経団連の最近の動き

(1997年11月)

「経団連インフォメーション」の記事より


金融システム安定化方策を取りまとめ

景気の減速感が強まる中、金融機関の破綻が相次いでいる。現状を放置すれば、金融ビッグバンへの対応が遅れるばかりか、わが国経済の将来に重大な影響を及ぼす。金融システムの維持・安定は、内外からの信用を確保するとともに、当面の景気回復、経済構造改革促進のための喫緊の課題である。
そこで、経団連では、いわゆる奉加帳方式による金融機関の破綻処理には限界があることから、金融システム安定のために財政資金の導入を求めることとした。本要望では、財政資金導入の目的を、金融機関の救済ではなく、預金者を保護し、金融システムを維持することとしている。また、具体的な手法の一つとして、預金保険機構の日銀等からの借入に政府保証を付けることをあげている。

土地税制改正論議が大詰め
─土地税制改革の断行を

11月27日、自民党税調は総会を開催し、いよいよ年末の税制改正に向けた本格的な議論を開始する。
経団連では、法人税改革と並んで、政府の「地価抑制から土地の有効利用へ」という土地政策の転換を踏まえた土地税制改革の断行を強く求めている。国土・住宅政策委員会では、11月中旬から改めて古川昌彦委員長、田中順一郎共同委員長、前田又兵衞委員長代行を中心に自民党税調の幹部や関係部会の幹部議員を連日訪問しているが、今後も
  1. 地価税の撤廃、
  2. 法人の譲渡益重課の撤廃、
  3. 特定の資産の買換特例の要件改善、
  4. 法人の新規取得土地等に係る負債利子の損金算入制限の撤廃、
  5. 居住用財産の譲渡損についての繰越控除制度の創設、
等に焦点を絞り、実効ある土地税制改革の実現を目指し、精力的に取り組んでいく。

ブルガリア経済、企業情報発信
ホーム・ページを開設

経団連では、11月18日にブルガリアの有力経済3団体のツォーチェフ会長(ブルガリア日本経済委員会)、ボジノフ会頭(ブルガリア商工会議所)、ダネフ会長(ブルガリア産業連盟)と懇談会を開催した(座長:片田KOMATSU会長)。席上ダネフ会長から、以下のお知らせを受けたのでご紹介する。
去る10月20日、ソフィアにおいてインヴェスト・フォーラムを開催し、ブルガリア企業2,000数社が参加した。これを契機に、ブルガリア経済、企業の現状・民営化の状況を紹介したホーム・ページを開設し、ブルガリアにおけるビジネス拡大のための情報を提供していくこととした。
ご関心ある方は、下記まで連絡願いたい。

【ブルガリア産業連盟:Bulgarian Industrial Association】
URL:http://www.bia-bg.com

「交通機関を対象とした新税等の導入に反対する」を取りまとめ

28兆円にもおよぶ旧国鉄長期債務の処理をいかに進めるかが、わが国財政上の大きな課題となっている。現在、政府・与党の財政構造改革会議企画委員会において、11月末取りまとめを目途に、具体的処理策について鋭意検討が行われており、交通機関を対象とした新税の創設が検討の対象となっている。
このような動きを受けて、輸送委員会(委員長:濱中昭一郎日本通運社長)では、旧国鉄長期債務の処理問題について検討を進め、今般、「交通機関を対象とした新税等の導入に反対する」と題する見解をとりまとめた。
同見解では、国の債務である旧国鉄長期債務を特定の産業・企業への負担の転嫁や税の転用により処理することは妥当でなく、交通機関を対象とした新税等の導入は、わが国経済の高コスト構造是正に逆行するものであるとして、これに絶対反対である旨を主張している。今後、財政構造改革会議企画委員会のメンバー等に経済界の考え方を伝えていく。

