APEC ABAC日本支援協議会 ABAC

APEC首脳とABAC委員との対話

(2003年10月20日、15:15~16:00、於:タイ王国 Government House)

ABAC創設以来、APEC首脳会議に合わせて、ABACからの提言についてAPEC首脳から直接意見を聞く機会として、APEC首脳とABAC委員との対話が開催されている。今年は、従来の21カ国・地域首脳と60余名のABAC委員が対座し数人の首脳やABAC委員が質疑応答を行う形式を改め、APEC首脳とABAC委員が5つのグループに分かれてのレセプション形式で開催した。各グループともリラックスした雰囲気の中で率直な意見交換が行われ、有意義な対話セッションになった。

日本のABAC委員については、高垣委員が小泉首相、アロヨ・フィリピン大統領、ラゴス・チリ大統領、李・台湾中央研究院院長のグループに、川本委員がブッシュ米国大統領、盧・韓国大統領、リー・シンガポール首相、ソマレ・PNG首相のグループに、また、米村委員がフォックス・メキシコ大統領、ハワード豪州首相、ボルキア・ブルネイ国王、ファン・ベトナム首相のグループにそれぞれ分かれて対話を行った。

日本のABAC委員から首脳への質問としては、高垣委員がラゴス大統領に対し来年のAPEC議長国としての抱負を質したところ、APEC域内の貿易・投資の自由化・円滑化というボゴール目標の達成推進と、これと並行してチリが進めているFTAの実質的な進展も図っていきたい、との回答があった。また、川本委員の「テロ対策と貿易円滑化のどちらが重要か」との質問に対し、ブッシュ大統領は「テロ対策が重要で、適切なセキュリティ対策によりコストは削減可能である」と回答した。米村委員からはメキシコのABAC委員からの強い希望によりフォックス大統領にAPECビジネス・トラベル・カード制度への参加を要請した。

高垣委員は、ABAC日本を代表し小泉首相の"Facilitator"役を務めたが、東京会議におけるレセプションでもABAC委員と親しく懇談された実績のある小泉首相に多くの質問が集まり、以下のような対話があった。

小泉首相の対話内容

小泉総理大臣は、アロヨ・フィリピン大統領、ラゴス・チリ大統領および李・台湾中央研究院院長並びに8人のABAC委員のグループと質疑応答形式の対話を行いました。小泉総理への質問および発言概要は次の通りです。


(以下:外務省ホームページより転載)

(サマービル・チリABAC委員からの質問)

世界第二の日本経済の動向へ関心が高い。カンクン会合の結果を受け、WTO交渉がどのように進むか、また、日本経済の動向に関心がある。小泉総理のお考えをお聞きしたい。

(小泉総理)

  1. WTOのカンクンで合意されなかったのは残念。ただし、カンクンの結果は、むしろ各国がよりこの問題に力強く取り組むべきだというメッセージと受け止めている。
  2. 景気には漸く明るい兆しが見えてきた。総理就任時、2、3年はゼロ成長を確保することが重要と言ってきた。しかし、実際の日本経済の成長は、当時の見通し以上で、今年の第二四半期実質成長率は3%以上を確保している。最近では、名目成長率も改善しており、これは、これまでの改革路線が正しかったことの証明であると考えている。引き続き、改革を進めていきたい。11月9日には総選挙が行われ、自分の内閣が行ってきたことが正しいかどうかを占うこととなる。総選挙に勝利したならば、さらに改革をすすめ、民間主導の経済成長が達成できると考えている。
  3. 日本では、ここ暫く1年で総理が替わることが当たり前と思われてきたが、このように頻繁に総理が替わることは改革を進める上で好ましくない。実際、自分の総理就任後、1、2年目には、そろそろ替わった方がいいとの声が聞こえてきたこともあった。本年9月に自民党総裁選が行われ、自分は新たに3年の任期を得た。11月の総選挙に勝利したならば、さらに3年間改革を進めることができる。
  4. 今年の所信表明演説で、日本への外国投資を5年間で2倍にすることを表明した。日本国内では、これまで、外国からの買収は投資を警戒するとの意見があったが、このような考えは改める必要がある。外国企業からの要望を聞く窓口を一本化した。キーワードは「Invest Japan」である。皆様からの投資をお願いしたい。

(プリエト米国ABAC委員からの質問)

日本にとっての最近の一番の懸念事項は何か。

(小泉総理)

北朝鮮問題が日本の外交にとっての一番の関心事である。北朝鮮は核の問題に限らず、拉致問題、スパイ船、覚醒剤・麻薬、工作員等の問題もあり、多くの国民が脅威に感じている。北朝鮮問題は、日本だけで解決できない問題であり、米、韓、中、露の周辺国と緊密に連携して対応している。
テロの問題も北朝鮮と並んで関心事である。日本はテロリストを入れない、テロの拠点を日本に作らせないことを政策としてきた。

(サマービル・チリABAC委員からの質問)

ドルが弱くなることは、外貨をドルで持っているアジアの国が多い中、重要な問題と考えるが、小泉総理はどう考えるか。

(小泉総理)

17日にブッシュ大統領が訪日した際にこの問題も話した。ブッシュ大統領は強いドルが望ましいという政策に変更はないと言われた。景気に漸く明るい兆しが見えてきた時に本当はあまり円高になって欲しくないのだけども(一同爆笑)、為替は市場が決めるものであるということもよく分かっている。ただ、あまりにも為替が乱高下するのはよくないと思っている。中国の人民元はドルに固定されているけれども、中国の人民元については、ブッシュ大統領と胡中国国家主席がきっと話をされたものと考える。日本は中国に対して元をあれこれしろと言うことはしない。ただし、ドルが弱くなることは、アジアだけでなく世界全体にとっても良くないことであると思う。今円は1ドル110円くらいだが、30年前は360円だった。それを考えると円はドルに対して3倍も強くなっている。他の通貨でみれば、昔は1ポンドは千円だったが、今では200円しない程度になっており、円はポンドに対して5倍も強くなっている。景気があまり良くないときに通貨が強いことは不思議なことで、日本はまさにそういう状態にある。これがどうしてなのかは世界の七不思議といってもいいかもしれない(一同爆笑)。米も英の景気が悪いときは通貨も弱くなり、それで景気が回復した。日本は、景気が良くないのに通貨は強いままである。

Government Houseに到着した小泉首相とタクシン首相
Government Houseに到着した小泉首相とタクシン首相
対話風景(高垣委員、川本委員他とプーチン大統領)
対話風景(高垣委員、川本委員他とプーチン大統領)
対話風景(ブッシュ大統領と川本委員)
対話風景(ブッシュ大統領と川本委員)