日本経団連タイムス No.2994 (2010年4月22日)

提言「豊かで活力ある国民生活を目指して〜経団連成長戦略2010」公表

−環境・エネルギー、健康や地域活性化など6分野で


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は13日、提言「豊かで活力ある国民生活を目指して〜経団連成長戦略2010」を取りまとめ、公表した。同提言は、政府が掲げる名目3%、実質2%の経済成長を達成するために必要な成長戦略や税・財政・社会保障の一体改革のあり方について、取りまとめたものである。概要は次のとおり。

■ 4つの視点と3つの柱

成長戦略を講じるうえで留意すべき点として、4つの視点((1)企業の国際競争力の強化を通じた雇用創出(2)需要面と供給面、大企業と中小企業を一体的にとらえることの重要性(3)税・財政・社会保障の一体改革の必要性(4)パブリック・イノベーションの推進)を掲げた。また、これを踏まえた政策としては、(1)企業の国際競争力の維持とさらなる強化(2)新しい内需の創出と成長力強化(3)柔軟性とセーフティーネットを兼ね備えた労働市場の構築――の3つの柱が重要であるとしている。
さらに、成長戦略の実現を担保するため、工程表を策定することや成長戦略特別枠の設定による優先的な予算の確保を行うことを提案している。

■ 成長の実現に向けた6つの戦略と規制改革

成長の実現に向けた具体的措置事項は政府の方針にあわせ、6つの分野に整理した。
まず、わが国の強みを活かす環境・エネルギー、健康分野では、エコカー、エコ家電など環境負荷の小さい耐久財などの初期需要を喚起するため、税・補助金といったインセンティブの付与や、医療・介護分野の産業化に関連して、保険診療と保険外診療の併用制度のさらなる拡大を提言した。
また、経済フロンティアの拡大に資するアジア、地域活性化分野では、官民トップ外交の推進による海外の大規模国家的プロジェクトの受注促進や、観光振興、道州制の導入等を求めた。
さらに、成長を促す基盤である科学・技術、雇用・人材分野では、対GDP比1%を目標とした政府研究開発投資の増額、柔軟な働き方を可能とする環境整備や労働市場におけるセーフティーネット機能の強化・充実等が必要であるとしている。あわせてこれら6分野における成長戦略の推進に必要な個別の規制改革事項について言及した。

■ 税・財政・社会保障の一体改革

税・財政・社会保障の一体改革については、まず、わが国の危機的な財政状況に対する強い懸念を表明。このままでは、2011年度予算編成も極めて困難であり、国債に対する内外の信認を棄損しかねないため、経済成長と両立した財政健全化目標の設定が欠かせないとした。
また、国民の将来不安を解消することが成長を促すとの観点から、制度横断的な社会保障制度の再構築の必要性を指摘。税制抜本改革を通じて、消費税の社会保障目的税化を確立し、自助・共助・公助のバランスを念頭におきつつ、現役世代の保険料に過度に依存しない改革の推進を求めた。
税制抜本改革については、消費・所得・資産のバランスの取れた税体系の構築を目指すことを前提に、社会保障給付をはじめとする中長期的な歳出の増大に耐え得るよう、一刻も早い消費税率の引き上げ、所得税の基幹税としての機能回復、法人実効税率の早期引き下げなどを一体的に講じることを要請。あわせて、社会保障・税共通番号の早期導入が必要であるとした。

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なお、同提言の詳細な解説については次号以降、3回に分けて掲載する予定である。

  1. 成長戦略を策定・実行していくために必要な4つの視点と基本的な経済政策の3つの柱
  2. 成長の実現に向けた6つの戦略と規制改革
  3. 税・財政・社会保障の一体改革
【経済政策本部】
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