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日本においては、情報通信インフラはかなり安定したものが整備されているが、その基盤である情報システムは、個別最適なシステムとなってしまっている。そこで、個別ばらばらのシステムを日本全体としてよいシステムにするといった全体最適のコンセプトの下で、社会情報システム(ISS: Information System for Society)の構築を進める必要がある。
患者の満足度の低下
「国民生活白書」によれば、適切な診断が行なわれていると感じている人の割合は低下しており、単なる医療サービスからより質の高い医療サービスへと患者のニーズが変化していることが推定される。また、診察の際に感じる物足りなさも全体的に上昇しており、患者が求める情報のレベルと医療機関が提供する情報のレベルとの間に格差があるようである。
サービス提供者を中心とした仕組み
医療機関において、情報システムは医療事務の効率化を主目的にして利用されている。その結果、複数の診療科をまたがると重複検査が生じる場合もあり、医療機関内部で患者が効率的にサービスを受けるための仕組みが確立されているとは言い難い状況である。また、サービスを受ける際には、個々の提供主体別に対応され、サービス提供主体間の壁が適切なプロセスを阻害している。
医療機関には、医療分野における機能分担や連携を進めること、分野を超えた連携やサービスを提供することなどが求められ、個別最適から全体最適への発想の転換が必要になる。
現状は、個別のシステムができ、サービス提供の高度化や業務処理の更なる効率化を目指した内部での連携が進められている。今後は、経営の効率化を目指した系列医療機関との間での連携システム、患者の利便性向上や地域全体のサービス提供の高度化へ向けた、地域における病院−病院間連携、病院−診療所間での連携システム、そして保健・福祉分野とのシームレスな(継ぎ目のない)システムの構築が待たれる。
経営母体の異なる複数の介護サービス事業者が、一つのマネジメントの下でサービスを提供し、その結果を介護レセプトという形で処理していくためには、情報の一元管理による共有化、機関相互の連携・調整機能、事務の効率化が必要である。この意味で、介護保険事務処理のシステム化にとどまらず、社会情報システム的な発想が重要となる。
当社は、市町村・広域レベルの介護保険事務処理システム、要介護認定のネットワークシステム、ケアマネジメント・ネットワークシステムなどをうまく連携させる仕組みを開発中であり、地域におけるネットワーク化に取り組んでいる。
将来的には、医療・介護・年金をパッケージで考えた仕組み、地方・地域が主体となった情報インフラ、公と民とのシステムとの整合・統合などが考慮された「統合システム」へと発展することが予想される。
米国においては、数10年前から、健常者型のホームとナーシングホームがあったが、両者の中間的なものとして約10年前にアシステッド・リビングというものが出てきた。
つまり、健常者型のホームとは、食事のサービスが付いた元気な老人向けの賃貸アパート(月額10万円程度)であり、ナーシングホームとは、寝たきりや痴呆など自立度合いが低い老人を受け入れる施設(月額50万円程度)である。そして、軽い介護があれば自立した生活を送ることができる老人のための選択肢として生まれたのが、アシステッド・リビング(月額20万円程度)である。
98年4月に三洋電機は、米国エメリタス社との合弁で、アシステッド・リビングを専門にした月額利用料方式で有料老人ホームの事業を行なう三洋エメリタスを設立し、「サン・オークス倉敷」を運営している。
米国エメリタス社は、アシステッド・リビングを専門にした有料老人ホームを経営する会社であり、北米で134施設を運営し、約13,000人の入居者を抱えている。入居者のプライバシー、独立、自尊等を尊重するとともに、入居者個々のニーズを吸い上げてそれを満足させ、入居者に対して敬意を払うことをモットーとしている。
これまでCTやMRIといった大型で高額の画像診断機器を製造・販売してきたが、国民医療費の増加にともない医療支出の抑制政策によって頭打ちの状況にある。この現状を打破すべく、周辺医療従事者(看護婦、理学療法士、柔道整復師など)や、在宅患者、高齢者を新しい顧客として捉えて、機器・サービスを提供するヘルスケアビジネスを展開している。
「島津2001年ビジョン」の具体的な展開としては、肩こり、神経痛を緩和させる家庭用電位治療機「リカバロン」の製造・販売、低周波治療器などのリハビリ機器の輸入販売を行なっている。また、精密機器の事業を本業としながらも、乳酸で作った人や環境にやさしいカビ取り洗浄剤や入浴剤の分野へも参入している。さらに、ホーキング博士のような筋縮患者向けに、航空機用の技術を応用して、視線でコンピュータに指示をあたえるためのヘッド・マウント・ディスプレイの開発に取り組んでいる。
社内ベンチャーの関連では、バスリフトといった福祉機器や家庭用光治療器といった健康機器などの事業が立ち上がりつつある。
そして、ヘルスケア事業会社では、健康機器の分野ではマッサージ器を、理学療法機器の分野では超音波治療器などを、手がけている。
ヘルスケア事業会社において、アイデアレベルのものを練り上げているところである。一つには、人材派遣的な事業として、訪問看護ステーション、ホームヘルパーの派遣などを考えている。もう一つは、「在宅介護情報センター構想」である。公的介護保険の導入に伴い、民間企業を含め多種多様なサービス・提供主体が出てくることが想定され、どこにどういったサービスがどれくらいの規模であるのか同様に、どこにどれだけの需要があるのかという情報を、網羅的に把握したいというニーズが出てくると思われる。こうした情報をネットワークに乗せて、整理した形で利用者が閲覧できる仕組みを考案中である。
昭和47年に医療機器開発室を設置し、海外の医療機器を輸入し、国内販売を手掛けた。当時は、社会に貢献することを目的に、他の商社でも同様の取り組みがなされた。
