[目次] [はじめに] [第1部] [第2部] [1章] [2章] [3章] [4章] [5章] [6章] [Action21] [おわりに] [参考]

魅力ある日本

新日本創造プログラム2010(アクション21)


  1. 規制の撤廃、不透明な行政指導の排除により「脱規制社会」を構築する
    1. 規制の抜本的見直し
      1. 2000年までに需給調整の観点からの参入規制、設備新増設規制を完全撤廃すると同時に、価格規制を含む経済的規制を半減し、2010年までに経済的規制を原則撤廃する。
      2. 全ての社会的規制の洗い直しを行い、安全、健康、環境等に関する必要最小限のものに限定する。
      3. 企業としても、規制の撤廃・緩和に協力するとともに、規制の撤廃・緩和の成果を活用する。また、企業自らも、自由な競争を妨げている商慣行について、見直しを図る。

  2. 行政改革、税財政改革を推進し、小さく効率的な政府を実現する
    1. 税制の直間比率の是正
    2. 所得税負担、法人税負担を欧米先進国並みに引き下げるとともに、消費税率を引き上げ、国税の直接税比率を50%程度まで引下げる。また、納税者番号制度を導入し、所得税を総合課税とする。

    3. 中央政府のスリム化と省庁の再編成
    4. 「官から民へ」「国から地方へ」の理念のもとに、行政改革、歳出改革を行い、中央政府のスリム化、財政の健全化を図るとともに、縦割行政の弊害を排除して新しい時代の要請に的確に対応できるようにするため、中央政府について、大くくりな再編成を行う(例えば総合交通省、情報通信省、経済協力省、通商代表部など)。

    5. 行政の透明性の向上
      1. 行政立法手続法を策定し、行政立法(政省令)に当たっては、事前に案文を公開し、公聴会の開催を義務づける。また、地方自治体において、行政手続法の規定に沿って、行政手続条例を制定し、地方行政運営面での公正の確保、透明性の向上を図る。さらに欧米諸国並みの行政情報の開示を行う。
      2. 企業としても、行政とのもたれ合いを排除するとともに、適時適切な経営情報の開示を行う。

  3. 首都機能移転を推進し、新しい分権型国家システムを構築する
    1. 首都機能の移転
      1. 首都機能移転を、「新日本創造プログラム2010 (アクション21) 」の象徴と位置づけ、行政改革・規制緩和、地方分権と一体的に進める。
      2. 1998年までに移転先を決定し、2000年までに首都機能の移転先となる新都市の建設に着手、2010年までには新都市での第1回国会を開催する。また、防災型の都市基盤、交通アクセス、情報通信ネットワークの整備を優先的に実施する。経済界としても、民間の立場から、首都機能移転に関する提言を行うとともに、計画的な都市づくりに主体的に参画する。

  4. 自然環境と地域の特性が活かされた豊かな国土を形成する
    1. 新たな国土軸・地域連携軸の整備と新しい都市の建設の促進
      1. 自然環境の保全を図りつつ、国土の安全性の確保ならびに質の高い自立的な地域社会の形成に貢献できるネットワークを構築するため、新たな国土軸の整備 (高速交通網、情報ネットワーク等) を推進するとともに、地域における拠点と地域全体とを結ぶ連携軸・交流軸を整備する。
      2. 機能性、利便性に加え、美しさや健康、安全性、快適性などが享受できる、新しい時代にふさわしい都市の建設を推進する。
      3. 企業としても、民間のノウハウを提供し、公共事業の効率的運営に貢献するとともに、計画的な都市づくりにおいて積極的な役割を果たす。

    2. 国際線・国内線の接続機能を完備した大規模拠点空港の複数整備
      1. 成田II期工事、関西空港II期工事を推進するとともに、中部新国際空港、首都圏第三空港を建設し、交通アクセスの整備ならびに円滑な乗り継ぎを図る。
      2. 経済界としても、民間のノウハウを提供して空港の効率的運営に貢献していく。

    3. 情報通信インフラの整備と行政の情報化の推進
      1. 中央・地方行政組織を通ずる情報通信ネットワーク化を推進する。また、研究所・大学のネットワーク化・データベース化ならびに教育、医療、福祉に関する情報通信ネットワークの整備を図る。
      2. 企業としても、高速・大容量のディジタル通信網の整備を市場原理に基づいて推進するとともに、国民生活の質的向上に資する情報通信ネットワーク事業の開発・拡大ならびに産業の情報化・ネットワーク化を実現する。

