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日加経済連携強化に向けて

―共同研究終了後の方向性に関する考え方―

2006年4月6日
(社)日本経済団体連合会
カナダ委員会

I 総論

1.カナダ市場及び対加貿易・投資の現状

わが国とカナダの経済関係は、カナダへの自動車・機械・機器等の輸出と、カナダからの資源・原材料(木材・パルプ、菜種等)・食糧(魚介類、肉類、小麦等)の輸入を中心とした、相互補完関係にある。

しかしながら、経済関係の規模に関しては、わが国の対加輸出・輸入とも低水準にある。2004年の日本の輸出総額に占めるカナダへの輸出額の割合は1.4%、日本の輸入総額に占めるカナダからの輸入の割合は1.9%である。また、投資に関しても、2004年のカナダへの直接投資残高は日本の対外直接投資残高の1%、対内直接投資残高に占めるカナダからの直接投資残高は5%に留まっている。輸出入額ともに、約2割を占める米国や、1割を超える規模に達する中国、ASEAN諸国、EUとの経済関係と比較すると、わが国にとっての貿易・投資市場としての規模は小さい。また、日加経済連携強化に向けた施策に関するアンケート(2006年1月25日〜2月8日実施)では、新興市場国のような高成長は見込まれていない。

他方、カナダは先進国として、安定した政治・経済状態を維持しており、質の高い労働力や技術力を有している。天然資源埋蔵量が世界第3位(1997年世界銀行調査)と、豊富な資源にも恵まれている。2004年のカナダの実質国内総生産(GDP)は世界第8位(1兆2,933億カナダドル)であると同時に、巨大マーケットの米国市場と近接し、NAFTA構成国として、米国と密接な経済関係を構築している。

2.カナダとの経済関係のあり方

こうしたカナダ経済の優位性に鑑みると、わが国経済界にとって、日加間の安定的・互恵的な経済関係を維持していくとともに、貿易・投資の拡大に向けた取組を継続することには、十分な意義がある。

カナダにとって日本は、輸出入額ともに米国に次ぐ第2位を維持し、重要な位置を占めてきた。しかし、近年、中国・メキシコとの輸出入が増加しており、カナダへの輸入額では2003年に中国が日本を上回った。カナダからの輸出額では、2004年も日本は中国を上回って第2位を維持しているが、中国への輸出が急速に増加している。

こうした中で、安定的な日加関係を維持するだけでなく、経済連携を強化するためには、日加経済連携の強化を目指す上での課題について、早急に解決を図る必要がある。

3.日加経済連携強化に向けた課題

現在日加間では、2005年11月に署名された日加経済枠組みに基づき、日加間の貿易・投資・協力の促進がもたらす費用と便益に関する政府間共同研究と、15の協力の優先分野 #1 に関する取組が進められている。

これまでに、2005年10月の日加社会保障協定の大筋合意、日本貿易振興機構(JETRO)とカナダ国際貿易省との間の相互投資促進協力に関わる了解覚書の締結などをはじめ、反競争的行為に係る協力、税関協力などで進展がみられる。

これらは、日加経済連携強化に向けた重要な進展である。しかしながら、引き続き日加経済関係を維持・強化していくためには、物品の貿易の促進、投資・サービス貿易の自由化・促進、相手国企業のビジネス環境改善のための国内規制改革、その他日加間で分野ごとに協力して取り組むべき案件の推進のための取組を、一層推進していくことが不可欠である。

4.課題の解決に向けて

(1)優先的な課題―ビジネス環境の整備(投資・サービス貿易の自由化、規制改革の推進、租税条約改正、協力案件の推進)

両国間の経済連携を速やかに強化するためは、経済界に広くメリットがある、あるいは、緊急性が高いなど、経済界にとって重要な課題、また解決が容易に可能な課題について、先行して解決を図っていくことが望ましい。

前述の日加経済連携強化アンケートにおいては、ビジネス環境の整備に資する規制改革及び協力の推進に関して、幅広い業種から要望が寄せられた。アンケートでは、投資・サービスの自由化、税制を含むカナダの国内規制改革要望、及び協力の推進に関する要望について、任意の記述式により回答を求めたところ、回答企業44社のうち、規制改革要望に回答した企業は21社(全回答企業数に占める割合46.7%)、協力の推進に関する関心事項について回答した企業は25社(同55.6%)となった。また、要望が集中した、カナダにおける会社法の取締役国籍要件の撤廃や、日加間の二重課税回避は、わが国経済界全体にとってメリットがあり、カナダへの投資促進に直結する課題であり、早急な解決が必要である。サービス貿易の自由化に関しては、アンケートにおいて多数の回答があった保険の外資規制等の金融・保険分野だけでなく、カナダには、鉄道、輸送、電気通信、文化産業に関する外資規制が存在する。