その後紆余曲折を経て、医療機器開発室は設備システム部に発展的に統合され、同部医療・海外設備課にて取り組むと同時に、その他営業部門でも独自のニーズに合せた医療ビジネスを行なっている。
医療という社会的責任の重い分野に関連する事業では、儲かるから取り組むといった安易な考えは慎み、途中で事業放棄することが出来ない分野であり、不退転の決意で取り組む必要がある。
農水産開発室
「ロイヤルマリオット」を設立し、主に学校を対象とした給食事業を行なっているが、病院給食への展開を検討している。
油脂部
事業会社である「サミット製油」、「不二製油」において、健康関連の食品・食材の物販を行なっている。
リビング部
医療機関向けに、ドクター、ナース用アパレルの販売、設備・部材の施工を含めた納入、抗菌材の販売等を事業会社で行なっている。
東京建設部
病院、老人ホーム、デイサービス施設等の建て替えに関わる設計・施工、運営のコンサルテーションを行なっている。
消費流通事業部
「トモズ」というドラッグストアを、現在13店舗出店し、調剤、大衆薬、健康食品などを販売している。年間2、3店舗を増設する形で進めている。
設備システム部
医療機器関連の輸入・国内販売を、特約店・二次店などによりルート販売を行なっている。
住商ファーマインターナショナル
海外の製薬会社と国内の製薬会社とによる新薬開発を支援するとともに、新薬開発の投資を行なっている。
大阪の機械・設備部
病院のリネンサービス事業を行なっている。
本業のセキュリティ事業とリンクさせながら、社会に安全と安心を提供する。
医療分野における新しい選択肢「自宅で、生活しながら治療を受ける」、すなわち「在宅医療」のサービスを提供するため、80年代後半に米国の在宅医療会社を買収してノウハウを吸収した後、90年代に入ってセコム在宅医療システムを設立した。
当初は、提供するサービスのすべてが健康保険の適用外であったが、その後、在宅訪問看護が健康保険の適用となった。利用者の全額自己負担となるサービスと、業務提携先を通じてサービスを提供することによる一部自己負担のサービスの二本立てとなっている。
現在は株式会社が訪問看護ステーションを直接経営することが認められていないので、セコム(セコム在宅医療システム)自体としては、訪問看護、ファーマシー、ナースセンター、在宅医療支援等のサービスを、利用者の全額自己負担という形で提供している。基本的には、セコムナースセンターが24時間365日体制で当社の看護婦をコントロールし、当社の看護婦が医師から指示書をもらって、患者宅に訪問して看護サービスをするものである。この時に必要な医薬品等は、東京と大阪のファーマシーから宅配便で患者宅に直接配送するシステムをとっている。サービス対象エリアは、首都圏、大阪、名古屋、仙台などである。訪問看護サービスの料金については、例えば週1回訪問(月4回)で、1回の訪問時間が60分の場合には月額55,000円である。
健康保険の適用が受けられるサービスについては、医療法人である恒人会と業務提携を行なうことにより、通常の健康保険であれば2割・3割の自己負担で利用できるサービスを、東京・神奈川・千葉・大阪の6箇所で提供している。今後、全国主要地区に順次展開する予定である。
セコムケアサービスを設立し、介護・家事の分野で、顧客のプライバシーを守りながら、家族と変わらない暖かいサービスを提供している。具体的には、約250名のホームヘルパーと提携しており、運動支援、食事介助、清潔支援、排泄支援等を行なう介護サービスと、掃除、洗濯、食事の支度等家事全般の支援を行なう家事サービスを提供している。東京・大阪及びそれらの近県を対象エリアとし、例えば、介護サービスを週2回ずつ1ヵ月(4週間)利用(平日の昼間に1回3時間)の場合、月額67,400円の料金としている。
セコム漢方システムを設立し、漢方専門の薬剤師が一人一人の体質にあった漢方の生薬を処方して、全国に宅配便で届けるサービスを行なっている。一般には生薬をすでに調合したパックや粒状のものが出回っているが、セコム漢方システムが行なっているサービスは、生薬そのものを届けるものであり、端的には、インスタントコーヒーとドリップ式コーヒーとの違いがあると言える。
森ビルとの共同出資によりプライムステージを設立し、世田谷区成城で豊かな老後を望む高齢者を対象にした高級有料老人ホームを運営している。入居金が約1〜5億円であり、医療、介護、ハウスキーピングなどのサービスに加え、パーティや鑑賞会などのアクティビティも充実させている。全200世帯収容のうち、現在約半分程度の入居という状況である。
遠隔読影支援サービス「ホスピネット」は、契約先の医療機関からホスピネットセンターへ通信回線を通じて送られてくる放射線検査画像を、ホスピネットセンターに常勤の放射線科専門医が読影し、その結果を送信元へレポートするサービスである。現在、全国約160の医療機関と契約している。
CTやMRIなどの高額な放射線装置を導入している医療機関では、放射線科の専門医が慢性的に不足し例えば週1回しか非常勤の専門医が来ない場合があり、結果的に放射線装置の利用効率が上がらないという経営的な問題を抱えている。そこで、セコムのホスピネットを利用してもらうことにより、検査画像の撮影の翌日には読影結果が医療機関に届き、患者へのサービス向上に繋がり、結果として放射線装置の利用効率の向上が期待される。
セコムホームセキュリティシステムの契約先に対して、ペンダント型の救急通報装置により緊急信号を発信し、いざという時にセコムの者が駆けつけるサービスを有料で提供している。また、無料のサービスとして、フリーダイヤルの電話での看護婦による健康相談、インターネットによる医療相談・健康関連情報の提供を行なっている。
「安心と信頼」をモットーに、患者のQOL(quality of life)の向上に貢献する。