    4. リサイクル施設の整備等循環型経済社会の構築
      1. 資源ゴミの再資源化、粗大ゴミを破砕し有価物を回収する施設、可燃ゴミの固形燃料化を行う施設等を整備する。
      2. 化石燃料への依存度低減をはじめとする、省資源・省エネルギーのための技術開発を推進するとともに、自然環境の保全に努める。
      3. 企業として、省エネ・省資源ならびに自然環境との調和を図るとともに、設計から製造・販売にいたる各段階においてリサイクルに配慮し、また、行政、コミュニティ等と連携してリサイクルを実現する。

    5. 阪神・淡路大震災被災地の復興事業と公共施設の耐震補強工事の推進
      1. 未来型都市づくりのモデル地域として、規制緩和と地方分権を実現しながら、災害に強い街づくり(土地区画整理事業、市街地再開発事業等)、高齢者・障害者を支えるネットワークづくり、安心とやすらぎのためのコミュニティづくりを一体的に進める。
      2. 神戸国際マルチメディア文化都市(KIMEC:次世代の情報通信技術に関する研究開発を推進)構想の目的に沿って、最先端の研究開発の推進ならびに災害に強い新たな情報通信システムを構築するとともに、これと一体となった交通システムの運営、ゴミ処理・資源リサイクル、地域エネルギー供給、土地利用・都市計画等、新しい都市運営のソフトを開発し、それを適用していくモデル地域とする。
      3. 国際的な整合性のある税制、事業・立地規制、保税措置等により、内外企業に自由な経済活動を保証するフリー・エンタープライズ・ゾーンを設ける。
      4. ライフライン(電力、ガス、水道等の施設)、鉄道(新幹線盛土等)、港湾、河川(1級河川堤防等)、道路(高架橋梁等)などの公共施設に関して、今回の大震災の教訓を活かして、耐震補強工事を推進する。
      5. 経済界としても、阪神・淡路地区の復興に資する活動を行うとともに、耐震・防災に努める。

  5. 世界のフロントランナーに相応しい研究開発体制を構築する
    1. 研究開発の強化
      1. 国の研究開発費、高等教育費を5年間でそれぞれGNP比1%に倍増し、大学および国立研究機関の機能を強化する。さらに、産学官相互の連携・交流の強化、科学技術行政の企画調整機能の強化・一元化、科学技術教育の充実強化を図る。
      2. エネルギー分野(環境、食糧、人口問題を含む)、生命分野(高齢化対応を含む)、情報分野(ソフト開発を含む)の研究開発に戦略的に取り組む。
      3. 企業としても、厳しい環境のなかで引き続き研究開発を推進する。

  6. 創造的な人材を育成し、多様な個性が尊重される社会を建設する
    1. 受験戦争の解消
      1. 学生が自分の目的意識や能力に応じて教育進路を選択できるよう、多峰型の教育体系を構築することにより、受験戦争を解消していく。教育界、とくに大学は、大学の多様化、個性化の推進、大学入試の改革を進める。
      2. 企業としても、個性や能力、創造性が尊重され、発揮されるよう、採用や人事制度を見直す。

    2. 労働移動の円滑化のための環境整備
      1. 求人情報ならびに産業・雇用情報、能力開発情報など、就職に関する総合的な情報を入手できるような情報ネットワークを構築するとともに、有料職業紹介事業、労働者派遣事業の原則自由化ならびに裁量労働に関する規制緩和を行う。また、企業年金のポータビリティを確保する。
      2. 企業としても、中途採用者や人材派遣業の積極的活用を図るなど、複線型の雇用、人事に努めるとともに、人事や研修に当たっては、従業員が主体的にキャリア形成ができるようにする。

  7. 国際金融センターに相応しい、利便性、効率性、透明性にすぐれた金融資本市場を構築する
    1. 市場規律に基づく金融システムの構築
      1. 金融に関する規制緩和を推進して「原則自由」の市場を構築するとともに、経営が破綻した金融機関に対して迅速かつ的確な措置を講ずる新しいセーフティネットを整備する。
      2. 郵便貯金・簡易保険を分割・民営化するとともに、公的金融機関について、民間金融機関で対応可能な業務は縮小する。
      3. 民間金融機関としても、行政とのもたれ合いを排除し、自己責任原則のもとで、適時適切な経営情報の開示を図りつつ、金融技術の革新、新商品・サービスを開発する。