このような観点から、投資・サービス貿易の自由化・促進、両国の規制改革の推進、租税条約の改正、協力案件の推進を通じた、ビジネス環境の整備を先行して進めるべきである。

(2)その他の課題―物品の貿易の促進

物品の貿易の促進に関しては、将来的に、FTAの締結の可能性を含め、検討を進めるべきである。

アンケートにおいて、現時点で支障となっている関税の品目及び関税率について回答を求めたところ、カナダの関税では自動車(関税率6.1%)・同部品等、日本の関税ではSPF製材(関税率4.8%)といった一部の品目に関して、関連業界から回答が集中した。なお、自動車部品に関しては、支障が生じているか否かに関する見方が分かれた品目もあった。

一方、これらの品目以外では、概して関税水準は低く、また、関税による支障はないとの回答が寄せられた。

(3)関税の撤廃・削減にあたって念頭におくべき事項

関税の撤廃・削減を通じた物品の貿易の促進を検討するにあたり念頭に置くべき事項としては、以下が挙げられる。

第1に、農林水産品等、我が国におけるセンシティブ品目の存在である。日本経団連は、わが国にとって重要な国・地域との間では、WTOを根幹としながら、より高度な自由化や幅広いルール作りを目指し、地域的な自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)にも積極的に取り組み、自由な経済活動を行いうる基盤作りを重層的に進めることを主張している #2

FTA/EPAの締結にあたっては、GATT24条に整合的な協定となるよう、「実質的に全ての品目」について、関税の撤廃により自由化する必要がある。センシティブな品目の取扱いについては、基本的に当該国内における産業の構造改革を促進し、国際競争力を強化することにより解決すべきである。わが国では、新たな食料・農業・農村基本計画(2005年3月閣議決定)に基づき、農業の構造改革が進められている。こうした構造改革の取組の進捗を踏まえつつ、FTAの締結の可能性について、検討を進めるべきである。ただし、国民の安全や地域経済等に大きな影響を及ぼす可能性がある品目については、わが国及び相手国の相互理解を前提に、幅広い関係者の利益を目指し、その取扱いを協議すべきである。

第2に、関税の撤廃・削減の必要性及び程度については、WTO新ラウンド交渉の進捗を考慮する必要がある。新ラウンド交渉が妥結した場合、原則として全品目の関税について、一定の削減方式に基づく削減が実現する。日本経団連では、「WTO新ラウンド交渉・香港閣僚会議の成功を望む―加盟国は政治的決断を―」等の提言において、新ラウンド交渉を通じ、質の高い自由化の実現と、予定通り2006年中に交渉を終結させるよう主張している。

第3に、カナダと他国の間で交渉が進められているFTA/EPAの進捗状況を念頭におく必要がある。カナダと他国とのFTA/EPAの実現により、当該国との関税が撤廃されれば、日本からのカナダへの輸出品が競争上不利となる。特に、韓国とのEPA交渉は、2006年2月時点で既に5回目の交渉を終えており、進捗状況を注視していく必要がある。

(4)共同研究終了後の方向性―貿易投資の促進に向けた環境整備に関する協定

現在、日加政府間の共同研究は、2006年秋をめどに最終報告の取りまとめが予定されている。上記の観点を踏まえ、日加政府間の共同研究終了後は、投資協定(サービス分野の自由化を含む)締結、規制改革対話の創設、協力案件の推進を先行させるとともに、官民でFTA/EPAの締結に関する検討を継続すべきである。例えば、貿易投資の促進に向けた環境整備に関する協定の締結交渉を開始することが考えられる。同協定では、投資協定(サービス分野の自由化を含む)、規制改革・税制改正に関する検討の促進、基準の相互認証、協力案件の推進等、個別の案件の促進を盛り込むとともに、FTAのメリット・デメリットを含む貿易・投資の自由化に関する日加間の検討会合の定期的開催に関する合意を含めることとする。また、両国間で生じた協議案件の解決手続も含めることが望ましい。

なお、カナダと韓国等他国との自由貿易協定の締結状況等、日加双方をとりまく状況の変化によっては、わが国からカナダへの輸出品が競争上不利となり、価格競争力が著しくする恐れがある。FTAのメリット・デメリットを含む貿易・投資の自由化に関する検討を通じ、カナダ市場においてわが国の競争条件の不利な状態を是正することが急務であり、日加双方に全体としてメリットが大きいと判断された場合には、日加間のFTA/EPAの締結に向けた交渉の開始に向けて、協議を開始すべきである。

