実効的な電子行政の実現に向けた
推進体制と法制度のあり方について

2008年11月18日
(社)日本経済団体連合会

I.はじめに

欧米や韓国をはじめ先進各国は電子行政の推進を加速化させており、わが国においても実効的な電子行政の実現が喫緊の課題となっている。電子行政の推進とは、府省庁から地方自治体、独立行政法人まで含めた行政部門におけるITの利活用を契機として、「この国のかたち」を問い直し、社会の豊かさや国の競争力そのものを、将来に向けて再構築していく国民の合意形成のプロセスである。

少子高齢化やそれに伴う労働力人口の減少、社会保障負担増大や財政構造の悪化、国際競争力の低下および環境問題への対応は先進各国に共通の課題であるが、電子行政の推進はこれら諸課題に対応する上で有効な手段であると認識されている。そして、実効ある電子行政を実現するために、電子行政の先進国は推進体制や法制度の整備を着実に進め、国民視点に立って行政サービスの質を大きく改善させるのみならず、利便性、効率性、透明性の面で行政そのもののあり方を大きく変容させつつある。

日本の経済社会が直面する諸課題の深刻度を踏まえると、行政の無駄と非効率を排して国民の負担を減らすため、今こそ原点に立ち返り、官民連携により電子行政の推進を加速し、将来世代が希望を持てる「この国のかたち」を社会基盤として整備することこそが、現役世代の責務である。さらに、実効的な電子行政の実現は、企業におけるIT経営との相乗効果を生み出し、社会コストの圧縮 #1、生産性の向上、容易な起業の環境整備等を通じて、国際競争力の強化や豊かな国民生活の実現に資するものである。折しも、年金記録問題に端を発して行政への不信が高まっているが、先進的な電子行政は、公務員の個人情報へのアクセスや業務処理のプロセスをログ #2 として残すことができ、責任の所在をトレースできるようになっており、行政業務の正確性や透明性の向上を通じ、行政への信頼を回復する上でも有効な手段である。

日本経団連は、電子行政の推進を最も重要な課題と位置づけ、二次にわたり「世界最先端の電子行政の実現に向けた提言」 #3(2007年4月)および提言「国民視点に立った先進的な電子社会の実現に向けて」 #4(2008年4月)を公表し、政府に対して電子行政の推進を働きかけてきた。これらを受け、政府においても、内閣官房を中心としてこれまで停滞していた取り組みを抜本的に見直し、新たなオンライン利用拡大行動計画 #5 を策定したほか、行政内部の管理業務に関し「ITを活用した内部管理業務の抜本的効率化に向けたアクションプラン」を策定し、モデルケースとして「旅費」、「物品調達」、「物品管理」、「謝金・諸手当等」それぞれについて官民合同実務家タスクフォースを設け、ガイドライン策定等に向けた検討を進めるなど、本格的な取り組みを始めている。さらに今後は、「行政手続オンライン化関係三法」 #6 の全面改正による「電子行政推進法(仮称)」の次期通常国会への提出と推進体制の強化が予定されている。

本提言は、官民が連携してわが国の電子行政を本格的に推進できる機が熟しつつある現状において、電子行政の先進諸国の取り組みについての調査 #7 を踏まえ、電子行政の早期実現に向けた推進体制や法制度について具体的な方策を提案するものである。政府においては、「電子行政推進法(仮称)」を新オンライン利用促進行動計画を担保するだけの法律とせず、本提言で提案する業務改革を前提とした電子行政の推進体制整備を包括的に担保する法制度とするべきである。また、次期通常国会会期中に以下の点を反映させた法案を成立させ、IT新改革戦略の期間中に電子行政先進国の水準へ移行できる基盤を整備すべきである。

  1. 電子行政を予算権限と責任を持って、トップダウンかつ府省庁・自治体を横断して推進できるよう、総理大臣を議長とする「電子行政推進会議」とその実務担当機関である「電子行政推進センター」を設置する。また、行政全体の責任者として行政CIOを任命する。
  2. 同会議の策定する電子行政グランド・デザインおよび工程表に基づき、各行政機関は電子化に先立ち、一定期間内に業務改革による行政業務全般の簡素化・標準化を実施する。また、PDCAをより着実に回すため、IT戦略本部の評価専門調査会の機能を強化し、行政改革推進本部等との密接な連携の下、各行政機関の実施計画の進捗を恒常的に監視し、改善命令や勧告(予算の執行停止等を含む)を出せるようにする。
  3. 個人や企業を一意に特定できる共通コードを導入し、国民本位のワンストップ・サービスを実現する。また、プライバシー保護の観点から、行政による個人情報の管理や共有のルールの策定、監督のための第三者機関の設置を行う。
  4. 行政の透明性を高めるため、業務処理のプロセスや個人情報へのアクセスの履歴を国民が電子的に確認できるようにする。

