哲学・リベラルアーツ

セミナー「宗教が動かす民主主義の行方―米国を手掛かりに―」を開催しました

藤本教授(左)、中島研究主幹(右)

経団連総合政策研究所の資本主義・民主主義研究プロジェクト(研究主幹=中島隆博東京大学東洋文化研究所教授)は9月30日、帝京大学文学部社会学科の藤本龍児教授を招き、東京・大手町の経団連会館で、セミナー「宗教が動かす民主主義の行方~米国を手掛かりに」を開催しました。藤本氏の講演の概要は次のとおりです。

 

米国における宗教と政治の関係があらためて注目されているが、日本では見過ごされている事実も少なくない。

例えば2020~24年の大統領選挙で、白人福音派のトランプ氏の支持率は76%から82%に上昇した一方、投票者に占める同派の割合は28%から22%に低下した。投票理由には、トランプ氏への支持だけでなく、民主党候補より望ましいという消極的な選択も多く含まれる。他方、マイノリティのトランプ支持は増加傾向にある。

イスラエル支持も福音派だけのものではない。第1次トランプ政権時に世界中から非難を浴びたエルサレムへの大使館移転は、クリントン政権時に圧倒的多数で可決された法律に基づいている。

福音派に限らず宗教的に保守的な考え方をする「宗教保守」が共和党を支持する傾向はある。一方で09年にオバマ大統領(当時)が「信仰こそ私たちを団結させる」と述べ、宗教団体に公的資金を供出して福祉事業を拡大させたように、民主党が世俗派だとはいえず、「宗教リベラル」も存在する。民主主義の後退に対する懸念も片側だけのものではない。

米連邦議会を見ると無神論者はほとんどおらず、キリスト教徒が86.7%だ。とはいえ、米国がキリスト教ナショナリストの国というわけではない。21年の連邦議会襲撃事件の時には、福音派を含む主だった宗教指導者がこの行動を圧倒的に批判している。

ホワイトハウスが出したトランプ大統領を神格化するような絵は、福音派や宗教保守から強い批判を受けてすぐさま撤回された。宗教保守はトランプ氏を、不信心であっても目的のために用いられる「神の道具」と捉えているのだ。

24年、自由民主主義国は29カ国にまで減少した。世界的に見ると、無宗教といわれる人口の割合は減少すると予測されている。日本では近代化に伴って宗教は衰退すると思われがちだが、今、宗教と民主主義の関係を再編することが求められている。

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セミナー後半では、藤本氏と中島研究主幹が対談した後、参加者と質疑応答を行いました。

中国の儒教復興やカナダの多文化主義を例に、リベラルデモクラシーを維持・発展させるために宗教性を踏まえる必要があることや、単に多様性を掲げるだけでなく、公共領域で多様性が共存できる仕組みも必要だと指摘されました。

藤本氏は、宗教と民主主義、科学と宗教を対立項とせず、両者の関係を再編する時代に入ったと問題提起し、セミナーを締めくくりました。

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