APEC ABAC日本支援協議会 ABAC

市場開放、能力構築、全員参加による発展の共有

総論

APECの目的と今年のテーマ「市場開放、能力構築、全員参加による発展の共有」に基づき、ボゴール目標を遵守しAPEC活動の3本柱である貿易・投資の自由化・円滑化、経済・技術協力をさらに促進するとともに、バランスのとれた成長と繁栄の共有を図る方策について検討した結果、ABACはここに4項目の重要なメッセージをAPEC首脳に申し述べる。

  • APEC加盟各国・地域はボゴール目標に示されている貿易・投資の自由化への前進を加速しなければならない。私たちは、首脳が、事態の緊急性を十分認識し、かつ、ボゴール目標に従い完全な貿易と投資の自由化を約束するよう求められていることを十分に認識するよう期待する。私たちは、これらを達成するよう閣僚と実務者に指示することを首脳に要請する。
  • ABACは、APECが11月にドーハで開催されるWTO閣僚会議においてWTO新ラウンドの立ち上げを支援することを強く支持する。
  • ABACは金融危機が連鎖的に発生する恐れが差し迫っていることを首脳に警告する。経済成長を刺激し、かつ金融改革を加速するためにAPECとして断固とした措置を講じ、現在の不確実性に満ちた経済状況に対処するよう要請する。また、国際通貨基金(IMF)が推薦する早期に警戒信号を発するための重要指標を加盟各国・地域が重視し、政策協調をさらに強化することにより、国際的、および、地域的な金融システムの機能を改善し、金融危機の連鎖的発生を未然に防ぐよう十分に対応する必要がある。
  • 市場開放、能力構築、全員参加の3つの要素は相互に強め合うものであることから、これら3要素のバランスがとれたグローバル化へのアプローチが不可欠である。3つの要素全てが満たされない限り、グローバル化プロセスはバランスを失い、発展の共有という目標を実現できない。従って、3つの要素はすべて、APECのプロセスに不可欠な部分として相互に発展すべきである。

これらのメッセージへの具体的な対応として、詳細な提言を取り纏めたので、首脳がその内容を十分考慮するよう要請する。

  • 国際基準に整合的な金融・資本市場改革を加速し、コーポレート・ガバナンスを向上し、金融サービスにおける投資・貿易を更に自由化する。
  • 金融制度改革を促進するため能力構築を強化し、国内債券市場および信頼できる信用格付け機関の整備によって市場を深化させ、ヘッジメカニズムのリスク管理を強化し、また実行可能な場合には、第二証券市場を一層活用する。
  • 国際的、および、地域的な金融アーキテクチャーを強化するため、次の活動に参加する。
    • 監督機能を強化するための金融健全度指標プログラム
    • 短期資本移動、高レバレッジ機関(HLIs)の活動、およびモラルハザードの悪影響を緩和する活動
  • 上海モデル・ポート・プロジェクトのような貿易円滑化および能力構築における地域的な官民パートナーシップを推進する。
  • 首脳は、上海会合において、食料輸出禁止措置の放棄を宣言するとともに、APEC食料システムの実施を支援するためABACが提案した幾つかの中間目標を実施するよう実務者に要請する。
  • 相互認証協定、ならびに国際基準の採用による基準・適合性の整合化を図る。
  • 個別行動計画のアクセス性と包括性を向上し、APECの進捗度を計る重要な手段、かつ、ビジネスが戦略的意思決定に利用可能なツールとする。
  • 知的所有権の権利行使の強化と海外直接投資の障壁の除去に対応する。
  • 技能を向上し、かつデジタル・デバイド(情報格差)を是正するツールとして電子学習の広範な使用を可能にする政策を採用する。
  • 政府の効率とアクセスを向上し、また、民間の情報通信技術への投資を促進するため、より多くの情報や政府のサービスをオンラインで提供する。
  • 資金調達、技術および新しい取引機会に関する情報を提供するため、APEC中小企業ポータル・サイトを開発し、中小企業向けのプログラムやサービスへのワン・ウィンドーからのアクセスが可能になるように図る。
  • 起業家環境スコアカードを利用し中小企業にやさしい政策を採用する。

提言

APECは地域的な経済組織として経済グローバル化のプロセスにおいて重要な役割を果たしている。過去10年間に、加盟各国・地域は、開かれた、かつ、自由な貿易と投資の実現に向けて著しい成果をあげてきた。しかしながら、今年、APEC地域は幾つかの新しい、また、重大な課題に直面している。

  • 今年の世界経済の顕著な減速により、金融は一層不安定になり金融不安の連鎖的発生が起こった。市場は著しく信頼性を失っている。これはグローバル化プロセスに不利な影響を及ぼす。域内の、主として外需に依存する国・地域は、景気回復を図ることが難しくなっている。新たな金融不安の連鎖的発生により、金融制度は脆弱さを増している。
  • WTO新ラウンド立上げが遅延し、また、WTOのビルト・イン・アジェンダの交渉が進展しないため、多角的な、また地域的な経済協力の推進に悪影響を及ぼしている。開かれた、無差別の国際的経済秩序を構築するという約束は、全ての国・地域の繁栄を保証、かつ、促進するための必須条件である。
  • 2010年/2020年というボゴール目標の期限が目前に迫っている。貿易・投資の自由化・円滑化というボゴール目標達成のために、政治的な決意を示し、かつ、約束を具体的な行動で示すことができなければ、APECはその信用を失いかねない。
  • 経済のグローバル化に関しては、賛否両論がある。今こそAPECは、共有する発展の利益を最大限にし、経済グローバル化のコストを軽減し、また一般市民の議論を建設的な方向に導くために、一歩前進すべきである。