II 各論

1.相互の関税障壁の撤廃・引き下げ

アンケートにおいては、日加両国の関税に関し、現時点でビジネス上の支障となっている品目及び関税率について、任意の記述式により回答を求めた。回答があった関税の中から、今後解決を図る必要がある主な例を挙げると、以下の通りである。(その他、支障がある関税として指摘するに足りる回答に関しては、参考資料を参照。)

(1)カナダの関税
  1. 乗用車・貨物自動車
    乗用車・貨物自動車のカナダにおける関税率は6.1%である。乗用車の2004年の対加輸出総額に占める割合は33.9%、貨物自動車の輸出総額に占める割合は0.4%(ディーゼルエンジン、5−20トン)と、完成車だけで対加輸出の3分の1を占めている。自動車業界が負担する関税によるコスト(2005年関税支払総額、日本からの乗用車輸出総額×6.1%)は、約208億円である。
    アンケートの回答によると、関税の水準に関しては、「先進国としては高水準」、「不当に高いとは言えないがやや高水準」と捉えられている。カナダでの販売に際しては、「NAFTA諸国の競合製品との競争力を確保するために、価格設定において配慮が必要となる場合もある」「カナダでは可処分所得が少なく販売価格が需要に及ぼす影響が大きいので、関税による販売価格の上昇が日本製品の競争力に及ぼす影響が大きい」との回答があった。また、「カナダと韓国とのFTAが実現すれば、特に、小型車の競争力が著しく低下する」との指摘もあった。

  2. 車輪(鉄道車輪用)
    鉄道用の車輪のカナダにおける関税率は9.5%である。
    カナダにおいては、鉄道用車輪の需要不足が生じており、輸入によって賄うことが必要な状況にある。カナダにおいて、関税賦課後の日本製の価格をNAFTA製の価格と比較すると、日本製が20%から30%高額となっているが、仮に関税が賦課されなければ、価格差は10%から20%に縮小する。この程度の差であれば、日本製の品質の高さから、価格差を十分克服できると見られている。

  3. 映画用フィルム
    映画用フィルムのカナダにおける関税率は6.5%である。カナダへの輸出総額に占める映画用フィルム(幅16mm超35mm以下長さ30m超のもの)の割合は、0.3%を占める。アンケートによると、A社の2005年の関税支払い総額(A社の輸出実績額約25億8200万円×6.5%)は約1億6800万円である。
    映画用フィルムに関しては、米国企業の製品が競合する。NAFTA構成国である米国からの輸入は無税であり、「競争上の不利益が生じている」と捉えられている。

  4. 磁器製碍子
    磁器製碍子のカナダにおける関税率は3.0%であり、カナダへの輸出総額に占める磁器製碍子の割合は、0.2%を占める。B社の年間関税支払額は、約20万カナダドルである。
    カナダにおいて競合する碍子製品の関税は、NAFTA構成国である米国メーカー製碍子が0%、ガラス製碍子が2.5%、ポリマー(樹脂)製碍子が0%であり、磁器製碍子は、「競争上不利」と捉えられている。B社のカナダ向輸出額は約200〜300万ドルと米国向けより少ないが、B社では、「カナダの電力会社に有力な顧客が存在することから、カナダは将来的にも重要な市場」と位置づけている。

(2)日本の関税
  1. SPF製材
    SPF製材(ツーバイフォー工法で使用する主要な構造材)の日本における関税率は4.8%であり、SPF製材の輸入額は、2004年対日輸入額の5.1%を占める。
    C社が負担する2004年の関税支払額は約5億円、D社が約4000万円である。

  2. OSB(オリエンテッド・ストランド・ボード、主要構造用面材)
    OSBの日本における関税率は6.0%、C社の2004年関税支払い総額は、約7500万円である。主要構造用面材として日本国内には主としてカナダ、ヨーロッパから輸入されているが、OSBは日本国内では生産されていない。

  3. 牛肉
    牛肉の日本における関税率は38.5%である。なお、2004年は輸入停止期間中であり、関税支払いは生じていない。関税が緩和・撤廃された場合、E社では「牛肉の輸入の大幅な増加が見込まれる」と指摘している。

