経済くりっぷ No.13 (2003年1月28日)

12月24日/日本経団連評議員会
奥田 碩 日本経団連会長

日本経団連会長挨拶

魅力と活力溢れる日本の実現に全力をあげて取り組む

奥田 碩



わが国が直面している経済の長期的な低迷を脱し、自律的な回復を実現するための鍵は、市場経済の主役であるわれわれ民間企業や国民の活力にある。その活力を阻害している要因を除去していくことこそ、日本経団連に課せられた最大の使命である。
すなわち、経済の供給サイドを強化し企業の国際競争力を高めると同時に、新たな持続的な需要を開拓していくための環境づくりを、政治や行政に強力に働きかける。併せて、国民が安心し希望をもつことができるような、日本の将来の経済、社会のグランドデザインを提示する。こういった攻めの活動が求められている。

税制の抜本改革をめざす

私どもは、シャウプ勧告以来の税の抜本改革を実現すべく、四次にわたる提言を取りまとめ、政府・与党に強く働きかけた。この結果、研究開発減税、IT投資減税、住宅取得資金贈与の拡充をはじめ、総額で2兆円規模の先行減税が実現した。しかし、法人税率の引下げや、今後の社会保障支出の増加に対応した消費税率の引上げなどの抜本改革は先送りされた。来年こそは実現させたいと考えている。

規制改革の推進

日本経団連は、319項目の規制改革要望を政府に提出し、約90項目を何らかの形で総合規制改革会議「第二次答申」に盛り込こむことができた。しかし、医療分野等への株式会社の参入など、依然として関係各省の反対が強い分野もあり、実現に向け引き続き努力していく。
また、全国レベルの規制改革が難しい規制分野については、構造改革特区という新たな枠組みで、地域を限定した形での実現を目指してきた。構造改革特区法が成立し、今後は、政府の実施状況をフォローアップするとともに、地方自治体のより広範な提案が取り上げられるよう働きかけていきたい。

科学技術創造立国をめざす

日本経団連は、総合科学技術会議と連携をとりながら、国の科学技術予算の重点化に積極的に関与してきた。また、内閣府や日本学術会議とともに、産学官のトップ1,000人以上が集う第2回産学官連携サミットを開催するなど、連携強化に向けた気運の醸成に努めてきた。今後は、これを多くの具体的なプロジェクトに結び付けていきたい。さらに、戦略的な知的財産政策の実現を求めてきたが、知的財産基本法が成立するなど大きな前進をみた。

国際的な貿易、投資の自由化やルールの整備

日本経団連は、今年の1月より開始されたWTOの新ラウンド交渉に、日本の産業界の意見が十分反映されるよう、日本政府やWTO事務局に積極的な働きかけを行なっている。
わが国の自由貿易協定は、シンガポールとの間で発効するなどようやく緒についたものの、欧米が進めている世界規模のネットワーク化に比べ、スピード感や広がりに欠けている。わが国は、韓国やASEAN諸国との自由貿易協定を早急に締結する必要がある。また中長期的には、日中両国がリーダーシップを発揮し、東アジア自由経済圏を実現すべきである。日本経団連では、来年前半にも中国にミッションを派遣し、新しい指導部の方々と意見交換したい。

日本の将来ビジョンの発表

日本経団連では、日本の将来ビジョンを近く公表する(2003年1月1日発表済)。このなかで、社会保障制度や財政を持続可能な制度として再構築するためのグランドデザインや、欧米へのキャッチアップを果たした後の新たな成長戦略、自立した個人の力を活かす社会の実現、東アジア自由経済圏の建設など、多様な問題を大胆に取り上げている。われわれは、ビジョンの提示を通じ、こうした問題への国民の真剣な議論がまき起こることを強く期待している。ぜひご一読いただきたい。

倫理感の高揚

残念なことに、今年は、企業をめぐる不祥事が相次いだ。日本経団連では、企業行動憲章実行の手引き<PDF>の見直しなどを行なってきた。トップ自らが率先して社内の倫理感の高揚に取り組むよう、改めてお願いしたい。
今後数年が、21世紀の日本の行方を決定づける、本当の山場である。経団連と日経連の統合により、日本経団連は、各地の経済団体・企業、更には全国の勤労者とのネットワークをもつ、真の総合経済団体となった。こうしたネットワークと過去に培った専門性を最大限に活かし、民間セクターのリーダーとして、さまざまなプレーヤーと連携をとりながら、魅力と活力溢れる日本の実現に、今後とも全力をあげて取り組んでいきたい。


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