[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]

「電気通信事業分野の競争状況の評価に関する基本方針(案)」
および「平成15年度実施細目(案)」に対する意見

2003年11月4日
(社)日本経済団体連合会
情報通信委員会
通信・放送政策部会

去る7月に公表された総務省の「IP化等に対応した電気通信分野の競争評価手法に関する研究会」報告書の提言等を受け、今般、同省より、電気通信事業分野における競争状況の評価に関する基本方針および今年度の実施細目の案が公表された*1
そこで、総務省の上記研究会報告案に関して提出した意見*2を踏まえ、基本方針等の案について、下記の通りコメントする。
(括弧内のページ番号は、特に断らない限り、基本方針案の該当ページ)

  1. 通信市場が独占から競争への過渡期にある中で、通信行政の役割は、競争の促進にはつながらず、むしろそれを妨げている規制を撤廃する一方、競争促進のために必要な最小限のルールを設け、市場支配力を有する事業者とそれ以外の事業者との間に公正な競争が有効に機能する環境を整備することにある。この点に鑑みれば、競争評価は、「市場支配力を有する事業者が存在するがために、競争が有効に機能していないと考えられる市場」を対象として実施されるべきである。
    この点、基本方針案は、競争評価の対象範囲を「競争の進展状況について政策的な関心が高い領域全体」(6ページ)としているが、上記のような方針を明確にすることによって、評価が裁量的あるいは非効率なものに陥るのを避け、競争の進展状況を適切に反映した政策を展開することが可能となる。

  2. 市場支配力は通信サービスの提供に不可欠な機能を有しているか否かに依然として大きく左右されると考えられることから、「電気通信事業者間の取引」を最終利用者向けサービスの市場における「競争評価の重要な要素」(22〜23ページ)として位置付けるだけでなく、最終利用者向けサービスと同等に競争評価の対象とすべきである。
    なお、今年度の評価の対象とされている「インターネット接続」(最終利用者向けサービスの取引としては、「インターネット接続サービス」と「インターネット接続回線サービス」の2つに分類されている)のうち、「インターネット接続サービス」については、実施細目案が指摘するとおり、それを提供している電気通信事業者の数が7,500を超えており(実施細目案12ページ)、既に競争が相当程度機能していると思われる。一方、最終利用者がISPの設置するアクセスポイントに接続してインターネット接続サービスの提供を受けるための「インターネット接続回線サービス(ISDN、CATVインターネット、xDSL、FTTH、FWAなど)」は、電気通信事業者間の取引が最終利用者向けサービスの市場の競争状況を大きく左右する要因としてあることから(実施細目案7ページ)、「インターネット接続回線サービス」に焦点を当てて競争評価を実施することが適当である。

  3. 競争評価の目的は、現に適用されている競争ルールが市場における競争の実態から乖離している場合に、その状態を是正することにあると考えられる。この点、今回の基本方針案は、「競争状況を正確に把握すること」、「競争状況をめぐる認識を共有化すること」に中心がおかれており(2〜3ページ)、評価結果の政策への反映については、「分析の結果から、競争が有効に機能している、あるいは逆に機能してないと総合的に評価できる場合には、その考え方を示し、そうした競争状況の下での規律のあり方にも言及する」(43ページ)としているに止まる。
    したがって、競争評価の政策への反映については、個々の競争評価の結果を注視していくことになるが、前述の総務省研究会では、競争評価等を行なう主体をめぐって議論があり、報告書でも公正取引委員会等の参画に言及した経緯に鑑みれば、競争評価やその結果に基づく政策措置の必要性の判断における公正性、透明性、中立性の確保には十分配慮する必要がある。この点、意見公募(4〜5ページ)の実施は当然として、評価とそれに基づく競争ルールの策定・執行を担う機関が、事業者を含め利害関係者から独立していることが求められる。また、中長期的な視点に立って、自由かつ公正な競争の確保という政策目標を一貫して追求するため、短期的な利害の調整に陥りがちな政治的介入を受けないようにすることが重要であると考える。


*1 http://www.soumu.go.jp/s-news/2003/031007_2.html を参照。
*2 http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2003/059.html を参照。
以上

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