II.わが国が実現すべき電子行政 #8

1.電子行政の目的

電子行政の究極的な目的は、豊かな国民生活と経済社会の実現、国の国際競争力の強化、透明性の高い行政と成熟した民主主義の実現という中長期的な目標に資することである。そして、その具体的な推進においては、あくまで国民視点から、以下の三点を目標に掲げて、その実現にあたるべきである。

  1. 利用者の利便性向上
    国民や企業の利便性の向上のためには、各府省庁や地方自治体の個別の申請手続きがオンラインで申請できるだけでは不十分である。また、煩雑な申請手続きを見直さず、そのまま電子化することは、逆に利便性を低下させることになる。
    電子行政においては、行政機関間のデータ連携により手続き自体を簡素化し、国民・企業向けのシングル・サインオン #9 のポータルサイトから、引越や退職等のライフイベント毎にワンストップで申請手続きが完了し、電子的にその結果を受け取れるようにすべきである。また、電子認証や署名が必要な場合においても、セキュリティを確保しつつ、ユーザーの負担の少ない簡便な仕組みとすべきである。
    また、従来型行政は申請があった場合に行政サービスを提供することが一般的であるが、よりきめ細やかなサービスとして、希望者には受けることが可能なサービスの通知を行うプッシュ型行政への転換が望まれる。このようなサービスは、行政機関のデータ連携によって、サービスの受給資格者情報と当該サービスとを連携させることで可能となる #10
    このように、電子行政は国民本位のサービスを提供するための基盤でなければならない。従って、デジタル・デバイド等に配慮し、パソコンのみではなく、行政窓口における職員によるワンストップ・サービスのサポート体制の充実など、マルチ・チャンネル化を進める必要がある。但し、電子的にデータを入力した後の行政機関内部の業務は全て電子的に処理されるべきである。

  2. 行政業務の効率化
    国の競争力を強化するためには、民間部門のみならず行政部門における抜本的な業務改革と電子化を両輪とした効率化が不可欠である。電子行政先進国の例を見ても、業務見直しを電子化に先行して実施している。そのプロセスとして、まず行政サービスとしての必要性の論議から始め、廃止・統合・簡素化をした上で、電子申請における添付書類の廃止、行政機関間の情報共有によるペーパーレス化、政府・地方自治体のシームレスな連携等により、行政内部の効率性を高めている。その結果として、行政コストや処理時間の大幅な削減、処理の正確性の向上に繋げている。
    また、業務効率化の効果は行政内部にとどまらず、国民・企業からの申請、バックオフィス業務、利用者への通知まで一貫した電子処理を実現することにより、国民・企業側における社会コストの削減に貢献する。同時に、紙の削減や移動機会の低減等により自然環境に与える負荷の軽減にも大きく貢献している。
    さらに、一連の業務プロセスを見直し、標準化を通じて電子的プロセスに転換させる過程で、不要で非合理的な慣行や行政からの過剰な要請を排除し、業務自体のスリム化を達成できる。行政機関間のデータ連携は、機関間の単純な連絡業務等の職員の負荷を大幅に減らし、窓口業務の効率や質の改善、よりきめ細やかな行政サービスへの人員再配置を可能とする。

  3. 行政の透明化
    昨今、年金記録問題や行政機関における不正経理のように、行政機関における杜撰な管理・運営の実態が次々と明るみに出ており、国民の行政に対する信頼が著しく損なわれる事態が続いている。このような問題は、ガバナンスの欠如、長年の不透明な労使慣行、国民監視の不在から生じている。
    電子行政先進国においては、行政の不正や腐敗を抑止する有効な手段として電子行政を導入し、効果を挙げているケースがある。
    行政の電子化は、業務プロセスに人の恣意性が入り込む余地を狭めるのみならず、電子化されたデータへのアクセス管理や個人情報へのアクセス履歴ログの保存を通じ、行政プロセス全体を透明化でき、不正な情報アクセスや操作の発見や抑止、さらに申請等の処理状況の確認等を容易にする。行政への国民の信頼回復を図るためには、公務員のモラルの向上とガバナンスの確立が基本であるが、業務改革と電子化による透明性の向上は、その確実な基盤を与えることになる。

2.電子行政の進捗段階

わが国の電子行政の現状を評価し、推進するための対策を講じる上で、電子行政の進捗度を客観的に評価する目安が必要である。本提言では、他のベンチマーク等も参考に、電子行政の進捗度合いを以下の4段階に分類した #11。先進的な取り組みを行っている欧州の国々や韓国は、この分類の第3〜第4段階にあると位置づけられるが、日本は第2段階から第3段階への移行段階にある。

