日本経団連タイムス No.2827 (2006年8月31日)

生活習慣病予防の効率的で質の高い特定健康診査・特定保健指導実施に向け提言

−健診受診率の向上促進/効果高い保健指導サービス確保を


日本経団連(御手洗冨士夫会長)の起業創造委員会ヘルスケア産業部会(赤星慶一郎部会長)では11日、「生活習慣病予防に係る効率的で質の高い特定健康診査・特定保健指導の実施に向けて」と題する提言を取りまとめ、厚生労働省に提出した。

効率的実施体制確立も

「高齢者の医療の確保に関する法律」の成立により、2008年4月から医療保険者による特定健康診査・特定保健指導が義務付けられる。日本経団連では、今年4月に「生活習慣病に係わる特定健康診査・特定保健指導のアウトソース推進に向けて」と題する提言を公表し、民間企業が培ってきた技術や知識を最大限活用して国民の健康増進を図るため、保険者によるアウトソース促進に向けた基盤整備の必要性などを求めた。
今回の提言は、そのフォローアップと、健診受診率の向上、効果の高い保健指導サービスの確保、効率的な実施体制の確立をめざして具体的な検討を行ってきた内容を取りまとめたもの。提言の概要は次のとおり。

(1)健診受診率の向上

生活習慣病予防の成果を上げるためには、何より受診率の向上を図る必要があり、健診対象者の受診意識を高めるため、政府による継続的な広報・啓蒙活動が期待される。さらに、各保険者が企業の人事部門と連携し、従業員(被保険者)ならびに被扶養者に積極的に受診を呼びかける努力を行う必要がある。
また、受診に際して加入者の窓口負担を軽減していくことが不可欠であり、健診費用の支払いについては償還払い以外の決済方式を採用すべきである。加えて、受診機会確保の観点から、各地域の公民館や、民間施設等の生活に身近で人が多く集まる場所を活用した健診を積極的に推進する必要がある。

(2)効果の高い保健指導サービスの確保

保険者による保健指導サービスのアウトソーシング実施に当たっては、保険者がめざす具体的な成果を達成し得る優良な事業者を的確に選別できることが重要である。既に厚生労働省からアウトソーシング基準案が提示されていることは評価できるが、最終的な基準の策定に向けて、関係者から幅広く意見を募りつつ、Q&Aの作成等を含めて各項目の明確化等を行う必要がある。

(3)効率的な実施体制の確立

健診・保健指導の効率的な実施に際しては、「健診レセプト」「保健指導レセプト」(ともに仮称、以下略)を採用し、統一フォーマットの下で電子的にデータを管理すべきである。「健診レセプト」は、健診項目と検査結果の明細ならびに費用負担に関する情報が記載され、加入者に対する健診実施報告書と費用請求書を合わせた性格を有するものと定義される(保健指導レセプトについても同様)。審査支払機関等を活用して健診・保健指導レセプトをやり取りすることで、データの授受と費用の決済が一元化できるとともに、保険者の事務手続の軽減につながる。また、健診・保健指導レセプトの導入は、償還払い方式を回避できるという意味で加入者にとってメリットがあるほか、都道府県が保険者に対する一次窓口の役割を担う必要がなくなる等、行政にとっても有益である。

◇ ◇ ◇

ヘルスケア産業部会では、引き続き提言のフォローアップを行っていく予定。また、経営者自らが率先して社員および家族の生活習慣病予防を支援していくべきとの観点から、必要な活動を行うこととしている。

【産業第一本部産業基盤担当】
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