日本経団連が「電子行政推進シンポジウム」を開催

2009年12月8日

日本経団連は、2009年12月8日に、東京・大手町の経団連会館において電子行政推進シンポジウムを開催し、わが国の電子行政のあり方について議論した。当日は、冒頭、御手洗冨士夫日本経団連会長が開会挨拶を行った。次に、原口総務大臣の代理として長谷川憲正総務大臣政務官が来賓挨拶した。続いて、渡辺捷昭日本経団連副会長・情報通信委員長(トヨタ自動車副会長)が、経団連提言「ICTの利活用による新たな政府の構築に向けて」について講演した。パネルディスカッションでは、津村啓介内閣府大臣政務官、木下敏之前佐賀市長、野村敦子日本総合研究所主任研究員、秋草直之日本経団連電子行政推進委員長(富士通取締役相談役)、モデレーターの遠藤紘一日本経団連電子行政推進部会長(リコー副社長)が電子行政のあり方を巡り活発な意見交換を行った。最後に清田瞭日本経団連情報通信委員会共同委員長(大和証券グループ本社会長)が締め括りの挨拶をした。

当日は、企業トップをはじめとする企業関係者、政府や地方自治体関係者、経済広報センターの広聴会員など幅広い分野から約450名が一堂に会し、電子行政を求める機運が高まった。

新たな政府の再構築にICT利活用は不可欠

御手洗 冨士夫  日本経団連会長

御手洗冨士夫 日本経団連会長 わが国の経済は、最悪期は脱したといわれているが、デフレ、雇用、為替など、予断を許さない状況が続いている。民間の活力を基軸として、わが国の経済状況を一日も早く成長軌道に乗せていくためには、政府と産業界が緊密に連携をとることが重要である。
現在、政府は、中央集権型の政府を、時代と国民のニーズに合致した新たな形の政府への再構築を目指している。このためには、ICTの利活用と電子行政の推進が不可欠である。
電子行政の実現により、縦割り行政や国と地方の連携不足等が改善される。政府が検討を進めている税と社会保障制度の共通番号の導入も、電子行政と結び付いてはじめて、安心安全な社会を構築する基礎となる。
電子行政は、従来の行政のあり方を根本的に変革するものであり、国民や政府の理解と協力が必要であり、政治の強い指導力、実行力が大いに期待される。本日のシンポジウムが、近代的な電子行政に向かう第一歩となることを願っている。

進むべき方向を決めて推進するのみ

長谷川 憲正  総務大臣政務官 (原口総務大臣代理)

長谷川憲正 総務大臣政務官 電子政府は、技術的な問題があるのではなく、政府に本気で取り組む気持ちがない、国家の意志が足りないことが問題である。フィンランド大使の時に、エストニア大使も兼任しており、エストニアの閣議室を見学した。閣議室は電子化されており、一切紙を使わない。ところが、システムは日本の企業のものだということだった。日本に力がないわけでなく、まさに国家の意志が足りない。
現在は本気のリーダーシップが求められている。総務省は、電子政府の取り組みに関して、経団連と共同でタスクフォースを開く。もはや時間をかけて研究をしている段階ではない。いくつかの場を通じて、早急に進むべき方向を決め、後は全力で推進するのみである。

国民視点から見た電子行政の必要性

【資料】 <PDF>
渡辺 捷昭  日本経団連副会長・情報通信委員長/トヨタ自動車副会長

渡辺捷昭 日本経団連副会長・情報通信委員長 現政権の目指す「国民主権」や「地域主権」の実現にはICTの利活用が必要。新たな行政の構築に向けた活動が始まった今こそ、電子行政を強力に推進するとともに、ICTを活用し、我が国の国際競争力を強化していく絶好のタイミングである。
政策の実現に向けては、次の4つの点でICTの利活用が欠かせない。
第一が、行政の無駄の排除。現在、国と地方自治体との間で、多くの紙のやりとりや重複した手続きが行われ、国民や企業に多大な負担がかかっている。国地方の行政に必要なデータが電子的に連携されれば、事務コストや手作業による間違いが大幅に減少することは間違いない。地方への分権や国の出先機関廃止、道州制の実現にも電子行政が不可欠である。
第二が、安心できる社会保障制度の確立。例えば、「年金通帳」を電子化して、自宅でいつでも年金の過去の納付状況や、将来受け取る年金額などを確認することができるようになれば、国民の将来不安を和らげることができる上、政府への信頼感も高まるのではないか。税・社会保障制度の共通番号が実現すれば、色々な行政サービスのワンストップ化も可能となる。
第三が、国民・企業の利便性向上。新たに導入される「子ども手当」の受給手続きや、引越や結婚、出産といった人生の節目ごとの手続きを、ICTを使って、自宅のテレビ、パソコン、携帯電話経由で、簡単に行なうことが可能となる。企業も、行政手続きが簡素化・効率化され、事務コストを大幅に削減することが可能となる。民間企業との連携で、より便利なサービスが創出されることも期待できる。
第四が、行政の透明性向上。電子行政の前提となる業務プロセスの標準化により、行政手続きが透明化される上、個人情報への不正アクセス防止、アクセスの追跡も可能となる。行政と国民との対話も可能となる。

