日本経団連タイムス No.2870 (2007年8月2日)

第6回東富士夏季フォーラム開催

−「2015年の日本」を統一テーマに意見交換


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は7月26、27の両日、静岡・小山町の経団連ゲストハウスで「第6回東富士夏季フォーラム」(議長=米倉弘昌副会長)を開催した。同フォーラムには、御手洗会長、西室泰三評議員会議長をはじめ、副会長、評議員会副議長、関係委員長ら過去最多の40名が参加。「2015年の日本」を統一テーマに、今後の教育のあり方、経済連携(EPA)の進め方、道州制導入と地域経済圏の確立について、活発な意見交換を行った。

意見交換の結果は27日、「東富士アピール2007―今こそ中長期的展望に立った改革の推進を求める」として取りまとめられ、公表された。

開会あいさつで御手洗会長は、「教育、EPA、道州制の問題は、日本の将来のために、今から取り組んでいかなければならない重要な課題である。また同時に裾野の広い、分野横断的な政策課題でもある。日本経団連における担当分野や所属の業界から離れ、多様な角度から、自由闊達に議論していただきたい。議論の結果、一歩踏み出した共通認識が形成できるものと期待している」と述べた。

「今後の教育のあり方」など

第1セッション「今後の教育のあり方」(第1部)では、教育再生会議座長代理を務める池田守男・資生堂相談役が「社会総がかりでの教育再生に向けて(初等中等教育を中心に)」をテーマに問題提起の発言をし、これを受けて参加メンバーが、求める人材像と学校教育等への期待、初等中等教育の制度のあり方、教育の再生に向けて企業が自ら何をなすべきかなどについて、自由討議を行った(要旨別掲)。

第1セッション「今後の教育のあり方」(第2部)では、黒川清・内閣特別顧問・東京大学名誉教授が「イノベーション創造型人材の育成」をテーマに問題提起の発言をし、これを受けて参加メンバーが、企業が求める人材像、大学・大学院教育への期待、大学・大学院教育改革の方向性、政府が果たすべき役割、教育機能の強化に向け産業界が果たすべき役割(大学・大学院教育への協力方策、大学・大学院との相互人材交流、採用活動における教育への配慮など)をテーマとして意見交換・自由討議を行った(要旨別掲)。

また、第1部、第2部全体を通した総括討議として、「希望の国、日本」の担い手となる人材育成に向けた改革の方向、教育界と企業との連携強化策などをテーマに話し合った。

第2セッション「政治との関係のあり方」は、非公開討議として行われ、今秋公表予定の2007年の政党の政策評価などについて議論した。

第3セッション「経済連携(EPA)の進め方」では、大橋洋治・経済連携推進委員会共同委員長が問題提起を行い、これを受けて参加メンバーが、(1)経済のグローバル化が進展する中でわが国が直面している課題は何か(資源・エネルギー・食料の安定供給の確保、気候変動への対応等)(2)他の政策手段と比較した場合のEPAの意義(3)EPAの今後の方向性(4)対外経済戦略を推進する上での課題――について討議した(要旨別掲)。

第4セッション「道州制導入と地域経済圏の確立」では、麻生渡・全国知事会会長・福岡県知事が、地方の実情と現行システムの問題点、道州制下での新たな国と地方の役割分担、道州制の導入により実現されるべき地域像・国家像などをテーマに問題提起を行い、これを受けて参加メンバーが、地域経済圏の確立に求められる施策、国・道州・基礎自治体の役割分担などについて討議した(要旨別掲)。

教育・経済連携協定・道州制
意見交換の結果を取りまとめ「東富士アピール2007」に

「東富士アピール2007」では、「教育」について、(1)学校や家庭、地域の教育力の回復をはかり、基礎的な学力や体力とともに克己心や公徳心を備えた子供を幼児期から育成するべきこと(2)イノベーション創出に不可欠な高度人材の育成に向け、大学・大学院改革、産学連携を推進するべきこと――を強調。

「経済連携協定」については、(1)グローバル化が急速に進展する中で、わが国が成長の果実を得るには、ダイナミズムにあふれたアジア諸国とのEPAネットワークをスピード感をもって構築しなければならない(2)米国・EUなど先進諸国とも現在の良好な関係をさらに強固なものとし、世界の範となるEPAの締結をめざすべきである(3)EPAは農業をはじめとする国内の構造改革を促し、豊かな国民生活をもたらす――と述べている。

また「道州制」については、(1)道州制の導入は、国のあり方から国民の意識や生活までを根本から変革する「究極の構造改革」である(2)これによって、それぞれの地域に自立した経済圏を確立し、わが国全体の国際競争力を強化すること、国民が自覚と誇りをもって地域に根ざし生活できる社会をつくり上げることができる――と指摘している。

なお参加者の夫人20名は、第1セッション「今後の教育のあり方」(第1部)に参加した後、レディースプログラムとして作家・書誌学者の林望氏による講演を聴いたほか、箱根ラリック美術館でフランスの工芸家ルネ・ラリックの作品・企画展を鑑賞した。

御手洗会長は閉会あいさつで、「今年の東富士夏季フォーラムは日本経団連のビジョン2007『希望の国、日本』が改革の目標年として掲げた2015年の日本を念頭に置き、重要な3つの課題をテーマに取り上げ議論した。多角的、多面的な議論ができ、高いレベルのコンセンサスが形成された。今後は、会長副会長会議や各委員会において、さらに議論を深めていきたい」と語った。

【社会第二本部】
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