2009年優先政策事項 添付資料

2009年優先政策事項【解説】

2009年1月14日
(社)日本経済団体連合会

1. 緊急・大型の経済対策による景気刺激・金融安定化と税・財政の抜本改革の推進

厳しい経済状況を脱し雇用の維持・創出、国民生活の安定を図るため、景気回復と金融安定化に資する諸施策を総動員し早急に実施する。また、国・地方を通じた歳出入改革を推進し、財政の中長期的な持続可能性を確立する。

  1. (1) 足元の景気を早急に回復軌道に戻すべく、内需拡大に資する経済対策や金融安定化策をスピーディに実施する。具体的には、住宅投資減税制度の創設、住宅ローン減税制度の拡充、自動車重量税・取得税の減税措置、省エネ・研究開発などの投資促進に資する税制措置の拡充、中低所得者層や子育て世帯への経済的支援、上場株式等に係る優遇税制の延長、確定拠出年金に係る税制措置の見直し、金融所得課税の一元化の推進を図る。また、企業の資金繰り・資金調達の円滑化に向けた対策を講じる。
    加えて、企業活動のグローバル化に対応し、外国税額控除制度の抜本的な見直しや移転価格税制の改善など、国際租税制度の整備を行う。法人実効税率を、国際競争力強化、対内投資促進の観点から、国際的整合性を踏まえ、30%を目標に引き下げる。
  2. (2) 安心できる社会保障制度の構築、財政の持続可能性の確立などの観点から、中長期的な財政健全化目標の設定と安定財源の確保を含む歳出・歳入改革の具体的な道筋を明確に示す。その中で、税収構造を消費・所得・資産の各課税のバランスが取れた安定的な税体系とするよう、消費税率の引き上げと地方消費税の拡充、中低所得者層を対象とした所得税減税を一体的に実施する。また、社会保障番号を活用した納税者番号制度を速やかに導入し、公平性・透明性の確保を行う。

2. 安心で持続可能な社会保障制度の確立と少子化対策の推進

国民が安心できる持続可能な社会保障制度を確立する。税制抜本改革を通じて安定財源を確保し、社会保障への公費投入割合を引き上げる。また、国力を左右する重要課題として少子化対策を強化し、経済的支援等を拡充する。

  1. (1) 公的年金については、予定通り2009年度から基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げるとともに、基礎年金の全額税方式化に向け検討を進める。また、年金記録問題の早期解決を図る。さらに、老後に向けた自助努力支援の観点から、確定拠出年金におけるマッチング拠出の導入、拠出限度額の引き上げなど企業年金の拡充を図る。
  2. (2) 医療分野では、産科・小児科・救急医療の建て直し等を急ぐ。ICT(情報通信技術)の活用、標準化・包括化、後発医薬品の使用促進等を通じて、医療の効率化を図る。また、患者の選択による保険診療と保険外診療の併用を進める。介護については、介護従事者不足の問題を重視し、早急に解消する。
    高齢者医療・介護の財源については、今後の高齢化の進展を踏まえ、公費投入割合を高めていく。この観点から、当面の高齢者医療制度の見直しにおいても、前期高齢者を含めた包括的な制度設計とし、公費を重点的に投入する。
  3. (3) 社会保障制度を支える基本インフラとして、ICTの効果的な活用を図りながら、社会保障番号、社会保障カードを早期に導入し、給付と負担の見える化を推進する。
  4. (4) 少子化対策については、利用者ニーズを踏まえた多様で柔軟な保育サービスや放課後児童対策を実施すべく、制度面の改革を行う。また、税額控除制度の創設など中低所得層の子育て世帯に配慮した経済的支援の枠組みを構築する。各界各層が連携して、家族・地域のきずなを深める観点からの国民運動を展開する。

3. 民間活力の発揮を促す規制改革・民間開放、電子行政の実現と経済法制等の整備

官主導社会から脱却し、個人や企業の多様な挑戦を促進して経済社会の活性化を図るため、規制改革や官業の民間開放等を推進する。併せて、政治主導で政府や自治体の役割を再定義し、業務改革を前提とした電子行政の実現など行政改革の断行により、簡素・効率的で内外の情勢変化への対応能力に優れた政府を実現する。さらに、わが国企業の国際競争力を強化するため、企業経営の効率化や資金調達の円滑化を図る。また、経済法制の整備に当たっては、企業の過度な負担の回避と自主的な内部統制の確立を重視する。