(第1段階)ウェブ発信レベル
オンラインでリアルタイムの行政情報が利用者に提供される段階。
(第2段階)インタラクティブレベル
利用者とサービス提供者間で電子メールやコメント投稿等のインタラクティブなコミュニケーションが可能となるとともに、様々な行政情報や行政サービスがオンラインで提供され、申請書式等を利用者が必要に応じてダウンロードできる段階。
(第3段階)電子処理レベル
従来の紙ベースから電子的処理を前提とした業務プロセスへの抜本的な業務改革を経て、各種証明書申請、許認可申請、税金・手数料の納付等の手続きをオンラインで安全に実行することができ、かつオンラインで完結する環境を実現している段階。
(第4段階)完全統合レベル
業務改革の達成を前提とし、行政情報システムのシームレスな統合により行政機関間の情報共有が行われ、包括的な電子行政サービスや利用者の個別ニーズに対応したプッシュ型サービスの提供が行われる段階。また、行政機関のみならず公共機関、民間との相互連携が進み、多様なサービスが国民に提供される。なお、この段階では、プライバシーや個人情報保護の観点からも、オンラインによる行政処理の透明化や積極的な情報公開により行政の透明性の確保が担保される。

3.電子行政先進国において実現しているサービス #12

業務改革を実施した電子行政先進国においては、概ね下記の電子行政サービスを実現している。わが国においても、電子行政をより高い段階へと発展させ、これらの革新的なサービスを実現する必要がある。

(1)ワンストップ・サービス

業務改革を経て実現するワンストップ・サービスは、府省庁や地方自治体の個々の業務範囲に係わらず、引越、結婚、離婚、出産、就業、成人、就職、退職等のライフイベント毎に必要な手続きを、一度の申請、手続きで一括して実施、完了することができるサービスである。電子行政先進国のポータルサイトを利用すると、日本のように縦割りの各行政機関別に手続きをとる必要はなく、あくまでライフイベントに即して必要な手続きを一括して完結することができるユーザーの利便性に配慮した形となっている。
たとえば、引越をした場合、転居届、転入届、運転免許証の住所変更等、引越元、引越先の地方自治体をはじめ複数の行政機関に対して様々な手続きを行う必要があるが、ワンストップ・サービスが実現すれば、行政機関間の情報共有により、利用者の申請手続きは一度だけで済む。
ワンストップ・サービスは利便性の大幅な向上に繋がるため、ほとんどの電子行政先進国で提供されている。また、ワンストップ・サービスの実現には、行政機関間のデータ連携が不可欠であるが、それを実現している国ではその基盤となる個人・企業の共通コードがすでに導入されている。

(2)各種行政サービスへのシングル・サインオン

先進的な電子行政においては、一般的に行政がポータルサイトを設置し、利用者はポータルサイトから各種行政サービスにアクセスする方式を採用している。利用者の認証が一度なされれば、全ての行政サービスにシームレスにアクセスできる「シングル・サインオン」を導入し、高い利便性を実現している。
たとえば、エストニアでは、個人認証を受け銀行のサービスへのアクセスが許可されると、行政手続きにそのままアクセスすることが可能となっている。また、逆に行政サービスへの決済を直接銀行のサイトにアクセスして処理することができる。行政サービスと金融機関等の民間サービス間の認証等での連携も、国民の電子行政サービスの利用率を高める上で有効に機能している。

(3)プッシュ型サービス

利用者が必要な情報を事前に登録すること等により、行政が利用者にとって適切なタイミングで適切なサービスを個別に通知するなど、行政側から能動的に提供するサービスである。
たとえば、所得額や年齢に制限のある手当てを給付することが決定した場合、家族構成や家族の総所得等に基づき、対象世帯主に対して給付額を含めた通知を行ったり、実際に銀行振込するところまでを短期間に実行することが可能になる。
児童手当、失業手当、医療費の還付等、社会保障関係の給付を中心に、このようなプッシュ型サービスを多くの電子行政先進国で提供している。このサービスにより、申請漏れ等により本来受給できるはずの手当を受給し損ねる事態を回避できる。

(4)eID #13

電子行政先進国においては、前述のサービスを実現するために必要とされるオンライン上での認証、署名を、eID等により簡易に行えるようになっている。個人・企業には全ての行政機関で利用できる共通コードが割り振られており、政府・地方自治体横断的なコード管理が可能となっている。特に、エストニア、デンマーク、ベルギーなど欧州の一部で普及している共通コードを格納したeIDカードは、電子行政サービスを利用するための本人確認キーとなるばかりでなく、EU域内のパスポートとして利用が可能であり、さらに国によっては運転免許証、健康保険カード、公共交通機関の乗車券等、多岐にわたる機能を有し、その高い利便性から普及が拡大しつつある。

III.わが国における電子行政サービスの現状と課題

1.現状

日本の電子行政サービスの推進は、IT新改革戦略で目標として掲げている「国・地方公共団体に対する申請・届出等手続きにおけるオンライン利用率を2010年度までに50%以上とする」ことが基本となっている。国全体のオンライン利用率は2005年度の11.3%から2007年度には20.5%となったものの、依然として低迷している。
オンライン利用率が低迷している原因は、以下の通りである。

