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国際投資ルールの構築と
国内投資環境の整備を求める

2002年7月16日
(社)日本経済団体連合会

1.はじめに

経団連(当時)は、2001年6月に「戦略的な通商政策の策定と実施を求める」と題する提言を取りまとめ、わが国が、貿易・投資の促進により国の維持発展を図る「通商立国」として、国益に基づき長期的な観点から企業の国際競争力強化に資する通商政策を策定・実施すべきである旨主張した。
一層加速化するグローバリゼーション(世界市場の一体化)の下で、国境を越える投資は、物品及びサービスの貿易と並び、わが国企業の国際ビジネスにとって不可欠となっている。特に、わが国企業は、投資等を通じて、東アジア地域(ASEAN諸国 #1、中国、韓国、台湾、香港)を中心とした国際的な分業ネットワーク構築の動きを拡大、深化させている。
こうしたなか、現在まで多国間を包括する投資ルールが存在しないことから、WTOでは、昨年11月の閣僚会議において新ラウンド交渉の一環として、国際的な投資ルールの策定交渉を全加盟国のコンセンサスを得て来年9月にメキシコ・カンクンで開催予定の第五回閣僚会議の後に開始すべく #2、検討作業を続けている。
また、近年、二国間投資協定(BIT:Bilateral Investment Treaty)が急増しており、2000年末現在、世界には1941件の協定が存在する #3。特に1990年代に入り、NAFTA(北米自由貿易協定)を契機として、投資分野を含む自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)も急増している #4。これに対して、わが国は、BITは10件、FTAは、本年に入りシンガポールとの間で初めて経済連携協定(EPA:Economic Partnership Agreement)を締結したに留まっている #5
この結果、わが国企業は、諸外国 #6 の企業に比べて、投資先国における保護・自由化の面で不利益を蒙っている。わが国経済界は、WTO新ラウンド交渉において、投資ルールが策定されることを強く求める。またわが国政府は、WTO交渉とともに、わが国企業の重要な投資先であるASEAN諸国及び中国 #7 と投資の保護・自由化を達成する枠組みを早急に構築すべきである。
他方、欧米の先進諸国は、投資を促進する環境の整備とともに、グローバル化の潮流に対応して海外からの投資を積極的に誘致することにより、経済の活性化を目指しており、わが国は、この面においても遅れをとっている。規制改革の推進等による国内投資環境の整備とともに、対内投資を活用した新たなビジネス・モデルの獲得や産業の高度化によって、わが国経済全体の効率化を促進することが急務である。

2.多面的なアプローチに基づく戦略の重要性

このような状況の中で、わが国企業による海外展開を促進するため、予測可能性、安定性及び透明性を確保する観点から、投資の保護、自由化及び紛争処理手続を含めた制度的枠組みである、国際的な投資ルールの構築が強く求められている #8
国際投資ルールの構築に向けては、経済界のニーズ、プライオリティに沿って、(1)マルチラテラル(WTO)、(2)プルリラテラル(WTO複数国間協定、OECD #9 )、(3)リージョナル(日本ASEAN包括的経済連携、ASEAN+3(日中韓)、東アジア・コミュニティ #10 )、(4)バイラテラル(ASEAN諸国、中国、NIEs諸国等)、(5)セクトラル(例えば、重要分野に関してFTAの中に別途章を設ける等により、更なる自由化・ルールの整備を行なう #11 )等のあらゆるチャンネルを多面的かつ戦略的に活用することがきわめて重要である。