全国を6地域に分け、それぞれに100%出資の在宅医療専門の販売会社を設立した。61営業所・出張所と450人以上の専門スタッフによる24時間サポート体制を整備し、地域に密着した営業を展開している。
82年より酸素濃縮器のレンタルを開始した。この装置は、一般家庭の電気を使用して簡便に高濃度の酸素を発生させることができるので、病状が安定している慢性呼吸不全の患者は、自宅で高濃度の酸素を吸入できるようになる。その結果、患者およびその家族に充実した社会生活、家庭生活を営む機会をもたらすものである。
在宅医療用酸素濃縮器の事業のモノとお金の流れについて、概略を図に示す。医師が、病状が安定している慢性呼吸不全の患者に対して、在宅酸素療法を処方した場合、帝人は、患者宅に在宅医療用酸素濃縮器を設置するとともに、機器の定期点検、故障時の緊急対応、引取りまでを、帝人が病院に代わって行なう。帝人と病院は、毎月の機器のレンタル費用を精算し、患者は病院に健康保険の範囲で個人負担金を支払う。なお、患者は、この機器を稼動させるために月々4,000円から7,000円の電気料を負担することになるが、一部の自治体(北海道、宮城県など)では、これを負担するところも出てきている。
情報通信ネットワークを活用したサービスにも取り組んでいる。例えば、酸素濃縮器を遠隔モニタリングするシステムとして、患者宅に設置した酸素濃縮器の運転状況を連続的にモニターするシステム「TOMS」を稼動させている。また、酸素濃縮器を利用している在宅患者の心拍数や動脈血酸素飽和度などの生体情報と運転状況情報とを医療機関へ伝達するシステム「ケアメイトシステム」(在宅酸素療法支援システム)を、現在試験的に運用している。将来的には、訪問看護ステーション等との連携も図ることを考えている。
全国の営業ネットワークを活かして、患者に対する「旅行サービス」も行なっている。例えば、関西地域の患者が関東地域へ旅行する際には、帝人の地元の営業マンが、宿泊先に予め酸素濃縮器を設置したり、移動中に使用する携帯用酸素ボンベの替えを手配している。将来的には、米国本土やハワイの業者と提携を行い、海外旅行も可能にしたいと考えている。
保険会社、銀行、クレジットカード会社等の出資により、89年に設立され、99年3月末現在の資本金は、2億5,000万円である。
事業概要は、医療情報サービス、海外赴任者からの相談、健康情報誌の発行、一次予防を中心としたコンピュータによる健康チェックなどである。主な顧客としては、健康保険組合や共済組合などである。
概要
24時間年中無休体制で、健康、医療、看護、介護、メンタルヘルスの相談を電話で受けるサービスである。日本全国の1万の医療機関、7万の診療所、5万4,000の歯科診療所等を含めて、現在25万程度の医療関係機関、福祉関係施設の情報をデータベース化し、健康相談プラス医療関係等施設の紹介(情報提供)を行っている。公的介護保険制度の導入に備えて、医療福祉関係のNPO、ボランティア団体なども、全国的に網羅し、データベースへの追加を行なった。
相談件数の推移
相談件数は、89年10月にサービスを開始した初年は、3カ月間で94件、つまり1日1件程度であったが、98年は、1年間で約615,200件、つまり1日約2,000件となっており、相談件数は確実に伸びている。
相談スタッフ
東京と大阪に相談センターがあり、医師、保健婦、看護婦、助産婦、臨床心理士等、現在延べ300名程度の相談スタッフが、東京と大阪でローテーションを組んで、国内及び海外(赴任者・留学生)からの相談を受けている。内科、小児科、産婦人科、心療内科、精神科、眼科、耳鼻科、皮膚科等、主要な科目のドクターは、現在は48名いる。また、保健婦、助産婦、看護婦、臨床心理士については、来年からの公的介護保険制度のスタートに備え、看護婦を中心にケアマネジャーの資格を取得するように指導している。
相談内容
最も多いのは、医療機関に行く前の相談、または医療機関に行くほどでもない場合の相談であり、約35%を占める。その次は、通院や入院している人、その家族からの相談であり、約30%を占めている。3番目に多い相談は、約15%を占める、母子保健、育児に関する相談である。4番目は、家庭介護・看護の相談で、約9%を占めている。
最近では、公的介護保険制度の仕組み、料率、認定の問題に関して、ぽつぽつと相談が入ってきているため、独自に、6単位制の公的介護保険制度の勉強を相談スタッフに課して、対応を進めている。
情報サービス
医療機関に関する情報サービスを、当初、夜間・休日に開業している医療機関に関する情報サービスを行なっていたが、93年からは、すべての医療機関を網羅して行なっている。相談の内容は、医療機関に関する情報を求める相談が増加傾向にある。自分の病状・症状に合った医療機関を探したいとか、これから行こうと思っている医療機関について、その病院にある医療機器・器材等の設備の状況、その病院の医者の学会活動状況などの情報を、事前に入手したいというニーズが高まっている。
2年半程前から、地域住民サービスの一環として、電話相談、健康増進、疾病予防、また、医療費抑制の観点から、地方自治体の顧客が増えてきている。現在、約90の市町村で利用されている。
これら地方自治体との関わり合いの中で、当該地方自治体の公的介護保険への対応方針の策定事務を依頼された。そして、公的介護保険制度に関わる実態調査を8市町村、公的介護保険に関する計画の策定事務、新老人福祉計画の策定事務を8市町村から受託した。
今までは健康・医療相談を中心にした事業であったが、公的介護保険制度に関する相談も大きなマーケットになると見込んでいる。
医療費用保険
86年に発売した医療費用保険は、傷害や疾病によって入院した場合の費用のうち、例えば、入院諸費用、高度先進医療など、公的医療保険制度でカバーされない部分を補填する商品である。
介護費用保険
89年に発売した介護費用保険は、寝たきり、または痴呆によって介護が必要になった場合、その介護に要した費用を補填する商品であり、介護施設費用、介護諸費用、住宅改造費などがカバーされている。
概要