政府は電子政府の総合窓口となるポータルサイト #14 をウェブ上に設置しているが、展開しているサービスは行政情報の提供や手続きの案内といった水準に止まっており、そこからオンラインで申請手続きを完結できるサービスはほとんどない。従って、電子行政先進国が標準的に備えているワンストップ・サービスとそのポータルサイトとしての機能が未だに実現されていない。
イベント毎のワンストップ・サービスについては、内閣官房が中心となって「引越」と「退職」に係る手続きを先行モデルと位置づけ、2009年度中のワンストップ化実現に取り組み始めたところである。欧州では、フランスは共通コードの導入ができず電子行政の展開で遅れているものの、「引越」手続きのワンストップをすでに実現しており、引越しの情報を一箇所の行政機関に提出すれば行政機関間での情報共有がなされる。
国税庁は、国税の電子申告・納税サービス #15 を開始しているが、認証手続きの設定等が複雑であるなど、ユーザー利便性の改善の余地が大きい。また、国税庁と地方自治体との電子的な連携が無く、電子申告・納税の受入れ体制が整っていない地方自治体も多く、国税と地方税を一括して電子申告・納税できないなど、電子化のメリットが実感できる水準には達していない。
プッシュ型サービスについては、行政機関間のデータ連携ができていない状況で、国民や企業の個別ニーズに対応したサービスを提供できる段階にはない。
認証・署名に関しては、住民基本台帳カードに公的個人認証・署名機能が付加されているが、同カードに付与されている住民票コードには厳しい利用制限が設けられており、行政機関間のデータ連携には積極的には利用されていない。また、国民には基礎年金番号、(健康保険)被保険者記号番号、旅券番号などすでに様々な番号が振られているが、電子行政先進国で実現されている効率的で利便性が高い行政サービスの基盤となりうる共通コードは日本には存在しない。
また、企業に対しては、各所管行政機関が個別に識別コードを割り振っている。これらのコードは、頻繁に変更される上、ネットワークを通じた相互連携が想定されておらず、桁数、コード体系等バラバラである。したがって、各企業は行政機関毎に異なる識別コードを管理しなければならず、非効率であるばかりでなくコスト面でも負担となっている。

2.課題

わが国が早急に実現すべき電子行政サービスの姿は、前述のとおり一部の先進諸国によって実現されている4段階分類の上位の水準を達成することにある。それらを実現するためには、電子行政の推進体制を抜本的に再構築するとともに、電子行政先進国の取り組みに倣い、法制度をはじめ制度環境や技術的なインフラを整備し、障害を取り除くことが必要条件である。

(1)行政業務の簡素化・標準化

電子行政が本来の効果を発揮するためには、業務改革による行政手続きやバックオフィス業務の見直しや標準化が前提となる。具体的には、電子化の時代における環境の変化に鑑み、行政サービス自体の必要性、民間サービスによる代替等を個別に検討し、不要な行政サービスの廃止、積極的な民間活用などにより無駄を省き、行政業務全般の整理を行うべきである。その上で、行政機関による提供が必要なサービスについて、ワンストップ化を前提とした行政業務の標準化を実現することが不可欠である。また、地方自治体では財政難のため業務標準化を推進できないケースがあるため、国が必要に応じて適切な財政支援や技術支援を行う仕組みも必要である。なお、行政内部の管理業務に関しては、旅費や物品調達に係る経費をモデルケースとして官民合同実務家タスクフォースによる業務効率化に向けた検討が進められており、大きな試金石といえる。
欧州においても府省庁縦割り、地方分権の傾向は日本と同様であるが、安価で品質の高い共通のシステムを整備することにより、着実に行政業務の標準化を進めている。その際、共通の行政サービスの基幹システムは全ての行政機関で共通の仕様とし、また、調達コストの抑制、公平な競争促進の観点から、基幹システムはオープンソース #16 のものを提示し、システムを採用している。
韓国においても、国と地方自治体で共通の業務についてはシステムを統一している。また、システム導入に係る必要経費を国が補助し、財政状況の厳しい地方自治体への導入円滑化を図っている。

(2)推進体制の整備

電子行政先進国に共通しているのは、府省庁横断的な権限(予算を含む)と責任を担う推進体制が確立しているとともに、企画・立案段階から地方自治体の参画を得ている点である。わが国においては、内閣官房が府省庁間の調整機能を有しているものの、強制力を伴う権限を持たないため、十分な推進力が得られていない。電子行政を実現するうえで、真の推進力となる体制を早急に構築するべきである。
たとえば、韓国では大統領直属の推進組織を設置し、府省庁間の意思調整が滞った場合には大統領が直接指示を出せる体制を構築している。欧州では、政治的な支持の下で、電子行政を推進する会議体とその事務局としての中核的な推進組織が設置され、予算権限を握る財務当局との強い連携の下で強力な推進が実現できている。
また、推進組織は、ITや行政実務の専門家から構成され、各行政機関の縦割りを排し、全体最適型のグランド・デザインや工程表の策定、各行政機関へのアドバイス等を行っている。たとえばオーストリアでは、連邦政府のCIOが任命され、少人数の精鋭サポートスタッフの協力の下、責任と権限をもって国全体の電子行政をデザインし、全体最適を実現しつつある。わが国でも、各府省庁のCIOに加え、責任と権限を持ち行政の全体最適を実現する「行政CIO」を設置する必要がある。

