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国際投資環境のあり方とわが国の対外・対内投資

〜多国間投資協定(MAI)交渉に望む〜

〔補論〕

わが国の対外・対内投資の課題


  1. 規制緩和の推進
  2. わが国は、投資の出し手として対外投資相手国の経済発展に寄与するのみならず、対内投資受け入れを促進するために十分に国内投資市場を提供していく必要がある。日本市場における規制が内外企業を問わず新規参入を妨げている側面があることは否めず、わが国は規制緩和を強力に推進することにより、世界に対する責任を果たさねばならない。規制緩和の推進による海外からの投資の拡大は、国際経済の発展に寄与するのみならず、日本市場での競争を活性化させ、消費者の選択の幅を広げ、国民の厚生を増大するものである。
    経済界は、政府の規制緩和推進の努力を積極的に支援するとともに、自身も自己責任原則を徹底し規制緩和の痛みを受け入れ、市場活性化の成果を活用していくばかりではなく、合理性に欠ける商慣行については見直すべきである。

  3. 対日投資の積極的施策
  4. 現在、わが国の対内直接投資の拡大は対外直接投資に比較して極端に少ない。これを改善するためには、規制緩和ならびに行政の透明性の向上とともに、地価などのコスト要因を改善することが必要である。また、国内での新たなビジネスの創造、国際分業の推進のためにも対日直接投資の総合的施策が不可欠となっている。わが国は、外資系企業の参入・事業活動円滑化に資する税負担軽減措置の拡充、年金支払いに関する通算協定の締結、純粋持株会社の解禁と連結納税制度の導入、政府系銀行の優遇金利制度など資金調達面でのインセンティブ等、積極的施策に努力すべきである。また、海外投資家にはわが国投資インセンティブの有効活用を期待するものである。

  5. 国際的ルール構築へのコミットメント
  6. わが国は、国際社会の責任ある一員として、国際投資環境の整備に参加し、投資の活性化に寄与していかねばならない。GATTウルグアイ・ラウンドの成功とWTO設立へのコミットメント、これまでのAPECに対する貢献に引き続き、MAIにおけるルールづくりに積極的に参画していくべきである。OECDではアジアからの参加国として、非加盟国が段階的にMAI加入への準備を行い得るための施策を講じる責任がある。
    また、国内の規制緩和を推進し、自由な投資市場の整備をリードしていくことが重要である。
    なお、わが国は二国間投資協定を4ヶ国としか締結しておらず、自国企業による海外投資の保護システムは十分整備されている状況にはない。わが国産業構造の変化を踏まえ、海外投資の果実を確実に合理的な手続きによって還流させるための仕組みを維持することが必要である。かかる意味においても、MAIの意味ある形での成立はわが国産業界にとって多くの利益をもたらすものと考える。


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