87年に東京海上メディカルサービスを設立し、医療費全般の分析業務、健康管理サポート業務、メディカルリスクマネジメント業務を行なっている。150名程度の従業員のうち、嘱託を含めた医師が約40名在籍している。年間売上高は20億円程度であり、その約30%がグループ外への外販である。
事業の狙い・目的
概要
シルバー関連サービスを提供する会社として、96年に東京海上ベターライフサービスを設立した。売上高は年間2億円程度で、そのうち約35%がグループ外への外販である。
事業の内容
創業は1968年、98年度の売上高は、約590億円である。現在社員は、1,470名であるが、業務の委託を受けている現場で働く「業務社員」が28,646名いる。
98年度の売上高の構成比率は、病院からの受託業務が69%、診療所・調剤薬局からの受託業務が22%、教育事業が9%であるが、11,513件ある受託件数の構成比率では、診療所が73%と圧倒的に多く、病院は15%である。今後、公的介護保険制度の導入により医療が在宅化することが見込まれるので、地域における診療所のネットワークを活用していく。
良質なサービスの提供が重要である。要介護者の方に本当に受け入れられる、良質なサービスは何であるかを真剣に考え、そのサービスの基準をつくっていく。その上で、効率性を追求する。
また、市場のルールに則って適正価格でサービスを提供すること、安定的に供給する仕組みの構築も必要である。
デイサービス事業
収益性は悪いが、福祉分野において民間企業へ最初に門戸が開かれた分野であり、チャレンジしている。現在、特定都道府県に偏らないように、全国約20箇所で、デイサービスセンターを拠点として、受託事業を行なっている。デイサービスセンターには、要介護者をフォローする面とホームヘルパーのメンタルヘルスをケアする面もある。介護の現場を担うホームヘルパーの精神的な負担は大きく、これをケアしなければ、人材が定着せず、また、サービスの内容、質も高まらない。
食事サービス事業
病院などの施設内での給食を中心に展開してきた。今後は、福祉分野において、配給、メニュー開発、サービスのあり方などについてノウハウを蓄積して、デイサービスセンターの自前の施設を利用した事業を展開する。
教育事業
ヘルパー2級、ケアマネジャー資格の取得のための教育事業を展開している。サービス提供には何らかの基準が必要であり、これらの資格は基準の一つと考え、ここで資格を取得した人を、サービス事業に活用している。
企業自ら人材を育成するシステムの構築
公的介護保険制度の導入によるサービスの提供を担うのは、人材である。今後は、サービス提供にあたっての業務マニュアルを整備し、提供したサービスの評価の仕組みを整備する必要がある。人材を自ら育成するシステムをもたないサービスシステムでは、本当に良い人材は得られない。
医療機関・自治体との連携
昨年度までは民間企業への門戸は開かれておらず、自費サービスの部分での事業しかなく、医療機関から紹介を受ける形で事業を展開してきた。今年度は、公的介護保険制度の導入が間近になり、自治体との連携を積極的に進めており、現在約150の自治体から業務委託を受けている。まだまだ濃淡はあるが、これらの自治体は民間企業の活用に積極的な考えをもっている。
サービスの側面
第一に、「患者から顧客へ」という視点で、要介護者の生活そのものの需要をカバーしていく。第二には、要介護者の生涯需要をカバーし、要介護者の方の生涯を通じて、絶えず人間として向上していける機会を提供する。第三に、要介護者の家族の生活をサポートする視点をもつことが重要である。
ホームヘルパーの側面
まずは、高齢期における最大の不安要素である「介護・健康問題」への取り組みが最優先と考えており、取り組みにあたっては次の3つをポイントに置いている。
介護保障特約「ナイスケア」
本人の介護資金だけでなく、要介護時の家族の生活保障資金を受け取れることができる業界初の商品である。また、若年層を含め幅広い年齢層が対象であり、介護の原因を問わない。
シニア住宅における一時払終身年金活用
住宅都市整備公団が中心となって進めているシニア向け賃貸住宅制度おいて、家賃部分に、一時払いの終身年金を活用している。
介護ローン商品
介護・支援に必要な設備・機器の購入やバリアフリー対応の住宅リフォーム資金を無担保で300万円まで融資する商品でである。
ケアマネジメントをベースとした展開
現物給付的なサービスを提供するにあたっては、顧客のニーズを的確に把握した上でケアプランを作成し、サービスを提供するといった一連の手続き、ケアマネジメントが重要となる。日本生命では、品質管理の観点から、利用者本位のケアマネジメント手法「星座理論」を開発した。
このケアマネジメント手法をベースに、顧客に対する介護相談機能の拡充、介護事業者との提携などを推進する。さらに、子会社のニッセイ情報テクノロジーにおいては、介護事業者や自治体向けのシステムや、福祉情報をインターネットで検索するシステムなどの情報システム事業にも取り組んでいる。
施設「奈良・松戸ニッセイエデンの園」をベースとした展開
社会福祉法人聖隷福祉事業団と共同で、有料老人ホームを核とした総合シルバー施設「奈良・松戸ニッセイエデンの園」を運営している。ニッセイグループとしては、「奈良・松戸ニッセイエデンの園」をシルバー事業の原点ととらえており、人材育成を含め、商品・事業を開発していく際の重要なフィールドと位置付けている。
福祉社会の創造
地域社会とのコミュニケーションを通じ、ホスピタリティ(厚遇)の創造を追求し、住みよい環境、福祉社会の実現に貢献する。
生きがいの創造
「人のケア」、「家族のケア」、「街のケア」のトリプルケアを通し、顧客の生きがいを創造する。
社会保障の効率化、規制緩和の流れ、公的介護保険制度の創設などは福祉の分野にビッグバンをもたらす。また、事業者は、利用者から選択されるという厳しい競争環境におかれるため、勝ち残りをかけて、サービスの質の向上に向けた絶え間ない努力が不可欠である。