    2. 円の国際化の推進
      1. 円を容易かつ効率的に調達・運用できる市場を整備し、円の利便性の向上を図るため、厚みのある短期国債市場の整備、金融資本市場における規制緩和、金融・資本取引に係る税制の見直し(有価証券取引税の撤廃、国債等に関する源泉課税の撤廃等)を行う。
      2. 企業としても、貿易取引等において円建て比率を引き上げる。

  8. 高齢化、少子化対策を推進し、明るく安心のできる長寿社会を構築する
    1. 高齢者の社会参加の推進と介護システムの構築
      1. 中高年層の自己啓発や技能強化を支援するとともに、再就職情報の提供・斡旋に努める。企業においても、勤務形態や賃金体系の多様化、キャリアの活用職域の拡大、情報通信ネットワークを活用した在宅勤務等を推進するとともに、再雇用制度の拡充を図る。
      2. 住宅、公共施設、インフラのバリア・フリー化(移動障害の除去)、地域のニーズにあった介護施設の整備を推進する。
      3. 中学校区単位で、家族、福祉・介護施設、市民活動団体、ボランティア・近隣、病院、民間企業、自治体が連携し、必要な時に必要な介護を行う相互扶助ネットワークを整備するとともに、幼児、青少年、高齢者をはじめとして、各層が世代を超えた交流ができるように努める。
      4. 高齢者の居住資産等を担保として、自治体、金融機関、不動産会社等が介護・生活資金の貸付、住居の賃貸などを行う制度(リバース・モーゲージ)を普及させる。
      5. 企業としても、地域における介護システムの構築に協力するとともに、介護休業への理解の高い企業風土をつくる。また高齢者・障害者の自立や介護に資する機器・保険商品・各種サービスの開発を推進する。

    2. 少子化対策の推進
      1. ターミナル駅隣接の保育施設の拡充、延長保育・乳児保育の拡大、利便性の高い民間無認可保育所への支援拡大、個人家庭での保育への支援など、保育サービスを拡充する。
      2. 企業としても、再雇用制度の拡充や、育児休業制度の拡大、在宅勤務制度の普及など勤務形態の多様化を進めるとともに、それらの制度を実際に利用しやすい職場環境をつくる。

  9. 市民活動団体(NPO)が自律的に行動できる基盤を整備し、柔軟性と強靱性のある社会を構築する
    1. 市民活動団体(NPO)の社会的基盤整備
      1. 多様なNPOが自律を基本として活動していくための基盤となる「NPO法」を制定し、行政庁の裁量に依らずに法人格を取得できる途を拓く。
      2. NPOと市民・企業・自治体・行政などの連携を円滑化し、情報交流・資金提供などを活性化する機能を有する「NPOサポート・センター」を設立する。
      3. NPOへの課税ならびに寄附金税制を改善し、NPOの財政基盤を強化する。
      4. 企業は、資金、人材、技術・ノウハウ等の提供を通じて、市民活動団体とのパートナーシップ形成を図る。

  10. 外交力を強化し、「活力あるグローバル国家」にふさわしい国際的責務を担う
    1. 外交資源の拡充
      1. 初等教育の段階から外交教育を開始し、国際的な広い視野を持ち、国際社会で活躍できる人材の育成を図る。また、国際情勢に関する情報収集ならびに分析力を強化する。
      2. 経済界としても、国際的に通用する人材や専門家を育成するとともに、国際会議、国際機関等へ積極的に参加、派遣する。

    2. APECにおける貿易・投資の自由化の先導
      1. 開かれたAPECに向け、1995年11月の大阪行動指針に沿って、率先してボゴール宣言(2010年までに貿易・投資の自由化)を完全実施する。
      2. すべての工業製品に関して早期に関税ゼロとする。

    3. 経済協力の推進
      1. ODA資金と民間の活動が、途上国の経済発展支援のための車の両輪となった「顔の見える」援助を実現するため、一層の官民連携強化に努める。
      2. 経済開発における民間部門重視という世界的潮流を受け、経営ノウハウ、産業技術、経験などをもつ民間企業の人材を国際貢献に活用できるシステムを構築する(例えば、民間版国際協力事業団の設立)。
      3. 日本国際協力機構(JAIDO)の機能、業務の一層の拡充・強化を通じて、関係当局、機関の支援を得つつ、民間主体の対途上国投融資を促進する。
      4. 国際機関における日本のプレゼンスを高めるべく、世界銀行等の援助機関に対して、優秀な民間の人材を送り出す体制を整備する。

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