重点研究開発課題について

実用化のための研究開発の推進

1. バイオ解析、バイオインフォマティクス

   • DNAシークエンサー、DNAチップ、バイオインフォマティックスは、欧米が圧倒的に優位。
   • わが国では、マイクロマシンやナノテクノロジーの分野で、幅広い取り組みがなされている。また、超高感度ＮＭＲ計測システムや一分子計測装置の開発といった世界に先駆けた取り組みも存在している。
   • これらのわが国の特徴を活かして、マイクロ集積素子、高速DNAシークエンサー、NMR等を用いたDNA、SNPsやたんぱく質の解析や、プロテオインフォマティクスやトキシコゲノミクスの研究開発に取り組み、バイオインフォマティックスを含むバイオ研究支援産業の競争力の獲得、バイオ産業の振興につなげる。

2. 燃料電池

   • 携帯機器用、定置用、車両用とも、民間の研究開発レベルは世界トップクラス。
   • 官は水素インフラに関する技術の確立や共通要素技術の基礎研究を主導し、民は実用化・商品化の研究を進めることにより、燃料電池システムの研究開発を加速するなど、自動車産業の競争力の維持、環境・エネルギー問題の解決を目指す。

3. 新機能ナノシステム（超微細加工 -MEMS- 技術をベースにした解析・製造装置）

   • MEMS(超微細加工)技術は日本に強み。
   • マイクロ技術を向上させるとともに、マイクロからナノオーダーに高め、競争力の強化を目指す。
   • デバイス配線用製造装置、ナノ光学素子用計測加工装置、バイオナノデバイスなど、新機能ナノシステムの試作を官民で進め、次代のものづくりの基盤やバイオ分野での競争力を強化する。

4. 準天頂衛星システム（通信・測位・放送サービス）

   • 常に天頂付近に位置する準天頂衛星をもとにした、わが国独自の通信・放送・測位システムを官民共同・各省連携で開発し、大規模災害対策通信インフラの整備、ITS・GISなどの基盤となる高精度測位の提供、高仰角を活かした移動体向け通信、放送、測位分野での新たな市場創造を目指す。
   • 既に取り組みが進められている固定系通信の超高速インターネット衛星の開発とあわせ、移動系通信の準天頂衛星システムの開発を行なうことで、ユビキタスな高度情報ネットワークの構築を図る。
   • 宇宙関連産業の国際競争力の強化とGPS機能の補完・高精度化を図る。

5. モバイルネットワーク（モバイル基盤ソフトウェア）

   • モバイル機器/ユビキタス機器を活用し、いつでも、どこでも、誰でもが、先進ITサービスを利用できる環境構築をめざす。
   • 複数の機器の連携技術（ユビキタス・アプライアンス）、ユーザ・インタフェイス（多言語翻訳）、セキュリティ確保等を実現するモバイル基盤ソフトを、官民協力して開発し、それをもとに民間が製品・システム開発を行う。
   • 日本の強みであるモバイル分野でのIT産業、IT利用産業の競争力を強化する。また、使い易く安心できるe-Japan、EC等の応用分野を早期に実現する。

6. フォトニックネットワーク

   • フォトニックネットワークは、波長多重伝送技術と波長スイッチング技術によって波長レベルの広帯域情報を伝達するネットワークであり、伝送からネットワークへの光通信領域におけるパラダイムシフトである。
   • すでに1000波を超える超多波長伝送技術や波長スイッチング技術によるフォトニッククロスコネクトシステムが現実のものになりつつある。
   • 実験室レベルで確認したシステム技術を現場環境に持ち込んで実験的検証を推進することにより、実用化へ向けた課題を明確にするとともに、先進的ネットワークを世界に先駆けて実用化する。

7. 大容量光記録

   • 光技術は、日本の得意分野。
   • DVDの数10倍の容量を持つ新方式の媒体・装置の開発をさらに加速。
   • 新方式のディスクの試作完了。ナノレベルの読み取り装置を官民協力して試作し、当面DVDの5倍程度の記録密度で早期の市場化を目指す。

8. 次世代半導体アプリケーションチップ

   • 戦略的に重要なオリジナリティのあるアプリケーションチップを選定し、開発を支援。
   • 「インキュベーションする場」の創造により、デファクトを狙える強力な次世代アプリケーションチップの開発を目指す。