3.新ラウンド交渉におけるWTO投資ルールの策定

わが国経済界は、来年9月の第五回WTO閣僚会議後に、全加盟国のコンセンサスを得て、投資ルールの策定に向けた本交渉が開始されることを強く求める。投資ルールに関する交渉は、新ラウンド交渉の不可欠な一部として、ドーハ閣僚宣言に明記された期限(2005年1月1日)までに妥結することが求められる。
投資ルールには、発展途上国を含めたWTO全加盟国の参加が望ましい。そのためには、途上国の開発政策に十分配慮しつつも、わが国企業にとって優先度の高い「透明性」及び途上国にとって受け入れ可能な「自由化」に重点を置いた協定を検討することが現実的である。
投資ルールについては、既にサービス貿易一般協定(GATS:General Agreement on Trade in Services)において、サービス産業による実質的な直接投資に当たる「海外における業務上の拠点の設置」(第3モード)に関する規定(1条2項(c))が存在する。よって、交渉に当たっては、GATSの対象となるサービス産業分野との関係を十分に考慮しつつ、統一的な産業分類を設定した上で、非サービス産業の分野へのGATSの自由化方式 #12 導入の可能性について検討する必要がある。
具体的にわが国経済界が求めるWTO投資ルールには、(1)投資の定義・範囲、(2)透明性、(3)投資保護(収用・補償、送金の自由)、 (4)自由化 #13 (最恵国待遇、内国民待遇、市場アクセス)、(5)例外、(6)開発条項、(7)紛争処理手続き、(8)二国間投資協定との関係が含まれるべきである(【別添資料1】参照#14
現在、WTOの作業部会において具体的な検討が進んでいるが、来年9月の第五回閣僚会議後から妥結期限までの時間を考えると、作業部会を、事実上事前交渉の場と位置付けた上で、実質的な交渉を行なうべきである。
わが国経済界は、こうした目的の達成に向け、米国及び欧州 #15 を含む各国の経済界、日本政府、投資先国を中心とする各国政府、WTOへの働き掛けを行なっていく。あわせて、WTO加盟国の8割を占める途上国の参加を促すためには、途上国の交渉能力及び協定理解・履行能力の向上に資するようなキャパシティ・ビルディングが必要である。投資ルールの策定の観点からも、わが国は資金面及び人材面から積極的に途上国支援に取り組むべきである #16

4.積極的な二国間・地域協定の締結

わが国経済界は、日本政府が、ASEAN諸国 #17 及び中国を重点国・地域と位置付け、WTO交渉と並行して、これらの国々と投資保護、自由化及び紛争処理を含む制度的な枠組みを構築することを強く求める。こうした枠組みは、わが国企業のビジネスの円滑化・拡大に資する実効性を伴った内容とすることがきわめて重要である。
わが国経済界は、NAFTA諸国(米国、カナダ、メキシコ) #18、韓国 #19 への関心も高く #20、こうした国々との実効性ある枠組みの構築を求める。
具体的にわが国経済界が求める枠組みには、(1)投資の定義・範囲、(2)透明性、(3)投資保護(収用・補償、送金の自由)、 (4)最恵国待遇、(5)内国民待遇、(6)パフォーマンス要求、(7)キー・パーソネル、(8)紛争処理手続きが含まれるべきである(【別添資料2】参照)。

(1)ASEAN諸国

わが国は、ASEAN諸国とのBITを早急に締結すべきである。既に交渉が進んでいるWTO未加盟国のベトナムとのBITについては、米越通商協定 #21 並みの内容を伴って本年内に締結されることを望む。また中期的には、ASEAN諸国と幅広い分野に関する自由化を目指す包括的経済連携協定(EPA)の中に投資分野を包含することを目指すべきである。こうしたBITやEPAの交渉に当たっては、それぞれの国情に応じた柔軟な対応が求められる。
ASEAN諸国は、長年にわたり、わが国にとって最も重要な投資先であり #22、日系企業は積極的なコミュニティ・リレーションズ活動 #23 により密接な関係を築いてきた。その一方で、現地ビジネスにおいては、いまだに、自国民雇用要求や技術移転要求等のパフォーマンス要求、土地所有制限、行政手続きの不透明性、外貨送金規制及び外資出資比率の制限等の様々な問題に直面している #24
BITやEPAの中で、国際法上適正な投資保護、自由化及び紛争処理手続きが規定されれば、わが国企業が強くコミットしているASEANとのビジネスの円滑化に伴い、産業集積の利益や規模の経済を活かした、さらなる経済関係の拡大が見込まれる。
ASEAN諸国とのEPA交渉において、双方が満足するためには、幅広い分野でバランスを取った内容とすることが不可欠であろう #25。投資の促進に関連する分野としては、ビジネス環境整備の一環としての、破産法、競争法及び担保実行手続等の法制度の整備やサポーティング・インダストリーの育成等を含めることも重要である。
ASEAN諸国の中では、タイ、フィリピンとわが国との間で個別にEPA締結を目指した作業部会の設置が合意され、検討が進もうとしている。わが国経済界は、今後こうした協定に企業のニーズが反映されるよう働き掛けていく。
また、わが国は、ASEAN諸国に対してAFTA(ASEAN自由貿易地域)の迅速な完成を全面的に支援していく必要がある。

