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魅力ある日本

第2部 我々が目指す日本の未来
【各論:望ましい姿ならびに改革すべき課題と提言】

第2章
政治のリーダーシップを確立し、透明で小さく効率的な政府を実現する


《望ましい政治・行政の姿》


  1. 政党の政策立案能力が飛躍的に高まり、政権担当可能な複数の政党間で、政策によって民意を問う政治が実現している。政治のコストは広く国民が負担することになり、主として公的助成、個人の寄付によって賄われている。

  2. 国会では、与党・内閣提案の政策と、野党が作成する対抗政策をめぐり、本会議、委員会で活発な議論が行われている。国会が行政府の施策を監視している。

  3. リーダーシップを有する内閣総理大臣が、その持てる力を充分発揮して行政各部を指揮監督している。内閣の政策立案は、政治のリーダーシップにより進められている。

  4. 首都機能の移転は完了し、東京一極集中が是正され、分権型国家の構築が進んでいる。魅力ある地方が全国に展開している。

  5. 官僚は国として必要な基本的政策のメニューを提示するとともに、時代の要請に対応した省庁再編が行われている。また、行政手続き、行政立法手続きの透明化、行政情報の開示が徹底されている。

  6. 国民、企業の自立自助を基本に、これまで果たしてきた財政の役割を可能な限り市場機能に委ねることにより、民間活力を最大限活かすとともに、政府は「市場だけでは供給されにくい公共事業やサービスの提供」、「経済ならびに国民生活の安定化」という本来の役割を効率的に果たしている。

  7. 経済活力の源泉である企業の税負担は、先進諸国の平均水準以下になるとともに、直間比率が是正され(間接税比率5割程度)、負担の公平、安定した税収が確保されている。

《望ましい姿を実現するための改革すべき課題と提言》

  1. 政党主導の政治への改革
  2. 今後の国の進路、政策を国民に提示し、リーダーシップをもって実行に移すという政治の役割は、極めて重要である。政治がこの役割を果たすためには、政党の政策立案能力の強化とともに、政策本位の国会運営が不可欠である。
    また、小選挙区制のもとでの総選挙を、事実上の首相公選と位置づけ、国民は、各党の党首の政治的リーダーシップ、政策体系、政策立案能力に対して判断を下す。
    首相の責務は、強力なリーダーシップを持って、国際的視点を踏まえながら国益を追求し、自らの言葉で日本が進むべき道筋を示すことにある。その使命を全うするために、首相を政治の立場から補佐する体制を強化する。
    政治に対して自由に意見を表明し、政治のリーダーを投票により選択することが、国民の権利であるともに政治改革の鍵であることを自覚し、国民は政治に積極的的に参画すべきである。

  3. 市民活動団体(NPO、NGO)とのパートナーシップ
  4. NPO(非営利組織)やボランティア団体が、内外で活躍する時代を迎えた。これに加え、財団や福祉施設、学術研究団体や芸術家団体など、多種多様のNPOが社会の広範なニーズに応えていく時代となった。政府と企業に止まらず、多様な活動を行う市民活動団体を擁することが、この社会に柔軟性とダイナミズムをもたらすことになる。
    市民活動団体の自律性を確保し、組織体として機能しうるようにするためには、先ず市民活動団体が法人格を容易に取得でき、社会的認知を受けられるようにする必要がある。さらに、寄付金税制を改善し、資金基盤の拡充につながるようにする必要がある。
    企業は、その持てる資源(資金、人材、機材、ノウハウなど)を活用して市民活動団体をいろいろな面で支援し、連携していくことができる。
    その結果として、NPOとのパートナーシップを築きあげることが、企業として社会に「高いアンテナ」を張ることになる。つまり、企業ならびに企業人がより深いところで実態に触れ、社会における多様な活動と共生していくことにつながっていく。

  5. 首都機能移転の推進
  6. 東京一極集中を是正し、国土の均衡ある発展と東京圏における都市・居住環境の改善を実現するためには、首都機能の移転が不可欠の課題である。あわせてこれを行政改革・規制緩和、地方分権の推進を加速する起爆剤として位置づけ、中央集権・官主導型の国家システムを改革して、分権型の国家システムを確立する必要がある。
    首都機能移転については、1998年までには移転先地を決定、2000年までには首都機能の移転先となる新都市建設に着手、2010年までに新都市での国会開催を目指す。

  7. 地方分権の推進
  8. 国民の価値観や生活様式・社会活動の多様化が進んだ今日、コミュニティに近い行政主体が、自らの責任を持って様々なニーズの把握・実現に取り組むシステムの構築が必要である。そのためには、国、地方の役割分担を見直し、規制緩和という大きな流れの中で地方分権を推進しなければならない。
    そのためには、権限の委譲とともに、財政基盤の強化と人材の確保が必要不可欠である。これに伴って、地方自治体が自らの行政に対しては責任を担っていくのは当然である。
    同時に、コミュニティ参加型の行政を実現するため、地方政治、行政の透明性を充分確保しなければならない。

  9. 小さな政府の実現
  10. 「官から民へ」、「国から地方へ」の改革理念のもとに、行政改革を推進し、透明かつ小さくて効率的な政府を目指すべきである。さらに、内政と外交の整合性の確保、時代の要請に対応した行政を実施していくためには、中央政府はできるだけ大くくりに再編成する。
    中央政府は、外交、マクロ的な経済政策など、国全体として整合性が必要な事項について政策立案し、国会の決定にしたがって行政を行うことを基本とすべきである。各省庁の事務当局は、政策メニュー(選択肢)の策定と国民への提示に注力し、政府案の最終決定は、内閣、大臣などの政治家が責任を持って判断する。
    また、行政手続法の活用、行政立法手続法(仮称)の制定、行政情報公開制度の導入により、民主的な行政運営を行う。

  11. 税財政改革の推進
  12. 活力ある経済社会を構築するためには、抜本的な経済構造改革が不可欠であり、税財政改革をその重要な柱として位置づけるべきである。その際、直間比率の是正、国際競争力の確保、高齢化社会に向けての自助努力を促すという視点が必要である。特に、経済発展の源泉である企業の活力を充分に発揮させるためには、法人税の実効税率を、少なくとも先進諸国の平均水準以下にする必要がある。
    財政については、国、地方、財政投融資それぞれの役割を見直したうえで、行政改革を断行するとともに、予算の重点配分を図ることが重要である。


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