[経団連] [意見書]

ナノテクが創る未来社会

<n−Plan21>

2001年3月27日
(社)経済団体連合会

1.ナノテクノロジーの研究開発推進にあたっての基本的視点
2.重点投資を行なうべき分野
 (1) フラグシップ型プロジェクト
 (2) チャレンジ型プロジェクト
 (3) 基礎研究
3.研究体制・システムの整備・充実
4.おわりに

経団連では、昨年7月に「21世紀を拓くナノテクノロジー」と題する提言書を公表し、ナノテクノロジー強化に向けての経団連の基本的な考え方を示したところである。
ナノテクノロジーは、物質をナノサイズでコントロールすることで、物質の機能・特性を大幅に向上させ、豊かな社会の構築に貢献できると同時に、資源・エネルギーの使用を大幅に減らし、環境にやさしい社会の実現に役立つものである。その意味で、ナノテクノロジーは社会や生産システムに変革をもたらす夢の技術である。
現在、産業界としても、3〜5年先の実用化を見据えて、ナノテクノロジー関連の研究開発に取り組んでいるが、ナノテクノロジーが10年、20年後の社会や経済を支える基盤技術となるためには、国をあげてナノテクノロジーの戦略的な推進を図る必要がある。このような観点から、国として取り組むべき重点研究開発分野やそれを支える制度のあり方について、産業界としての考え方を示すべく、産業技術委員会ナノテクノロジー専門部会において検討してきた。
以下は、その検討結果をとりまとめたものである。このとりまとめが、ナノテクノロジーの戦略的推進や重点研究開発分野の設定にあたっての一つの参考になることを期待したい。

1.ナノテクノロジーの研究開発推進にあたっての基本的視点

(1) IT、バイオ、エネルギー・環境、材料をナノテクノロジーでブレークスルーし、豊かで環境にやさしい社会の実現を目指すべきである。

ナノテクノロジーは、IT技術の壁をブレークスルーし、継続的に発展させるために必要な技術であり、バイオやエネルギー・環境、材料分野に新たな発展をもたらす可能性を秘めた技術である。
ナノテクノロジーにより、IT分野では、情報処理を行なう半導体や情報を蓄積するストレージなどの集積度が大幅に向上し、誰もがどこでも動画像を含む大量の情報を活用できるIT国家を支えるユビキタスネットワークの実現を可能にする。
ナノテクノロジーはバイオテクノロジーと融合することにより、バイオナノシステムを実現して、簡便で安全な診断を可能にし、健康社会の実現に寄与する。
また、ナノテクノロジーは、ナノサイズで高機能を達成できることから、情報処理の高速化に伴うエネルギーの使用量の増加を抑える。また、エネルギーシフトや、長寿命化対応材料、超軽量高強度の材料などを実現し、環境にやさしい社会の実現に貢献する。

(2) 日本が強みを持っている分野で、かつ、社会や産業インパクトの大きい分野へ重点投資を行なうべきである。

ナノテクノロジーへの投資は、IT国家や省エネルギー社会の実現、国民の健康の増進といった社会的課題の解決につながるとともに、わが国産業の国際競争力の強化、さらには雇用機会の増大をもたらすものでなければならない。ナノテクノロジーは、わが国が長年基礎的に取り組んできた分野であり、様々な蓄積を有している。この強みを生かして、わが国が優位にたてる分野に重点投資を行なっていく必要がある。
重点研究分野の選定にあたっては、技術的ポテンシャルとともに、産業や社会へのインパクトについても評価を行ない、優先順位付けを行なう必要がある。
なお、2010年におけるナノテクノロジー関連の市場規模は、約27兆円と試算され、産業に大変大きいインパクトを与えるものと期待される。

(3) 5〜10年先の実用化・産業化を意識したフラグシップ型の研究開発テーマと、革新的な基盤的技術を軸にしたチャレンジ型の研究開発テーマの設定、および基礎研究を含めた適正なリソース配分が必要である。