首脳への重要なメッセージ

ABACは、アジア・太平洋地域は、現在、危機的な状況にあると考える。この観点から、ABACは、4項目の重要なメッセージを首脳に報告する。

  • APEC加盟各国・地域はボゴール目標に示されている貿易・投資の自由化への前進を加速しなければならない。私たちは、首脳が、事態の緊急性を十分認識し、かつ、ボゴール目標に従い完全な貿易と投資の自由化を約束するよう求められていることを十分に認識するよう期待する。私たちは、これらを達成するよう閣僚と実務者に指示することを首脳に要請する。
  • ABACは、APECが11月にドーハで開催されるWTO閣僚会議においてWTO新ラウンドの立ち上げを支援することを強く支持する。
  • ABACは金融危機が連鎖的に発生する恐れが差し迫っていることを首脳に警告する。経済成長を刺激し、かつ金融改革を加速するためにAPECとして断固とした措置を講じ、現在の不確実性に満ちた経済状況に対処するよう要請する。また、国際通貨基金(IMF)が推薦する早期に警戒信号を発するための重要指標を加盟各国・地域が重視し、政策協調をさらに強化することにより、国際的、および、地域的な金融システムの機能を改善し、金融危機の連鎖的発生を未然に防ぐよう十分に対応する必要がある。
  • 市場開放、能力構築、全員参加の3つの要素は相互に強め合うものであることから、これら3要素のバランスがとれたグローバル化へのアプローチが不可欠である。3つの要素全てが満たされない限り、グローバル化プロセスはバランスを失い、発展の共有という目標を実現できない。従って、3つの要素はすべて、APECのプロセスに不可欠な部分として相互に発展すべきである。

これらのメッセージへの具体的な対応として、APEC加盟各国・地域は、持続可能な経済成長と繁栄を共有するために、国民の認知度を高め、結果指向の政策を採ることが絶対に必要であるとABACは信じる。

自由化目標の達成

市場自由化は経済成長を導き、一層の繁栄と、生活水準の向上をもたらす。、これまでに加盟各国・地域が、また、APEC全体として、貿易・投資の自由化・円滑化のために採ってきた政策は、域内での事業コストとリスクを低減し、国・地域および企業の国際競争力向上に大いに貢献した。

APECの自由化アジェンダは、ボゴール目標および大阪行動指針に従い、貿易および投資の自由化、経済・技術協力を加盟各国・地域が個別行動計画に基づき自主的に拘束されない形で実施する、ユニークなモデルに基づいている。

近年、APEC加盟各国・地域は、貿易政策の透明性の向上、紛争解決メカニズムの確立、税関手続の簡素化と調和、技術的な貿易障壁の除去、ビジネス旅行の促進に努力してきた。私たちはこれらの努力を賞賛する。しかし、貿易や投資には未だに多くの障壁が除去されずに残っている。APEC加盟各国・地域の経済成長と繁栄を促進するため、更なる対策を講じる必要がある。

経済のグローバル化により、壮大な機会が生じている一方で、先進国・地域、および発展途上の加盟国・地域の幾つかは、プロセスに十分参加するための資源を持ち合わせないため、ますます疎外されたと感じている。グローバル化がもたらした機会を利用できるか否かによって、私たちの決意の固さ、能力、信用およびリーダーシップが試される。

能力構築の重要な役割

自由化および能力構築は相互に強め合う。自由化の利益を十分に享受するために、加盟各国・地域は、急激に変化する外部環境に適応できるよう、その制度や個人の能力を向上する必要がある。

ABACは、最も考慮すべき能力構築の重要な要素として、制度面の整備、人材育成、および管理能力の向上の3つを強調したい。

制度面の整備における重要な要素は、健全な法的・制度的なシステム、包括的でバランスの取れた政策の枠組み、および、透明性の向上である。企業が予見可能で信頼できる環境で事業を営むためには、これらの要素が必要である。金融サービスおよび他のセクターで起こりつつあるように、政府とのパートナーシップによって能力構築の作業に民間部門が参画することで、包括的かつ完全に能力構築の目標を達成することが確実になる。

人材育成の優先課題は、教育とトレーニングによって、より多くの人々が知識と技能を共有できるようにすることである。人材育成を一層重視することで、変化に伴うコストが低下し、一方で、市場開放の利益が最大になる。

管理能力は、民間および公共の両部門において改善されなければならない。民間部門における管理能力の重要な要素は、ビジネスがグローバルな原則やコーポレート・ガバナンスにおけるベスト・プラクティスを採用し、会計制度とリスク管理に関する国際的基準に従うことである。公共部門における努力は、重要な制度的な枠組みを整備し、政策を実行し、改革を促し、経済発展を促進する政府の能力を向上させるものでなければならない。

ビジネスおよびコミュニティーによる全員参加

今日のグローバルな環境においては、ビジネスおよびコミュニティの両方がAPECについて十分理解していることが重要である。従って、APECは、グローバル化は特定の人だけでなく、全体に利益をもたらすものであることから、貿易と投資の自由化についての国民の理解、信頼、支持を一層とりつけるために、可能な限り全員の参加を促す必要がある。

全員参加を実現するためには、先進国・地域と発展途上国・地域の関心と利害、大企業と小企業の関心と利害、また、政府、ビジネスおよび個人を含む利害関係者の関心と利害が、多国間および地域の経済団体の意思決定過程において十分に検討される必要がある。

この目的のために、地域の企業の大多数を占める中小企業が十分参加できるようアウトリーチ活動を集中させるべきである。その結果、プロセスに参加した中小企業の成功例が示すように、個人でさえグローバル化に適応できる。

APECにとって、アジア・太平洋共同体の精神を再認識する必要がある。それは適切な市場機能を通じて全員が繁栄するという共通の考え方から生まれたビジョンである。そのようなビジョンは、すべての利害関係者がAPECプロセスに参加が可能で、また実際に意思を持って参加しなければ、実現できない。

首脳への提言

今年のABACは次の5つの分野で作業を行った。それは、金融、貿易・投資、技術、行動計画監視、中小企業である。これまでに概要を示した課題に対応するため、私たちは以下のような提案を行う。

金融

幾つかの加盟国・地域は、顕著になった世界経済の減速により、厳しい財政運営を強いられている。今や金融不安の連鎖は現実のものとなっており、即時の国際的かつ国内的な金融制度改革は急務である。景況感は一般に弱く、また、新興市場への資本移動は明らかに減少している。両方とも、貿易と投資の自由化を早期に進めることで回復する。

より強固で、より多様性のある金融部門は資金移動を促進し、貿易・投資の自由化プロセスと、それによって利益を得ることへの信頼性を増大するだろう。金融システムと資本市場に深さと多様性をもたらし、また発展途上国・地域の国際基準採用を促進するためにも、能力構築は喫緊の課題である。

