日本経団連タイムス No.3025 (2011年1月1日)

アジア債券市場整備の加速求め提言

−官民の取り組む方策提起


日本経団連は12月14日、提言「アジア債券市場整備の加速を求める」を公表し、関係各方面に建議した。経団連は、昨年3月のアジア・ビジネス・サミットの共同声明や同月の提言「豊かなアジアを築く金融協力の推進を求める」などを通じて、アジアにおけるインフラ整備や企業活動に中長期資金を安定的に供給するため、アジア債券市場の整備が重要であると提唱している。提言では、アジア債券市場整備の進捗状況を確認するとともに、その加速のために官民が取り組むべき方策を取りまとめた。概要は次のとおり。

1.機関投資家の育成

効率的な債券市場の形成には投資家層が厚みを持つことが不可欠であり、特に機関投資家が重要である。わが国は官民が連携し、人材派遣などを通じて、各国の機関投資家の育成に協力するとともに、投資家の裾野拡大に資するアジア域内に流通する商品開発を推進することが期待される。各国政府は流通市場の整備などを進めるべきである。

2.金融当局・取引所関係者等の育成

金融当局や取引所関係者など市場運営にかかわる人材の育成も重要であり、わが国金融当局による各国の人材育成協力の推進を求める。わが国経済界も、研修生の受け入れや専門家の派遣での貢献が期待される。

3.アジア発の、アジア企業の格付けに強みを持つ格付け機関の育成支援

市場インフラ整備の一環として、アジア企業の特性を熟知した地場の格付け機関の育成が重要である。域内の格付け機関が所属するアジア格付け機関連合(ACRAA)は、引き続き格付けの標準化ならびに信頼性向上に努めるべきである。

4.アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)の推進

ASEANおよび日中韓の枠組みであるABMIは、現地通貨建て債券発行の支援のため、信用保証機関(CGIF)を昨年11月に設立している。これを活用するとともに、これが各国の信用保証制度のモデルとなるよう、低コストで簡素な手続きとすることが重要である。また、ABMIのもとに設置されている、各国の規制や市場慣行の調和などを目指す債券市場フォーラム(ABMF)において、わが国は官民が連携してリーダーシップを発揮していく必要がある。

5.わが国債券市場の活用促進

域内各国の政府・企業による日本市場の活用促進により、わが国債券市場がアジアのモデルとなることが期待される。このためには、サムライ債の発行を促すための規制緩和や手続きの簡素化、また、今春創設されるプロ向け債券市場の手続きの簡素化、低コスト化が求められる。

6.広域インフラ整備のための民間資金の活用

アジアにおける大規模なインフラ投資需要に応えるため、官民連携で国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)の保証・保険を活用したインフラファンドのスキーム開発を進めるべきである。その際、政策金融制度が十分に活用され、わが国企業の海外インフラ展開に役立つよう設計されることが期待される。

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なお、提言については今年開催予定のアジア・ビジネス・サミットで報告する予定である。

【国際協力本部】
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