研究開発活動の成果をタイミング良く産業、社会に還元するためには、目的やフェーズを明確にして研究開発を進める必要がある。まず、わが国として、特に注力すべき産業、製品分野を絞り込み、5〜10年後の実用化を明確に意識して、戦略的かつ総合的な技術開発を行なう必要がある。これらは、「フラグシップ型」プロジェクトとして、産業界のみならず、大学、公的研究機関の参加を得て推進すべきである。
同時に、従来技術や知的基盤からの革新性を目的とした幅広い基盤的研究開発が必要である。このためには、失敗するリスクも少なからず存在するが、成功した場合には、10〜20年後の社会や産業に様々なインパクトをもたらすような、高い目標を掲げた、「チャレンジ型」のプロジェクトを推進しなければならない。チャレンジ型のプロジェクトの担い手として、産業界とともに、大学や公的研究機関の果たすべき役割は大変大きく、実用化を目指した目的指向研究の推進を期待したい。その際には、実用化を意識した目標を達成しうる研究テーマを公募し、研究を進める中でテーマを絞り込んでいくことが望まれる。さらには、チャレンジ型プロジェクトで生まれた成果をタイミングよく実用化していく必要があり、その際、ベンチャー企業を含め、産業界が果たすべき役割は大きい。
さらには、ナノ構造における物性探索や機能解明、物性計測など、研究者の独創性を重視した「基礎研究」を進める中で、新しい芽が生まれ、基盤研究や実用化プロジェクトにつながっていくことを期待するところである。
フラグシップ型、チャレンジ型、基礎研究のカテゴリーにどの程度の割合で資源を配分するかを含め、それぞれの特性に応じた重点投資、および体制を具体化する必要がある。

(4) ナノテクノロジーの推進には、国家レベルでのナノテクノロジー戦略の推進、大学・公的研究機関における目的基礎研究の推進、基礎研究や基盤研究の成果実用化の推進が必要である。

ナノテクノロジーを、社会的課題の解決や、産業の発展につなげていくためは、国家としての一元的な戦略に沿って取り組むことが不可欠である。特に、大学・国研に培われた知識と豊富な人材を活用していくために、基礎研究を目的指向に推進し、その成果をチャレンジ型、フラグシップ型プロジェクトへつなげていくための推進戦略の策定が求められる。
また、ナノテクノロジーは、応用分野も、IT、バイオ、エネルギー・環境、材料と大変多岐にわたり、関連する専門分野も、物理、化学、医学、物質材料、エレクトロニクスなど幅広く、学際的、省庁横断的な研究開発分野である。さらには、ナノテクノロジーの実用化を考えた場合、技術に加えてユーザーの視点が不可欠である。分野の壁、組織の壁、省庁の壁を超えた、わが国全体としての戦略的取り組みが必要である。

2.重点投資を行なうべき分野

(1) フラグシップ型プロジェクト

フラグシップ型のプロジェクトとしては、当面、わが国の国家戦略であるIT革命を推進するために不可欠な、ユビキタスネットワークの構築に向けた低電力、高機能技術の開発を、中心テーマとして取り上げるべきである。 具体的には、70nm世代以降の半導体プロセスの基盤技術開発を目指す次世代の半導体技術の開発、大容量の情報保存技術であるテラビット級情報ストレージ技術の開発、大容量高速通信を可能にするネットワークデバイス技術の開発があげられる。

  1. 次世代半導体技術
    超高速ネットワーク社会においては、超高速で、かつ低消費電力のデバイス開発が不可欠である。これに対応した半導体は、最小の線幅であるデザインルールで言えば、現在の180nmから、100nmの壁を越え、2010年には50nm程度になると言われている。現在、民間主導で100〜70nm世代の技術開発を行なう「あすかプロジェクト」が進められつつあるが、政府も、来年度より、技術的見通しが不透明な70nm世代以降の半導体プロセスの基盤技術開発を目指す「MIRAIプロジェクト」に取り組むとされている。MIRAIプロジェクトを軸に、ナノ領域の半導体生産・評価システム、新材料・新構造デバイス、新配線技術、オンマシン校正技術等の基盤技術の開発に取り組み、予想される技術の壁に備え、あわせて国際競争で優位性を確保すべきである。