金融・資本システムの市場改革の加速

幾つかのAPEC加盟国・地域の金融・資本市場構造はアジア危機により厳しい抑圧を受け、銀行資本の不足、不良債権の増大、新規貸出の大幅な抑制を結果としてもたらした。以後いくつかの改革が実行されたが、未だ深刻な金融不均衡は残っており、いくつかの加盟国・地域において更なる調整が急務である。ABACが今年APEC加盟国・地域の金融業界団体を対象に実施した調査は、これまでに実施された改革を強く支持すると同時に、加盟国・地域共通に、緊急に更なる改革に取組む必要があることを指摘している。

金融安定化フォーラム(Financial Stability Forum)、IMF、世界銀行、および主要な監督当局により設定されている国際金融基準を採用すること、及びIMFの「金融セクター評価プログラム(FSAP)」に参加することは、金融の安定に貢献し、信用の増大と企業活動のサポートにつながる。

金融システム強化のため、ABACは、最優先で取組むべき課題として、コーポレート・ガバナンス、国際基準の実施、破産法及び法制の整備、IMFの金融セクター評価プログラムへの参加を含む金融システム改革を加速することを提言する。

ABAC2000年首脳への提言から
[ 金融安定化フォーラムが特定した12分野の基準 ]
  • 通貨および金融政策の透明性
  • 財政政策の透明性
  • データの普及
  • 倒産法制
  • コーポレート・ガバナンス
  • 会計制度
  • 監査制度
  • 支払・決済
  • 資金洗浄(マネーロンダリング)
  • 銀行監督
  • 証券規制
  • 保険監督
出典 : IMF及び世界銀行の「国際基準の遵守に関する報告書(ROSCs)」及び「金融セクター評価プログラム(FSAP)」プロセス。もしくは、加盟国・地域はROSCsおよびFSAPの枠組みに従って自己申告を行うことが望まれる。

金融システムの多様化と深化

銀行および金融システムにとって、深さ、多様性、透明性を欠くことは衝撃への感応度を大きく制約し、迅速かつ継続的な回復期待に悪影響を与えている。

従って、資本市場を深化し多様化することに加え、その透明性を向上する能力構築への取組みが早急に必要である。これらの取組みにより、デリバティブやヘッジメカニズムに対するリスク管理面での重要なサポート、新しい資本の誘引、資本コストの引き下げ、国内競争力の改善が可能となる。

今年、ABACがPECC(太平洋経済協力会議)と共同で実施した第二証券市場に関する調査によれば、金融システム構造に深みがないことによる市場の制約がいくつか明らかになっている。しかしながら、ABACは、中小企業(SMEs)とハイテク企業が第二証券市場を金融選択肢として検討できるよう、一層の研究を奨励する。

ABACは、APEC加盟各国・地域が、以下の項目を達成するための能力構築への取組みを通じ加盟各国・地域の金融システムを強化することを提言する。

  • 独立した信頼できる信用格付機関に裏打ちされた国内債券市場の発展
  • リスク管理ヘッジメカニズムの強化
  • 動産設備の金融手段に関わるUnidroit協定等の新しい国際金融取極めの支援
  • 適所に応じた第二証券市場の利用拡大

金融サービスにおける投資・貿易の更なる自由化推進

金融サービスにおける国境を越えた投資・貿易の制約は経済成長にとり大きな障害となる。大きく逸脱した会計基準と信用格付慣行に加え、適正を欠く財務報告も、より的確な投資情報や国境を越えた投資にとって支障となる。同様に、不安定で未発達な資本市場は経済発展の機会を制約し、貿易・投資の自由化がもたらす利益を制限する。

従って、WTOの「サービスの貿易に関する一般協定(GATS: General Agreement on Trade in Services)」及びボゴール目標の達成に向けた金融サービスの貿易・投資の自由化が強力に推進されことが重要である。

ABACは、加盟各国・地域がWTOの金融サービスのビルト・イン・アジェンダにおける進捗とWTO新ラウンドの立ち上げを急ぎ、ボゴール目標達成への努力を加速することを提言する。加盟各国・地域は金融サービスと投資の自由化から得られる利益を損なう規制上の障害を除去するため金融規制構造を見直すべきである。また加盟各国・地域は、APEC地域全体が国際的に認められた基準及び慣行をもとに、適正な財務報告の促進と会計基準と信用格付け慣行の収斂に努力しなければならない。

国際的および地域的金融アーキテクチャーの一層の改革推進

金融市場における大規模で不安定な資本移動と為替相場制度の負の影響を極小化するために更なる改革が必要である。最近、IMFが中心となって、マクロ経済、国際及び資本勘定の発展に対応するため、加盟各国・地域の国内金融システムの脆弱性に焦点を当てた金融健全度指標を開発する検討が進められている。

ABACは、幾つかの加盟国・地域で見られる脆弱性を改善するため、金融システムの安定性を向上しビジネスの成長を促進する国際的および地域的な取組みを強く支持する。

ABACは、全ての加盟国・地域が国際的監視の取組みを改善する金融健全度指標プログラムに参加することを提言する。全てのAPEC加盟国・地域が国際的および地域的金融アーキテクチャー強化に参加すべきである。その重要な目的は、特に、不安定な短期資金の移動と高レバレッジ機関(HLIs)の行動が与える負の影響に対応可能な、資本市場の安定とその円滑な機能にあるべきである。これらの取組みはそのような市場における民間部門の活動をサポートしモラルハザードを極小化できる。

貿易と投資

WTO新ラウンドへの支持

APEC地域の景気が後退するにつれ、経済成長を刺激するために一層の貿易・投資の自由化が必要になっている。それが急速に変化する国際的な環境と歩調を合わせられるよう、WTOの新ラウンドにおいてグローバルな貿易システムが更に強化されなければならない。新しいWTOラウンドを開始することは、私たちすべての利益にとって重要である。全ての加盟各国・地域、特に発展途上国・地域の関心と利益を十分に反映した、バランスの取れた適当な範囲のアジェンダであることが重要である。