公的介護保険の導入後も医療法人の依然強い影響力が働くと想定され、民間企業は医療法人と連携することも考える必要がある。今後ますます医療サービスと民間介護サービスとの接点が拡大すると考えられる。
従来は一度受託すると1年間は収益が安定する、市町村からの委託形式であったが、公的介護保険の導入により、日々顧客の数、価格が変動するという形へ、つまり、「受注生産」から「見込生産」へと事業構造の転換を迫られることになる。しかも、保険料の支払い、利用時の自己負担が利用者(保険者)に課されるため、例えばクレームといった利用者の主張が強くなることも予想される。
現在、1,200名のスタッフにより約7,000人の顧客に対してサービスを提供している。売上面で構成比率が高いのは、在宅入浴サービスと在宅介護サービスである。
在宅入浴サービス
千葉県33市町村、神奈川県12市町、他6県の13市区町から委託を受けている。
在宅介護サービス
東京都6区、他3県16市から委託を受けている。
住宅リフォームサービス
東京都23区2市、千葉県12市区、他5県28市区から委託を受けている。
食事提供サービス
浦安市など4市から委託を受けている。
搬送・デイサービス
鎌倉市など3市から委託を受けている。
その他
ホームヘルパー養成研修(2級課程)、福祉機器レンタル・販売等を行なっている。
全米約200ヵ所の営業拠点を通じ3万人以上のスタッフにより在宅看護・介護サービスを提供するスタッフビルダーズ社から、97年10月にマスターライセンスを取得した。
パソナグループは「社会の問題点を解決する」ことを経営理念として掲げ、人材派遣を中心とする社会貢献事業、文化創造事業、そしてパソナフォスターが担っている社会福祉事業を展開している。
「人」の視点
介護ヘルパー養成講座を通信制により全国展開し、年間約1,200名を養成している。あわせて、自治体、社会福祉協議会、民間企業が実施するヘルパー養成講座の受託事業も行なっている。
「システム」の視点
公的介護保険に関するコンサルティング、経営コンサルティングに取り組んでいる。具体的には、有料老人ホームの業務のアウトソーシング、社会福祉法人などの経営コンサルティングを行なっている。
「インフラ」の視点
公的制度と民間活力を活かし、これからの住宅づくり、地域支援施設づくりを提案し、人々が住み慣れた地域で安心して暮らしていけるよう、「施設」から「在宅」へ、そしてさらに「地域・生活」へと広がる地域密着型福祉を目指している。具体的には、総合ケア付き住宅(コレクティブ・ケアユニット)の企画・設計・管理・運営を行なっている。
「情報」の視点
地域の市民事業や高齢者ケアに取り組む開業医情報など、より地域・生活に密着した情報を集約し、インターネットなどによる医療・福祉・生活情報等の情報発信に取り組む。
介護事業を展開してきたパソナフォスターと保育サービスを手掛けてきたパソナチャイルドケアインターナショナルでは、高齢者介護と保育を柱にした「総合ケア付き住宅」の企画・運営サービス「コレクティブ・ケアユニット」を展開している。民間ディベロッパーや第3セクターが手掛ける集合住宅を対象に、そこに設けられる「集会室」を活用し、住民向けのサービスとして保育、介護、医療、生活情報サービスなどのユニットを提供するものである。
「育児」ユニット
措置費で運営されている認可保育所は、利用時間や内容が画一的である。そこで、仕事をもった母親の多様化するニーズに応えるために、事業所内、駅型など、ハード(建物)を提供してもらえるところと提携して、保育サービスを提供しており、この運営形態をマンション等内への導入を企画するものである。
「介護」ユニット
メニューとしては、デイサービスセンター(宅老所)、在宅介護支援センター、ホームヘルプサービスがある。
「医療」ユニット
内科・外科・歯科等5〜6科からなるグループ診療、これに併設するデイケアセンター、訪問看護ステーション、訪問服薬指導、訪問リハビリテーション等をメニューとして揃えている。グループ診療については、少ない資本で多様な医療ニーズへの対応を可能とするとともに、医療事務や受付業務をアウトソーシングすることにより診療に専念できる仕組みをつくっている。
「介護ショップ」・「生活情報」ユニット
通信販売、展示販売、住宅リフォーム、24時間の電話介護相談などのメニューを揃えている。
ベビーシッター等のサービスとして、下記のメニューを揃えている。
富士通が取り組んでいる高齢者向けの在宅ケア関連の事業は、テレビ電話(動画像通信)を基本とした、次の四つの領域である。
テレビ電話、バイタルセンサー、緊急通報といった、従来別々だったものを統合させて構築したシステムである。具体的には、医療機関や福祉施設などのケアセンターと高齢者宅とをISDN等の通信回線で結び、動画像や音声、バイタルデータ等により遠隔ケアを行うシステムであり、通所ケアあるいは訪問ケアを補完するものである。
要介護者への効果
要介護者の様子は動画像を使って的確に伝達されるので、人手を使ったケアを補完できるという意味で、介護の質が高まる。また、緊急時の対応がスムーズとなり、利用者の安心感が増大する。さらに、放っておくと低下する一方であるADL(日常生活動作)指標を維持・向上させる効果があることが医学的に検証されている。
その他に、利用者の健康管理を行うことによる疾病等の予防や、医師等に自分の健康管理をしてもらっているという安心感が得られるなどの効果がある。
サービス提供機関への効果
訪問ケアのみでは1日に3人しか看ることが出来なかったところが、訪問ケアと組み合わせることにより、例えば5、6人を看れるようになるなど、より効率的なケアが実現される。また、家族に対しても、適切な介護指導を効果的に実施することが可能となる。
コミュニケーションの円滑化による信頼関係強化
サービス提供機関のケアスタッフと要介護者、家族との間の信頼関係が強まる。
移動時間と移動距離の大幅短縮化
