シンポジウム「転換期の米国 ―政治・外交の基調の変化からインフラ政策の新展開まで―」を開催しました
左から、久保研究主幹、杉野研究委員、前嶋研究副主幹
経団連総合政策研究所(筒井義信会長)の米国研究プロジェクト(研究主幹=久保文明東京大学名誉教授・防衛大学校名誉教授)は7月29日、シンポジウム「転換期の米国~政治・外交の基調の変化からインフラ政策の新展開まで」を開催しました。
前嶋和弘研究副主幹(上智大学総合グローバル学部教授)と杉野綾子研究委員(武蔵野大学法学部政治学科准教授)が講演した後、久保研究主幹を交えてパネル討議を行いました。概要は次のとおりです。
■米国政治外交のいま(前嶋研究副主幹)
米国では共和、民主両党の支持が拮抗する一方、党派間の分断がかつてなく深まっている。
トランプ大統領の支持率は全体では低いが、共和党支持者からは一貫して高い支持を得ている。経済政策やイランへの対応を巡っても党派による評価の差は大きく、政権は反対勢力との合意形成よりも支持基盤を重視して政策を進めている。
議会では与野党の議席差が小さく、法律による政策実現が難しい状況が続いている。このため政権は、大統領令などを用いて議会を迂回する傾向を強めている。
保守は共和党、リベラルは民主党という政党再編がほぼ完成し、都市と地方、地域、宗教などを軸に両党が分かれる構図が定着した。
中間選挙では、投票率の低下により大統領所属政党が議席を減らす傾向があり、政権が支持層の動員を図るため、より強硬な政策や言説を打ち出す可能性がある。
■米国のインフラ政策(杉野研究委員)
米国では5~6年ごとに陸上交通法を制定し、道路や交通インフラの整備を進めている。現行法の失効を控え、下院では5年間で総額5800億ドルの支出権限を盛り込む法案の審議が進められている。
橋梁投資の拡充、電気自動車(EV)への登録料導入、環境影響評価手続きの簡素化などが柱だ。
最大の課題は財源だ。道路整備を支えるガソリン税収は、燃費改善やEV普及に伴い伸び悩み、一般財源からの補填が続いている。利用者負担の観点からEVへの課金には幅広い理解がある一方、走行距離課金にはプライバシーや公平性、管理コストの課題が残る。
トランプ政権は道路投資を維持する一方、公共交通や鉄道、EV支援を縮小し、インフラ整備における州・地方政府の役割を拡大する姿勢を示している。
■パネル討議
討議では、環境規制や許認可手続きによってインフラ整備が遅れている現状を踏まえ、住宅やインフラの供給拡大を目指す「アバンダンス」の議論が紹介されました。これは民主党内の中道派と左派の対立にも関係すると指摘されました。
データセンターの電力需要、送電網整備、小型モジュール炉(SMR)、高速鉄道などを巡り、民間投資や許認可、連邦政府と州政府の役割分担が論点として紹介されました。