(3)法制度の整備

真の電子行政を実現する上で、紙文書による処理を前提とした現行の諸法令を一括して見直し、包括的に電子行政を推進できる法的根拠が必要となる。特に、業務改革を前提としたワンストップ・サービスを実現する上で、電子申請に関する個人・企業の権利・義務、個人・企業の共通コードの適切な管理・運用、電子化された個人情報の保護のあり方、電子認証・署名に関する規定、情報の公開等について、行政全般に関する法制度を整備すべきである。
法整備の進め方としては、韓国の電子行政法のように一本の法律で網羅的な体系を導入し、行政業務の改革と徹底的な電子化を法律で義務付け、行政の効率化と透明化に成功している事例もある。また、欧州諸国においては、基本となる電子行政法を定めつつ、憲法やEU指令に基づく個人情報の保護については、個別の法律で行政機関における個人情報のあり方や行政を監督する第三者機関の設置を立法化しているケースが多い。たとえば、デンマークでは、国民のプライバシーの保護と行政機関間の情報共有を円滑に進めるため、電子行政においても個人情報保護に関する法律を特に重要視し、第三者機関による連携できる情報の定義、不要な情報収集の禁止、既収集の情報の不要時の破棄等を盛り込んでいる。

(4)共通コードの導入

電子行政先進国で実現している効率的で利便性の高い行政サービスを実現するには、行政機関間のデータ連携が不可欠である。現状では、行政機関毎に異なる識別コードを個人・企業に割り振っているが、情報共有を図るためには、国民の合意の下で、行政機関を跨いで個人・企業を一意に特定できる共通コードを国が一元的に付与する必要がある。
電子行政先進国では一部の例外を除き、個人・企業を一意に特定する共通コードを導入済みである。また、共通コード導入の際には、情報セキュリティ並びに利用者のプライバシー・個人情報・機密情報等の保護について、法制面でも十分な体制を整備し、国民の不安を払拭している。たとえば、欧州においては、行政機関が有する個人情報の目的外の利用等を防止するため、情報管理やアクセスの監督を行う第三者機関が設置されている。また、オーストリアでは、国民IDとは別に電子行政におけるデータ連携のため、分野別に固有のIDを関数を使って生成する方式を導入し、分野を跨いで行政側が恣意的に情報を寄せられないシステムが導入され、プライバシーの保護と行政機関間の情報共有を両立させつつ、ワンストップ・サービスを実現している。

(5)電子化についての広報と周知

行政側が電子化を可能としていても、利用者が従来と変わらず紙での申請をしていることは多い。その理由に「電子化できることを知らなかった」「(誤解により)手続きが煩雑だと思った」などの声が聞かれるが、同じ手続きを電子化して成果を得ている利用者もいる #17
利用者側にも認識不足等の問題はあろうが、これを解決するには行政の窓口部門が利用者に個別に十分な案内をすることが求められる。中央省庁が「オンライン化・電子化」の広報に努めていることは評価できるが、利用者から見える行政とは窓口部門であり、当該部門が電子化を斡旋することが最大の効果を生む。これは前述のプッシュ型サービスへの転換過程として、すぐにでも取り組める課題である。

IV.業務改革を前提とした電子行政を実現するための推進体制と法制度の整備

1.電子行政に関する現行の法制度

現在施行されている電子行政関連の法律には、行政手続オンライン化関係三法があるが、これは紙を前提とした従来の行政手続きを、オンラインでも可能にするための法律である。そのため、「オンラインで申請可能にすること」が目的化しており、行政機関間のデータ連携、利用者の行動フローや行政内部の業務フローを踏まえた業務改革を促す法律にはなっていない。その結果、本来の目的であるべき利用者の利便性向上や業務効率化に繋がらず、オンライン申請の利用率も低迷している。

2.法制度のあるべき姿

内閣官房は、電子行政の推進に当たり新たな法制度の整備が必要であるとし、「電子政府推進法案(仮称)を2009年通常国会に提出すること」を「IT政策ロードマップ」 #18 に明記しているが、この法案は「利用者の利便性向上」、「業務の効率化」、「行政の透明化」の実現を目的とし、継続的な業務改革・改善の遂行を担保するものでなければならない。
日本経団連は、前述の課題を踏まえ、以下のポイントを盛り込んだ「電子行政・業務改革推進法案」を別紙1のとおり提案する #19