(2)中国

わが国は、中国との既存のBIT(1989年発効)を高水準な内容に改訂する必要がある。中長期的には、ASEAN+3の枠組みでの幅広い分野を含むFTAの締結を目指し、この中にBITを統合していくことを検討すべきである。
中国とのBITは、協定の議定書において留保が付されていること、パフォーマンス要求の禁止が盛り込まれていないこと及び投資の自由化を主眼としていないこと等の理由から、現在までに紛争処理手続きに委託された例がない #26 等、企業のビジネスの観点からは必ずしも使い勝手がいい内容となっていない。その後、中国は、昨年12月のWTO加盟に際して、サービス分野を中心に様々な業種における外資出資制限の段階的削減や全てのパフォーマンス要求の撤廃等を約束した #27
しかしわが国企業は、近年、対中投資を再び拡大させる一方で、現地において、投資関連法・規制及び許認可を含む行政手続きの不透明性、技術移転や合弁要求を含むパフォーマンス要求及び外資出資比率の制限等の問題に直面している #28。BITの改訂、将来におけるFTAの締結により、制度的な枠組みの中でこうした問題が解決されることを強く望む。またわが国は、他のWTO加盟国と協力しながら、中国政府がこうした約束を遵守するよう監視するとともに、遵守されない場合には、その是正を働き掛けていく必要がある。

(3)その他の地域

わが国は、様々な国・地域との間で、投資分野を含むFTAを積極的に締結すべきである #29。特に、現在、両国の産官学の代表による検討が進んでいるメキシコ #30、韓国 #31 との幅広い分野を含むFTAの早期締結を強く望む。また、チリとのFTA締結への期待もある。さらに、米国、カナダ、オーストラリア及びニュージーランド等のAPEC諸国、EUとの間でも、FTAを含め、様々な協力の枠組みを検討していく必要がある。

5.わが国経済の活性化につながる国内投資環境の整備

わが国政府は、企業の自由なビジネス活動を保障する国内投資環境の整備を行なう必要がある。こうした投資環境の整備は、わが国市場の魅力を高めることを通じて、外国企業による対内投資の促進にもつながる。
対内投資は、多くの場合、資本だけでなく、新たなビジネス・モデル、新技術・新素材及び経営ノウハウといった企業の貴重な経営資源が国境を越え、国内雇用を創出するとともに、企業内取引の活発化により両国の経済関係を拡大させる。また、懸念されている産業空洞化の防止に資するとともに、国内における競争を活発化して経済効率化ならびに産業高度化を促す。こうした結果、投資受入国たるわが国の経済活性化に好影響を与える #32
近年、株価や地価等の下落や規制緩和の進展等の結果、わが国への直接投資が増加する傾向にはあるが、わが国の対内直接投資残高は、GDP比で1.2%(2000年末)と欧米諸国に比してきわめて少なく #33、更なる対内投資の促進策が求められる。
具体的には、(1)エネルギー、物流・流通・通信及び社会資本整備等の効率化・低コスト化、(2)実効法人税率の引下げや投資優遇税制を含む税制改革 #34、(3)より柔軟な会社法の整備、(4)行政手続きの簡素化・迅速化・恣意性の排除、(5)規制改革特区を含む地方自治体による創意ある取り組み支援、(6)港湾・税関における通関手続きの簡素化・合理化・迅速化、(7)公営事業の民間事業体への委託の推進 #35、(8)資本市場を含む制度の整備及び (9)わが国規格・認証の国際基準との整合化の推進等により国内投資環境を整備するとともに、対日投資の促進に向けて、(10)中央及び地方政府による対外的な広報活動の拡充及び (11)投資関連情報のワンストップ・サービス提供体制の確立等が求められる #36
こうした政策が実施されれば、わが国企業による設備投資の増大や新しいビジネスの創出に加えて、日本企業の合併・吸収(M&A:Merger and Acquisition)を含む対日投資の促進にもつながる。
また国境を越える投資は、投資家や幹部職員等、企業の重要な経営資源である人の移動を伴う。わが国に国籍を問わず優秀な人材を積極的に招致する観点からも、企業内移動を含めた一時的な人の移動を円滑にする制度を整備する必要がある。具体的には、ビザや労働許可等の入国・滞在関連手続きの簡素化・迅速化、技術ビザ等取得要件の緩和を含む国内環境を整備しなくてはならない #37
またEPA等を通じた投資ルールの構築や自由化へのコミットメントを、わが国の制度改革の推進力として活用すべきである。これまでにも、例えば国内規制の透明性の確保について、わが国はGATTウルグアイ・ラウンド合意を受けて、パブリック・コメント制度の導入(1993年3月)、行政手続法の整備(1994年10月)、情報公開法の制定(1999年5月)等を行なっている #38。こうした国際ルールを通じたわが国制度の改変は、結果的にわが国経済の構造改革、行政改革の推進につながる。
こうした対内投資の促進には、国内的に痛みを伴う分野からの抵抗等が予想されるため、強力な政治のリーダーシップが求められる #39

