日本経団連タイムス No.2996 (2010年5月13日)

<解説>提言「豊かで活力ある国民生活を目指して〜経団連成長戦略2010」<中>

−成長の実現に向けた6つの戦略と規制改革


日本経団連が4月13日に公表した提言「豊かで活力ある国民生活を目指して〜経団連成長戦略2010」4月22日号既報)について、今号では成長の実現に向けた6つの戦略と規制改革についてそれぞれのポイントを紹介する。

■ 環境・エネルギー大国戦略

わが国の優れた環境・エネルギー技術を活用し、環境負荷の小さな社会の形成に貢献していくとともに、環境問題への取り組みの強化によって新たな需要を創造していくことが重要となるが、同時にわが国経済の発展や雇用創出に結び付けることにより、環境と経済の両立を図ることが求められる。そのためには、初期需要を喚起するためのインセンティブの付与等を通じた最先端技術の普及促進策、ビジョンやロードマップの策定と産学官による共有など、中長期的な観点からの革新的技術の開発・普及が不可欠である。

■ 健康大国戦略

高齢者ビジネスは、高齢化が進むわが国にとって、今後、成長が見込まれる有力な産業であり、医療・介護関連分野の産業化が課題となっている。具体的には、高齢者が安心して暮らせる社会にふさわしいビジネスモデルを確立し、その普及を図るとともに、医療・介護関連分野において、質の高いサービスを効率的に提供する体制を整備することが不可欠である。

■ アジア経済戦略

目覚ましい経済発展を続けるアジア諸国との関係強化に向けて、域内の貿易・投資を活性化させることが重要であり、同時にそれを支える広域インフラの整備が欠かせない。具体的には、官民トップ外交の推進による海外の大規模な国家的プロジェクトの受注促進、物流の円滑化、国際標準化の推進などに取り組むべきである。

■ 観光立国戦略・地域活性化戦略

大都市と地方都市がともに活力を取り戻し、国全体の成長力を底上げしていくためには、地域の自立と活性化を促すための需要喚起が必要である。具体的には、多様な観光資源を活かした体験型観光の普及・拡大、道州制の導入と「地域主権」改革の推進、農業の成長産業化へ向けた生産基盤の強化・輸出促進、都市機能の高度化に資する都市インフラの整備などが挙げられる。

■ 科学・技術立国戦略

科学・技術を基点としたイノベーションは、中長期的な経済成長の源泉であると同時に、地球環境問題など、国家的な課題の解決に向けたカギを握っている。わが国のイノベーションを促進するため、政府研究開発投資の対GDP比1%の確保や、成長を支えるナショナル・イノベーション・システムの抜本強化などが必要である。また、ICT(情報通信技術)は、経済社会システムを抜本的に効率化し、新たなイノベーションを生み出す重要な基盤である。社会保障・税の共通番号制度の早期導入を前提とした電子行政の推進や、高度情報通信人材の育成などに取り組むことが重要である。

■ 雇用・人材戦略

人口減少・高齢化が進行するなか、わが国の未来を切り拓く自立した人材の重要性は従来以上に増している。そうした人材を確保・育成していくため、雇用面については、柔軟な働き方を可能とする環境整備や労働市場におけるセーフティーネット機能の強化を図ることが急務である。また、人材育成面では、待機児童の解消など安心して子どもを産み育てられる環境の実現、質の高い初等・中等教育の実施、教育・研究のグローバル化の推進などが不可欠である。

■ 成長を阻害する規制の改革

以上の6分野での成長戦略を推進するためには、規制改革への継続的な取り組みが不可欠である。こうした観点から、今回の提言では82項目の規制改革要望を掲げている。各項目の規制の詳細については、日本経団連ホームページ( URL=http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2010/028/shiryo.html )に掲載。

【経済政策本部】
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