日本経団連タイムス No.2944 (2009年3月26日)

中国地方経済懇談会を広島で開催

−中国地方のさらなる発展めざし意見交換/エネルギー戦略、観光など


日本経団連(御手洗冨士夫会長)と中国経済連合会(中国経連、福田督会長)は18日、広島市内のホテルで第37回中国地方経済懇談会を開催した。懇談会には、日本経団連から御手洗会長をはじめ副会長、評議員会副議長らが、中国経連からは福田会長をはじめ会員約190名が参加、「未曽有の危機を克服し、中国地方の更なる発展を目指す」をテーマに意見を交換した。

開会あいさつした中国経連の福田会長は、輸出企業が多い中国地方は、景気後退の影響をより強く受けていると指摘した上で、次の成長を誘導する確固たる基盤や仕組みの整備が重要と強調。(1)道州制導入の推進(2)産学官連携の推進(3)社会インフラの整備促進(4)中国地域発展推進会議の設立――の4点に取り組んでいることを紹介した。

続いてあいさつした日本経団連の御手洗会長は、日本経済がかつて経験したことのない危機的な状況に直面していることから、2月に「日本版ニューディール」推進を提言したのに続き、9日、政府・与党に対し、直ちに来年度補正予算の編成に取りかかり、大規模な経済対策をスピーディーに実施することを求める「経済危機からの脱却に向けた緊急提言」を取りまとめたことを説明した。

■ 活動報告

第1部の活動報告では日本経団連側から、前田晃伸副会長が「当面の経済運営」、大橋洋治副会長が「雇用の安定・創出に向けた取組み」、氏家純一副会長が「税財政の抜本改革」、池田弘一評議員会副議長が「道州制導入に向けた取組み」などについて報告した。

一方、中国経連側からは、まず末長範彦副会長が道州制導入の具体化に向けた取組みを紹介。道州制の導入に向けて、住民の関心を高めるため、中国地方各地で、自治体や経済団体とシンポジウムを共催、論点のわかりやすい解説や会場の参加者との活発な意見交換など、道州制への理解とコンセンサスを得るための活動を続けていると説明した。

次に丸磐根副会長が社会資本整備への取組みについて報告。まず公共交通機関の整備が不十分な山陰地方における、国民生活を支える社会基盤としての幹線高速道路の重要性を強調した。また、浜田港、境港など日本海側有数の良港が培ってきた人的、文化的、経済的交流を活かし、北東アジア地域に開かれた国際物流拠点づくり(北東アジアゲートウェイ構想)を推進していくと決意を述べた。

続いて、林孝介副会長は「中国地域発展推進会議」の設立について報告。中国地方が自立的・持続的に発展していくためには、官民一体での広域的な取組みが不可欠との認識の下、中国5県知事と地元経済界代表が地域の諸課題について議論、スピード感をもって地域経営についてのコンセンサスを得る目的で設立したと経緯を説明。最初の検討テーマに「中国地方が一体となった広域観光の推進」を掲げ、地域一体で取り組むインバウンド観光の具体的施策を検討していると説明した。

■ 意見交換

第2部の意見交換では中国経連側から、(1)再生可能エネルギーの普及は、地球温暖化対策の面のみならず、エネルギー自給率の向上や安全保障の面から、化石燃料に替わるエネルギー戦略として推進すべき(2)林野率が全国平均を大きく上回る中国地方にとって、森林の荒廃は深刻な問題。森林を再生していくためには、林業を持続性ある産業へと転換することが必要(3)観光の振興のためには、中国地方一体となって観光資源の魅力度をアップすると同時に、観光地までのアクセスの改善が不可欠(4)SaaS(サービス利用型ソフト)に代表されるクラウドコンピューティングの活用など、官民が連携して、情報化時代に即した対応を早急に図るべき(5)地域を挙げて、農業に商業・工業の技術・ノウハウを融合し、農林水産業の活性化や食料自給率向上、地域経済全体の発展をめざす農商工連携を推進している――などの意見があった。

これに対し日本経団連側が、(1)原子力の積極的活用、再生可能エネルギーの計画的な推進など、総合的な戦略に基づきエネルギーのベストミックスをめざすべき(渡文明副会長)(2)森林の再生は自然保護や生物多様性保全の観点から重要。今後は「森・里・海連関」の発想で、森林管理を地域活性化に結び付けることが必要(渡副会長)(3)「中国地域発展推進会議」が中心となって広域連携を進め、魅力ある観光圏を形成、中国地方が北東アジア観光ゾーンの拠点として旅行者を増加させることに期待(渡副会長)(4)最先端の技術を活用して業務の最適化を図ることが重要。電子行政の先進国は思い切った電子行政の推進で国際競争力の強化に成功している(前田副会長)(5)農業の競争力強化や地域経済の活性化を実現するため、農業への商業・工業の技術・ノウハウの融合に国を挙げて取り組むべき(原良也評議員会副議長)――と発言した。

◇◇◇

懇談に先立ち日本経団連首脳は、「超臨界」状態をつくり出すことで必要な成分のみの抽出を可能とする装置などの超臨界装置で国内トップシェアの東洋高圧(本社=広島市)を視察した。

【総務本部総務担当】
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