通院、往診、訪問等に比べ、移動時間と移動距離を大幅に短縮することが可能となる。そのため、より気軽な健康相談や、より多くの人への往診が期待される。
北海道栗山町の場合
65歳以上を対象に、一人暮らしの高齢者が安心して生活ができ、かつ必要とする情報を提供することにより、積極的な社会参加を促すことを目的として、通産省の補助金を得て96年10月からモデル実験を開始した。
岐阜県大垣市の場合
98年2月より、大垣市民病院の退院患者10名を対象に、厚生省の遠隔医療推進モデル事業の一環として開始した。
患者宅、保健医療施設(市民病院、診療所、保健センター)、福祉施設(訪問看護ステーション、特別養護老人ホーム)をISDNでネットワーク化し、治療に役立てようとするものである。具体的には、
ベネッセコーポレーションは、長年にわたる教育事業の実績・ノウハウを活かし、地域における高齢者福祉に不可欠な人材を育成するとともに、その人材が介護サービスを提供することにより、介護事業の構築を目指している。
高齢者に対する介護については、身体的・精神的自立支援サービスと位置づけてきた。高齢者の自立は他者との関わり合いにより実現されうるという考え方の下に、サービス利用者・家族・事業者・地域住民などが参加する地域の共同体「介護コミュニティ」の創出が不可欠であり、どのような地域においてもこのコミュニティ・ケアが提供できるよう取り組むことが企業使命であると考えている。
介護付き高齢者向けホーム「くらら」を中心にホームヘルプサービスやデイサービス、ショートステイなど地域に必要な介護サービスを統合的に提供するとともに、地域の状況に応じて、他の事業者との提携も含めた介護コミュニティづくりに取り組み、地域の居宅介護を進めていく。
ベネッセコーポレーションでは介護事業を、まず、ホームヘルパー2級養成講座からスタートさせた。98年10月の段階で累計講座修了生は9,200名となり、99年度は7,000名を養成する予定である。
そして、養成したホームヘルパーを中心にした介護事業に新たに取り組んだ。その一つが、ホームヘルプのサービスであり、全国16拠点をベースに事業展開している。公的介護保険制度がスタートする2000年4月に向けて、収益構造を確立させることを目指している。また、このホームヘルプサービスの延長で、介護付き高齢者向けホームの事業に着手し、ベネッセホーム「くらら」を3拠点で運営している。特に3番目に開設した「くらら鷺沼」は今後の展開モデルと位置づけ、施設介護サービスの標準化とコスト構造の検証を実施している。
小人数グループケア
「個人」を大切にするために独自に開発したホームヘルパー教育プログラムを導入し、小グループケアで個別のニーズ対応を可能にしている。
自立生活の実現を支援
五感を使ったアクティビティにより、個人の残存能力を引き出し自立生活を支援していく。
予防的ケアの実践
予防は、アセスメントと徹底した日常の観察にもとづく個別対応で可能としている。
顧客のCS(顧客満足度)を追求
利用者別担当チーム制、現場への権限委譲とスタッフ間の連携および教育等により、現場と管理者が一体となってCSの向上を追求している。
施設の立地条件によるメリット
家族や友人が訪れてくれることや地域住民との関わり合いがもてることなどに配慮した立地とし、家族との継続的なコミュニケーション、地域社会との関わりを重視している。
入居者の経済的負担の軽減
現在「くらら」では、保証金以外の入居一時金は不要とし、月々約30万円台の料金で運営している。介護保険の施行によって入居者の自己負担額はさらに軽減できる見込みである。
「こころとからだとくらしの元気」をスローガンに掲げ、子供から高齢者までを広くカバーし、心の面、体の面で「生きる幸福感」を実感してもらうための提案を行なっている。
具体的には、松下電器グループが有する健康計測管理機器、AV機器を使った医療マルチメディア、加齢配慮家電、健康家電、人にやさしい診断機器・病院設備機器により、発病防止の一次予防から末期ケアの無限予防までをカバーするとともに、これらの機器をインテグレートすることにより健康増進・維持に役立てていただくことを考えている。
生物学とエレクトロニクスとを融合させた「バイオエレクトロニクス」に取り組んでいる。生物がもっている物質の認識能力とエレクトロニクスとを合体させた商品の開発へ向けて、基礎・基盤技術の研究を行なっている。バイオセンサのうち、糖尿病の人のための血糖センサは、簡単にしかも安価に利用できることもあって、非常に愛用されている。
ネットワーク医療
最寄りの掛かりつけ医と家庭、病院と診療所、病院と病院、をISDN等の通信ネットワークで結び、AV機器等を使って、例えば在宅医療支援システム、病理診断支援システム、遠隔診断支援システムなどの構築に取り組んでいる。
病院情報システム
ハードウェア、ソフトウェア、ヒューマンウェアの適切な調和を追求し、手術・病理、薬局、病棟、受付等における情報系システム(薬剤業務支援システム、看護支援システムなど)を構築し、病院経営の効率化をサポートしている。
日米遠隔診断システム
旭川医科大学とハーバード大学スケペンス眼研究所とを高速デジタルネットワークで結び、テレビ会議システムを構築した。このシステムにより、旭川医科大学での手術中の映像を見て、ハーバード大学の先生が旭川医科大学の執刀医にアドバイスを送るといったことを行いながら、手術を遂行することが可能となった。
「人にやさしい」を基本に、蓄積してきた超音波技術、X線技術、レーザー技術を応用した低侵襲・非侵襲の診断・治療機器(リニア電子走査式超音波診断装置、歯科用X線ビジュアル診断装置、外科用CO2レーザーメスなど)を提供している。
抗菌・除菌・環境保全の観点より、水まわりでは除菌洗浄機など、ごみ・臭処理の関連では業務用生ごみ処理機など、空気まわりについては空気清浄器などに取り組み、クリーンで人にやさしい施設環境を実現している。
24時間・365日、自宅に居ながら自らの健康を管理できるようにする、簡単な操作でありながら正確に健康計測する機器に取り組んでいる。この機器をネットワークと接続することにより、テレ・ホームケアの充実が図られる。