  2. テラビット級情報ストレージ技術
    大量の情報が相互に行き交う超高速ネットワーク社会においては、大容量の情報の保存技術(情報ストレージ技術)が不可欠である。1平方インチあたりの記録密度は現在20Gb(ギガ(109)ビット)程度であるが、2010年頃には、400Gb〜1Tb(テラ(1012)ビット)の時代が到来することに鑑み、記録媒体用新材料、ヘッド用新材料、垂直記録型の磁気ヘッドなどの新構造デバイス、精密アクチュエーターなどにより構成される磁気ストレージのシステム基盤技術の開発に取り組む必要がある。
    また、可換性記録メディアとして、テラビット級光ディスク実現に向けて、光の回折限界を超える近接場光メモリ技術の研究開発が急がれる。

  3. ネットワークデバイス技術
    膨大なデータをネットワークで送るために、光デバイスの高速化、低コスト化が不可欠である。光部品を小型化・低価格化する高信頼有機導波路技術、現在の毎秒Tb級から、毎秒Pb(ペタ(1015)ビット)級への大容量伝送を目指した、フォトニック結晶を用いるフォトニック導波デバイスの開発などが必要である。
    また、モバイル、構内LANにおいて求められている無線の広帯域化に対応して、現在の毎秒30Mb(メガ(106)ビット)から、毎秒10Gb級への情報伝送の実現を目指した、化合物半導体による超ブロードバンド電子デバイスの基盤技術開発にも取り組む必要がある。

(2) チャレンジ型プロジェクト

チャレンジ型のプロジェクトとして推進すべき分野としては、ナノプロセス・マテリアル、バイオナノシステム、ナノデバイスや、共通基盤技術としてのナノ計測、ナノ加工、ナノシミュレーションがあげられる。
チャレンジ型においても、ナノオーダーの精度・分解能を有する、部品等の設計技術、加工・組立技術、計測・評価技術などを、実用化に耐え得るシステムとして統合・システム化する技術、製品化するためのプロセス技術、システムの安全性・信頼性を確保するための技術など、実用化を志向したナノシステムの確立を目指す必要がある。

  1. ナノプロセス・マテリアル
    材料技術は、エレクトロニクス、環境・エネルギー、バイオテクノロジーなど幅広い分野を支える基盤技術である。例えば、21世紀のエネルギーシフトに対応して、太陽電池、燃料電池などクリーンなエネルギーを実用化するために、新材料の開発が不可欠である。また、持続可能な社会の実現のために、超軽量高強度構造材料や長寿命対応材料の開発が望まれ、バイオテクノロジー分野においても、生体適合性材料など材料技術の応用が期待できる。エレクトロニクスの進展において、新材料の果たす役割については言うまでもない。こうした新しい特性や機能を持った材料の開発を可能とするのが、ナノ結晶、ナノ薄膜・ナノコンポジット、ナノ粒子・チューブといったナノレベルで超微細な構造を制御する材料ナノテクノロジーである。
    その際、個々の実用化に加え、金属、無機、高分子の分野横断的な共通課題の研究開発に取り組み、わが国の材料・化学産業を支える技術基盤を確立していくべきである。

  2. バイオナノシステム
    高齢社会における疾病の予防・診断・治療能力の飛躍的な向上などの観点から、バイオテクノロジーの活用が期待されているが、ナノテクノロジーは、分子レベルで生物の機能を活用するバイオテクノロジーを推進する上で、様々なツールを提供する可能性を秘めている。
    バイオテクノロジーの産業化を進める上で、鍵となる技術は、高速化、低コスト化、自動化、多成分同時分析である。例えば、細胞を活用して、超微量の化学品の安全性や医薬品の効果を高精度に評価するなど、計測、検出、分析、診断等の全作業を一貫して超小型のチップで行なうμ(マイクロ)TAS(Total Analysis System)は、国民の健康の向上に役立つとともに、マイクロリアクターなどとして、環境や化学などバイオ以外への応用も期待されている。バイオセンサー、DDS(Drug Delivery System)などの分野においても、ナノテクノロジーが活用しうる。
    さらには、たんぱく質の立体構造情報に基づき、任意の官能基をビルドアップして人工的に酵素や抗体を作ることができれば、難分解性物質の処理や低エネルギーな化学工業プロセスへの応用などにも役立つと期待されており、たんぱく質一分子の動態を観測して、時空間的なネットワークシステムを解析する技術やナノメートルサイズで任意の官能基を配置する技術の開発が求められている。