政府IT戦略本部の評価専門調査会では、国民にとって身近なライフイベントである「結婚・妊娠・出産・育児」に関する手続きを重点評価した。国民の約9割が、結婚に伴う姓の変更や、子どもを抱えての児童手当の申請などに不便を感じており、行政が国民に提出を求める書類の約6〜7割は、既に行政が保有している情報であった。例えば、児童手当の受け取り手続きでは、役所内の情報連携により、年金加入証明書や所得証明書などの添付書類が削減され、住民側は手続きが不要となり、行政内の手続きも、現在5つの手順を2つに減らすことができるようになる。現在は、法令などにより紙での提出が求められており、ICTの利活用を行なうには、既存の法令の見直しにまで踏み込んだ対応が必要となる。
電子行政推進のためには、(1)プライバシーやデジタル格差への配慮、(2)行政手続きの公開・透明化、(3)国民に対する情報の二重請求禁止、(4)各省庁・地方自治体を通じた電子行政の全体最適化、(5)行政文書や手続の原則電子化・オンライン化――の5つの原則のもと、「徹底した業務改革・業務の標準化を図るとともに、電子行政によって余裕の生じた人財の有効活用」「電子行政推進担当大臣(行政CIO)の明確化と電子行政推進体制の整備」「社会保障・税共通の番号制度、企業コードの導入」に早急に取り組む必要がある。
より安心・安全な国民生活や魅力ある国家基盤を構築し、国際競争力を強化していくために、電子行政の推進とともに、ICTに係る、人材育成、技術開発、利活用、国際展開に至る総合的な国家戦略を立案、遂行することが重要であり、そのためには、官邸主導により実現へのロードマップを明示し、具体的・定量的な成果目標を設定して、PDCAサイクルを強化し、着実に実行、改善を重ねていくべきである。
経団連は、原口総務大臣と「電子行政タスクフォース」を設置することで合意している。提言が一日も早く実現されるよう、関係方面との連携を図りながら、進めていきたい。

パネルディスカッション
「共通番号なくして電子行政はありえない」

遠藤部会長
遠藤部会長
木下氏
木下氏
津村政務官
津村政務官
秋草委員長
秋草委員長
野村氏
野村氏

国民の視点から業務の見直しや情報の連携を

木下

市役所の内部ではデータ連携をしていないところが多い。例えば、市営住宅の申込みをするときに、今も当たり前に、所得証明や住民票の写しを住民が市役所で取得し、市役所の別の部署に提出している。非常に無駄である。所得税と住民税も同じような情報にもかかわらず、税務署が持つ確定申告の情報を各市町村がコピーして、もう一度市町村の職員が入力している。組織を横断して連携するには程遠い状況である。
役人は、基本的に顧客目線を持たない。企業経験者が首長や議員として行政内部に入っていかないと、変わらない。

野村

2001年に「e-Japan戦略」が発表された当時、5つの重点分野の中に電子政府・電子自治体があり、行政手続きが楽になる、行政情報も入手しやすくなる、住民と行政のコミュニケーションが円滑化される、などを期待したが、9年を経た現在を見ると、そのとおりにはなっていない。
政府が今年の初めに電子申請等手続に関する意見を募集したが、寄せられた応募件数は30通。内訳は、個人13、団体5、残りの12は内輪である電子政府推進員からの意見であり、たった18通しか外部から寄せられた意見はなかった。まさに、電子行政に対する国民の認知度の低さを表している。
確定申告にe-Taxを利用しようとすると、公的認証として住基カードを取得し、読み取り用のリーダーを購入しなくてはならない。だが、個人が申告するのは年1回だけである。国税庁が5000円の控除制度を設けているが、詳しく知らない人が多いのではないか。また、パスポートの電子申請は、利用率が低く廃止された。たいていの人が10年に1度しかパスポート申請をしないうえ、電子申請であるはずが、依然として紙ベースの添付書類が必要となると、わざわざ電子申請をしようと思う人は少ないのではないか。
結婚、出産、育児、転職、離婚、退職など、様々なライフイベントの度に行政手続きが必要になる。こうしたライフイベントの時に行政手続きが一つのサイトで全てできるワンストップサービスを実現してほしい。実際、政府の電子行政の窓口を見ると、出産、育児、納税などの項目があるが、最後は「市町村の窓口にお尋ねください」で終わっており、そこで手続きを完結することはできない。省庁・地方自治体それぞれの行政情報や行政手続きをただ単に電子化しただけで、省庁間、国と地方自治体の垣根を越えた連携などがなされていないようでは、国民は便利だな、利用したいなとは思わない。もっと国民の目線で考えて、利用者の利益になるように工夫してほしいし、認知度を高めるためにもっとわかりやすくPRしてほしい。

