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日本経団連総会における奥田会長挨拶

〜日本経済団体連合会第2回総会〜

2003年5月27日(火) 14:00〜16:00
於 経団連会館 14階 経団連ホール


  1. 本日は、会員の皆様には、大変ご多忙のなか、日本経済団体連合会の第2回総会に多数ご出席いただき、誠にありがとうございます。
    また、平素より、当会の活動に対し、ひとかたならぬご支援、ご協力を賜り、改めて厚く御礼申し上げます。

  2. 昨年5月の、経団連と日経連との統合から、早いもので1年が経ちました。
    この間、私どもは、統合の効果を最大限に高めるべく、両団体のリソースやネットワークを結び付けながら、日本経済が抱える諸問題の解決に向け、活発な活動を展開して参りました。
    そして、研究開発・IT投資促進税制の実現や、規制改革の進展、構造改革特区の創設、さらには知的財産基本法の成立などに、大きな役割を果たすことができました。また、昨年12月の経営労働政策委員会報告は、春季労使交渉のあり方を根本的に見直す、大きな契機となったと思います。

  3. 現在、日本経済は、大変厳しい状況にあります。
    昨年度のGDPは、外需に支えられる形で、実質では1.6%のプラス成長を記録致しました。しかし、名目成長率は二年連続でマイナスとなった他、株価の低迷が続くなど、景況感の改善には程遠く、政府による思い切った対策が不可欠となっております。
    また、急速に進む、少子化・高齢化のなかで、財政や社会保障制度の破綻すら懸念され、国民の将来に対する不安感は高まる一方であります。
    こうした状況にもかかわらず、日本経済の現状に対する危機感の欠如から、政府の中に、抜本改革をできる限り先送りしようとする姿勢が見られることは、大変残念であります。
    日本経済の再生には、当面の緊急課題である資産デフレの克服や、小泉内閣の旗じるしともいえる構造改革に、官民がこれまで以上のスピードで、真正面から取り組まなければなければなりません。

  4. 同時に、戦後の日本の経済発展を支えた経済社会システムが、内外の激しい環境変化のなかで機能不全ともいうべき状況に陥っており、新たな時代にふさわしい、日本独自の成長モデルの確立が急務となっております。
    こうしたことから、私どもは、本年1月に、新ビジョン「活力と魅力溢れる日本をめざして」を公表致しました。
    これは、2025年の日本の姿を念頭においたビジョンでありますが、直ちに様々な改革に着手しない限り、目標として描く、「民主導・自律型の成長メカニズムが機能する経済社会」は、いつまでたっても実現できません。
    そこで、私どもは、資産デフレの克服など、当面の問題への対応に加えて、今年度は、新ビジョンの実現を活動の柱に位置付けて参りたいと考えております。

  5. そのための重要課題を、四点に絞ってお話し致します。
    第一の課題は、財政、社会保障制度を、少子化・高齢化に耐えうる、持続可能な制度に再構築していくことであります。
    その際、経済全体の活力を維持していくという観点から、国民負担率を将来においても50%以内に抑制していくという目標を、堅持していくことが重要であります。そこで、個々の制度をばらばらにではなく、税制など関連する諸制度と一体的に再設計することで、全体としての整合性を確保していかなければなりません。また、歳出削減の徹底等を前提に、国民が広く公平に負担を分かち合う消費税の引上げも、視野に入れていくことが不可欠であります。
    国民の国に対する不信感を早く払拭するためにも、抜本改革をこれ以上先送りしないよう、政府・与党に強力に働きかけて参る所存であります。

  6. 第二の課題は、21世紀の日本の新たな成長基盤を確立していくことであります。
    そのためには、先ず、産学官連携の推進や知的財産政策の強化を通じ、技術革新のダイナミズムを最大化していかなければなりません。また、日本企業の強みである環境技術の革新を更に進め、環境立国を目指していくといった戦略も重要であります。
    更に、規制改革を加速し、企業が新たな事業に参入しやすい環境を整備していくことも不可欠であります。そこで、スピード感ある大胆な規制改革を促すための枠組みとして、「規制改革基本法」の制定や強力な推進機関の設置を求めて参りたいと存じます。
    同時に、成長を支える、多様な人的資源の育成、活用も重要であります。その際、政府による教育改革や労働市場の思い切った改革に加えて、企業自らが、個人の能力開発や次世代を担う人づくりに、主体的役割を果たしていくという姿勢が求められます。

  7. 第三の課題は、グローバル経済の中で、企業が自由に貿易、投資活動を展開できるよう、通商政策を戦略的に展開することであります。
    わが国は、現在行われているWTOの新ラウンド交渉が暗礁に乗り上げることのないよう、交渉促進に強いリーダーシップを発揮するとともに、韓国、タイ、メキシコ等の国々との自由貿易協定の締結を急ぐ必要があります。
    そのためにも、自らの市場開放や、外国人の受け入れ体制の整備、対内直接投資の促進に努め、日本をより世界に開かれた国に変えていかなければなりません。

  8. 第四の課題は、政治との関係強化であります。
    これまで述べてきたような改革を進めるうえで、政治と経済との、緊張感を伴う真の協力関係の構築が不可欠であります。企業人は、政治に対し、諸改革の断行を求め積極的に行動するとともに、必要な支援を行っていくことが求められます。
    そこで、私どもは、各政党の政策や活動実績をもとに、企業・団体が資金協力する際に参考となるガイドラインを、提示致したいと考えております。
    政党に対し透明度の高い資金が提供される仕組みを整備することで、政策本位の政治の実現に貢献できるものと確信しております。

  9. 日本経団連は、以上の活動を通じ、政治や経済の改革を促し、企業が活力を発揮できる環境の整備に、全力で取り組んでまいる所存であります。
    会員の皆様におかれましては、引き続き経営改革を進められ、国際競争力を強化しながら、新たな需要や雇用の創造に邁進して頂きますよう、お願い申し上げます。
    昨年は、大変残念なことに企業不祥事が相次ぎました。企業に対する共感と信頼が揺らぐようでは、市場経済は成り立ちません。企業は、自らに課せられた社会的責任を強く自覚し、企業行動憲章を遵守し、経営の透明性確保や企業倫理の確立に、より一層努力しなければなりません。また、労使関係のより良い発展に努めていくことも重要です。
    社会からの共感と信頼を得ながら、企業が創意工夫を活かし、自由闊達に新たな価値の創造に励むことこそが、「民主導・自律型の経済社会」の基本であると思います。

  10. 統合二年目を迎え、私どもは、会員の皆様の期待に十分応えるだけの成果をあげられるよう、志を高く持ちながら、日々新たな気持で活動して参りたいと存じます。
    皆様の、引き続きのご支援をお願い致しまして、私からの開会のご挨拶とさせていただきます。

    ご清聴ありがとうございました。

以上

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