例えば、65歳以上の人が人口の約25%を占める兵庫県淡路島の五色町のモデル事業において、在宅保健医療福祉支援システムを使った実証実験を行った。ここでは、メインの装置を置いた診療所、患者宅の据置き型・携帯型の端末とをCATV網で接続し、脈拍、血圧、体温などの医療データを送信したり、映像・音声により双方向のコミュニケーションをとるなど、実用化へ向けた取り組みを行った。
五感・五体の衰えは誰にもやってくるものであり、これらを補完し高齢者の日常生活をサポートする機器の開発にも取り組んでいる。「見る」という観点では、手話認識システム、「聞く」という観点では、高域を強調して指向性を高めたエンハンススピーカー、「話す」という観点では、食道発声補助装置などを提供している。
豊かな生活のための「健康づくり・生きがいづくり」
これからの国民の豊かな生活のための「健康づくり」と「生きがいづくり」の観点から研究を行なうことである。
健康・保健・福祉×少子高齢化→21世紀の国民の「健康づくり・生きがいづくり」
医療、保健、福祉と少子高齢化との接点において、21世紀型の新しい健康づくりはどういう形であるのか、その中での行政、民間それぞれの役割とは何かを明らかにすることである。
「健康づくり」「生きがいづくり」をキーワードに、10程度の視点(視軸)から、医療や介護の問題、あるいはその周辺の問題を研究しており、代表的な事例を紹介する。
「社会システム」の視軸では、医療費の問題、在宅医療、公的介護保険に関するテーマが柱である。医療費の問題については、具体的に、どういう人の、どういう医療行為に対して、どれだけの手間やコストがかかるのか、医療費の原価をきちっと捉える方法を研究している。また、社会的入院の是正や医療技術の進歩等による入院医療の代替、患者のQoL(Quality of Life)の向上を目的とする在宅医療については、医療従事者の個々の医療行為の範囲の見直しや、在宅医療サービスのコーディネート機能の整備など、民間の果たすべき役割も含めて研究している。
「地域保健医療計画」に基づいて地域のヘルスケアが進められている。民間への期待も高まっていく中で、それぞれの地域が、どういう形で独自性を活かした地域住民のヘルスケアを推進するかについて、拠点施設の整備のあり方を含めて研究を行っている。
住民の多様なニーズや財政上の制約のもとで、各種の行政サービスの提供をどう考えていくかということも、最近の大きな検討課題になっている。それぞれの地域が、どのように介護や福祉のサービス、生活の身近なサービスを住民に提供できるかというのは、地域によって個性が出てきてよい。地域の行政、地域の民間企業などが、それぞれの力を出し合っていかに特色を出すかという、いわば「商品」としての地域の時代に入るものと考えている。人生80年の時代になり、定年後の20年間という時間をどこで暮らすかという、地域を選択するニーズが生まれ、地域すなわち「商品」が示した「サービス・メニュー」に対して、自分はこの「商品」を買うのだという考え方で移り住む時代になるであろう。
病院の情報システムの構築において、コンセプトづくりから、立ち上げまでを手がけている。また、院内に限らず、例えば国立の循環器病センターと地域の中核となる病院をネットワークで結び、さらにそれを全国の主要な病院と結ぶといった、病院間・地域間のネットワーク展開も手がけている。
従来から保健・医療・福祉の「連携」と言われているが、連携とは何かは実は明確ではない。情報技術的な意味で保健・医療・福祉の接続はやさしいことであるが、なぜ接続することが必要なのか、誰にどういうメリットがあるのかという肝心のニーズ面・内容面を具体的に明確にする必要がある。
ヘルスケア分野での事業参入については、医療の部分に目を向けざるをえない。当然ながら企業が医療を、ということに対しては制度上の壁があるが、企業は、医療や医療機関の持っている特質や特殊性、例えば、患者との緊密な関係、企業とは異なる法人としての特徴、介護分野への事業参画の道が開かれたことなどを理解するとともに、医療機関と連携すべきところがあれば連携を進めるべきである。今後、地域の医療機関がどういう形で動こうとするのかに着目している。
また、シルバー分野の新規事業や新商品の開発においては、企業は、単純に従来の一般的な事業手法や開発手法で考えると失敗しかねない。介護の必要なお年寄りに直接接するサービスを手がけることは、従来企業が行っていた新規事業とはいわば文化も違えば言語も違う世界に入るようなものであり、その覚悟と慎重な対応が必要である。簡単にはビッグビジネスにはなり得ないと考えられ、その意味で、この分野は資本力でもって何とかできるというものではないだろう。
生協や准組合員も入れると約800万人を越える組合員の組織であるJAは、ヘルスケア分野を担う潜在力があり、これらの動きに注目している。事業参画に向けて制度も変わった。最近では、JAと生協と、そしてこれまで社会福祉事業を担ってきた社会福祉協議会の三者が手を組む動きがある。
メーカーが進めるヘルスケア分野の新規事業化は、とかく「すぐれた技術や技術者を活かして」という技術偏重に陥りやすい。重要なのは徹底したニーズの把握、提供するサービスの価値の創造(顧客は提供するサービスに、果たしてお金を払ってくれるだろうか)であり、発想の大幅な転換が必要である。
保険商品の開発は、明治生命本体の商品部門が担当し、介護関連のサービスについては、明治生命本体と明治生命フィナンシュアランス研究所とが協力して取り組んでいる。
8年前に設立した明治生命フィナンシュアランス研究所では、高齢社会対応の研究に力点をおき、在宅介護事業者の実態調査、介護業務の効果に関する研究、介護サービス関連の各種調査研究などを手掛けている。