(1)行政業務の簡素化・標準化

利便性、効率性の向上を図るには、まず、個々の行政サービスのそもそもの必要性を検証し、不要なものや必要以上に煩雑なものは廃止・簡素化を実行する。その上で、必要なものについては業務プロセスの見直し、標準化を行い、同一目的の行政手続きについては速やかに帳票類の書式や手続きプロセスを統一しなければならない。一連の業務プロセスが標準化できれば、それに係る業務システムもオープンな仕様とすることで共同開発・利用が可能となり、税金の無駄遣いを無くし、調達コスト削減にも繋がる。
また、地方自治体の手続きに関しては、同一目的の行政手続きであっても帳票類の書式が異なり、添付書類や本人確認方法もまちまちであるため、個人・企業にとって利便性、効率性が大きく損なわれ、莫大な社会コスト #20 が掛かっている。こうした現状を是正するため、地方自治体間の連携と業務標準化を促進するうえで総務大臣が担う役割を明記する。
さらに、国民の目からは直接見えにくい行政内部の管理業務の効率化に関しては、民間の専門家の参画の下、業務改革を継続しなければならない。現在、モデルケースの旅費や物品調達に係る経費等の効率化については官民合同実務家タスクフォースがその実行機関となっているが、今後はその他の共通業務についても官民が連携し課題を解決する体制を築いていく必要がある。なお、業務改革に当たって、「国家公務員等の旅費に関する法律(旅費法)」のように個別に法律の改正が必要な場合には、それを実施する。

(2)全行政業務処理の原則電子化

これまでのように、「従来の紙ベースでの申請でもオンライン申請でも可」とする法制度では、電子行政の実質的な推進力とならないばかりか、紙データと電子データが混在する非効率な環境となってしまう。効率的な電子行政を実現するためには、原則として、バックオフィスにおける全ての行政業務および国民・企業のニーズの高いフロント業務を電子的に処理することを義務付ける法制度でなければならない。

(3)行政機関横断的かつトップダウンの推進組織の設置

わが国には、予算権限を伴い電子行政の推進を行政機関横断的に推進できるような組織が欠けている。たとえば、「電子行政推進会議」といった総理大臣を議長とする推進組織を設置し、総理大臣のリーダーシップの下、強力かつ速やかに電子行政を実現できる体制を整え、電子行政のグランド・デザインおよび工程表の策定と推進の中枢としなければならない。この一連の電子行政推進を指揮する「行政CIO」を任命し、同会議の活動をサポートするため、常設の実務担当機関として、行政機関および民間からITおよび行政実務に精通した専門家を集めた「電子行政推進センター」を設置する。同センターは、財務省との強い連携の下で、電子化に先駆けて行政サービスの廃止・統合・簡素化・標準化も含めた業務改革基準の企画・作成・推進を行う権限を持つとともに、ワンストップ化を実現するための行政機関間の調整機能を担う。

(4)ワンストップ・サービスを実現するための共通コードの導入

国民の合意の下で、共通コードは全企業、全国民に付与することとする #21。そして、行政機関において適切に個人・企業の情報が管理されているかを監督するため、行政から独立した司法関係者等を中心として構成される第三者機関を設置する。個人の共通コードを利用し、行政機関のデータベースの個人情報との紐付けを行うに当たっては、第三者機関がそのルールの策定・認可を行うとともに、情報の種類によっては個別に本人の許諾を得ることも前提としなければならない。利用者は、紐付けることを承諾した個人情報が多いほど、多様な電子行政サービスを受けることができるようになる。
共通コード導入の効用 #22 として、ワンストップ・サービスやプッシュ型サービスのほか、たとえば結婚や引越により氏名や住所が変更となった場合、一度の手続きだけで、本人に関する全ての台帳やデータベースが電子的に漏れなく変更されるようになる。

(5)行政業務の透明性の確保

行政機関においては、行政コストの負担者たる国民に対し、行政業務の透明性の確保と最大限の情報公開を行わなければならない。韓国においては、国民は自分が申請した手続きの処理過程を電子的に確認することができる仕組みが制度化されている。その結果、自分の申請が行政機関内部でどのプロセスにあり、誰がそれを担当しているのか、担当者の名前や問い合せ先までインターネット等を通じて知ることができる。また、行政職員が個人情報にアクセスした際には、必ずその履歴が残る仕組みになっているため、万一、不正なアクセスが行われた場合には、事後的にアクセスした職員をトレースし、不正行為者を特定することが容易にできる。わが国においても、韓国と同様の制度を導入し、行政の徹底的な透明化を図らなければならない #23

(6)成果指標型数値目標の設定と結果の公開

行政業務の効率化を促進するために、「単位申請手続き当りの所要時間短縮率」、「単位申請手続き当りのコスト削減率」、「紙文書の削減率」など、効率化に直結し、かつ費用対効果を意識した「成果指標型数値目標」を設定するべきである。
また、行政機関にとっては、国民による恒常的な監視が最も効果的な目標達成推進力となる。そのため、各行政機関には、行動計画や成果指標型数値目標の設定のみならず、それらの実行結果・実績や費用対効果の測定・分析結果などの公開を義務付ける。
さらに、行政におけるPDCAを着実に回すために、IT戦略本部の評価専門調査会の機能を強化し、行政改革推進本部等との密接な連携の下、各行政機関のIT導入計画およびその進捗を恒常的に監視し、進捗状況によっては当該行政機関の予算の執行を停止または延期する権限を付与する。
国民の視点から分かりやすい形で行政のあり方をチェックできる仕組みを構築することは、安心で健全な社会の基盤となり、また行政に対する国民不信の払拭に資する。