幾つかのAPEC加盟各国・地域は未だWTOに加盟していない。中国がその加盟交渉を終了し、2001年11月にドーハで開催される次の閣僚会議までにWTOに加盟していることが重要である。また、チャイニーズ・タイペイ、ロシア、ベトナムなど加盟を希望している全てのAPEC加盟国・地域も、可能な限り早い時期に加盟が認められるべきである。

貿易円滑化ならびに能力構築における官民パートナーシップの推進

上海モデル・ポート・プロジェクトは、APECの目的達成のために公的部門と民間部門が相互にどのように協力できるかを示す、具体的、かつ、有益な例である(添付資料A 参照)。上海モデル・ポート・プロジェクトの実施は、中国の港湾利用者による貿易を促進するとともに、税関手続に関する共同行動計画(CAP)の実施にも資するものである。このプログラムの実施によって、中国のみならず他のAPEC加盟国・地域もAPECの税関手続に関する共同行動計画に示された12の実施目標を早期に達成できる。

この点で、私たちは上海モデル・ポート・プロジェクトの特長を認識し、かつ、このような公共・民間両部門の協力を促進するよう首脳に要請する。

基準・適合性の整合化

私たちは、首脳に対し、加盟各国・地域が既に合意した予定に従い、それぞれの国内基準を国際基準に整合化する基本目標を再確認するよう要請する。初期の目標として設定された4つの優先分野である「電気・電子器具」、「食品ラベル」、「ゴム製品」、「機械類」における国内基準の国際基準への整合化を実施したのは、5ヶ国・地域にすぎない。ABACは、幾つの加盟国・地域が整合化を図ったか、また、どの程度までAPEC加盟各国・地域がそれらの基準を整合化することを約束したかについて、今後も監視を続ける。試験と適合性に関し、APECプロセスによって考案された相互認証協定は、その範囲およびレベルが約束の内容と一致するよう改善されなければならない。

私たちは、適合性試験における相互認証協定の採用について個別行動計画において約束の内容を報告するよう、再度、APEC加盟各国・地域に要請する。同時に、APEC加盟各国・地域は、「衛生植物検疫措置の適用に関する協定」のような基準に関するWTO協定の実施状況について報告すべきである。最後に、ABACは、例えば、税関手続分野での作業を参考に作成した青写真に従い、かつ、専門家の常設委員会に主導される形で、基準と適合性に関する作業が今後も継続されることを期待する。

APEC食料システムの構築

私たちは、APECの包括性、柔軟性、WTO整合性、無差別といった原則に則ったAPEC食料システムは、長期にわたる手ごろな価格での食料供給を保証し、かつ持続可能な成長への食料セクターの貢献を最大化するために必要であると考えている。従って、私たちは、首脳が1999年に採択した計画を実施する必要があることをあらためて強調したい。APEC食料システムについての新しい項目を個別行動計画に設けるという提案に加え、私たちはABACが昨年提案した中間目標を実施するために明確な対策を実施するよう強く要請する。

APEC食料システム構築に向けた中間目標
食料輸出禁止措置の放棄:
首脳は今年の会合において、APEC加盟各国・地域は、政治的あるいは経済的な理由による他の国・地域に対する食料供給制限の廃止や、また食料の輸出税や数量制限の廃止を宣言すべきである。貿易により国内の食料生産を補完できることを保証することは、地域の食料安全保証の意識を高めることができる。私たちは、さらに食料供給への無差別なアクセスの約束を、WTOの規則として拘束力を持つようAPECが率先して努力することを提案する。
輸出補助金の廃止:
首脳は、農業の輸出補助金が健全な農業と機能性のある食料市場を開発しようとしている途上国にとって最も有害であることを認識し、APECを食料輸出補助金フリーゾーンとすることを宣言すべきである。
自己評価の実施とAPEC農業大臣会合の開催:
農産品の輸入や輸出を増やす際の、内的および外的な、障壁についての自己評価を2002年までに完了すべきである。その評価結果には、農業の非食料的な役割に配慮した上で、民間部門からのインプットや、経済・技術協力のニーズ、市場へのアクセスと非関税障壁についての情報が含まれているべきである。さらに私たちは自己評価とAPEC食料システムの実施方策を議論するために、2002年に、第1回のAPEC農業担当大臣会合を開催するよう提案する。
個別行動計画の活用:
個別行動計画(IAP)にAPEC食料システムの項目を設けることは、包括性、柔軟性、WTO整合性、無差別といったAPECの原則に則った実施を保証する最善の方法である。
国際金融機関の参画:
APEC食料システムの目標の1つは農村部および非都市部における経済的機会を創造することである。私たちは、APEC食料システムのこの分野への参画を確保するために、世界銀行、アジア開発銀行、および米州開発銀行の高レベルの代表者を関連するAPECの会合に招待するよう提案する。
食料相互認証への参加拡大:
私たちは2002年末までにAPEC食料相互認証協定に15ヶ国・地域が署名することを提案する。

APECビジネス・トラベル・カード・プログラムへの参加拡大

ABACは、APEC加盟各国・地域が個別行動計画の中に、APECビジネス・トラベル・カードの導入について報告するよう、重ねて要請する。現在、11ヶ国・地域がAPECビジネス・トラベル・カード・プログラムに参加している。APECは参加国を増やすよう引続き努力すべきである。

さらなる航空サービス自由化への支持

ABACは、より競争的な航空サービス自由化のための8項目実施に向けたAPECの努力を賞賛する。私たちは、引続きこの分野での進捗を期待する。また、私たちは、広範な航空サービス自由化を目指す、ブルネイ・ダルサラーム、チリ、ニュー・ジーランド、シンガポール、米国の5カ国による多国間協定の合意を賞賛する。

行動計画監視

個別行動計画プロセスの強化

ABACは、個別行動計画(IAP)が、先進国・地域が2010年までに、また、発展途上国・地域が2020年までに、それぞれ貿易・投資を自由化するボゴール目標への重要なロードマップであることから、個別行動計画に記載されている情報の包括性、正確さを非常に重視している。ABACは、個別行動計画に記載されている情報の質、および精緻性を今後も改善するようあらためて要請する。また、e-IAPウェブサイトにより、個別行動計画へのアクセス性向上を図る対策を講じるようAPECに要請する。

