セミナー「AI時代の民主主義」を開催しました
宍戸教授
中島研究主幹
経団連総合政策研究所(筒井義信会長)の資本主義・民主主義研究プロジェクト(研究主幹=中島隆博東京大学東洋文化研究所教授)は9月4日、東京大学大学院法学政治学研究科の宍戸常寿教授を招き、東京・大手町の経団連会館で、セミナー「AI時代の民主主義」を開催しました。宍戸氏による講演の概要は次のとおりです。
民主主義という政体は、構成員の多様性と共通性のバランスを取りながら、代表と参加の仕組みの中で意思決定をまとめていくプロセスだ。
現在の立憲民主主義は、自律的かつ対等な個人による自由な議論、公私の区別、責任政治、個人の尊厳と人権の尊重といった理念や諸制度に支えられているが、その外側にある脆い前提にも依拠している。すなわち、市民が民主主義に参加しようとしなければ民主主義は機能しないし、一人ひとりのエートス(倫理)が前提になっている。専門職能を有する人が自律性・独立性を持って物事を処理し、大局的な意思決定のバランスを保つことも重要だ。
近年、デジタル化、グローバル化による利益や価値の過度な多様化・複雑化、人口構造の変化、世代間格差の広がりにより、時間がかかる民主主義のプロセスに大きな負荷がかかり、ポピュリズムや社会の分断の問題が生じている。
AIの規制者、推進者かつ利用者でもある国家の目標は、政治共同体の全構成員がAIの便益を享受する「AIの民主化」と、民主政治自体をアップデートする「AIによる民主化」だ。
例えばニューロAIは、現代の民主主義がよって立つ個人の尊厳や自律に関わり、高齢者などの個人の尊重の観点を高めたり回復したりする側面がある。より多くの多様な意見を吸い上げて合理的に分析する際にAIを取り入れたり、将来世代の視点を可視化させて現代の世代と対話させたりといった活用も考えられる。このようなAIのメリットを否定すべきではない。
他方、AIが政策課題を文脈から切り離して再構成することで、真の発見が生まれる可能性もあれば、コミュニケーションが成立しなくなるリスクもある。汎用AIが多元性や専門性を破壊したり、他の政治体制の国とのAI開発競争の末にASI(人工超知能)が破滅をもたらしたりするといった危険にも注意する必要がある。
◇
セミナー後半では、宍戸氏と中島研究主幹が対談し、AIを利活用することによる多様性の担保や行政権への意見表明のあり方、人手不足が深刻な地方でのAIによる民主化について議論が深められました。
質疑応答では宍戸氏から、AIを巡る国民的議論のきっかけづくりについて、生成AIを提供する企業に期待することが示されました。