6.終わりに

貿易と投資の拡大という相乗効果によって、世界は更なる経済成長の達成が可能となる。近年は、情報通信分野等における技術の進歩、国際的な物流の迅速化に伴い、研究・開発、調達、生産及び販売等の各工程が各国にまたがるような海外投資が増大している。
多国間を包括する投資ルールが存在しないなか、わが国政府は、第五回閣僚会議においてコンセンサスを得て本交渉が開始されるように途上国等に対する説得を引き続き行なうとともに、作業部会に具体的な交渉項目を提示する等によりリーダーシップを発揮すべきである。また中長期的に、ASEAN+3の市場統合を目指す上では、資本の自由な移動が不可欠である #40
ただし、投資関連政策は通商政策(対外経済政策)の一つの柱にすぎない。まずわが国政府は、わが国経済界が昨年来求めているように、今後10〜20年後を見据えて「通商立国」にふさわしい包括的な対外経済政策のあり方(グランドデザイン)を早急に提示する必要がある。
世界の通商地図が急速に塗り変わるなか、日本政府が、グランドデザインに基づき、わが国企業のニーズに即した対外経済政策を迅速に実施することを、強く求める。
こうしたグランドデザインの要素としては、物品及びサービス貿易の自由化、円滑化ならびにルールの整備に加えて、当提言の範囲を超えるが、(1)ODAの戦略的な活用 #41、(2)食糧・エネルギー分野における共通備蓄体制の構築を含めた地域・多国間協力の推進、(3)わが国の重点国・地域との租税条約 #42、社会保障(年金通算ほか二重払いの回避)協定 #43、独禁協力協定、相互承認協定、通貨スワップ協定及び税関協力協定の積極的な締結 #44 等の幅広い問題を含めるべきである。