電子個別行動計画ウェブサイトの改善

電子個別行動計画(e-IAP)ウェブサイトが包括的であることはビジネスにとっての有用性の鍵である。ABACは2001年の行動計画を提出する際に、e-IAPフォーマットを使用するよう加盟各国・地域に要請する。

同様に、e-IAPについてのビジネスの認知度とAPEC域内のビジネス界との関連性を改善する必要がある。e-IAPウェブサイトに関するコミュニケーションとアウトリーチの活動として、ABACはAPECが次の対策を講じるよう提案する。

  • APEC域内の主要なビジネス関連やビジネス・グループのサイトからe-IAPウェブサイトへのリンクを設ける。
  • インターネット検索エンジンで容易にアドレスを確認できるような、利用し易いドメイン名を登録する。
  • ウェブサイトにアクセスしたビジネス関係者が個別行動計画に記載されている情報についてコメントできるよう、e-IAPウェブ上にビジネス・フィードバックの機能を備える。
  • ボゴール目標を達成するための政策、立法および対応策について、より詳細な情報にアクセスできるよう、APEC加盟各国・地域政府のウェブ・サイトへのリンクを設ける。

これらの対策が講じられることにより、域内のビジネス界は、個別行動計画プロセスに十分参加することができ、APECのボゴール目標への進捗状況を辿ることが可能になる。

電子商取引適応性とAPEC食料システムについての新たな個別行動計画の開発

ABACはあらためて個別行動計画の中に記載される情報の包括性を向上するための対策が講じられるよう要請する。昨年、ABACは、電子商取引適応性とAPEC食料システムの両分野における進捗状況を個別行動計画で報告するよう要請した。今年、ABACは、APEC電子商取引適応性ガイドに基づいて理論的な雛型を考案した(添付資料B 参照)。99年に首脳が承認したAPEC食料システムの構成は個別行動計画に含まれるべき内容を示している。ABACは昨年同様、この問題に具体的な対策が講じられるよう要請する。

2つの優先分野における貿易・投資の障壁への取組み

ABACは、未だに高関税品目が一部残っているものの、APEC加盟各国・地域がセクター横断的に関税を大幅に引き下げたことを歓迎する。関税引下げと同様に、APECはその他の貿易・投資上の障壁に取り組むことが重要である。

ABACは、個別行動計画の政策分野のうち、域内のビジネス界が明確な対応策を求めている2つの分野、即ち、知的所有権および海外直接投資について取組むよう強く要請する。

知的所有権の権利行使の強化

知的所有権の不適切で不十分な保護は自由貿易を歪曲する恐れがある。近年、知的所有権を含んだモノやサービスの貿易量が大幅に増加したのに伴い、世界経済にとって知的所有権を保護する重要性が飛躍的に高まった。

アジア・太平洋地域では、不正商標商品、デザイン模造品、海賊版など知的所有権侵害物品の生産および流通が横行している。権利者が被る損害は、販売利益の逸失という金銭的なものに止まらず、劣悪な偽造商品は権利者の名声を回復不可能なまでに傷つける。

APEC加盟各国・地域は、知的所有権ならびに権利行使を強化するために採用した政策について個別行動計画において報告できる。しかしながら、APEC加盟各国・地域が個別行動計画の中でそれらの対策を報告している場合でさえ、域内のビジネスにとって、知的所有権が十分に強化されているかどうか評価することは難しい。この問題に対応するため、ABACは、「知的所有権の権利行使に関する指導的原則」を作成するようAPECに要請する。この原則には、侵害差止、損害賠償、偽造品の廃棄、侵害品の仮差押と証拠保全といった司法手続による救済措置や、税関当局による国境措置、刑事上の取締・制裁などが含まれていなければならない。

ABACはさらに、知的所有権の管理者、知的所有権関係の政策立案者、および、税関当局など執行機関相互の協力を一層強化するとともに、執行担当官吏ならびに国民に対する知的所有権保護の重要性についての教育など、能力構築活動を強化するよう要請する。

なお、APEC加盟各国・地域は、それぞれの個別行動計画において、知的所有権の権利行使を強化するために採られた対策について報告するべきである。

海外直接投資への障壁の除去

海外直接投資は投資受入国の経済発展を促進するのみならず、投資供与国内の産業調整を促進する重要な役割を果たす。経済危機以前には、海外直接投資と貿易の自由化によって域内は著しい成長を遂げた。

ABACは、加盟各国・地域が個別行動計画において投資分野、特に、市場参入や投資家保護などの投資円滑化措置に関して相当改善が図られたことを報告している点に注目した。しかし、今年、域内のビジネスを対象にABACがPECCと共同で実施した調査によると、未だに海外直接投資に対するさまざまな障壁が残っている。

ABACは、パフォーマンス要求、市場参入制限、就業者の入国と滞在に関する制限、投資政策における透明性の欠如が最も重大な障壁として存在することを指摘したい。パフォーマンス要求と市場参入制限は主として発展途上国・地域において見られ、一方、就業者の入国と滞在に関する制限は、先進国・地域、途上国・地域の両方に見受けられる。

ABACは、貿易・投資を歪曲し持続可能な成長を阻害する海外直接投資への障壁を除去するようAPECに要請する。ABACは、加盟各国・地域がAPEC投資専門家会合の開発した「メニュー・オブ・オプションズ」に示された政策を採用するよう提案する。海外直接投資の拡大は、投資の財源だけでなく、途上国・地域にとって供給が不足している技術、経営管理のノウハウをも移転できるので重要である。

技術

技術の利用拡大は、生産性の向上と域内における持続可能な経済成長を達成する大きな機会をもたらす。これを達成するには一貫した法的な枠組みが必要であるが、それは技術的に中立で、国際的基準にもとづき、相互運用可能な経済・社会基盤からの利益を得るもので、適切な貿易政策に裏打ちされている必要がある。技術はそれ自身で人材育成や能力構築を促進することができる。また、政府は電子政府を通じて技術の恩恵を率先して広めることができる。

