月刊・経済Trend 2004年11月号 巻頭言

政策本位の政治の実現を目指して

宮原副会長 宮原賢次
(みやはら けんじ)

日本経団連副会長
住友商事会長

日本経団連が2003年1月にいわゆる奥田ビジョンを発表してから約2年が過ぎようとしている。ビジョンに謳われたさまざまな政策を実行に移し、活力と魅力溢れる日本を実現するための新たな取り組みとして、昨年秋には日本経団連が向こう一年間に重視する政策課題を優先政策事項10項目に整理し、公表した。本年1月にはこの優先政策事項に照らした各政党の政権公約の合致度と、予算や法案準備をもとにした政党の第一次政策評価を行い、9月下旬にはその後の国会での取り組みと実現した政策による優先政策事項の達成度をもとに第二次評価をとりまとめた。政策本位の政治の実現を目指し、政策内容とその取り組み実績に基づき政党を評価し、政治寄付のための判断材料を提供するという日本で初めての試みはひとまずこれで第一ラウンドを完了したことになる。

この試みは未だ緒についたばかりであり、政党の間でもその意義が十分に浸透しているとは言い難い。だが今後回を重ねていくにつれ日本経団連の政策評価が「評価する側」と「される側」の双方で定着していき、将来的には各政党が政策で切磋琢磨しながら、政治の活性化につながることを期待したい。政党の側からすれば有権者に政策をアピールし、共鳴する支持者から自発的な寄付を募るのが本来の政治のあり方だ。一方、企業の側からも、政党の政策立案・推進能力の強化という政治インフラの整備に必要なコストにつき応分の負担をすることは、社会的存在である企業に求められる使命である。日本経団連の政策評価を契機に、今後一社でも多くの企業が政治への関心を高め、議会制民主主義の健全な発展のために社会貢献の一端として政党本部への自発的な寄付を増やしてくれることを期待している。

併せて日本経団連では、政党に対して、民間からの寄付を政策立案・推進に充てるとともに、政治資金の効率化、透明性の向上に努め、その使途を公表することを強く要望している。日本経団連の提案を受け、自民党、民主党とも、政策本位の政治と資金の透明性強化に着手したのは好ましい動きである。そうした政治を実現することが、国民の政治への信頼回復の第一歩となろう。


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