以 上

  1. ASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国は、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ(以上1967年)、ブルネイ(1984年)、ベトナム(1995年)、ラオス、ミャンマー(以上1997年)、カンボジア(1999年)の10カ国。括弧内は加盟年。
  2. ドーハ閣僚宣言では、投資、競争政策、政府調達の透明性及び貿易円滑化というシンガポール・イッシュ(1996年のシンガポール閣僚会議以来、検討が行なわれている4項目)に関して、2003年の閣僚会議において、全加盟国のコンセンサスを得て、交渉を開始することとなっている。投資については、現在、貿易と投資に関する作業部会で検討が行なわれている。
  3. The Relationship Between Regional Trade Agreements and the Multilateral Trading System: Investment, OECD Trade Committee, April 2002. なお、1989年末には、BITは385件であった。
  4. 最近は、EUとメキシコ(2000年発効)、EUとチリ(2002年締結)、シンガポールとチリ(交渉中)、米国と豪州(検討中)といった大陸を越えたFTAが目立っている。
  5. わが国が締結したBIT相手国・地域は、エジプト(1977年)、スリランカ(1982年)、中国(1988年)、トルコ(1992年)、香港(1997年)、パキスタン(1998年)、バングラデシュ(1998年)、ロシア(1998年)、モンゴル(2000年)、韓国(2002年)。括弧内は署名年。なお、シンガポールとのEPAには、投資の保護・自由化が規定されている。
  6. 2001年6月末現在、例えば、ドイツは125件、英国は96件、フランスは92件、米国は44件、中国は99件、韓国は65件のBITを締結している。
  7. 中国とは1988年に署名、1989年に発効した投資保護協定が存在する。
  8. 投資ルール構築の際には、わが国企業における、人材育成、設計・開発、素材・原料調達、部品生産・調達、組立・製造、流通・物流、販売・マーケティング、資金回収・決済、アフター・サービス等の様々な段階において、国際ビジネスの形態が多様化しており、例えば、資本関係がない場合であっても、特定の技術(知的財産権)を外国企業に有償供与した上での生産委託、外国企業が保有する知的財産権及び採掘権等の権利取得といった例も増えていることに留意しなくてはならない。
  9. OECDには、投資の自由化に関して、資本移動自由化コード(1961年)、国際投資及び多国籍企業に関する宣言(1976年)が存在する。他方、OECDで検討されてきた多国間投資協定(MAI:Multilateral Agreement on Investment)交渉は、1998年に事実上挫折した。MAI交渉には、OECD非加盟国であるアルゼンチン、ブラジル、チリもオブザーバーとして参加していた。
  10. 小泉総理大臣は、本年1月のASEAN諸国訪問における政策演説(「東アジアの中の日本とASEAN」)の中で、東アジア・コミュニティの中心的メンバーとして、ASEAN、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドを挙げている。
  11. 例えば、NAFTAは、金融サービス、エネルギー、電気通信分野に関して、別途それぞれ章を設けている。
  12. GATSでは、最恵国待遇(2条)については、原則として10年を超えない免除登録をしない限り義務化される一方、市場アクセス(16条)及び内国民待遇(17条)については、自国が約束した分野のみ自由化するポジティブ・リスト方式が採用されている。
  13. 内国民待遇及び市場アクセスに関しては、【別添資料1】のモデル協定にあるように、自国が約束した分野のみ自由化するポジティブ・リスト方式とすべきである。
  14. WTO投資ルールの策定に当たっては、既存のWTO協定の一部である貿易関連投資措置協定(TRIMs:Agreement on Trade-Related Investment Measures)との関係に留意する必要がある。
    なお、TRIMsで禁止される措置の撤廃に関して、さらなる経過期間の延長に無条件で応じるべきではない。(注:2001年11月のWTO物品理事会において、ルーマニアは2003年5月末、フィリピンは2003年6月末、アルゼンチン、コロンビア、マレーシア、メキシコ、パキスタン、タイは2003年末までの経過期間の延長が条件付きで認められた。)
  15. 欧州産業連盟(UNICE)は、投資ルールの構築をWTO新ラウンド交渉における四つの優先交渉項目の一つと位置付け、2000年6月には提言を取りまとめている。
  16. この点に関連して、わが国は、途上国のキャパシティ・ビルディングを目的として、2002年3月にWTO創設されたグローバル・トラスト・ファンド(Doha Development Agenda Global Trust Fund)に対し、米国、EUに次ぐ150万スイスフラン(約1億2000万円、2002年6月現在)の資金的貢献をした。
  17. ASEANは対域外共通経済政策を有していないため、FTAやBITは各国ごとに締結する必要がある。
  18. NAFTAもASEANと同じく、対域外共通経済政策を有していないため、FTAやBITは各国ごとに締結する必要がある。
  19. 韓国との投資協定は、2002年3月に小泉総理・金大統領の署名を経て、第154回通常国会で批准された。本年中に発効される予定。日韓投資協定は、MAIレベルの自由化を達成しているとの評価がある一方、国内法の改正を伴わない自由化に留まる等、ビジネス面からの実効性について疑問の声もある。
  20. 【別添資料3】アンケート調査結果概要の【質問別結果概要】を参照。