  1. (1) 政治の強力なリーダーシップのもと、規制改革の一層の推進に向けて、官民を挙げて、規制改革会議の活動を支援するとともに、集中受付月間における要望の実現割合を大幅に向上させる。市場化テストの活用等を通じ、官業の民間開放を実現する。
    公務員の活性化と縦割り行政の弊害是正の観点から、人事管理の一元化など国家公務員制度改革基本法に基づく改革を推進する。また、行政と密接な関係を有する公益法人を含む行政全般の組織・事務・事業の廃止・縮減、支出の総点検、統合、民営化等を進める。消費者行政を一元化し、縦割り排除等を通じて、事業者・消費者双方の利益増進を図る。
  2. (2) 利用者の利便性の向上、業務の効率化、行政の透明化の実現を目的とする電子行政推進法案(仮称)を2009年通常国会に提出する。具体的には、業務の簡素化・標準化の義務化、すべての行政業務の電子的な処理の原則化、省庁・自治体横断的かつトップダウンの推進組織の設置、企業・国民への共通コードの導入、情報公開、成果指標型数値目標の設定等の実現に向けた措置を盛り込む。
  3. (3) 日本的経営の強みを活かす観点から、独立社外取締役の強制等の規制を強化することなく、会社法、金融商品取引法を日本社会の実情を踏まえた柔軟な制度として維持する。また、競争政策については、より一層適正な手続(デュー・プロセス)を確保すべく、公正取引委員会の審査手続きの適正化ならびに現行審判制度の廃止など、独占禁止法を抜本的に改正する。

4. 産業の国際競争力強化に向けたイノベーションの推進

基礎的な研究開発が競争力の向上に円滑につながるイノベーション戦略を確立し、経済発展や生活の質の向上を実現する。このため、国際競争上重要な革新的技術開発とその産業化を促進するとともに、研究開発システム改革、知的財産政策の強化等を通してイノベーション創出の総合力を向上する。併せて、コンテンツ産業の振興に向けた官民の取組みを強化する。

  1. (1) 第3期科学技術基本計画(2006〜2010年)については、各国の科学技術政策の動向に留意しつつ、2009年度中に中間評価を実施する。その結果を踏まえ、同年度中に「革新を続ける強靭な経済・産業の実現」などの政策目標実現に向けた必要な政策を講ずる。とりわけ、政府研究開発投資については、計画期間内で総額25兆円規模を確保する。
  2. (2) 政府の「革新的技術戦略」に基づき、国際競争上重要な技術の研究開発を規制改革、初期需要の創出などの施策と組み合わせつつ、府省一体、産学官協同により推進する。また、宇宙基本法ならびに海洋基本法に基づく宇宙・海洋分野の施策を総合的かつ計画的に実施する。
  3. (3) 総合科学技術会議が中心となり、研究開発システムの抜本改革を推進する。具体的には、研究開発力強化法に基づき、世界トップレベルの研究・教育拠点の形成、大学・大学院等における高度外国人材の受け入れ推進、公的研究機関の機能・役割の見直し、産学官連携の促進策やベンチャー企業育成策を戦略的に実施する。
  4. (4) 知的財産政策を強化し、世界特許の構築に向けた制度・運用の国際調和・相互承認の推進、模倣品・海賊版対策の強化などを行う。中長期的観点から、わが国の先進的技術の国際標準化を目指し、官民一体としての国際標準総合戦略を推進し、競争力の強化を図る。併せて、デジタル化・ネットワーク化時代に相応しい著作権制度を整備する。政府の「経済成長戦略大綱」に基づき、約13.6兆円となっているコンテンツ産業の市場規模を10年後に約5兆円拡大する。

5. 持続可能で活力ある経済社会の実現に向けた資源・エネルギー政策と地球環境対策の推進

持続可能な成長基盤を確立するため、資源・エネルギー政策と環境政策を一体的に推進し、環境と経済の両立を実現する。イノベーションにより地球環境問題の解決に貢献するとともに、国際競争力を強化する。

