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新産業・新事業委員会報告書

〜 次代のコア事業育成のために 〜

【 序文 】


はじめに

日本経済は、米国、中国などからの旺盛な外需要因に支えられ回復基調にあり、これを持続的かつ自律的な発展に繋げ、豊かな経済・社会を実現していかねばならない。そのためには、日本経済のダイナミズムを復活させることが不可欠であり、新たな事業の創出、育成が鍵である。こうした新事業については、社会の変化に対応し、将来を見通して、企業自らが果敢に挑戦することが求められている。新事業の展開、起業の活発化は、新たな雇用の受け皿にもなり、深刻な失業問題の解決の一助にもなるであろう。

当委員会では、1994年に設置されて以来、こうした視点から起業の促進に向けて政府に規制緩和、税制などの制度上の環境整備を働き掛けるとともに、企業内での起業家精神の発揮や、ベンチャー的取組みを加速させるために、企業風土の革新や、企業が有する内部資源を効果的に活用するような「社内ベンチャー制度」の活用などを提案してきた。

しかし、多くの新事業は、既存事業とのシナジー効果が薄く、既存事業の技術・ノウハウ・販路などを必ずしも十分に生かし切れていない。そのため、新事業は、いわゆる「死の谷(研究開発の多くが事業化に繋がらない現象)」や「ダーウィンの海(新事業が直面する市場での障害)」といった試練を乗り切って新たなコアとなるような新事業に成長している事例は少ないように見受けられる。

そこで、当委員会では、次代のコアとなるような新事業の推進に向けて、会員企業に対するアンケート調査を基礎に、各企業の取組みや現状を把握し、新事業推進のための課題や改善策について検討を行ない、本報告書を取り纏めた。

本報告書では、既存事業の強みを生かし、次代のコア事業となるような新事業育成のために必要とされる4つの視点、即ち (1)経営者のリーダーシップ、(2)人材育成、(3)推進組織、(4)社外資源の活用、の観点から企業における取組みについて提案を行うとともに、新事業推進に関連した政府への要望事項を記載した。すべての企業に適合するリーダーシップの発揮の仕方や、推進組織などのベストモデルはない。本報告書は、アンケート調査などをもとに、新事業の創出と育成に必要とされる平均的要素を抽出し、取り纏めたものである。

この報告書が各社の新事業推進への意識高揚に繋がり、ベストモデル検討への気運が高まることを期待したい。

【 本文 】


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