企業年金制度の抜本改革を検討

経団連財政制度委員会社会保障制度専門部会(専門部会長:高野盛久三菱化学専務取締役)では、昨年12月にとりまとめた年金改革の意見書に続き、企業年金制度の抜本改革をより具体的に提言すべく検討を進めている。
企業年金については、これまで数多くの規制が設けられ、特別法人税という諸外国でもまれな積立金への課税が行なわれている。企業・従業員の自助努力による退職後所得の確保を促すため、企業年金は私的年金として明確に位置づけ、自由な制度設計・資産運用を原則とし、税制上の支援策を講じるべきである。同時に、従業員の受給権の確保に向けて、自己責任原則をベースとした最低限のルール作りも必要である。
当会では、社会保障制度専門部会でさらに検討を進めて案をとりまとめ、財政制度委員会での審議を経たうえで、12月中旬をメドに企業年金改革の提言を公表する予定である。

知的財産問題で産業界の考え方を申し入れ

産業技術委員会知的財産問題部会(部会長:丸島儀一キャノン専務取締役)では、さる11月5日、特許庁と文化庁の要請を受けて、「知的財産権の侵害に対する救済等のあり方」および「著作権の集中管理制度のあり方」についてのコメントをそれぞれ提出した。
「知的財産権の侵害に対する救済等のあり方」については、日本では知的財産権が侵害された場合の損害賠償額が低く、侵害し得という声もあり、現在、工業所有権審議会でその改善策が検討されている。「著作権の集中管理制度のあり方」の方は、今後デジタル化、ネットワーク化が急激に進展するなかで本制度はどうあるべきか、著作権審議会で検討が進められている。
知的財産問題部会では、メンバーに対するアンケートの結果等に基づき、産業の発展とのバランスや、著作物の利用者のニーズに十分配慮すべきである旨申し入れた。

「NPO法案は今国会で成立を」
−社会貢献推進委員会意見を作成

社会貢献推進委員会(委員長:椎名日本アイ・ビー・エム会長)では、10月29日に委員会意見「市民活動促進法案(NPO法案)の今臨時国会におけるすみやかな成立を望む」を作成し、関係者への働きかけを開始した。
いわゆる「NPO法案」は、先の通常国会にて与党案である「市民活動促進法案」が6月に衆議院を通過し、現在参議院にて継続審議となっている。
市民活動団体を中心とするNPO(民間非営利組織)は企業の社会貢献活動のパートナーであり、また豊かで多様な社会を築いていく上で不可欠な存在である。経団連では、NPOの自立・発展を側面的に支援する立場から、これまでNPO法案の関係議員、市民活動団体関係者などと幅広く意見交換を行なってきた。その結果、与党案である「市民活動促進法案」の今臨時国会での成立によって多くの市民活動団体が容易に法人格を取得し、社会的認知を高めていくことが、NPOの社会的基盤整備の第1歩として重要であると判断した。
各方面へ働きかけの結果、同法案に対する関係者の理解・協力は次第に深まりつつある。
なお、NPO法案の審議状況については、経団連の各会合で適宜報告するとともに、臨時国会会期末の前日(12月11日)に開催される社会貢献推進委員会の本委員会にて総括的に報告する予定。

「世界産業界の地球温暖化対策についてのシンポジウム」開催のご案内

経団連は、来る12月3日、気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)の期間中に、標記シンポジウムを開催し、世界各地で急速に広まりつつある産業界による地球温暖化への自主的な取り組みの現状と将来について話し合う。ドイツ、フランス、オランダ、米国、韓国、中国など世界主要十数カ国の産業界代表が、それぞれの取り組み状況を発表し、国連機関などのコメンテーターや会場からの質問を受けて意見交換を行なう。世界の産業界の地球温暖化対策の動向が効果的に把握できるものと期待される。
また、最後に共同宣言を採択して、COP3の本会議で発表する予定である。

アミンザデ イラン外務省アジア・オセアニア担当副大臣との懇談会を開催

イランでは、本年8月にハタミ政権が誕生し、同国の対外政策改善への動きに期待が高まっている。日本イラン経済委員会(委員長:相川三菱重工業会長)では、こうした中で来日するアミンザデ・イラン外務省アジア・オセアニア担当副大臣を招いて、11月14日に懇談会を開催し、ハタミ新政権の外交政策を中心に説明を受けることとした。


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