公的介護保険の上乗せ横出し費用を保障する商品として、民間の介護保険に対するニーズがあると考えている。 現在生命保険会社が提供している介護保険には、専ら介護保障を目的とした単独の商品と、普通の死亡保険である終身保険等を保険期間の途中(例えば高齢になった段階)で介護保障に切り替える介護保障移行特約といった移行タイプがある。要介護状態になるリスクを身近に感じるのは、高齢期に到達してからであることもあって、現状では、将来介護保障に移行できるタイプにとどまっている人が多い。公的介護保障の施行は、介護保障ニーズ認識の普及、強化、顕在化をもたらし、民間介護保障の販売増にも結びつくと期待している。
介護相談
介護相談、ケアプラン作成、在宅介護用の介護・福祉用品の展示、介護事業者紹介等を行なう介護コーナーを96年11月に全国5都市に設置し、97年10月より13箇所に拡大させた。また、24時間全国どこからでも相談できるように、介護相談フリーダイヤルも設置している。
相談の種類としては、病院等からの退院に伴い日常生活で利用する福祉用具の購入先に関するもの、訪問介護・ホームヘルプサービスに関するものが多い。相談時間も、5〜10分程度の簡単な情報提供から、1時間超の介護者の悩みや不満を聞くことなどまで様々である。
ケアプラン作成ソフトウェア「ケアマネくん」
介護事業者や多くの企業の協力を得て、ケアプランを作成するソフトウェア「ケアマネくん」を開発した。高齢者の要介護状態をTAI法というイラストを使った高齢者アセスメント手法をベースに判定し、ケアプランの作成を行っている。イラストによりどういった要介護状態なのかをイメージをつかみやすい、質問項目も少なくてすむ、といった特徴があり、要介護状態の判定作業を大幅に効率化できる。「ケアマネくん」を使うと、30〜40分という短時間でケアプランを作成できる。
介護ネットワーク研究会
ケアプランの作成によって、要介護者にとって必要なサービス、用具などが明らかになるが、合わせて、サービス、用具の入手方法、適切な使用方法などの情報を提供する仕組みが必要である。そこで、安心できる事業者を会員とする介護ネットワーク研究会をつくり、現在170以上の事業者をネットワーキングしている。これまでのところ、明治生命と研究会会員によるケアプラン作成、その他介護相談に関して苦情、トラブルは一度もない。この研究会では、公的介護保険の動向に関する情報の提供や勉強会も開催しており、できるだけ多くの優良事業者に参加してもらいたいと考えている。
いたずらに事業領域を広げることなく、中核技術が及ぶ範囲において、高齢者本人の人としての尊厳を守るとともに、介護者の自己実現をサポートすることにより、高齢者と介護者の「生命の歓びを追求する」ということを事業理念として掲げている。
人間の尊厳と排泄ケア
人間はいくつになっても、衰えていく肉体的・精神的な機能を自ら認めたくない、あるいは他人には指摘されたくない、というところが基本にある。日常生活の中で自立を維持し続けるためには、トイレでの排泄努力を継続し、体力の低下を防ぐ努力が必要である。この排泄努力により排泄ケアを受ける屈辱から高齢者の心が開放されて、生きる意欲が持続される。つまり、排泄ケアの改善は、人間の尊厳の維持に大きく関わるものである。
介護者の自己実現
一般的に、在宅において要介護者が出てくると、介護者の暮らしは、時間的、肉体的、経済的に制約を受けるようになる。介護者の負担を軽減するとともに、満足いく高齢者ケアを実現し、介護者の生活改善を図り、自己実現を支援する。
基本コンセプト
「ケア・プラン」をブランドコンセプトとしている。つまり、高齢者と介護者それぞれの暮らしを改善するためには、一人一人の高齢者・介護者に快適な製品を提供する必要がある。ライフリーというブランドをケア・プランのブランドシリーズと位置付けて、事業を展開している。
歴史
87年にAI事業に参入し、89年には、「尿とりパッド」という世界初の部分吸収パッドを市場に投入した。これは、オシッコの場合はこのパッドだけを交換すればよいというものであり、これまでの排泄ケアのコストを約3分の1に低減するとともに、介護者の肉体的負担を大きく軽減する効果をもたらした。95年には、以下に紹介する、はけるタイプのオムツ「リハビリパンツ」を発売した。
日本における寝たきり高齢者多発の要因
欧米に比べ、日本では、在宅で約3倍、施設で約5倍の寝たきり発生率があると言われている。その要因としては、次の3つが考えられる。
オムツの構造上の問題
日本に限らず、従来のオムツは寝かせなければ交換できない物理的な構造である。そのため、高齢者本人が立てるなど自らオムツ交換できる体力があるにもかかわらず、オムツ交換時には寝かされなければオムツを交換することはできない。このことが、高齢者本人の生きる意欲を奪っている一因であることが徐々にわかってきた。
顧客の視点からの発想
競争の視点ではなく、顧客の視点で、まずオムツを否定することから始めた。つまり、寝たきりをなくすためには、自分でトイレで排泄するよう自立と排泄を促すオムツが必要であり、従来型のオシッコを漏らさないオムツを追求するのではなく、いかにオムツに排泄しないかを考えた。
商品スペックの革新性
パンツ型であるため、自分で上げ下げでき寝かされて交換させられなくて済み、また、介護者が交換するにしても立った姿勢で交換できる、という特徴がある。
排泄ケアの概念の革新性
従来は、介護者のニーズを中心に据えて、あくまで寝たきりの人を介護すること、オムツで排泄物を処理することを前提にした排泄ケアを考えていた。これに対してリハビリパンツは、介護者ニーズから本人ニーズへと価値を大きく転換した上で、本人の自立を支援するとともに、自立排泄によるリハビリテーションを促し、「寝たきりゼロ」という新しい排泄ケアの概念を打ち出した。
コミュニケーションの革新性
リハビリパンツを発売するにあたっては、介護者だけではなく社会全体を啓蒙する必要があった。そして、これまで社会全体がもっていた、お年寄りを寝かせておくことがやさしい介護であるという認識が誤っており、お年寄りを起して、寝たきりにさせないための努力が必要であることの啓蒙に取り組んでいる。