経団連くりっぷ No.77 (1998年4月23日)

なびげーたー

「変わる企業の採用行動と人事システム」事例集を作成

社会本部長 田中 清

新しい時代に相応しい人材の育成と教育改革を推進するために、主要企業が実施している採用・人事・処遇・育成面での改革の現状を「事例集」としてとりまとめた。

  1. なぜ事例集を作成したのか
  2. 企業の採用行動や処遇・評価システムが急速に変わってきている。
    大競争時代のもとで、企業は革新的な経営を行なうために、従来の同質的な価値観を持つ人材よりも、新しい価値を創造する、時代感覚に富んだ人材を確保するためにオープンでフェアな採用方法を拡大させている。また、受け入れた多様な人材の能力や個性を最大限に発揮できるような仕組み作りに取り組んでいる。
    このことは、創造的人材育成協議会(会長:末松 経団連副会長)が、95年97年に行なった「企業の採用行動に関するアンケート調査」で統計的に明らかになった。昨年6月の中央教育審議会の「21世紀を展望したわが国の教育の在り方」第二次答申の第4節「学(校)歴偏重社会の是正の問題」においても、学歴偏重社会是正に向けての企業側の改革の動きとしてこのデータが紹介されている。
    しかし、教育界や社会各界には、企業の採用行動等が学歴偏重社会を助長しているとの根強い意見がある。
    そこで、これまでの統計的データを肉付けし、変わる企業の姿を一層具体的に示すために、同協議会参加各社の協力を得て、採用・人事・処遇・育成面での42社の実態を「事例集」として取りまとめた。

  3. 変わる企業からのメッセージ
  4. 従来より、大学側からは、企業が求めている人材を明確にしてほしいとの要望が強い。また、それが明確になれば、学生側も自らの関心・能力に応じて目指すべき進路等を選択できるようになり、「就社」から「就職」への意識改革につながるのではないかとの期待もある。
    そこで、各社の求める人材像を聞いたところ、企業は「既存の概念を超えて、新しい価値を創造する」等創造的な人材を求めていることが判明した。
    また、企業は、幅広く多様な人材を確保するために、インターネットの活用等により、採用方法をオープン化させるとともに、学生の採用機会を広げる「通年採用」「秋期採用」や、専門的知識・技能を求めての「職種別採用」等により採用方法を多様化させている。これは、単なる学歴よりも、多様な個性・能力や専門的知識・技能さらには経験などが従来以上にものをいう時代になりつつあるということであろう。
    その他にも、内外の環境変化に効果的に対応するために企業はさまざまな自己改革を行なっており、これらについても事例集で紹介している。こうした実態を踏まえて、新しい時代に相応しい人材育成と教育改革が進展することを期待する。


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