  3. ナノデバイス
    電子デバイスは、今後5〜10年は、微細化技術を軸に進展するが、その先は、新しい概念のデバイスが求められている。現在でも、例えば、電子一つで電流の制御を行なう極低消費電力の単電子制御素子、カーボンナノチューブを活用したトランジスタ、量子力学の世界で二つの状態を任意の割合で重ねあわせられることを利用した量子情報素子などの、次世代の電子デバイスの実現に向けた基礎的な研究が行なわれている。さらには、光子制御デバイス、スピンエレクトロニクス、超伝導デバイス、有機フレキシブルデバイスなどの将来有望なデバイスも存在している。これらの研究をさらに強化し、これまでの延長線上にない高速・高機能・低消費電力デバイスの実現を図るべきである。

  4. ナノ計測
    ナノレベルで材料の構造を制御したり、微細加工を行なうためには、一桁以上の精密で信頼性の高い計測技術が不可欠である。また、エレクトロニクス、材料技術がナノレベルに突入するなか、製品の製造過程における欠陥のオンマシン・インプロセス評価のためにも、ナノレベルでの計測及び計測の基準となる標準が不可欠となっている。
    高感度、高精度、高速の計測技術の確立に向けて、半導体の生産ラインや化学・生化学分析、環境モニタリングなどへの活用を目指した電子顕微鏡の高性能化、走査プローブ顕微鏡の多機能・集積化、近接場光計測、ナノメータX線計測などの研究開発およびこれらに必要な計量標準が求められる。

  5. ナノ加工
    ナノレベルでの加工としては、リソグラフィに代表されるようなトップダウンの方法と、原子、分子レベルでの物質制御を図るボトムアップの方法が存在する。
    トップダウンの微細加工技術では、極限リソグラフィ、超平面加工技術、3次元構造加工技術、精密光造形技術、ナノオーダーの組立技術などに対して、総合的かつシステム的なアプローチで取り組む必要がある。
    一方、ボトムアップ技術としては、STMの利用等により、原子、分子を一つ一つ積み上げて構造体を作る技術もあるが、量産性などを考慮すると、ある種の条件下でナノスケールの構造が自発的に形成される自己組織化を工業的に活用することがあげられる。カーボンナノチューブや導電性高分子、細胞やたんぱく質の形成もこの範疇にある。形成機構を解明し、目的とするナノ構造を自己組織化によって形成することができれば、資源的にもエネルギー的にも、無駄のない製造技術を生み出すことができ、10〜20年後には生産システムを一変させる可能性を秘めている。
    さらには、こうしたボトムアップ技術とトップダウン技術を融合させ、ナノシステムに仕上げていくべきである。

  6. ナノシミュレーション
    ナノレベルの計測や実験が難しくなっていくことから、研究開発の効率化の観点から、実験の前にコンピュータでシミュレーションを行ない、有用な結果を得たものについて、研究や開発の対象を絞り込んでいく、ナノシミュレーションが求められている。
    ナノシミュレーションは、第一原理計算とよばれる原子・分子を対象にしたシミュレーションと、巨視的領域を対象とした古典的シミュレーションを組み合わせた複合的シミュレーションが必要である。適用分野として、例えば、半導体の開発のためのデバイス設計CAD、製造装置シミュレーション、表面詳細解析、材料設計などを取り上げ、実用化を目指したナノシミュレータを開発することでナノシミュレーション技術の確立を目指すべきである。