  1. (1) 資源・エネルギーの安定供給を確保する観点から、資源・エネルギー関連の施策や外交を戦略的に展開する。とりわけ、エネルギー安全保障と地球温暖化対策に貢献する原子力について、原子燃料サイクルを含めて国を挙げて積極的に推進する。その一環として、安全性の確保と地元の理解を前提として、停止中の原子力発電所の復旧を図る。また、省エネルギーのさらなる推進や新エネルギーの開発・普及に資する施策を講じるとともに、他の消費国との連携の下、産油国に安定供給を働きかける。
  2. (2) わが国の京都議定書の目標達成や地球温暖化の防止、低炭素社会の実現に向けて、経団連環境自主行動計画の尊重や環境・エネルギー関連の革新的技術開発の促進、国民運動の展開、サマータイムの導入など、民間活力を重視した対策を推進する。環境税や経済統制的なキャップ・アンド・トレード型の国内排出権取引制度などは採用しない。また、米国や中国、インドを含めたすべての主要排出国が参加する公平かつ実効的なポスト京都議定書の国際的枠組みを構築する。
    わが国の温室効果ガス削減の中期目標については、「セクター別積み上げ方式」により、客観的データに基づき、他国の目標と比べ公平で、具体的な削減策やコスト面も含めた実行可能性に裏打ちされたものを設定する。その際、国民負担に関する情報を充分開示する。
  3. (3) 廃棄物処理法を含む廃棄物・リサイクルに関わる諸法制の見直しにおいては、事業者に過大な負担を負わせることなく、政府・自治体・消費者・事業者の各々が適切な役割を果たす仕組みを構築し、有効な資源循環と適正な廃棄物処理を実現する循環型社会を構築する。また、微量PCBが混入した廃重電機器(コンデンサ、トランス)の安全かつ合理的な処理体制を整備する。

6. 公徳心をもち心豊かで個性ある人材を育成する教育改革の推進

公徳心をもち、創造性や国際性に富み心豊かで個性ある人材の育成に向けて、教育の質の向上と教育現場の活性化を実現する。また、世界トップレベルの教育を実現する。このため、「多様性」「競争」「評価」を基本とする改革を断行するとともに、経済界を含め教育を取り巻く全ての関係者が教育の主体となりうる環境を整備し、社会総がかりの教育を実現する。

  1. (1) 新しい教育基本法の理念に基づき、国を愛する心や国旗・国歌を大切に思う気持ちを育むべく、日本の伝統や文化、歴史に関する教育を充実する。公徳心を涵養するため、若者が多様な社会的活動に参加しやすい環境を整備するとともに、税制等により社会教育を担うNPO等の活動を支援する。
  2. (2) 教育振興基本計画を踏まえ、以下の改革を実現し、教育現場が教育の質の向上に不断に取り組み、基礎・基本知識・技能の習得、課題設定力、知識活用力の育成を図ることができる環境を整備する。
    1. 初等中等教育については、学校選択制の拡大、教育の受け手の評価や全国学力・学習状況調査結果など比較検証可能な客観的指標を踏まえた学校評価システムの充実、学校選択の結果を反映した学校への予算配分の実現により、学校が教育の質的向上に向けて切磋琢磨する環境を整備する。
      高等教育については、研究活動のみならず、教育に対する評価を充実させ、予算配分や教員の処遇などに反映させる。評価に際しては、教育の受け手や就職先企業など多方面からの評価を総合的に用いるとともに、国際化に向けた取組みを反映させる。また、教育環境の整備・教育内容の充実などを通して高等教育の質の向上を図り、留学生を含めた内外の高度人材の育成・確保を推進する。
    2. 学校(校長)や地方に対して、人事、予算、学級編成・教育課程の編成などに関する権限を移譲し、多様な教育を実現する。
    3. 教育委員会は、教員の指導力改善に向けた実践的な研修を企画・実行し、指導力不足教員に対しては、そのまま教壇に立つことのないよう、指導力改善研修を徹底的に行う。また、教員免許状更新講習においては、教育現場で不足している知識技能を習得させるなど実践的な内容とするとともに、厳格な修了認定を行う。さらに、教員養成・採用制度の改善、教育の受け手による教員評価制度の普及・促進、全国学力・学習状況調査の活用ならびに評価結果の教員配置・処遇への反映を図る。
    4. キャリア教育をはじめ子どもたちが社会の一員としての意識を育むため、経験やノウハウを有する企業など社会全体との連携を推進する。キャリア教育を含む新学習指導要領が2年後に完全実施されることを照らし、具体的方策の策定・実施を前倒しする。
    5. 標準規模を下回る学校の整理統合を通じて学校の適正規模を確保することにより、教員の適正配置を進め、教員の多忙感の払拭に努める。
    6. 優れた改革を実施した学校や教員の取組みなどの好事例をデータベースとして蓄積し、学校間、教員間での有効活用を図る。そのためにも、現在40%台の校務用コンピュータ整備率を100%にする。

7. 雇用のセーフティネットの強化と雇用・就労の多様化の促進

雇用情勢が厳しさを増していることに照らし、雇用のセーフティネットを早急に強化するとともに、労働市場の需給調整機能強化を通じて、雇用の維持や新たな雇用機会の創出、円滑な労働移動を実現する。また、雇用・就労の多様化を促進し、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を図りつつ、若年者や女性、高齢者、障害者などの労働市場への参加を促進する。