9. 省エネ大型平面ディスプレイ

   • 省エネ・大型平面ディスプレイを開発し、わが国情報家電産業の国際競争力を維持・強化させる。
   • 特に、PDPについて、発光効率を５倍向上させ、消費電力が現在の1/5の省エネPDPを完成する。

実用化を視野に入れた産学官のさらなる連携

1. 高度先端医療（手術支援ロボットシステムなど）

   • 医療技術の画期的革新が進展中（超早期診断、治療・手術革新、再生医療）。
   • 医学・医療と理工学、企業の技術との融合を、日本の強みを活かしてさらに進めることで、巻き返しを図る。

2. 次世代ガスタービン

   • 分散型電源向け中小型ガスタービンの熱効率を約５％ポイント向上させるなど、世界トップクラスの熱効率を有するガスタービンを開発し、CO2の削減を目指す。
   • 公的研究機関における金属系新耐熱材料の研究をもとに、国が高温に耐えるタービン翼の材料開発、部品化に取り組み、民間が試作機の開発、実証試験を進める。

3. 極端紫外線(EUV)露光装置

   • 半導体製造の中核であるステッパー(回路露光装置)については日本に強み。
   • 産学官一体となって、極端紫外線(EUV)露光装置を開発し、昨年度より開始された半導体のプロセス技術に関するMIRAIプロジェクトとともに、最小線幅50nm以下の次々世代の半導体開発に取り組み、わが国の半導体産業の競争力強化を図る。

4. ポストシリコン

   • ポストシリコンは将来のデバイス産業を支える重要技術。
   • 現状では個別的取り組みに留まる。
   • ポストシリコン技術と従来技術を組み合わせ、実用化を視野に入れた研究を推進。

5. 量子コンピュータ

   • 指数関数的に増加する情報流通ネットワークでは、超高速の情報処理、超高速通信（量子コンピュータにより符号化・復号化する量子通信では高速性の限界は見出されていない）、安全性（量子暗号）実現のための量子コンピュータが重要な要素技術。
   • 技術的ブレイクスルーは、結合量子ビットでの量子もつれ状態の生成と制御NOTゲートの実現。
   • 量子コンピュータの開発力という観点からは、米国、EUにやや差をつけられている現状を上記ブレイクスルーを早期に達成し、この数年内に巻き返しを図る必要がある。

6. ナノ・バイオシミュレーションとハイエンドコンピューティング（大容量・高速処理コンピューティング）

   • 実験の大幅な効率化に不可欠なシミュレーション技術において、欧米への遅れを取り戻し、日本オリジナルのシミュレーション技術の開発を目指す。
   • 基礎研究レベルで欧米と互角にあるソフトを核に、実用化、人材育成を行なう。
   • 戦略的ソフトウェア開発、ハイエンドコンピューティングの環境整備を産学連携で進め、得意分野の形成を図る。

7. 高信頼システム基盤技術

   • ITリソースの有効活用、社会システムの高信頼性・安全性向上により、高度情報社会を実現する。
   • 複数のサーバをネットワークで結び、ビジネスユーザが必要な時に必要なだけコンピュータを使用できる高信頼性システム（ビジネスグリッド）を実現する。
   • オープンソースを視野に入れつつ、高い信頼性やセキュリティを実現できるオペレーティングシステム（OS）、ミドルウェア、開発ツール等のソフトウェア基盤技術を開発し、わが国産業の国際競争力を強化する。

8. 情報ストレージ・システム

   • ネットワークシステムにおける情報量の増大に伴い、より高速な情報の読み取り、書き取り能力が必要。そのため、より高性能な情報ストレージシステムが必要。
   • ハードウエア(ドライブ、ヘッド、媒体)を官民協調でさらに強化するとともに、信頼性、耐障害性の高い情報ストレージシステムを開発することで、わが国が次代の世界市場をリード。

9. 次世代モバイルインターネット端末

   • 低消費電力の高速無線通信用LSI、60GHz帯超高周波送受信用ICを開発し、1Gbpsを実現する超高速無線技術を確立する。
   • 高密度多層基板実装技術を確立し、5mm角で厚さ0.5mmの超小型無線端末を開発する。この技術を用いてイヤホン型や名刺型の超小型インターネット端末の実現を目指す。