(7)電子認証基盤の再整備

電子行政の推進にあたり、システムの利用者を識別し認証するための認証基盤は不可欠であるが、現時点では公的個人認証サービスの普及が遅れており、社会基盤としての役割を十分に果たすまでには至っていない。同サービスの厳格な運用、制限された用途、複雑な設定手続き、必要機材の入手困難性とコスト、加えてアプリケーションの使いにくさなどが、その主たる原因と考えられる。また、企業においては、属性認証・署名がないため #24、常に企業の代表者の電子署名や認証を使わざるを得ないなど、利便性が著しく低い。欧州におけるeIDに倣い、オンライン上での認証、署名をより簡便に行えるように制度を再整備しなければならない #25

(8)民間の活用・連携

改革を伴う業務見直しを行う際には、SaaS/ASP #26 をはじめとする民間サービスの活用や民間への業務委託の可能性を常に検討し、行政が自ら実施するよりも民間を活用した方が合理的であると判断される場合は、これを積極的に利用しなくてはならない。
また、公的個人認証による電子認証・署名の民間での利用を促したり、金融機関等民間企業ともデータ連携を行いサービス拡充を図るなど、官民連携を可能とする法制度の整備が必要である。

V.おわりに

冒頭に述べたように、電子行政の推進は、この国の抱える諸課題を踏まえ、中長期視点で「この国のかたち」を問い直す取り組みである。その過程においては、当然ながら旧態依然とした古い行政業務のあり方を見直し、公的部門における人的資源の再配置を、全体最適の観点から進める必要に迫られる。

国民経済に占める公的部門の大きい北欧諸国では、少子高齢化に伴い公的部門において十分な人材を確保できなくなり、人手をかけずに良質な行政サービスを提供するため、電子行政を発展させている。

日本においても、福祉や介護等の社会保障分野の現場で、人間でなくては対応できないサービスの需要が高まる一方、労働人口は減少することから、単純な行政事務処理については電子行政によって代替していかなくてはならない。この過程で、短期的には公的機関における人員配置にミスマッチが生じる可能性が高いが、ソフトランディングできるような人的資源の最適計画をしっかりと整備していく必要もある。行政業務の効率化により生み出された人的資源を、社会保障分野等へシフトできれば、「うれしさや安心を実感できる行政サービス」を提供するための基盤となり、豊かな国民生活にも大きく貢献することになる。

電子行政の推進は、「この国のかたち」を作り直す国民合意形成のプロセスでもあり、もはや中央省庁だけで推進できる段階は過ぎ去った。ITが時間や空間の壁を低くしたこの時代において、空間や地域によって規定されてきた従前の行政サービスにも他の民間サービス同様の変化が必然的に生じる。地方分権や道州制の議論と並行して、国、独立行政法人、都道府県、市町村、民間企業のやるべきことを利用者視点で再設計することが求められている。

提言本文でも指摘していることだが、北欧諸国のように、政府、地方自治体、産業界、労働界等からなる政策決定の主体となる合議体で国民視点から十分な議論を尽くし、決定されたことについては迅速に必要な法的枠組みを整備し、具体的な実践に移していく必要がある。

電子行政実現までの道のりは決して平坦ではない。政治の強力なリーダーシップはもとより、国民や企業も自立的な主体として電子行政という「この国のかたち」を問い直す取り組みに積極的に参加していくことが求められている。日本経団連としても、広報活動等を通じ国民や企業を巻き込んだ議論を喚起していく所存である。