2.国内規制改革の推進

(1)規制改革の推進・投資・サービスの自由化に必要な枠組
  1. 二国間投資協定(サービス貿易の自由化を含む)の締結
    カナダの規制改革の推進・サービスの貿易の自由化を効率的かつ効果的に進めるために、まず、日加投資協定の締結を行うべきである。先進国間の協定にふさわしく、レベルの高い内容を盛り込むことが必要であり、連邦及び州政府に対して、投資許可段階を含め、最恵国待遇・内国民待遇の確保・パフォーマンス要求の禁止の確保、投資条件の現状維持の義務化、投資財産の保護、サービスの自由化等を盛り込む必要がある。
    会社法の国籍要件の撤廃に関しては、役員の国籍要求禁止規定に関する日韓投資協定(第8条3項) #3、日越投資協定(第4条(f)項) #4 などを参考に、投資協定において解決を目指すべきである。アンケートにおける規制改革要望への回答企業24社のうち、9社が会社法の国籍要件の撤廃を要望している。経済界の規制改革要望として最も重視する課題であり、早急な解決が必要である。
    また、サービス貿易の自由化に関しては、アンケート回答において多くの要望が示された保険の外資規制の撤廃・緩和等を、内容に含めるべきである。

  2. 継続的かつ実効性を伴う規制改革の枠組の構築
    国内規制改革を通じたビジネス環境の整備のため、日米、日EU等先進国間の規制改革対話を参考とした、日加間の枠組を構築すべきである。継続的かつ効果的に推進するため、毎年、各分野の担当官が出席のもと、分野別の分科会等の場を通じて、個別要望ごとに折衝を行う形式を採用することが不可欠である。連邦だけでなく州政府による規制に関しても取り上げ、当該州政府の担当官の出席を確保することなどにより、州政府の規制に関してもこの枠組において解決可能とすべきである。
    また、相互の要望項目への対応・その根拠・それに対する相手国からの反論等に関しては、全て公開する必要がある。日米、日EUにおける規制改革対話では、個別の項目に関して、交渉の経緯や、採用された対応策の根拠に関して、透明性が不十分である。日本における規制改革・民間開放推進会議による規制改革手続きにおいては、全要望項目について、所轄府省からの対応内容とその根拠がウェブサイト上に公開されている。また、規制改革の推進力を高めるために、有識者会議の設置などにより、対応の妥当性について外部からの評価を可能とすべきである。

  3. 税制改正に関する財務省間の定期的対話の創設に向けた検討の開始
    税制改正に関しては、より迅速かつ実務に即した協議を可能とする観点から、規制改革とは別に、両国の財務省間において、定期的な対話の枠組を創設すべきである。前述の、「貿易投資の促進に向けた環境整備に関する協定」にも盛り込むべきであり、この協定締結に向けた協議に含めるべく、早急に検討を開始すべきである。

(2)カナダのビジネス環境整備に向けた規制改革推進の方向性

アンケートにおける規制改革要望の回答結果を踏まえ、上記の規制改革・税制改正の枠組みを通じて、今後、カナダにおいては下記の観点からの課題に重点を置き、解決を図っていくべきである。

  1. 州の規制の連邦との調和、必要以上の貿易・投資制限の是正
    カナダにおいては、連邦と州政府と二重に規制が課されることにより、許認可取得に際して手続きが煩雑となる。例えば、保険サービスの提供に関しては、州ごとに認可を取得する必要がある。また、連邦政府の規制よりも州政府の規制が厳格な場合がしばしば見られる。
    連邦政府と州政府の規制を可能な限り調和させるとともに、必要以上に貿易・投資を制限することとならないよう、各種規制を見直していくべきである。

  2. 投資段階の自由化、継続的経営の円滑化
    投資段階の自由化を促進するとともに、事業を円滑に継続する上での環境を整備する観点からは、投資協定の締結に加え、個々の規制改革を進める必要がある。会社法取締役の国籍要件、保険サービスの自由化を重点的に進めるべきである。

  3. 基準・認証の共通化による行政手続きの円滑化、人の移動の円滑化
    円滑な事業活動の実施に際しては、エンジニアリング資格等の基準・認証の共通化を検討し、円滑な行政手続の実現を目指すべきである。また、ビザ発給手続きの簡素化・効率化・有効期限の延長など、人の移動の円滑化に資する施策も重要である。

  4. 投資促進と企業活動のコスト削減
    投資を促進し、企業活動のコストを削減する観点から、税制改革を進めるべきである。特に、資本税の廃止等や、失業保険料の日加両国での二重払いの解消が喫緊の課題となっている。

