Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年7月16日 No.3232  「科学技術イノベーションで切り拓く大変革時代」 -第5期科学技術基本計画の検討状況を聞く/未来産業・技術委員会

経団連の未来産業・技術委員会(内山田竹志委員長、小野寺正委員長)は1日、東京・大手町の経団連会館で名称変更後初回となる会合を開催し、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の原山優子議員および内閣府から、第5期科学技術基本計画の検討状況について説明を聞くとともに、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ わが国を取り巻く科学技術イノベーションに関わる状況

わが国を取り巻く科学技術イノベーションに関わる状況は厳しい。世界トップ10%論文数(論文の被引用回数が各分野、各年で上位10%に入る論文数)は、諸外国と比較して低迷している。科学技術人材の流動性が求められているが、この10年間改善がみられない。さらに若手研究者の処遇悪化を1つの背景として、博士課程に進学する学生が減っていることも問題である。この解決には、大学の資金制度の改革が必要である。

また、オープンイノベーションの促進も1つのカギといえるが、国際比較でみるとまだまだ不十分である。大学発ベンチャーについて、東京大学発のベンチャー企業の時価総額が1兆円を超えるなどの実績を踏まえれば、ベンチャーの促進も今後進めていきたい。

■ 直面する課題と大変革時代の到来

安定的なエネルギーの供給確保、少子高齢化の進展、貿易収支の赤字拡大などわが国産業を取り巻く状況は厳しい。しかし、日経平均株価が2万円台となったことに象徴されるように、回復の芽は見えてきている。

ICTが進化するなか、すべてのモノがネットワークでつながるIoT(Internet of Things)による第4次産業革命の到来がいわれている。諸外国の動きに遅れないよう、わが国も対応しなければならない。

■ 中間取りまとめについて

第5期科学技術基本計画は、総合科学技術・イノベーション会議と改組されてから初の基本計画となる。1995年に科学技術基本法が制定され、以降4回にわたって基本計画が策定され、20年が過ぎた。その蓄積を踏まえ、CSTIで中間取りまとめを作成した。年末の計画策定に向けて産学官が一体となり議論を深めていく。

中間取りまとめでは、将来の見通しが困難な時代に自ら未来を創り出すという思いを込めた。課題解決に資する研究開発の推進、人材や学術研究などの基盤的な力の強化、大学や研究開発法人などの改革などを盛り込んでいる。

計画策定に向けては、産業界とともに未来の産業構造・社会変革の部分を充実させる。また、研究開発投資額のコミットメントについて、第4期計画に続いて盛り込めるよう努力する。

<意見交換>

意見交換では委員から「自らの起業経験を踏まえると(医薬品業界では)日本には技術があるが、産業化が苦手。また、起業においては、失敗をした人間が復活でき失敗を次に活かす社会構造が必要」との意見が出された。

内閣府からは「第5期基本計画がこれまでと最も異なる点は、産業界とともにつくっている計画であること。策定に向けて引き続き協力をお願いしたい」とのコメントがあった。

【産業技術本部】