経団連くりっぷ No.123 (2000年4月27日)

財政制度委員会(委員長 伊藤助成氏)/4月13日

わが国財政の現状と課題

−武藤大蔵省主計局長よりきく


財政制度委員会では、大蔵省の武藤敏郎 主計局長を招き、わが国財政の現状と課題について説明をきいた。併せて、意見書「自立自助を基本とした地方財政の実現に向けて」(案)の審議を行なった。(提言概要は6ページ参照

武藤主計局長説明要旨

  1. 景気回復と財政再建のバランス
    1. わが国財政は、主要国中で最も深刻な状態まで悪化しており、いずれは財政構造改革に取り組む必要があるが、足元の景気にも十分配慮しなければならない。「まず経済を立て直してから、財政再建に取り組む」のが小渕政権以来のスタンスである。

    2. しかし、景気が回復すれば労せずして財政再建を実現できるほど、状況は甘くない。税収弾性値(各月経済成長率が1%上昇した場合の税収の伸び率)は約1.1とされており、経済成長率が今後ある程度上昇しても、現在50兆円弱の税収が大幅に増えるとは考えにくい。

  2. 今後の財政運営におけるポイント
  3. その他にも、財政構造改革を進める際のポイントと考えられる点が、いくつかある。

    1. 1つは、金利動向である。景気回復が本格化すれば、当然ながら金利も上昇し、国債の利払費が増加するであろう。平成12年度(当初ベース)だけをみても、新発債・借換債の合計で85兆円程度の国債発行を予定しており、仮に金利が1%上昇すれば、利払費は約8,000億円増加する。

    2. 2つ目は、高齢化に伴う社会保障給付費の増大である。厚生省推計によれば、2025年度の社会保障給付総額は107兆円(うち国庫負担分は39兆円)となる。一般的に「社会保障の費用は消費税で賄えばよい」と言われることが多いが、仮に現行制度の国庫負担分だけを消費税に置き換えるとしても、国の消費税率(現行は地方消費税率1%を除く4%)を13%程度に引き上げなければならない。また、これだけの消費税率引き上げが実現されたとしても、増収分の全ては社会保障給付費に充てられるため、財政再建には直接つながらない。

    3. 公共事業についても、今後のあり方を議論する必要があろう。一般政府ベースの公的固定資本形成(対GDP比)は欧米諸国の2倍以上の水準にある。ただし、下水道普及率や1人あたり公園面積などは依然として諸外国に遅れをとっており、「もはや社会資本整備は必要ない」とまでは言い切れない。

    4. 地方財政も重要な問題である。日本の地方財政制度では、地方全体の収支を国が保障する形になっている。しかし、全額を国が保障する仕組みでは、自治体運営においてモラルハザードが起きるとの指摘がある。諸外国にも、同様の制度をとる国は見られない。一方で、地方によって税源の偏在があることも事実である。いずれにしても、こうした問題も含め、わが国経済・社会のあるべき姿を展望した、行財政全般にわたる幅広い検討が必要となる。


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