秋草

企業が情報システムを作るとき、コードを付けることは基本のきである。コードのない情報システムはありえない。ところが、日本には、国民番号(国民ID)として、国が認めている統一の番号はない。住基カード、健康保険証、免許証、パスポートなどの番号は、全て違う。2001年にIT戦略会議の委員として、最初に、「国民番号なくして電子行政はありえない」と発言したところ、後で委員の方々から、よくぞ言ってくれたと言われた。これを避けている限り、日本の電子行政はありえない。まず、民主党が国民番号をつくるということを明確に意思表示することが大事である。

津村

内閣府の菅大臣、古川副大臣の下でIT担当の仕事をしている。年明けにIT戦略本部を再キックオフする予定であり、現在、基本戦略やアウトラインを描く作業を進めている。
事業仕分けでは、電子申請システムについて各省が大きな目標を掲げて進めているが、何十億円という投資をしてシステムを作っても、ほとんどニーズがないケースもあった。従来のIT戦略が、省庁縦割りや、国と地方でバラバラで、縦串、横串が十分機能していなかったのではないか、IT戦略本部やIT担当部局が期待されているリーダーシップや総合調整機能を果たしてこなかったのではないかと感じている。

ICTで住民の意見を直接行政に伝える

木下

自治体で電子行政、電子自治体というと、IT技術だけに話が向いてしまうことが多く、顧客目線で業務改善をするという視点がすぐ消えていく。地方自治体にとって、電子行政というと具体的にこういうことをするのだともう少しブレークダウンしたものがあると、もっと反応がいいと思う。
佐賀市長をしていた時、一番したかったのは、直接民主主義である。今、千葉県の市川市がしている。年齢や職業や家族構成などの情報を市民約4500人が会員として登録しているサイトが市役所にあり、市役所はあるテーマに関する1000人分位の回答を一晩で取ることが出来る。これが事業仕分けの進化形ではないかと思う。
今、福祉関係の補助事業は、申請があって初めてそれを確認する「申請主義」である。市役所の持つ所得情報と住民情報をデータ連携させると、誰がその補助事業の対象になるか、かなりの確率で分かる。本当にもらうべき人を役所側がチェックして、あなたはもらえるはずですよと知らせる「プッシュ型行政」に変えていくべきである。私も佐賀市長の時にしようとしたが申請主義からプッシュ型に変えた途端に、必要になる予算が何倍かになることが直感的にわかったので、怖くて踏み出せなかった。しかし、資格を厳しくしたり、他の予算を削るなど、現実的な対応は可能である。

野村

ITの特徴である、即時性、オンディマンド、双方向性、コラボレーションなどを電子行政に活用していただきたい。私が実現してもらいたいのは、市民のアイデアや行動力を行政の中に取り込み、業務改革につなげていくという発想での取組みを増やすことである。地域主権を実現する上で、開かれた行政、住民参加が基本と言われており、これを実現するにはITの活用が不可欠だと思う。

行政の標準化・電子化の推進により、企業の事務コストを削減

秋草

企業と行政の接点は意外に多い。例えば、年末調整。富士通では、グループの社員も含めた7万8千人分の従業員を一括してコンピュータで処理し、法定調書を税務署へ提出している。また、住民税を算出するために市町村へ給与支払報告書を提出して、確定した住民税額を取得している。富士通では940か所の自治体に提出するが、そのうち電子媒体で受付可能なのはたったの80か所のみ、しかもフォームが各々違っている。紙からコンピュータ、紙からコンピュータを2、3回繰り返す。毎年、7万8000枚、5600時間、瞬間的には160名がかかわっている。事務のコストダウンが、行政の仕組みができていないためにうまくいっていない。同様の手続きが他にもたくさんある。
行政機関ごとに違う企業番号が振られており、13種類位ある。大きな企業は、お互いにコンピュータで整合性をとっているが、小さな企業は全て人手で対応しており、大変な時間と人が関わっている。
国連のICT化による政府の業務効率化のランキングで、日本は78位である。これはもっと深刻に受け止めるべきである。ITは現実のシステムの写像である。現実の社会や組織が複雑だと、ITは複雑になる。シンプルになれば、ITもシンプルになる。行政の仕組みが変わっていないことが問題であり、行政自身が変わらなければ、いいITシステムはできない。

