経団連くりっぷ No.67 (1997年11月27日)

緊急理事会・評議員会/11月7日

総会屋等との関係遮断に向けた取り組みの一層の強化を


経団連では、昨年12月に新しい「企業行動憲章」を発表し、その中で「反社会的勢力および団体とは断固として対決する」ことを申し合わせた。また、本年9月には「当面の総会屋等への対応策について」を取りまとめるとともに、会員各位に総会屋等との関係遮断に向けた取り組みの強化を要請してきた。しかし、その後も総会屋等に係る企業不祥事が相次いでいることから、標記会合を開催し、取り組みの一層の強化を再度お願いした。

  1. 豊田会長挨拶
    1. これだけ多くの会員企業が不祥事に巻き込まれるのは、まさに前代未聞であり、誠に遺憾の極みである。

    2. 会長に就任以来、「変革」、「創造」、「信頼」をキーワードに、規制緩和、税制改革などによって経済構造を大胆に変革し、これらを通じて経団連のビジョンで掲げた「活力あるグローバル国家」を創造することを目指して積極的に活動してきた。
      この「変革」と「創造」は「信頼」が根底にあってこそ、はじめて実現できるものである。最近の一連の不祥事は、単に個々の企業イメージや収益の悪化に止まる問題ではない。経済界全体が社会の信頼を失って社会から孤立するとともに、企業本来の活動に支障をきたし、自由主義経済の基盤をも揺るがしかねない事態に至ることを強く懸念する。
      経団連が推進する重要政策課題や国家ビジョンの実現は、企業が社会から孤立した状況では、到底実現できない。現在の状況は経団連発足以来の危機であり、国民経済の発展に資するという経団連の存在意義自体も問われかねない。

    3. 一方、政府においても事態を重視し、7月には、関係省庁による閣僚会議を設けて、先般、商法の罰則強化や当局による取り締まり強化などの支援策をまとめた。経済界としては、政府が最大限の支援体制を整えたこの機会に、何としても総会屋等との関係を遮断しなければならない。会員各位には、今、この時期を、総会屋等と絶縁し社会の信頼を回復する最後の機会であると認識され、不退転の決意で行動していただきたい。

    4. 企業が総会屋等との関係を断つことができるかどうかは、ひとえに経営トップの自己責任意識にかかっている。経営者は全責任を負って、総会屋等との関係遮断を断行すべきである。まず、自ら先頭に立って、全組織の末端に至るまで総会屋等との付き合いや、総会屋等が介入する事例の有無を洗いざらい総点検していただきたい。そして、遅くとも年内までに総点検を終えて、問題があればその事実を当局に報告していただきたい。また、会員各位の取り組み状況については、必ず経団連までご連絡いただきたい。

    5. 経団連では、未だ除名や会員資格の停止という措置はとっていない。それは、経団連本来の役割が、会員の適正な企業行動をサポートし、あるいは不祥事の再発防止のために協力することにあると考えるからである。しかしながら、これまでに何回も総会屋等との絶縁を呼びかけ、本日もこうして要請を行なっているにもかかわらず、総点検等の積極的な対応をしないまま、総会屋等との関係を続けてきたような場合には、経団連あるいは会員の名誉を守るためにも、そのような措置を講じざるを得ない事態になることも考えられる。

    6. 今、総会屋等との関係を遮断しない限り、企業は国内のみならず国際社会の信頼を失い、日本経済の難局打開は極めて困難になる。会員各位におかれては、そのような認識に立って、万全の総会屋対策等を確立、実行されるよう切望する。

  2. 総会屋問題について
  3. 那須副会長・企業行動委員長

    1. 事業活動の総点検においては、社内の各部門において事業の末端に至るまで、反社会的勢力と関係がないか、詳細に調査していただきたい。この総点検を実効あるものとするためには、経営トップ、特に社長が総会屋等との関係を断固として排除する決意を表明し、社内の各部門に明快な指示を出す必要がある。
      具体的な方法としては、例えば、社長を責任者とする社内調査委員会を設置することも有効である。調査にあたっては、現場で苦労している担当者の立場もよく理解する姿勢が重要であるが、一方、一定期間中にあえて問題を報告しない場合には、社内で厳しい処置を行なうことも考えてはどうか。何か問題のあるような取引が見つかった場合は、すぐに警察当局に報告していただきたい。また、経団連にも連絡していただければ、お役に立てることも多いかと思う。

    2. 総会屋等との関係遮断の際に参考としていただくため、企業行動憲章の「実行の手引き」の第7項目「反社会的勢力、団体との対決」の部分を総会屋等との問題に焦点を合わせて改訂した。
      企業への要請事項の第1は、経営トップによる総会屋等の反社会的勢力、団体との絶縁宣言と、その実行のための社内体制の整備である。第2は、総会屋等の発行する情報誌の購読中止についてである。第3は、総会屋等から被害を受けた場合には、警察への被害届けの提出を行なうことである。
      業界団体には、連絡協議会の設置と、必要に応じて業界ベースの行動指針の作成をお願いしている。これを受け、多くの団体が協議会設置や指針作成に取り組まれているが、現在検討中の団体においても、早期に具体化していただくようお願いしたい。

    3. 今後、経団連としては、実行の手引きの改訂版を広く会員に配布し、総会屋等への対応の際の参考としていただきたいと考えている。また、経営トップの意識改革のためのセミナーの開催や、トップレベルでの連絡協議会の開催なども近く行なう予定である。さらに、経営トップが個別の具体的な問題で相談したいような場合に、経団連にご連絡いただければ、適切な関係者を紹介したい。会員企業や業界団体における取り組みがどの程度進んでいるかを調べるため、アンケート調査なども実施したいと考えている。

  4. 村岡内閣官房長官発言
  5. 緊急理事会・評議員会における村岡内閣官房長官発言〔要約〕


    1. 業界団体への要請
      1. 各業界毎に、総会屋等との絶縁宣言を実施する。
      2. 商法違反等、総会屋等に不正な収益をもたらすこととなるおそれのある金品の供与、寄付金・賛助金の提供、情報誌の購読等を絶対に行なわないことを業界団体ベースで申し合わせる。
      3. 業界団体による協議会を開催し、情報交換、連携強化を積極的に行なう。
      4. 総会屋等に対する企業の基本的な姿勢、心構え等を含んだ企業行動基準を策定し、これを遵守する。
      5. 上記の協議会への警察の出席を求めるなど、警察との連携を強化する。

    2. 企業への要請
      1. 経営トップ自らが、総会屋等を断固として排除することを決意し、それを表明し、社員に徹底する。
      2. 企業内に総会屋等と絶縁するための専門組織を設け、弁護士などを活用するなどの諸対策について検討、実施する。
      3. 総会屋等からの不当な要求を警察に通報することを積極的に行なう。

    3. 政府の対応
      1. 各都道府県警察に「企業対象暴力特別対策本部」を設置し、総会屋等の取締まりや企業等の指導の強化を図る。また、「企業対象暴力110番」を設けるなど、保護体制の充実を図る。
      2. 株主の権利の行使に関する利益供与罪・受供与罪の法定刑の引き上げ、利益供与要求罪の新設など、商法改正案を今国会に上程。

    以 上


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