Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年12月7日 No.3342  クリスマスツリーの点灯に「新たな良きアメリカ」を願う

ワシントンDCでは、サンクスギビング休暇が明け、11月30日にホワイトハウス前にあるモールのクリスマスツリーが点灯されたことで、一気にクリスマスムードが高まっている。ツリーの前で出会った男女は、ノースカロライナ州から出てきた女性と、ワシントンで働く自慢の息子だった。巨大なツリーの周りを州名のつく小さなツリーが囲む。全米各地からさまざまな家族が、それらを見に毎晩集まってきている。「古き良きアメリカ」を見る思いがした。

そのアメリカが揺れている。本リポート<4>で報告したとおり、マイク・リー上院議員(共和党、ユタ州選出)は、貧富の差の拡大とともに、宗教心の弱まり、家庭観の変化さらには民主主義信奉の揺らぎを指摘した。連日、芸能界、メディアさらには政界でのセクハラ問題が新聞、テレビで報じられているのを見ると、米国の悩みは深いと感じざるを得ない。

その発端は今年10月、大物映画プロデューサーのハービー・ワインスティーン氏の長年にわたるセクハラ行為が発覚したことにある。その後、ニューヨーク・タイムズやABCニュースのエース記者、PBS放送の長老ジャーナリストなどのセクハラ行為が告発され、停職や解雇につながっている。29日にはNBCニュースの看板キャスター、マット・ラウアー氏のセクハラ疑惑が報道され、彼は即日解雇となった。

政界では、共和党アラバマ州上院議員候補のロイ・ムーア元州最高裁判事が1979年に未成年者にセクハラ行為を働いた疑惑が報道され、マコーネル上院共和党院内総務らが選挙辞退を勧告するに至った。民主党でも、フランケン上院議員(ミネソタ州選出)が複数女性から過去のセクハラ行為で告発され、在任53年で下院最長老のコンヤーズ議員もスタッフ女性にセクハラ行為を告発され和解金を払っていたことが判明した。98年の民主党のクリントン大統領擁護、昨年のセクハラ発言後の共和党のトランプ候補支持なども踏まえ、党利党略が優先されかねないとの指摘も出ている。他方、民主党議員のなかにも、クリントン大統領は当時辞任すべきだったとする声や、自党の問題議員の辞任を求める声も出ている。

さらに、ワシントン・ポストには、ムーア氏にセクハラを受けたとする女性の偽情報を見破ったとの記事が出た。もしも、この偽情報が見破られずに報道されていたら、結果として、フェイクニュースが多いと主張する勢力を勢いづけることになる。そのために、あえて偽情報を売り込もうとする団体もあるとさえいわれている。

セクハラという社会問題の重要性に加えて、政治家や裁判官までもが関わっていた事実、政界の対応、さらにはメディアを利用した種々の戦術など、いろいろな副産物が米国の直面する問題の深さと複雑さを示している。ツリーを見て「古き良きアメリカ」への郷愁に浸りつつも、「新たな良きアメリカ」をつくる人たちの活躍を願わずにいられない。

(米国事務所長 山越厚志)