遠藤

自社のCIO(Chief Information Officer)をしていた約15年前に構造改革をしたが、改革は今も続いている。企業の体質改善は、生活習慣病を治すことに似ている。いくら手術をしても、それだけでは治らない。一挙手一投足、頭の中を少しずつ変えて、やってよかった、それなら継続しようということになる。電子行政は、現状ではやってよかったという実感が、国民にも企業にもない。その実感が得られるところまで持っていくべきである。千葉県の市川市や九州のいくつかの市などの先進的な取組みによりいかに変わったかを国民に見せていくことも大事である。

木下

私も、市長を辞めるまで、書類の様式が自治体によってそれぞれ違うことを知らなかった。大部分の首長は、電子申請の様式が微妙に違って、企業が作り直さなくてはいけないことを知らない。知ったら少なくとも県内で統一しようという動きが出てくるはずである。この問題をぜひ首長に伝えていただきたい。
政府のCIO補佐官で、正規の国家公務員として採用され、報酬をもらっている人は、ほとんどいない。民間出身のCIO補佐官をきちんと正規の公務員として雇い、その人がOKと言わないと予算が通らないようにすべきである。
大部分の市町村では、ITの資産台帳を持っていない。全体最適化の議論の前提として、どの部署にどんなシステムが入っていて、どのコンピュータをいつ整備し、ソフトは何かという資産管理台帳を作るべきである。

遠藤

アウトソーシングすると、実態が分からないままになってしまう。自分の生命線の一つであれば、自分が中身をきちんと握らなくてはいけない。CIOやCIO補佐官を決めたらその人にまかせてしまう、インターナル・アウトソーシングも、電子行政では絶対にいけないことだと思う。

野村

今までの議論の共通のキーワードとして、統一化、共通化、継続性が指摘できる。
統一化、共通化は、国民共通のID番号もそうだが、省庁、自治体によって異なるフォーマットを標準化、共通化していくことが必要である。これまでの電子化の取組みは、省庁ごとに高度なシステム開発をしたり、自治体がそれぞれ独自にシステム開発を行っていたが、それを改め、共通の基盤を構築することが考えられるのではないか。そして、その共通基盤上における活用については省庁、自治体でアイデアを競い合うことで、コスト削減や効率化を進めることができるのではないかと思う。
継続性も必要である。首長が変わるたびに方針が変わるようでは困る。ITは、長期的な視野から、継続して取り組むことが大切である。CIOだけでなく、電子行政、電子化の必要性について職員共通の認識も必要である。
これらを実現する上で、強い国家意思が必要になる。総務省と経団連のタスクフォースが、電子行政ばかりでなく、わが国のICT戦略のあり方や方向性を強く打ち出していくことを期待している。

津村

省庁を超えた国家戦略としてIT戦略がなぜ必要で、それがなぜ政府の役割なのか、元になる議論が見えていないというのが正直な感想である。政府として何をすべきなのか、ぜひ知恵をいただきたい。

木下

企業側から電子申請するときの様式がものすごくたくさんあって手間がかかっているということをもっと行政に訴えるべきだ。様式を統一して企業の手間がかからないようにしてコストを下げることも、有効な景気対策である。自治体同士で調整するのは難しいので、政府として大きな方向性を出してもらえると、企業は喜ぶと思う。

秋草

様式の統一ということでは、銀行も自治体の納付サービスで困っている。納付書のフォーマットが自治体によって全部違う。それをスキャナーで読み取って、自治体毎に判別して処理している。銀行も我々も高いお金を使って開発している。こういうところを統一してもらえると、民間は助かる。標準化は大事である。

遠藤

企業の場合も、一つ一つはものすごく大きな数字ではないが、こういうものがあちこちにあって、積み上げると莫大な額になっている。日本で製造すると固定費の比率が高いことが大きな課題の一つである。企業の固定費を下げたり、国民の負担を軽減したりすることが、輸出競争力や国際競争力を高めることになる。