電子学習を可能にしデジタル・デバイド(情報格差) を是正する政策の採用

APEC加盟国・地域にとって、情報技術を効果的に利用するために迅速かつ効率的に、今日の競争が激化する状況に適応可能な技能を開発することが大きな課題である。情報格差への懸念から、それに対応する国際的あるいは地域的なイニシアティブが生まれてきた。ABACにとって、アジア太平洋電子学習アライアンス(APEC加盟国・地域が、教育資源の最大化と情報格差を是正するための政策と実例について共同研究する民間企業のコンソーシアム)の活動は大いに参考になった。彼らは以下のような提案を行っている。

  1. 官民パートナーシップの強化。
  2. 教育者およびトレーナーのデジタル/インターネット技術の利用促進。
  3. 地方・地域レベルで政府に対して電子学習(e-Learning)戦略を提言する官民共同のシンクタンクや諮問機関の設立。
  4. インターネットが社会的、経済的な利益を広範にもたらすことへの障害を除去するため、固定料金制のような代替的な価格体系や、非従量的な通話料金制度を通信業者が提供できるような、競争的で柔軟な通信料金政策の策定。
  5. インターネット網構築のためのオープンな標準・プロトコルの採用。
  6. 特に電子学習を目的として、全市民のインターネット接続を可能にするインフラへの投資。
  7. デジタル・コンテンツの作成・流通ネットワーク構築に必要なハイテク製品の関税を低くすることにより、手ごろな価格での技術へのアクセスを促進。
  8. より広範なデジタル経済への継続的でオープンなアクセスを保証する為の、インターネット上で提供されるサービスについてのオープンな制度の採用。
  9. デジタル・コンテンツについての知的財産権保護の付与。

電気通信産業の健全な競争と規制緩和を促進する政策は電子学習の機会を拡大する鍵である。電子学習は、アクセスが容易で柔軟性のある訓練機会を提供し、自由自在な「学習社会」の形成を通じて、特に中小企業の支援に役立つ。

情報サービスのオンライン化による電子政府の拡大

政府の情報やサービスをオンライン化することにより、政府が技術の利用面でリーダーシップを発揮することは、政府にとってもコスト削減のメリットがあり、政府調達へのアクセスを促進し、機会を創出することによって中小企業の手助けとなる。ABACはGBDe(電子商取引に関する世界ビジネス会議)との協力協定に基づき、電子政府推進に協力している。電子政府の進展の為に、電子政府イニシアティブの包括的枠組みのビジョンと実施計画の明確化、重複を避けるためのワンストップで継ぎ目の無いサービスの提供、最大限の利益を生む為に必要な法律や制度の改正、紛争解決についての適切な制度の設立などが加盟各国・地域が採り得る行動である。

ABACは、サービスの利用を一層高めるために、オンライン化されたサービスを周知することを政府に奨励する。民間セクターとのパートナーシップにより、政府はその活動を拡大するための電子政府プロジェクトについての有用なロードマップを作成することができる。

電子商取引適応性についての障害の除去

ABACは、電子商取引適応性評価イニシアティブに参加し自己評価を完了した加盟国・地域を賞賛する。ABACは、これらの評価結果で指摘された電子商取引の急速な成長を阻害する要因への対応とその除去のために、公共・民間両部門が協力することを要請するとともに、この報告書の前半で述べている個別行動計画に電子商取引についての新しい項目を設けることは、これを進展させる効果的な手段と考える。

電子商取引とデジタル経済をサポートする貿易政策の策定

ABACは、2001年11月に首脳が合意したニュー・エコノミーについての行動指針に則ったAPECの貿易政策策定作業を支持する。その政策は、WTOの情報技術協定を適用し、電子商取引について、貿易制限を最小にするとともに、その取扱いを差別せず、加盟各国・地域の目標に向けた進捗状況が個別行動計画で報告されるようにすべきである。また政策によって、デジタル署名、取引の安全、情報の安全確保、情報への不正なアクセスやコンピュータ・ネットワークへの妨害に対する罰則など、電子商取引の制度面での整備を促進すべきである。ニュー・エコノミーを実現可能にするため、広告、流通(デジタル・コンテンツの配信を含む)、コンピュータおよび関連サービス、基本的および付加価値情報通信、速達便、オンライン決済に不可欠な金融サービスなど、広範なサービスが自由化されるべきである。ハイテク製品についての貿易促進や、関税および非関税障壁を削減・除去することにより、ネットワーク構築に必要なコストや、電子商取引に使用するネットワークにアクセスする機器のコストが低下する。また、加盟各国・地域は、侵害された権利者の利益に配慮するとともに、政府機関が正当に許可されたソフトウェア以外を使用しないよう対策を講じることで、WTOの「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)」を遵守かつ施行するとともに、世界知的所有権機関(WIPO)の「著作権条約」ならびに「実演およびレコード条約」を批准・履行することで、公正で効果的な知的財産権の保護を図るべきである。

バイオテクノロジーに対する科学的アプローチの採用

バイオテクノロジーは、信頼できる形で利用されることで計り知れない利益をもたらす。技術革新の範囲は、医療科学から環境劣化を軽減する新技術まで広範囲にわたっている。ABACは、バイオテクノロジーに対する科学的アプローチの採用と、消費者の認識と理解の向上が重要であると考えており、このような分野で、政府が民間部門と密接に協力することを期待する。APEC加盟国・地域が、経済的にも、環境的にも持続可能な食料安全保障を達成するには、現在利用可能な新しい食料技術を採用しなければならない。ABACは、新技術を探し出し、普及するために、今年、11ヶ国・地域が参加し食料技術についての「各国・地域チャンピオン」ネットワークが構築されたことを賞賛する。そして、より多くの加盟国・地域がこのネットワークに参加するよう推奨する。

中小企業

中小企業はAPEC加盟各国・地域における経済の担い手として、雇用を創出し、技術革新を促進し、新製品やサービスを開発している。従って、APECプロセスに中小企業が全面的に参加することが不可欠である。これら「ビジネスのチャンピオン」が貿易・投資の自由化・円滑化の恩恵を享受できるようにするため、APEC加盟各国・地域は中小企業を支援する対策を講じることが重要である。中小企業が「グローバル化に適応する」努力を支援することで、APECは、グローバル化が大企業だけでなく中小企業や個人にも利益があるという事実を強調できる。

ABACは、加盟各国・地域が、資金、技術および新しい取引機会へのアクセスを向上することで「ビジネスのチャンピオン」である中小企業が十分に役割を果たせるよう支援することを提案する。