以上

  1. ベルギーでは、電子行政により年間2,300億円の企業経費削減効果を出している。これはGDP比で日本に当てはめると、およそ2.2兆円に相当する。
  2. ログとは、システム動作の記録を取ること。またはその記録。システムトラブル発生時の原因究明や不正アクセスの検知に役立つ。
  3. URLhttp://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2007/031.html
  4. URLhttp://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2008/018/index.html
  5. オンライン利用の飛躍的拡大に向けた府省庁横断的な行動計画を内閣官房が中心となって検討し、本年9月に策定した。
  6. 「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律」(行政手続オンライン化法)、「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(整備法)、「電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律」(公的個人認証法)の3つを指す。
  7. 日本経団連は、IT戦略本部の評価専門調査会と合同で昨年5月にエストニア等、本年10月にEU本部、デンマーク、ベルギー、フランス、オーストリアへ、内閣官房と合同で本年3月に韓国へミッションを派遣し、各国の電子行政の状況を調査した。本提言での電子行政先進国に係る記述は、主にミッションの調査結果に基づくものである。
  8. 別紙2に「国民視点で見た電子行政のイメージ」を図示
  9. 一度認証に成功すると、複数のアプリケーションソフトウエアやサービスの認証処理をパスし、利用することができるようになる仕組み。
  10. 現行の児童手当は、子供の出生時に手続きが必要であるうえ、毎年現況届を提出しないと支給が差し止められてしまう。さらに、引越等に伴い再手続きが必要となる。プッシュ型行政では、たとえば、出生届を提出するだけで特別な手続き無しで児童手当が支給されるようなサービスが提供される。
  11. 日本経団連独自の分類。国連の「UN E-GOVERNMENT SURVEY 2008」(2008年)を参考に進捗段階を分類した。なお、「UN E-GOVERNMENT SURVEY 2008」では、進捗段階を(1)Emerging、(2)Enhanced、(3)Interactive、(4)Transactional、(5)Connected の5段階に分類している。
  12. 電子行政先進国および日本における行政サービスや推進体制の対照表については別紙4参照。
  13. EU全域で横断的に利用可能な共通コード。現在、国別に導入が進んでいる。
  14. URLhttp://www.e-gov.go.jp/
  15. URLhttp://www.e-tax.nta.go.jp/
  16. ソフトウエアの設計図に当たるソースコードを無償で公開し、自由に改良、再配布を行えるようにすること。また、そのようなソフトウエア。
  17. 企業では、源泉徴収票、年末調整関連は件数も多く(220万件以上/年)関連手続きや添付書類も多いので、負担に感じるとの声が大きい。源泉徴収票を紙で送付すると、翌年企業には紙で「税額決定通知書」が戻ってくる。これを個人別に一葉一葉切り離し封筒に入れる手間が企業側に発生する。ただし、以前から電子データでの提出をしている企業もあり、このように成果を上げている事例を、企業担当者にも行政担当部署にも広く知らしめる必要がある。
  18. 「ワンストップ電子行政サービスを実現し、利便性、透明性、効率性の高い電子行政の構築を目指す」ことを目標に掲げ、本年6月にIT戦略本部が決定。オンライン利用拡大に向けた取り組みの抜本的強化、引越・引退手続きの先行的ワンストップ化、電子行政サービスの利用手段の多様化、電子行政推進法(仮称)の整備および推進体制の強化が盛り込まれている。
  19. ここで述べているポイントのうち、電子認証基盤の再整備については、個別詳細に規定する必要があるため、別紙1「電子行政・業務改革推進法 モデル法案」には含めていない。また、共通コードの導入に際しては、コードの管理・運用、プライバシー保護のための第三者機関の運営等について別途詳細に規定する必要がある。
  20. IT戦略本部IT新改革戦略評価専門調査会の電子政府評価委員会は、年末調整処理業務に係る企業側コストは2,339億円/年で、電子行政の実現に伴う効率性の向上による削減効果は1,643億円に上ると試算している(「年末調整処理業務の効率化の検討 最終報告資料」、2008年2月。URL:http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/densihyouka/kaisai_h19/dai8/siryou6.pdf
  21. 個人に割振られる共通コードに関しては、住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)の導入時に、個人情報やプライバシーの侵害を懸念する議論が起こったが、最高裁の住基ネット判決では「プライバシーを侵害するものではない」と判断された。また、年金記録問題では、従来の4情報(氏名、性別、生年月日、住所)のみによる「名寄せ」では、結婚や引越に伴う住所変更、氏名変更により本人の特定ができなくなるケースが発生することが明らかになった。このように、共通コード導入を巡る社会環境は大きく変化している。
  22. 共通コード導入の効用の個別具体的な事例については、別紙3参照。
  23. 住基ネット導入の際には、「政府による国民管理が強化される」との意見も聞かれたが、共通コードの導入により、自己の情報が行政機関でどう取り扱われているかを知ることができるようになり、「管理される」よりむしろ「行政を監視」しつつ「自己の情報を自己管理する」ためのツールであると捉える発想の転換をするべきである。
  24. 現状では、電子データを作成した者の役職を証明・検証する方法が確立していない。
  25. 制度の再整備の過程においては、全ての行政システムについて、個々のシステムの目的、効果、誤認証が発生した場合の損害の種類や大きさなどの総合的なリスクを勘案し、最低限どの程度の確実性で利用者を認証すればよいか、証拠能力と証明力はどのくらい必要か、どの程度のリスクなら許容できるか等の整理を行い、公的個人認証サービスが提供するような、厳格な本人性の保証が必要とされるかどうかを再度検討すべきである。
  26. ASPとは Application Service Provider の略で、アプリケーションソフトウエアをネットワークを通じて提供するサービス。または、そのようなサービスを提供する事業者やビジネスモデル。利用者のシステムに個々のアプリケーションソフトウエアをインストールする必要がないため、アップグレード等の管理に係るコストを節減することができる。SaaSは Software as a Service の略で、ASPとほぼ同義。

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