経団連くりっぷ No.92 (1998年12月24日)

産業問題委員会(委員長 瀬谷博道氏)/12月2日

日本の産業競争力をめぐり討議


本年5月の定時総会において設置され、産業競争力の強化に向けた活動を進めている産業問題委員会が、12月2日、第2回会合を開催した。当日は、日本IBMの石山嘉英参与・経済調査担当より、「国際競争力から日本経済の停滞を考える」というテーマで説明を聞くとともに、下部組織であるワーキンググループがとりまとめた「経団連 産業競争力強化に向けた提言−第1回 国際競争上のイコールフッティングを求める−」(案)を審議した。(6頁提言概要参照)

  1. 石山 日本IBM参与説明概要
    1. 国の競争力とは何か
    2. 国の競争力とは、国民の生活水準を長期的に上昇させていく能力である。近似的には1人当たりの実質GDPと考えて良い。
      国の競争力を考えることは無意味だと批判するエコノミストもいるが、各国に必ず比較優位産業が存在するからといって、このコンセプトが無効になるわけではない。
      世界的大競争の中で、ヒト・モノ・カネの移動が活発になると、先進国間で要素価格の均等化が起こる。そういう状況では、科学技術の発展が早く、インフラのコストが低く、住環境の優れた国で企業活動が拡大する傾向が強まるため、比較優位より絶対優位が重視されるようになるのである。

    3. IMDによる国の競争力のランキング
    4. 国の競争力の尺度として、毎年主要46カ国のランク付けを行なっている国際経営開発研究所(IMD)によれば、日本は93年に総合2位となって以来、高コスト構造、重い税負担、狭い住宅、低い国際性などを理由として、年々ランクを落とし、98年にはついに18位に後退した。
      このままでは、日本の競争的な企業・産業が海外での活動を増やし、日本には生産性の低い企業・産業ばかりが残り、少子・高齢化と大競争の中で、日本経済は中長期的な停滞を免れないであろう。国の競争力強化に早急に取り組む必要がある。

    5. 問題となる製造業と非製造業の生産性格差
    6. ここで問題となるのが製造業と非製造業の生産性格差である。非製造業の低生産性を放置していては、サービス等を中間投入として使う製造業の生産性もあがらず、海外移転が加速する惧れがある。非製造業の生産性を高めていくためには、規制緩和、ITの活用、教育・訓練に取り組んでいかなければならない。同時に製造業においても、コスト削減、ラディカルな新製品による市場創出、ハードウェアとソフトウェアの融合を図ることで、製造業と非製造業の間で望ましいシナジー効果を発生させていく必要がある。

  2. 「経団連 産業競争力強化に向けた提言」(案)を審議
  3. ワーキンググループ(座長:雨宮肇旭硝子常務取締役)がとりまとめた「経団連 産業競争力強化に向けた提言」(案)について審議を行ない、了承を得た。


くりっぷ No.92 目次日本語のホームページ