中小企業向けプログラムおよびサービスへのワン・ウィンドーからのアクセス促進

ABACは、APECが中小企業向けポータル・サイトを開発し、中小企業にも利用可能なプログラムやサービスにワン・ウィンドーからアクセスが可能となる対策を講じるよう要請する。APEC中小企業向けポータル・サイトは、APEC加盟各国・地域における融資制度、技能訓練、経営管理用ツール、電子ビジネス診断、取引機会、ならびに中小企業向けに用意されたその他のサービスについての情報を提供する。ワン・ウィンドーからのアクセスは中小企業を支援するだけでなく、APEC加盟各国・地域政府間での中小企業向けプログラムやサービスの構成や伝達についてのベスト・プラクティスについての情報共有を促進する。

この中小企業向けポータル・サイトは、既存のAPECのビジネス向けウェブ・サイトであるBizAPEC.comに確実に統合されるべきである。ABACは、APECの中小企業担当実務者が、この中小企業向けポータル・サイト内のリンクを継続的に更新し維持する責任者、もしくは組織を明らかにするよう要請する。

技術革新へのアクセスの促進

インターネットへのアクセスは、情報、サービス、資金および取引機会への新たな扉を開けてくれる、APEC域内の中小企業の成長にとって不可欠なツールである。ABACは、中小企業の電子ビジネスへの準備度を測定するために、オンライン上の診断ツール開発を支援する。ABACはさらに、中小企業向けオンライン・トレーニングの設計および伝達のベスト・プラクティスを共有するようAPEC加盟各国・地域に要請する。

APEC加盟各国・地域には、ビジネス・インキュベーター、研究開発センター、生産性本部、および政府と大学の調査機関など、様々な技術センターが存在する。これらの機関は、技術革新、企業家や小さな新規創業企業の製品やサービスの開発と商品化を支援する重要な機能を提供してくれる。ABACは、成長志向の「技術力のある中小企業」の支援に関するベスト・プラクティスを共有する手段として、APEC全域にわたる技術センター間の連携を強化する方法を検討するようAPECに要請する。

中小企業の資金調達の促進

資金調達は、APEC域内の殆どの中小企業にとって重要な課題である。この問題は、APECの発展途上加盟各国・地域や遠隔の地域において特に顕著である。景気減速に伴い、この問題は更に深刻化している。

ABACは、APECの幾つかの加盟国・地域で、革新的な中小企業向け融資制度が開発されたことに注目する。ABACは、中小企業向け融資制度やプログラムの創設、運営についてのベスト・プラクティスを共有するようAPECに要請する。APECの中小企業向けポータル・サイトは、情報の共有に役立つ基盤を提供できる。

中小企業にやさしい政策の採用

ABACは、中小企業を支援するためにAPEC加盟各国・地域政府が実施できる最も重要な対策の一つは、中小企業にやさしい政策環境を創ることであると信じる。それは、遵守コストを削減し、法律や制度を簡素化し、基礎的な経済・社会基盤を強化し、情報へのアクセスを促進するよう努力することである。

APEC加盟各国・地域による中小企業にとって好ましい事業環境創りを支援するため、ABACは起業家環境スコアカードの開発を支持する。このスコアカードは、法的・制度的な環境、政府とビジネスとの関係、融資制度、会社設立および倒産に関する法制、情報、知識およびトレーニングへのアクセス、経済基盤などの要素についてAPEC加盟各国・地域における中小企業にとっての事業環境の概要を提供してくれる。

起業家環境スコアカードは、APEC中小企業担当大臣にとって、自国の政策を見直し、自国の事業環境の弱点を識別する際の評価ツールとして役立つ。また、起業家精神を促進し、かつ、中小企業のための事業環境を改善するために、今後採るべき政策の方向性も示してくれる。

結び

ABACは、その創設以来、首脳に5つの報告書を提出してきた。首脳が域内のビジネスと対話できる公式なチャンネルとしてABACは特別な役割を果たしている。私たちは、グローバル化は機会でもあり、また挑戦でもあることを十分認識している。私たちは、貿易・投資の自由化・円滑化および経済・技術協力の目標に向けて着実に進み続け、また、WTOによって強化される健全な多国的貿易システムを支持することによって、APECはグローバル化の恩恵を享受し、APEC域外に対する模範になるものと信じる。

添付資料

資料A:上海モデル・ポート・プロジェクト

中国税関は、米国税関、および、高い関心を有するAPEC域内の経済界、民間企業の連合組織とともに、2001年の上海での首脳会議までに、上海を近代的な税関のモデルにする目的で1999年に官民のパートナーシップを形成した。中国税関、米国税関およびナショナル・センター・フォーAPECは、プロジェクトの趣意書に署名した。このプロジェクトには16社(アメリカン・プレジデントライン、アプライド・マテリアルス、コンパック、DHL、FedEx、フォード、ゼネラル・エレクトリック、ゼネラス・モーターズ、ヒューレット・パッカード、JBCインターナショナル、マテル、マイクロソフト、オラクル、プロクター&ギャンブル、TNT、UPS)が参加した。

中国税関は、プロジェクトの総体的な目的は、監督、コントロール、および検査に基づいた現在の執行システムから、その主要なクライアントである企業との信頼関係構築に基づいた新しいアプローチへと、全てのオペレーションを変更することであると宣言した。プロジェクトは、APEC域内において、改善された税関手続の価値を実証したい、という税関当局と民間企業の希望を満たすものである。このプログラムを実施することで、中国はAPECの税関手続に関する共同行動計画(CAP)における12の行動項目を早期に達成できる。

