日本経団連タイムス No.2984 (2010年2月11日)

関西会員懇談会を大阪で開催

−当面の経済運営や関西経済の課題など、関西地区会員と意見交換


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は1月28日、大阪市内で関西会員懇談会を開催した。懇談会には御手洗冨士夫会長をはじめ、副会長や関西地区の会員企業代表者約350名が出席、当面の経済運営や関西経済の課題について意見交換した。

開会あいさつで御手洗会長は、わが国経済は最悪期を脱しつつあるが、いまだ予断を許さない状況にあり、そこから一刻も早く脱却し、自律的な景気回復軌道に乗せることが重要との認識を示した。そのうえで、1月12日公表の「2010年の重要政策課題」に触れ、各方面と協力しながら、政策課題の実現に向け、最大限努力していくと述べた。

■ 活動報告1

活動報告1では、まず渡文明副会長が、「日本アラブ経済フォーラム」と「日イラク経済フォーラム」について報告。日本アラブ経済フォーラムの官民合同会合では、産業振興や雇用、貿易投資、環境問題等で活発に意見交換するとともに、幅広い産業分野での直接投資や技術移転の促進、官民連携による人材開発への協力の推進を提案。日イラク経済フォーラムでは、石油資源開発をはじめ、幅広い産業分野でのわが国民間投資への期待が表明されたと紹介した。

続いて佐々木幹夫副会長が「通商戦略に関する取り組み」を報告。WTOドーハ・ラウンドの早期妥結に向け政府にリーダーシップの発揮を求めるとともに、経済界として協力に言及した。経済連携協定(EPA)については、東アジア経済共同体を視野に地域経済統合を推進すべきと述べるとともに、米国、EUとの協定交渉開始の重要性を強調した。

森田富治郎副会長は、提言「経済危機脱却後を見据えた新たな成長戦略」に触れ、新たな需要創出の可能性を検証するとともに、持続的な成長を実現していく観点から、今後の成長に向けた経済政策のあり方を示したと説明。政府の新成長戦略については、日本経団連と方向性が一致していると述べたうえで、雇用を創出する企業を支援する観点が不足しているなど課題を指摘した。

続いて大橋洋治副会長が「経営労働政策委員会報告」の要点を報告。雇用の確保を最優先にして取り組むことの重要性に言及するとともに、社会全体で雇用の安定・創出を図るための取り組みが必要と指摘。一方、労使交渉に臨むにあたっては、(1)自社の支払能力に即して判断すべき(2)賃金カーブについては、実態に応じて話し合うべき(3)非正規労働者の処遇改善は、個別労使で解決できる事項か十分に検討すべき――との考えを示した。

清水正孝副会長は「地球温暖化をめぐる動向」について報告。環境税や排出量取引制度は、公平性等の観点を含め総合的かつ経済や雇用、国民生活への影響などを考慮して慎重に検討すべきとの考えを示した。また、産業界としてCO2削減に積極的に取り組む観点から取りまとめた「日本経団連低炭素社会実行計画」に触れ、製造段階のみならず、使用段階にも着目し、ライフ・サイクル全体でCO2削減を重視するとともに、国際貢献や革新的技術開発なども含むものと説明した。

■ 活動報告2

活動報告2では、前田晃伸副会長が「アジア経済の成長戦略」について報告。日本はアジアの一員として、同地域の発展に積極的に貢献し、アジアとともに成長するという視点が重要と指摘。こうした観点から、アジア各国の政府や経済界首脳との政策対話を進めてきたと紹介した。

続いて佃和夫副会長が「観光立国の早期実現に向けて」を報告。観光を成長産業とするには人材育成が不可欠であり、観光人材の育成と活用方策を検討していると説明。あわせて日中韓による北東アジア観光ゾーン形成を目指す日韓観光協力会議により、連携を図っていくとコメントした。

渡辺捷昭副会長は「税制改正をめぐる動向」を報告。平成22年度税制改正では、研究開発促進税制の延長や国際課税の抜本的改革、連結納税制度の改善など、主要な提言についてはほぼ理解を得ることができたと説明。人口減少社会やグローバル競争の激化に対応していくため、消費税を含む税制抜本改革について、国民の理解を得る取り組みを強化したいと述べた。

■ 自由懇談

自由懇談では、関西地区会員から、大和ハウス工業の村上健治社長が、(1)住宅建設やリフォームの補助金や税制など、各種優遇措置の延長、継続、拡充(2)エコ住宅やエコマンションの技術の海外移転への支援――の重要性を訴えた。シャープの町田勝彦会長は、「関西地域には環境技術を有する企業、研究機関が集積している。これらの強みを伸ばすことが関西の成長戦略である。また、環境だけでなく、健康・医療、教育、治安まで含めたモデル都市づくりへの取り組みが産業活性化につながる」と発言した。

これに対し、岩沙弘道副会長が「少子・高齢化や環境問題への関心の高まりから、バリアフリーやエコ住宅の建設促進策は重要。また、アジアへの展開という視点から、官民一体で取り組む必要がある」と発言した。西田厚聰副会長は資源、環境制約が産業のあり方に抜本的な変革を迫る一方、チャンスをもたらすと指摘。「先進的な社会インフラのモデルタウンを国内でつくり、先行事例としてアピールしていくことが必要」と答えた。住友金属工業の下妻博会長は、「昨年よりグリーンベイが稼働し始め、また、都市開発も着々と進み、これらが関西経済復活の起爆剤となっている」と指摘。さらに、関西は地政学的にアジアと近く、今後、アジアと共生する視点を持つ必要があると述べた。

【総務本部】
Copyright © Nippon Keidanren