経団連くりっぷ No.55 (1997年 5月 8日)

第10回評議員懇談会(座長 齋藤評議員会議長)/4月21日

行政改革、地球環境問題等について懇談


評議員約100名の出席を得て、第10回評議員懇談会を開催した。当日は、齋藤議長の挨拶の後、豊田会長から行政改革の推進、関本副会長から地球環境問題への対応について説明があったのをはじめ、国際問題への取り組み、21世紀政策研究所の設立について報告し、これら経団連の活動に対して評議員から意見、要望が出された。

  1. 齋藤評議員会議長挨拶
  2. 経済社会システムの改革に精力的に取り組んでいくことが、今日、何よりも求められている。わが国に残された時間は長くない。経団連としては、政府に対し、改革のスピードアップを具体的な形で迫っていただきたい。他方、民間企業が自らを厳しく律し、透明で公正な企業活動を行なっていかなければ、諸改革を政府に迫る矛先も鈍り、企業活動の自由さえも束縛されかねないことを継続して訴えていく必要がある。

  3. 活動報告
    1. 行政改革の推進:豊田会長
      1. 4月16日、橋本総理直属の行政改革会議において、意見陳述を行なった。まず、「行政改革の理念」に触れた後、国は世界の平和と繁栄に調和した形での国益の追求など本来の役割を重点的に果たすべきであるとの基本的考え方を述べた。
        「組織改革のポイント」として、まず、中央省庁のあり方については、実施機能を切り離し、企画・立案・調整機能に特化するとともに、大括りに再編すべきだと提案した。実施機能については、基本的に、市場原理に委ねることができるものは、民営化もしくは外庁化し、他方、財政資金を投入する必要があるものは、予算や定員面でのコントロールの下、民間に委託するか外局化すべきであると提案した。内閣機能のあり方については、国の重要施策や危機管理については、必要があれば、総理大臣が直接、各省を指揮監督すること、また、総理大臣や内閣に対する補佐機能を整理、強化することを提案した。関連する行政諸制度の改革の方向としては、例えば財投制度について、市場メカニズムを活用して、財投の規模を縮小することを求めた。
        経団連では、改革が円滑に進み、簡素で効率的な国の行政組織が実現するよう、引き続き行革会議を支援していく所存である。

      2. 経団連では、予ねてから、規制緩和が、需給調整のための参入規制や設備規制の廃止といった原則に基づいて実施されるよう求めてきた。また、分野としても、経済活動の基盤に係る規制緩和に重点を置くことを提言してきた。3月28日に改定された「規制緩和推進計画」では、このような主張がかなり盛り込まれている。経団連の要望事項886項目のうち、過半数を超える444項目が計画に盛り込まれた。
        今後、計画に盛り込まれてはいるものの、緩和措置の内容や実施の時期が明確でない項目について、早急に具体化を図るよう政府に求めていく。また、行政改革委員会に対しては、積み残しとなった項目や内外から寄せられる新たな要望についても、積極的に検討するよう働きかけている。行革委員会は本年末に任期を終える。また、規制緩和推進計画も来年3月には最終期限を迎える。したがって、98年度以降、どのように規制緩和を進めていくかについても具体的な検討を始める必要がある。

    2. 地球環境問題への対応:関本副会長
      1. 経団連は、91年に地球環境憲章を発表して以来、企業の自主的な取り組みを働きかけてきた。昨年7月には、21世紀の環境保全に向けた経済界の自主行動宣言として「経団連環境アピール」を発表した。その後、昨年12月に、29業種の環境自主行動計画を取りまとめ発表した。近く7業種を加え、最終発表する予定である。

      2. 昨年11月にドイツ産業連盟と共同で「炭素税は効果に乏しく、温暖化対策は自主的な取り組みを基本とすべき」との宣言を出した。今後も、自主的な取り組みを基本とした産業界の環境対策を世界的な流れとして定着させていきたい。
        経団連では、産業廃棄物問題の解決には、排出事業者、処理業者、国、地方自治体がそれぞれの責任に応じた取り組みを進めることが必要であると主張してきた。今般の廃棄物処理法改正法案は、大筋において、経団連の考えと軌を一にするものである。
        OECDから導入が勧告された、環境汚染物質排出・移動登録(PRTR)制度についても、産業界自らが環境保全を目的とする制度を構築する旨の見解を取りまとめ、関係省庁に働きかけている。

    3. 国際問題への取り組み:藤原常務理事
    4. 経団連意見「政府開発援助(ODA)の改革に関するわれわれの考え」「日米関係の強化に向けた5つの課題」(それぞれ6頁、8頁参照)について説明。

    5. 21世紀政策研究所について:三好事務総長
    6. 官から民への流れの中で、民間が本格的な政策研究に基づいたビジョンづくりや具体的政策の立案・遂行に主導的な役割を果たしていく必要がある。そこで、経団連では、新たに「21世紀政策研究所」を設立した。経団連としても、研究所での成果を活用し、政策提言力の一層の充実、政策推進活動の強化を図っていきたい。

  4. 評議員から出された意見
    1. 日本製粉 長谷川会長
      一昨年、新食糧法が施行されたが、依然として農産物の価格支持制度が維持されている。欧米の取り組みも参考にしつつ、規制緩和の一環として、消費者負担型の農業保護政策を改めることが急務である。

    2. 栗田工業 竹歳社長
      今後、産業廃棄物の安全な処理場の確保等について、企業と国、国民の間の対話が必要である。PRTR制度に関するOECDの勧告は関係者間の合意形成の重要性を強調しており、その精神を遵守すべきである。

    3. 東洋通信機 伊藤社長
      外交戦略、対外経済政策の視点のみならず、環境破壊の防止、人材育成等の視点も加えたODA実施の基本理念を策定し、提言してはどうか。ODAの執行機関の一元化に向けた積極的な取り組みを期待する。


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