  21. 2001年に締結された米越通商協定は、関税の引下げを含む物品の貿易、知的所有権の保護、サービスの貿易、投資の保護・自由化、ビジネス円滑化、透明性規定及び裁判を受ける権利、一般規定の7章から構成され、実質的に、GATS、TRIMs、知的所有権の貿易関連側面協定(TRIPs:Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property)の内容が含まれるとともに、BITも包含されている。
  22. 「ASEAN諸国との経済連携強化に関する基本的考え方―経団連アジア・大洋州地域委員会企画部会における検討の中間とりまとめ―」(2002年3月)で指摘した通り、1989年度〜2000年度の累計では、対ASEAN投資は6兆5691億円なのに対し、対中投資は2兆787億円である。
  23. なお、CBCC(海外事業活動関連協議会)は、2001年3月に「アジアにおける日系企業の「良き企業市民」のあり方について」と題する提言を取りまとめている。
  24. 経団連投資に関するアンケート調査(2002年4月)等。
  25. こうしたEPAは、シンガポールとのEPAをモデルとして、投資分野に留まらず、関税撤廃、サービス貿易の自由化等についても規定することとなるので、GATT24条(適用地域―国際貿易―関税同盟及び自由貿易地域)、GATS5条(経済統合)との関係にも留意する必要がある。
    特に、わが国が投資分野で高水準な内容を求める場合、相手国からは農産物市場を含むわが国市場の一層の開放が求められる可能性が高い。わが国政府は、こうした問題に前向きに取り組むべきである。
    なお、経団連(当時)は、2001年6月
    「戦略的な通商政策の策定と実施を求める」において、農政改革の推進により、中長期的には農産物の関税の引下げ・撤廃も可能となることを主張している。
  26. ただし、同協定第14条に基づいて、投資問題について協議を行なう合同委員会は、91年と92年の2回開催された。
  27. また、中国は加盟に際して、中央政府と地方政府の統一的行政の確保、法令その他の措置の公表及び照会窓口の設置、独立した司法審査等についても約束している。
  28. この他、知的財産権の侵害、煩雑な通関手続き、売上債権の回収不能及び中央政府と地方政府による法・規制の運用面における乖離等が指摘されている。経団連投資に関するアンケート調査(2002年4月)、「WTO加盟後の中国経済に対するわが国経済界の見方―経団連中国委員会企画部会における検討の中間取りまとめ―」(2002年3月)等。
  29. 日本経団連は、本文に掲げた国・地域の他、2001年12月の東亜経済人会議の議論に基づいて、日台FTAについて検討を進めている。
  30. 2001年6月の日墨首脳会談での合意に基づいて、経済関係強化のための日墨共同研究会が設置され、6回にわたる会合を経て、2002年7月下旬にFTAの重要性を認識する報告書が公表される予定。
  31. 2002年3月及び7月の日韓首脳会談での合意に基づいて、7月に産官学の共同研究会が設置され、FTAをめぐる検討が開始された。
  32. The Benefits and Costs of FDI for Development, OECD Committee on International Investment and Multinational Enterprises, March 2002.
  33. 欧米諸国における2000年末の対内投資残高とGDPの比率は、米国が27.7%、英国が33.7%、ドイツが22.5%、フランスが54.2%、カナダが27.3%、オーストラリアが29.5%等となっている。
  34. なお、包括的な税制改革の方向性については、2002年2月の日本経団連提言「税制抜本改革のあり方について」を参照。
  35. 例えば、上下水道、公共交通、ゴミ回収整理、病院・福祉施設等の地方公営事業等の設備維持、運営、経営を民間セクターに委託するコントラクト・アウト方式の導入を検討すべきである。
  36. 日本貿易振興会は、「対日アクセス実態調査報告書―対日直接投資―」(2000年6月)において、(1)公的機関の情報提供体制の不備、(2)工業団地の土地賃貸物件の少なさ、(3)土地規制の複雑さ、(4)コスト高の法務・会計サービス、(5)厳しいビザ要件、(6)日本特有の印鑑証明及び保証制度等を対日投資上の問題点として指摘している。
    また、経済産業省が行なったアンケート調査(平成11年度外資系企業動向調査)によると、外資系企業による事業活動を行う上での問題点として、高いビジネスコスト(65.5%)、高い税率(60.3%)、厳しい品質要求(49.0%)が、上位3回答項目となっている。
  37. この点に関連して、日本経団連は、WTOサービス貿易自由化交渉の観点から、「人の移動に関する提言」(2002年6月)を取りまとめた。
  38. Communication From Japan to the WTO Working Group on the Relationship Between Trade and Investment, 12 April 2002.
  39. その際には、1994年に設置された総理大臣を議長とする対日投資会議を再活用することも考えられる。
  40. 経団連(当時)は、2001年6月の提言「戦略的な通商政策の策定と実施を求める」において、中長期的にASEAN+3による市場統合を目指すことを主張した。
  41. 経団連(当時)は、2001年10月の提言「ODA改革に関する提言」の中で、わが国のODAに関して、ODA政策の理念の明確化、非効率性の排除、透明性の向上等を促進し、国内外から理解と共感が得られる抜本的な改革を求めた。
  42. 2001年より開始している日米租税条約の改訂交渉の早期妥結を強く求める。交渉においては、基本的にOECDモデル租税条約に則って、源泉徴収税率の引下げ等わが国企業の米国における円滑な事業活動の促進と、わが国への対内投資の拡大の観点を踏まえた交渉を望む。
  43. 社会保障協定に関しては、現在交渉中の米国との早期締結を強く求める。
  44. 当然のことながら、それぞれ協定の内容は異なるため、協定ごとにわが国にとって重点国・地域は異なる。
以 上

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