3.経済連携強化に向けた相互の協力

(1)協力の推進に向けて

規制改革・税制改正だけではなく、日加の経済連携を強化するためには、幅広く相互の協力関係を構築していくことが不可欠である。日加経済枠組みにおける15の協力の優先分野の取り組みを継続し、発展させていく必要がある。

特に、エネルギー・天然資源における協力は、世界的な資源の減少と人口増加、新興市場国の経済成長に伴うエネルギー需要の増加を背景に、持続可能な資源の利用の観点や、効率的な供給・安定的な確保の観点から重要である。そのほか、15分野以外に関しては、食糧の安定的な供給・確保に関する協力も検討に値する。

(2)協力分野における関心事項

アンケートにおいては、任意の記述式により、日加間で協力を進めるべき分野及び具体的内容について回答を求めた。回答に基づく、経済界の関心分野および具体策の例については、下記の通りである。(その他の回答のうち経済界として指摘するに足りる内容に関しては、参考資料を参照)

  1. エネルギー・天然資源
    カナダの豊富な資源を背景として、エネルギー・天然資源に関する協力について回答した企業は、協力に関して回答した企業25社中7社と、4分の1弱にのぼった。日本・アジアとの資源貿易拡大に資するインフラストラクチャーの整備などが挙げられており、例えば、西海岸における大型原油輸出ターミナルの建築、パイプライン敷設が挙げられた。ほか、オイルサンド開発・その下流(製油所、石油化学)への投資支援に対する期待も見られた。

  2. 観光促進
    旅行業界、航空業界からは、観光促進を目的とする広報活動の強化、ツアー商品の造成に関する協力を求める回答が見られた。例えば、次期2010年の冬季オリンピックがバンクーバーで開催されることに着目し、関連するキャンペーンを実施するなどのアイデアが寄せられた。

  3. 投資
    日加両国の産業PRの機会の増大など、相互理解の促進に資するイベントを開催することを通じて、投資の促進を期待する回答も複数寄せられた。過去の例としては、JETRO、カナダ国際貿易省共催の投資セミナー等があり、こうした取り組みを今後とも継続・拡大すべきとの要望があった。

  4. 鉄道、港湾整備
    カナダでは、鉄道の地域的な独占状態が原因で、鉄道運賃が高額となっており、資源・エネルギー確保、輸送コストの削減の観点から、是正に関する取り組みを要望する回答が寄せられた。

  5. エレクトロニクス産業振興
    カナダはエレクトロニクス産業が発達しており、人材も豊富であることから、定期的な技術交流会の実施や有望エンジニア育成、双方の人的交流・斡旋等に関する組織設立の支援などを通じて、ノウハウの吸収、カナダでの人材確保につなげたいとの要望があった。

  6. 食の安全
    カナダからのわが国の輸入には、食料品の輸入が多いことから、わが国の食の安全を確保する上で、カナダとの協力を重視する回答があった。特に、小麦の残留農薬・カビ毒への対応が必要との例が挙げられた。

おわりに

近年、カナダでは、中国との貿易額の増加や韓国とのFTA交渉など、日本以外のアジア諸国との関係が強化されつつある一方、日本でも、地理的に近接し経済関係の深い東アジア諸国等との経済連携交渉を進めている。こうした中で、カナダとの経済連携を強化するためには、以上の観点・具体策を通じ、経済界にとって重要な事項を早期に実現することが必要である。そのために、共同研究の過程においては、本年秋に予定される共同研究の終了後の枠組みについて、建設的かつ前向きな議論が行われることを望む。

以上

  1. 15項目:社会保障協定、独占禁止協力協定、食品安全協力、税関協力、貿易円滑化、運輸、投資、科学技術、情報通信技術、電子商取引、電子政府、エネルギー及び天然資源、気候変動、租税条約、観光促進
  2. 「次期WTO交渉への期待と今後のわが国通商政策の課題」(1999年5月18日)、「自由貿易協定の積極的な推進を望む」(2000年7月18日)、「戦略的な通商政策の策定と実施を求める」(2001年6月14日)、新ビジョン「活力と魅力溢れる日本をめざして」(2003年1月1日)等
  3. 役員の国籍要求禁止規定(第8条3項) は、付属書において、非整合的な既存のすべての措置がリスト化され、SS/RBをかけるものとかけないものに分けて明記している。
  4. 日越投資協定第4条では、特定措置の履行要求の禁止措置を規定しており、(f)項において、特定の国籍を有する者を取締役、理事又は役員に任命することを禁止している。非整合的な既存の措置に関しては、日韓投資協定と同様。

その他参考資料:財務省貿易統計、JETRO貿易統計データベース


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