このプログラムは主要な3つの構成要素から成っている。

  • 米国税関により中国と米国の両方で実施される高度な税関手続に関する訓練。
    訓練の構成要素は、中国税関全体の模範となり、また、訓練の利益を共有することができるよう、高度に訓練された上海税関の中核幹部を養成した。資金は、プロジェクトに参加する民間企業からの拠出と米連邦貿易・開発庁からの補助金によって賄われた。
  • 中国税関の資金による上海税関の情報技術の大幅な向上。
    この作業には、プロジェクト財源の大部分を要した。既存のシステムの向上に加え、上海・モデル・ポート・プロジェクトの一部として提供されるハードウェア/ソフトウェアは、中国税関にとって、さまざまな税関手続を自動化するために設計された7つの応用プログラムの運用を可能にし、かつ、中国のWTO協定履行約束を実施可能にする。
  • 上海の浦東空港の速達便用設備。中国が資金を拠出し、2001年7月に使用可能になった。
    中国税関は速達便の通関手続き大幅に向上させた。これにより、荷送人は、世界最先端の運用環境を享受できる。
資料B:電子商取引に関する個別行動計画
  • 目的:完全にデジタル経済に参加する能力を保証するためにAPEC電子商取引適応性ガイドの6つのカテゴリーを使用する。
  • ガイドライン:加盟各国・地域は、次の6つの分野で行動する。
  • 基礎的な経済・社会基盤と技術:オープンで競争的な情報通信サービス市場および情報技術と情報通信関連製品の公開市場を設立する。
    • 市場参入障壁を除去する。
    • いかなる市場参加者からも独立していて競争を保証する、情報通信を制度的に所管する官庁を設置する。
    • APEC相互接続協定に則った公平で公正な相互接続規則を整備する。
    • 公平な制度的取扱いを保証する。
    • 市場参加者への補助金を撤廃する。
    • 情報通信インフラおよび関連サービスに関する海外投資規制を除去する。
    • 情報技術と情報通信関連製品の関税を撤廃する。
  • 必要なサービスへのアクセス:電子商取引には、基礎的なインフラへのアクセス、内容のホスティングと公開、効率的な輸送、速達便サービス、効率的な税関手続き、および銀行・決済システムなどの支援サービスが必要である。
    • 認可制度のような不必要な負担の削減によりインターネット・サービス・プロバイダーおよびインターネット・コンテンツ・プロバイダーの創出を促進する。
    • インターネット・サービス・プロバイダー市場が一般競争原理に従うことを保証する。
    • インターネット・サービス・プロバイダーが開放された条件で、旧来の通信オペレターによって運営されるインターネット・サービス・プロバイダーと同等な競争的な条件とアクセスを有することを保証する。
    • 顧客がインターネット・サービス・プロバイダー、サービス内容および価格決定方針を選択する自由を保証する。
    • 内容に関する制限を最小限にし、有害な内容の規制について自主規制とユーザー主導による解決を促進する。
    • 速達便と航空貨物の市場を自由化する。
    • 税関手続の24時間稼動、ペーパーレス化と同様に事前通関制度を推進する。
    • クレジット・カード使用および国際的電子決済が可能な銀行・決済システムを法制化する。
  • 電子政府:電子商取引適応性の完備は、電子政府を可能にする。
    • 中小企業からの電子調達を含めて、政府情報、サービスおよび取引をオンラインで提供するために電子政府戦略を作成し実行する。
    • 政府の機能を変化し効率的にするために電子ビジネス技術を利用する。
  • 促進と円滑化の活動:国民とビジネスの両方に電子商取引活用の利益と使い方を知らせる。
    • インターネットを利用したビジネス向上のベスト・プラクティスをビジネス、特に中小企業に普及する。
    • インターネットの使用、自主規制の可能性、スクリーンとフィルターの技術、紛争解決メカニズムについて国民に教育する。
    • オープンで国際的、かつ市場主導的な標準を採用しネットワークとサービスの間の相互運用性を向上する。
  • 技能と人材:全ての教育レベル(学校、職業訓練および成人教育)における高度な技能開発は電子商取引への参加を最大化するために重要である。
    • 全ての学校をインターネットに接続可能にし、情報技術の使用を確実にカリキュラムに含める。
    • 通常のカリキュラムの科目にインターネットおよび情報技術を含める
    • ITカリキュラムを開発する際に、教育機関とビジネスの緊密な関係を築く。
    • ITを統合するため労働者再訓練プログラムを作成する。
    • 学位と資格の相互認証により労働者の流動性を促進する
    • 国境を越えたサービス提供への障壁を除去する
  • デジタル経済に対する姿勢:透明で予見可能な制度的な枠組みは、利用者、消費者およびビジネスにとって、電子商取引を使用することへの信頼を高めるのと同様に不可欠である。
    • APEC、WIPO(世界知的所有権機関)、OECD(経済協力開発機構)およびUNCITRAL(国連国際商取引法委員会)での作業への参加を支持する。
    • 透明で単純、電子商取引を差別しない、グローバルな規則に補完的な税制を整備する。
    • WTOにおいて、電子的取引に関する関税不賦課を恒久化、かつ拘束的なものにすることを支持する。
    • 電子署名に手書きの署名および押印と同じ法的効果を認める法的な枠組みを整備する。(詐欺と違法行為を防止するため既存の法律を適用する。)
    • 暗号化製品およびサービスの使用と貿易に対する法的規制の撤廃 ; 法律執行機関は、重要な所有者の同意、あるいは裁判所の命令によって平文に限りアクセスを可能にする。
    • 消費者に合法的な作品使用を促進するとともに、デジタル・ネットワーク上での作品への強い著作権保護を保証する。(WIPO条約、及びWTO、TRIPS基準を実施する。)
    • コンテンツ・プロバイダー、サービス・プロバイダーおよびエンド・ユーザーを含む異なる利害関係者間でビジネス上の正当な利益のバランスを十分取ることで責任問題に対応する。(サービス・プロバイダーが送信あるいは保存する情報を監視する、という一般的な要求を課すことを差し控える。)
    • オフライン環境で守られるのと同じ程度までオンライン環境での表現の自由を守る。内容に関連した問題が、自主規制あるいは市場に基づいた解決法により対応することを可能にする。
    • 国の文化的遺産あるいはその同一性問題を保護又は推進することを目的として電子商取引に市場参入障壁を使用しない。
    • 国際的に承認された、ビジネスと消費者の両方に信頼性を提供するデータ保護用の自主規制メカニズムを開発するためビジネスと協力する。製品とサービスの市場評価を行う独立した機関あるいは企業の為に、市場を透明なものとする。
    • 苦情処理の為に代替的な紛争解決、あるいは仲裁メカニズムを整備する。
    • ビジネスと消費者の双方が受け入可能な条件の下での契約の自由を促進する。