経団連くりっぷ No.106 (1999年7月22日)

首都機能移転シンポジウム(主催 経団連、道経連、東経連、北経連、中経連、関経連、中国経連、四経連、九経連、経済広報センター)/7月8日

首都機能移転への国民的理解を求める


政府の国会等移転審議会では首都機能移転候補地を今秋に決定する。そこで、経団連では、移転先候補地を持たない地域の経済団体等とも連携し、移転の意義を改めて国民に訴えるため、標記シンポジウムを10団体で開催した。
当日は、来賓の関谷勝嗣国土庁長官の挨拶、国会等移転審議会の森亘会長の講演に引き続き、平本一雄三菱総合研究所取締役のコーディネートのもと、河野俊二経団連首都機能移転推進委員長、建築家の黒川紀章氏、矢田俊文九州大学副学長、篠原滋子現代情報研究所所長の参加により、パネルディスカッションを行なった。シンポジウムは、須田寛中部経済連合会副会長が共同宣言(10頁参照)を朗読、水戸部知巳東北経済連合会副会長の挨拶で締め括った。

  1. 開会挨拶
    −今井経団連会長
  2. 経団連では、1988年に首都機能移転に関する検討を開始して以来、93年、95年にその推進を求める提言を発表し、毎年の総会決議でもその推進を訴え続けている。本日、北海道から九州までの各地方の経済団体および経済広報センターが、経団連と共にこのようなシンポジウムを開催し、首都機能移転の意義や役割について国家的な見地から検討を加えることは、多くの国民の理解と支持を得る上で非常に意義深い。
    しかし、国・地方とも財政が逼迫し、また、行政のスリム化や規制緩和が進展するなか、移転には東京都をはじめ反対論も出ており、96年の「国会等の移転に関する法律」の改正の際には、国会等移転審議会が移転候補地を選定し、候補地と東京都を最終的に比較考量することが定められた。
    こうしたなかで、今なぜ首都機能移転なのか、理論を再構築し、世論に訴えかけ、国民の納得を得る必要がある。小さな政府、21世紀における新しいモデル都市づくり、災害に対するわが国首都のリスクマネジメント機能の向上等はいずれも必要である。特に、首都機能移転は、新都市のみならず、移転跡地を活用した東京の防災性の向上、さらには政治と経済の中心分離による国土全体の安全性の向上を図る上で重要である。
    われわれが将来の世代に、より住みやすく、活力溢れる日本を残していくためにも、首都機能移転について国民のコンセンサスを得る努力が求められている。

  3. 来賓挨拶
    −関谷国土庁長官
  4. 首都機能移転は、東京一極集中を是正し、国土の災害対応力を強化するとともに、国政全般の改革に深く関わりのある、21世紀を展望した極めて重要な課題である。
    これまで、衆参両院において、90年の「国会等の移転に関する決議」により、国会および政府機能の移転を行なうべき旨が議決されたのをはじめ、91年の衆参両院における「国会等の移転に関する特別委員会」の設置、92年の「国会等の移転に関する法律」の制定、96年の同法の一部改正等、国会主導で取り組まれてきた。
    また、96年12月以来、国会等移転審議会において、移転先候補地の選定に向けた調査審議が精力的に進められている。98年1月に調査対象地域が設定されたことを受け、同年9月から10月にかけて現地調査等が実施された。
    さらに、同審議会においては、広く国民の意見を聴き、今後の審議・取りまとめに反映させることを目的に、公聴会が開催され、各地域で様々な観点から意見が表明されてきたが、本年6月の金沢を最後に、予定していた全国9ブロックでの開催を全て終了したところである。
    同審議会では、現在、分野・地域ごとの詳細な調査が精力的に進められており、今秋を目途に候補地の選定作業を進めている。
    国土庁としては、国会等移転審議会の調査審議を円滑に進め、また、移転に関する幅広い国民的な合意形成が図られるよう努めていきたい。

  5. 基調講演
    「首都機能移転の意義と国会等移転審議会の今後の課題」
    −森国会等移転審議会会長
  6. 国会等移転審議会は、移転先候補地の選定こそが最重要課題であるが、候補地選定以前の私の問題意識を3点ほど挙げたい。
    第1に、首都機能移転の意義については、今秋出す答申において、先達の見識にも溯りつつ改めて本質を問い直したい。
    第2に、中央と候補地との間に存在する首都機能移転に関する意識の乖離については、当審議会として、可能な限り候補地との議論の場を設けるべきであると考える。
    第3に、首都機能移転と期待される効果との関連については、両者をつなぐ具体的な論議が十分になされておらず、また、国民全体の意識が最重要であることから、答申に審議会として具体的方策の一例を示すことができればと考えている。
    わが国では、重要な事柄を決定する際、玉虫色の議論を重ね、未解決のまま先送りする旧弊があるが、これを打破する上からも、審議会が今秋、答申を確実に出すことが重要であり、残された時間に全力を尽くしたい。なお、国会においては、答申を最大限尊重し、良識に基づいた取扱いをされることをお願いしたい。

  7. パネルディスカッション
  8. パネルディスカッションにおいては、カザフスタンの新首都アスタナの設計コンペに優勝した黒川氏より、共生の理念に基づく新都市づくりについて説明が行なわれた後、矢田氏より分権型社会の構築、篠原氏より情報化時代における豊かな生活都市づくり、河野氏より魅力ある国際都市づくりについて、各々の視点から提案がなされ、それに基づき、闊達な討論が行なわれた。

(なお、シンポジウムの模様は『月刊Keidanren』9月号にて詳細を掲載予定)


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