(3) 基礎研究

物性探索、機能解明、物性計測などの革新的なシーズを生み出す萌芽的な「基礎研究」分野として、例えば、人工格子、量子ドット、単一原子・分子、ゲノム・たんぱく質などの構造と機能の解析、量子コンピュータ、原子・分子コンピュータ、バイオコンピュータなどの知能コンピュータシステム、資源循環、エネルギー・ミニマムシステム、自己組織化などがあげられる。また、電子状態や磁気状態、組織・構造・組成の精密測定、時間分解能計測、極限静穏環境、新プローブの開発などの物性計測、理論計算解析も重要である。
基礎研究は、研究者の独創性を重視すべきであるが、研究活動をクラスター化し、関係の研究者が相互に連携し、切磋琢磨する環境をつくることが望ましい。また、基礎研究の成果は、データ・ベースとして管理され、実用化を目指したプロジェクトへ引き継がれていくようなシステムが必要である。

3.研究体制・システムの整備・充実

(1) 総合科学技術会議におけるナノテクノロジー戦略の決定と一元的推進

世界に先駆けて、ナノテクノロジーの研究開発成果を国民に還元していくためには、大学、公的研究機関、産業界の保有する資源を最大限かつ効率的に活用していくことが不可欠である。そのためには、ナノテクノロジーの研究開発の状況や人的資源を把握するとともに、その資源を活用して、国としての全体戦略のもとに、重点分野を選定し、一元的な研究開発を推進する必要がある。
総合科学技術会議において、ナノテクノロジーに現在、どの程度の予算が投入されているかを明らかにするとともに、目指すべき予算の総額のガイドラインの設定(例えば、科学技術関係経費の5%)をはじめ、重点投資分野やその研究体制の明示などナノテクノロジーの推進戦略を策定することが期待される。また、その戦略に従って、産官学の連携のもとに研究開発を行ない、その結果を総合科学技術会議において有識者が評価し、それに基づいて、推進戦略を軌道修正していく必要がある。これら一連のサイクルによって、国として一元的にナノテクノロジーを推進すべきである。

(2) ネットワーク型COE運営

ナノテクノロジーの学際性や基礎から実用までの深いつながりに鑑み、一つの組織、一つの研究機関をナノテクノロジーの拠点として形成することは適切ではないと思われる。むしろ、分野やテーマに応じて、実力のある大学、公的研究機関、企業が共同して、情報の共有と事業化の推進を行うネットワーク型のCOEを形成することが重要である。
特に、フラグシップ型プロジェクトにおいては、先行技術の早期実用化、産業化を目指したプロジェクトの推進が必要であり、プログラム・リーダーに権限と責任を集中させることのできるような体制が大切であると思われる。
大学や企業におけるデバイスのプロト試作を容易にするためのインフラ整備についても検討を行なう必要がある。

(3) 人材の育成と知的基盤の整備

ナノテクノロジーの研究開発において、大学の果たす役割の重要性については繰り返し触れてきたが、大学がこうした役割を果たすためには、従来の狭い専門分野にとらわれず、学際的、システム的な発想ができる人材を育成する必要があり、そのための教育システムが強化されるべきである。
あわせて、産官学で人材の移動が自由に行なえるような環境整備も必要である。さらには、それぞれのプロジェクトから得られた様々な知識や技術の体系化・構造化、及び共有化を図る知識基盤や、科学データのデータベース、それを得るための計測・分析・評価方法、及びその基準となる計量標準などの知的基盤の整備も重要である。

(4) ナノテクノロジーの社会への影響の評価と国民への開示

テクノロジーは国民の幸福のために存在するべきものである。ナノテクノロジーの発展によりもたらされる、経済成長、雇用増大、省エネルギー化などの社会、経済へのインパクト、国民生活への影響等について不断に分析・評価し、国民に開示していくことも重要であろう。

4.おわりに

ナノテクノロジーは、10年後、20年後の社会や経済の発展のために不可欠の技術であり、無限の可能性を持つ技術である。ナノテクノロジーの国家戦略のもとで、重点投資が行われ、その結果、人材が育ち、異分野の人材ネットワークが形成され、研究成果の速やかな産業への技術移転が行なわれ、新産業が創生される。こうしたナノテクノロジーの一連の産業化サイクルを本格的にスタートさせることが、我々に課せられた焦眉の課題である。

以 上

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