国)は地理的に近く、わが国との経済関係が緊密で、今後の更なる成長が見込まれる。日本とアジアとのパイプをより太いものとすることは双方の産業界に大きな利益をもたらすものと期待される。できるところから自由貿易協定の締結を具体的に検討していく必要がある。
          またアジアには、自由化が遅れている国も多く、協定を通じ貿易・投資面での自由化を促していくことは、日本企業にとっても現地企業にとっても極めてメリットが大きい。
          更に、APEC(アジア太平洋経済協力)は、1994年のボゴール閣僚宣言に基づき、貿易・投資の自由化を進めているが、こうした動きを補完する意味からも、わが国が域内で自由貿易協定を推進していく意義は大きいといえよう。

        2. 米州
          既に域内で網の目のような自由貿易協定が締結され、2005年に向けてFTAA構想が進んでいる米州地域における拠点作りも重要である。EUは同地域において、既にメキシコと自由貿易協定を締結したほか、南米南部共同市場との協定締結に向けた動きを加速するなど、着々と布石を打っている。また、韓国もチリとの協定締結交渉を進めている。わが国企業の同地域におけるビジネスチャンスを喪失することのないよう、迅速な対応が望まれる。
          また、米国は、世界最大の市場であるとともに、わが国にとっても最大の貿易・投資相手国である。将来、自由貿易協定が締結されれば、両国に大きなメリットをもたらす可能性があろう。

    4. 現在検討中の協定の評価
    5. こうしたなか、シンガポール、韓国、メキシコ、チリ、カナダなどとの間の自由貿易協定締結について、官民が様々なレベルでの検討を行っていることは歓迎される。

      1. シンガポールは産官学の検討会が行われているが、単に二国間の関係強化にとどまらず、ASEANへのゲートウェイとしての同国の役割も期待される。今後の協定作りのモデルとなるような、包括的かつハイレベルの協定が検討されることを期待する。経団連では、シンガポールとの自由貿易協定に関して別途タスクフォースを設け検討中である。

      2. 韓国はわが国と地理的に最も近く、域内の貿易、投資の拡大を通じた分業の高度化といった経済的なメリットは非常に大きいと思われる。さらに、政治的、社会的及び文化的な関係強化といった、非経済的効果も期待される。

      3. メキシコ、カナダはNAFTAの一員であり、チリはメルコスールと自由貿易協定を締結していることから、こうした国々との協定は、単に各国の国内市場向けのビジネスを活発化するのみならず、米州における戦略的拠点作りという意味からも重要である。

  7. おわりに
  8. GATT/WTOを中心とする自由、多角、無差別を原則とする通商秩序は、世界経済の健全な発展や、わが国企業がグローバルな事業活動を円滑に行なう上での環境整備に大きく貢献してきた。わが国は引き続き、WTO体制の維持、強化に向けイニシアティブを発揮していくことが求められる。同時に、わが国は自由貿易協定締結の有用性を積極的に評価し、通商政策の新たな柱として位置づけていくべきである。
    自由貿易協定の意義、締結にあたっての問題点は相手国毎に大きく異なる。今後政府は、様々な場を活用し、協定締結に向けた具体的な検討を進めていく必要がある。産業界は、こうした政府の活動を積極的に支援していく所存である。また、自由貿易協定は、一部の産業にとって痛みを伴う可能性があっても、国全体としての利益を念頭におきながら、検討を行なっていくことが重要である。実現に向けては様々な困難も予想されるが、政治的リーダーシップが強く求められるところである。

以 上

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