  1. (1) 雇用のセーフティネットを早急に強化し、雇用保険制度の給付の拡充ならびに対象者の拡大、公共職業訓練の拡充等を実現する。
  2. (2) 意欲のある求職者に対して適切かつ迅速に就労機会を提供すべく、労働市場の需給調整機能を強化する。このため、ハローワークの職業紹介事業に対する市場化テストの実施等を通じて官民の職業紹介事業の効率化を図る。
  3. (3) 企業・職場の実態に即した柔軟な働き方の促進、雇用・就労形態の多様化、ワーク・ライフ・バランスの推進に向けて、仕事と生活の両立に向けた環境整備を図る。また、事務系労働者の働き方に対応する労働時間制度のあり方について検討を進める。労災保険については、最近の災害発生率の低下を反映し、その料率等を適正に見直すとともに、社会復帰促進等事業を制度の趣旨に沿うよう整理する。
  4. (4) 全員参加型の労働市場を構築すべく、ジョブ・カード制度の普及促進など職業能力開発の基盤整備、高齢者雇用確保措置の着実な推進に向けた支援、トライアル雇用による企業の実態に即した障害者雇用促進などを推進する。
  5. (5) 人口減少下においても中長期的に経済社会の活力を維持するため、外国人材の円滑な受け入れ・定住を図るための法制面・体制面(担当大臣の設置など)の整備を進める。

8. 道州制の導入の推進と魅力ある経済圏の確立

地方の自立と活性化を促し、国際的にも魅力ある広域経済圏を確立すべく、2015年を目途に道州制を導入する。これに向けて、地方分権改革を推進する。また、地域活性化に向けて、農商工連携・構造改革を通じて強い農業を実現するとともに、観光産業の振興を図る。社会資本に関しては、各地域の個性と民間活力を活かしつつ、利便性の高いインフラを整備する。美しい街づくり、良質な住宅の供給、防災体制の強化を通じ、快適な住宅・住環境を整備する。

  1. (1) 2009年を目途に道州制推進基本法(仮称)を制定する。これに向け、内閣に検討機関を設置する。併せて、地方分権改革を推進し、国から地方への行政権限・税財源の移譲や国の支分部局の統廃合などを推進する。加えて、北海道などに限定されている道州制特区推進法の対象を都府県による広域連合に拡大する。
  2. (2) 国際的水準における都市や地域の魅力、競争力の向上を図るため、税制上の支援措置の導入等により、各地域の個性や創意工夫を活かし、安全、安心な都市・地域づくりを推進する。特に、県境を超えた企業立地や広域観光など広域経済圏形成に向けた取組みを推進し、地域の競争力を強化する。併せて、中小企業の自立と活力の向上等を図る。
  3. (3) 農業の体質強化と活性化に向けて、農地の集約を進めつつ、有効利用を促進する。このため、所有と利用の分離を推進するとともに、農地関連情報の収集・公開等に関わる体制を整備・強化する。また、新規就農者の受け皿として期待される法人経営体の新規参入や経営の多角化・安定化を促進するため、農地リース方式による参入可能区域を拡大するとともに、農業生産法人の認定要件を緩和する。
  4. (4) 観光立国の実現に向け、観光関連行政の点検・総合調整など観光庁を中心とした関係省庁間の連携を強化する。また、官民協議会を設置し、産業界と政府との対話を充実させる。海外プロモーション体制については、(独)国際観光振興機構による海外での情報収集やプロモーション活動を一層、推進する。国際空港の機能拡充、出入国手続の簡素化・迅速化、ビザ発給手続の簡素化、地域の魅力開発に向けた人材育成等を実施する。また、中国、韓国との交流人口の拡大等に向けて、両国政府との協力を推進する。
  5. (5) 地域の発意と責任に基づき、民間の経営ノウハウや資金を活用して、広域的な連携のもと社会資本整備を図る。このような観点から、PFIのさらなる活用に向けて、事業者選定(多段階選抜や競争的対話等)や事業運営(契約の柔軟な見直し等)などに関する制度等の改善を図るとともに、運用ガイドラインを整備することでPFIに関する環境整備を図る。
  6. (6) 円滑な物流を妨げているボトルネック解消の観点から、首都圏三環状道路等の早期整備や、国際標準コンテナの通行支障区間の早期解消といった港湾・空港へのアクセス改善等、緊急度の高い産業・物流インフラから戦略的・重点的に整備する。また、わが国の主要拠点港湾の国際競争力を向上させる観点から、主要港の広域連携の推進に加え、保税搬入原則の見直し、AEO(Authorized Economic Operators)制度の主要貿易相手国との相互認証をはじめとする輸出入手続の簡素化・迅速化を進める。さらに、利便性の高いシングルウィンドウシステムの構築を目指し、真のワンストップサービスを実現する。
  7. (7) 住生活基本法ならびに基本計画に則り、既存ストックを含めた住宅・住環境の質的向上、住宅の流通市場の整備を図る。耐震、バリアフリー、省エネ等の機能が一定基準を満たす住宅の取得、建設・改修については、市場活性化の観点からも、自己資金・借入れを問わず、費用の一定割合を控除する住宅投資減税制度を創設する。また、住宅投資や設備投資等の円滑な実施に向けて、建築確認審査を効果的・効率的に実施する体制等を引き続き整備する。
  8. (8) 首都直下地震をはじめとする大規模自然災害に備え、省庁の枠を越えた危機管理体制を強化するとともに、企業、行政、NPOが効果的に連携する体制を整備する。