公的サービス分野での新技術の開発や積極的導入

1. 社会的インフラ整備のための新材料、利用技術開発

   • 材料開発についてはわが国が高い優位性を保っている。
   • 社会インフラの整備に用いる材料に関して、超微細粒鋼に関する公的研究機関の研究をベースに、省庁間の連携のもとに、新構造材料の製造技術、接合・設計などの利用技術、さらには検査・補修技術の開発を進めることで、長寿命化、メンテナンスコストの低減を図る。

2. 建設廃棄物の有効資源化技術

   • 木質系建設廃材を主な原料として、化学合成用原料ガスや発電用として使用するクリーンな高効率・低コストガス化技術を開発する。
   • 民間企業の有するガス化技術をベースとして、産学官連携して、パイロットプラントの設計・試作およびガス化実験を行なう。

3. 環境負荷測定システム

   • 大気汚染、水質汚濁、土壌汚染などの環境負荷を、通信機能付センサー端末を用いて、その場で測定し、ネットワークを介してデータベースに蓄積できる環境情報基盤（システム）を確立して、環境に低負荷な社会の実現に活用する。
   • 民間のセンサー技術、通信・ネットワーク技術を活用し、環境負荷測定のための実証実験を実施し、環境負荷計測システムの構築を図る。

4. 医療・健康情報ネットワーク基盤

   • IT技術を活用して、バイオ・医学研究・医療技術開発・医薬品研究のシームレスな連携を図ることで、先進医薬品の開発の効率化と医療技術の発展などによる国民医療の向上を図る。
   • 医療、健康、遺伝子情報を扱う高度セキュリティ技術や、健康情報の双方向コミニュケーション技術の開発などに取り組み、地域特性を尊重した医療・健康ネットワークの構築を目指す。

（参考）産業技術委員会政策部会アンケートで指摘された重点研究開発課題一覧

ライフサイエンス分野

• ゲノム創薬・テーラーメイド医療
• 再生医療
• 高度先端医療（手術支援ロボットシステム、再生医療支援）
• バイオ解析
• バイオインフォマティックス
• ホームヘルスケア（遠隔医療、在宅医療、医療情報サービス）
• 昆虫遺伝子
• ライブラリー、疫学的統計データの集積
• 農林水産分野のIT化

情報通信分野

• ソフトウェアの生産性向上
• 高信頼性ソフトウェア・高信頼システム基盤技術（ビジネスグリッド）
• ヒューマン・インターフェイス
• セキュリティ技術（バイオメトリクス認証を含む）
• コンテンツ流通・管理技術
• 多言語通訳
• 情報家電
• 高齢者向け情報端末
• モバイルネットワーク（モバイル基盤ソフトウェア、次世代モバイル・インターネット端末）
• フォトニック・ネットワーク（光デバイスを含む）
• 高速三次元画像取得技術
• 次世代半導体アプリケーションチップ
• ディスプレイ（省エネプラズマディスプレイ）
• ストレージ・システム（磁気、光記録）
• ナノ・バイオ・シミュレーションとハイエンドコンピューテイング
• 三次元地形情報取得技術
• 準天頂衛星システム（通信・測位・放送サービス）
• ITS／インターネットITS
• 災害情報システム
• 公的サービスのIT化（遠隔教育、電子政府）
• コンピュータサイエンスの高度化
• 生産システムの高度化

環境分野

• 燃料電池（携帯機器用、定置用、車輌用）
• SOFCハイブリッド発電
• 水素供給インフラ
• 次世代ガスタービン
• マイクロ波送電
• 電力用二次電池
• 太陽電池
• 廃棄物処理・発電
• 建設廃棄物活用・リサイクル
• 廃熱回収
• 軽量自動車
• ヒートポンプ
• IT機器の環境対応
• 乳酸合成触媒
• エネルギー利用シミュレーション、IT普及による温暖化防止効果の評価
• 環境分野のIT化
• 環境負荷測定システム

ナノテクノロジー・材料分野

• 新機能ナノシステム（超微細加工−MEMS−技術をベースにした解析・製造装置）
• バイオナノチップ
• 先端基盤計測（NMR）
• ナノシステムを支える加工機械、部品
• テラビット級強誘電体不揮発メモリー
• ポストシリコン（自己組織化、単電子回路、分子認識-LSI、ポリマーIC）
• 半導体製造技術・製造装置（EUV）
• 量子通信・量子コンピュータ
• 社会インフラ整備のための新材料、利用技術開発
• ナノテクノロジー基盤技術