津村

昨年4月の経済財政諮問会議で、御手洗会長から内部管理業務の標準化を進めるべきという指摘をいただいた。各省庁で旅費は1200通りの支払い基準があったが、30通りにした。謝金は300種類あったものを11にした。書類の様式を統一する話は非常によくわかる。
民主党政権の目玉として、国家戦略、行政刷新があり、スクラップ&ビルドと言っている。壊すのは分かりやすく、比較的簡単だが、国家戦略は、まだ道半ばである。5つのK「雇用、景気、環境、子ども、科学技術」で成長戦略を描くところまでは決まっている。省庁の横串を刺して様式を統一化することなどを景気対策の一つの柱にしていきたい。一方で、ビルドのプラスの付加価値を生むようなものとして、知財の戦略本部で、アニメなど日本が誇るべきコンテンツをどうITに乗せて日本の国益につなげるかなどを議論している。

ぜひとも共通番号の実現を

木下

新政権にこの4年間でお願いしたいことは、ただ一点。納税者番号と社会保障番号を一緒にする議論の中に、住基コードも取り込んでいただきたい。
明治維新の戸籍統一、太閤検地のように、政権が変われば大きな基盤整備の政策が打てる。ITの世界では住基コードを取り込んで番号を統一して基盤を整えていただきたい。年金のことを考えると、住基コードと社会保障番号を一緒にしないと安心できない。

野村

電子行政で政府のあり方自体を変えてしまうくらいの心意気や思い切った発想の転換が必要である。日本がITと人の知恵を駆使して国のあり方を変革するなど、他の国のお手本となる国を目指せば、世界から尊敬される国にもなれるのではないか。
例えば、政府が推進する政策を電子行政に織り込み、国民の意識を変えることもできる。イギリスの電子行政のホームページで「住む」という項目を見ると、「家を売る」「家を買う」などと並び「グリーン化」という項目があり、家を移り住む人に環境を意識させようとする政府の意図が窺える。わが国でも、「住む」の項目でエコ住宅のメリットや太陽光発電の費用軽減措置、「自動車」の項目でエコカーのメリットなど、政策メッセージを織り込み、国民の意識を高めることができよう。

津村

私がしたいのは、情報公開である。IT、電子行政に大きな投資をしても、利用者があまりいないケースもある。政府は、最大のコンテンツサプライヤーでもある。ITを使いこなしている人以外にも電子行政を身近に感じてもらうには、自分に必要な情報がそこでとれることが重要である。今、事業仕訳の映像や税調や記者会見の議事録を公開しているが、アクセスが多い。情報公開とIT・電子行政を結び付けるだけで新しい広がりができるのではないかと考えている。
今、小さい子どもたちがITになじんでいることを、もっと日本の国力につなげていけないかと思っている。

秋草

納税者番号と社会保障番号と結び付けて、ぜひとも国民番号を実現してほしい。住民票コードは、地方自治体が発行するものではなく国が発行するという形にすべきである。
今、住民と行政の接点はほんのわずかである。一般の人にとっては、安全安心、防犯・防災、環境、ヘルスケアなどが関心事であり、そういう情報発信を国がしていくべきである。
日本は、地震、津波など、あらゆる種類の自然災害がある、いわば災害百貨店である。ITを使って自然災害に世界で一番強い国になるべき。大雨で大洪水になる等の予測を行政から携帯電話やインターネットなどで国民に直接知らせることができるようになればよい。それが日本経済の成長の糧になれば、もっと素晴らしい。

遠藤

政府にお願いするだけでなく、われわれも含めここに集まっている人たち全員が電子行政の実現に向け一緒に歩んでいくという気持ちが大事である。

日本の将来のために、電子行政の実現を求める声を

清田 瞭  日本経団連情報通信委員会共同委員長/大和証券グループ本社会長

立場はそれぞれ違っていても、国民のために、日本の将来のために、電子行政を一層推進すべきだという強い思いは一致していると深く印象づけられた。あとは、これを政府の改革の中で明確に位置づけ、強力なリーダーシップの下で、着実に実行に移すということに尽きる。
経団連と総務省は、電子行政タスクフォースをつくり、議論を深めるが、電子行政の実現に向けて、経団連としても最大限の協力をしていく予定である。わが国の高い技術力や、民間の知恵を活かし、国民が世界一便利な国づくりを実現するためには効率的な電子行政を早急に実現したいという思いを、本日、新たにした。
皆様お一人お一人が、電子行政のメリットを享受される最大の関係者であろう。ICTの利活用の重要性にご理解をいただき、日本の将来のために、電子行政の実現を求める声をあげていただきたい。

以上

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