9. グローバル競争の激化に即応した通商・投資・経済協力政策の推進

企業が自らの責任と創意工夫の下、国境を越えてより自由かつ円滑に活動できる環境を戦略的に整備する。このため、WTOに基づく多角的自由貿易体制の維持・強化を通商戦略の基軸に据えつつ、それを補完する手段として、わが国にとって重要な国・地域との間で経済連携協定(EPA)を締結する。東アジア経済共同体の構築を視野に入れつつ、2011年には東アジア全域に及ぶEPAの成立を目指す。国内産業の競争力強化に資する構造改革に取組み、その成果を交渉に有機的に結びつける。途上国を含めた世界経済の安定・発展ならびにわが国との経済関係の強化などを促す手段として国際協力を戦略的に活用する。さらに、対日直接投資の一層の促進を図る。加えて、わが国の国際競争力強化の観点からも、通関制度や港湾諸手続など貿易諸制度について、抜本的改革を行う。

  1. (1) WTOドーハ・ラウンド交渉を早期に妥結させるため、わが国としても積極的な役割を果たし、グローバルな貿易の自由化を促進する。
  2. (2) 東アジアのダイナミズムを取り込み、共に豊かさを追求するため、韓国、インドとのEPAを締結するとともに、これまで締結した二国間・多国間EPAの成果をもとに経済連携ネットワークの面的な展開を進める。また、豪州と早期にEPAを締結するとともに、EU、米国とのEPAを当面の課題と位置づけ、それらの実現に向け、早急に具体的な取組みを開始する。併せて、資源・エネルギー、食料供給国に対しては、EPA等の経済関係を強化するための枠組みを整備する。
  3. (3) 上記の通商政策を推進するため、また、わが国にとって重要な課題である資源・エネルギー・食料確保や地球環境問題への対応等の観点からも国際協力を戦略的に活用する。このため、円借款・無償資金協力・技術協力の有機的連携を図るとともに、国際協力における官民連携を強化する。
  4. (4) 対外経済政策について、民間の意見を継続的に取り入れる仕組みを確立するとともに、対外交渉および農業等に関する必要な国内構造改革を政府一体となって推進する。
  5. (5) 貿易円滑化とセキュリテイ強化を両立する。わが国の通関制度や港湾諸手続など貿易諸制度について、ユーザーの視点から政府一体となって抜本的改革を行う。具体的には、貿易手続改革プログラムを着実に推進する。

10. 戦略的な外交・安全保障の推進と憲法改正に向けた合意形成

世界から尊敬される国を目指し、わが国の繁栄と世界の平和に向け国際社会が抱える課題に主体的に取り組むべく、日米同盟を基軸とした戦略的な外交・安全保障政策を推進する。内外情勢や国民意識の変化に対応して憲法改正の合意作りを進める。

  1. (1) 中国・韓国などの近隣諸国との信頼関係の強化を図る。
  2. (2) 自衛隊などの国際貢献を推進し、内外の信頼を確保する。このため、国際的なテロリズムの防止と根絶のために行われる陸上・海上を通じた国際社会の取組みに、日本として積極的かつ主体的に寄与できる法制度の整備や、安全保障に関する基本法ならびに国際平和協力に関する一般法を整備する。
  3. (3) 憲法改正の実現に向けて、国会における憲法審査会の早期開催等を通じ、各界各層における議論を喚起する。
以上

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