第4回フォローアップには、昨年の34業種から新たに2業種(日本自動車車体工業会、日本衛生設備機器工業会)が加わり、合計36業種 1 が参加した。
36業種からのCO2排出量は、1990年度で4億8,019万t 2 であり、これは、1990年度のわが国全体のCO2排出量11億2,440万t-CO2の約42.7%に相当する。また、これら36業種の排出量は、わが国の産業部門およびエネルギー転換部門全体の排出量(90年度、6億2,600万t 3 )の約76.7%を占めている。
経団連は、「2010年度に産業部門およびエネルギー転換部門からのCO2排出量を1990年度レベル以下に抑制するよう努力する」という目標を掲げ、各業種、企業とも、この達成に向けて努力している。
第4回フォローアップの結果、今回の対象年度である2000年度のCO2の排出量は4億8,609万t-CO2となり、1999年度比で1.1%増加、1990年度比で1.2%増加したことが明らかになった。
今回のフォローアップでは、2005年度のCO2排出量は5億637万t-CO2(1990年度比約5.5%増)、対策を実施しない場合の2010年度の排出量は5億3,288万t-CO2(1990年度比約11%増)と見込まれる。
年度 | 1990 | 1997 | 1998 | 1999 | 2000 | 2005 見通し | 2010 目標 | 2010 BAU 5 |
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CO2排出量 (t-CO2) |
4億8,019万 | 4億9,752万 | 4億6,755万 | 4億8,062万 | 4億8,609万 | 5億637万 | 1990年度 レベル以下 | 5億3,288万 |
(90年度比) | 3.6%増 | 2.6%減 | 0.1%増 | 1.2%増 | 約5.5%増 | 約11%増 |
今回、積み上げに参加した産業およびエネルギー転換部門36業種のうち、CO2排出量が90年度比で減少した業種は23業種、99年度比で減少した業種は15業種であった。
CO2排出量の削減を目標として示した13業種のうち、90年度比で減少した業種は11業種、99年度比で減少した業種は9業種であった 6 (別紙1-1参照)。
エネルギー使用量の削減を目標として示した4業種のうち、90年度比で減少した業種は4業種、99年度比で減少した業種は2業種であった 7 (別紙1-2参照)。
CO2排出原単位あるいはエネルギー原単位の向上を目標として示した22業種のうち、90年度比で原単位が改善した業種は17業種、そのうち99年度比でも改善した業種は10業種存在する(別紙1-3参照) 8 。
民生業務・運輸部門についても、これまで9業種が経団連環境自主行動計画に参加し、それぞれ自主行動計画を策定し温暖化対策に取り組んできた。今回、新たに民生業務部門から3業種(日本LPガス協会、日本冷蔵倉庫協会、全国銀行協会)と1企業グループ(NTTグループ)、運輸部門から6企業(JR九州、JR四国、JR東海、JR西日本、JR東日本、JR北海道)の参加を得た 9 (別紙2)。
前回と比較して、第4回フォローアップは、次のような点が改善された。
2000年度のCO2排出量は、90年度比で1.2%増加した。前回のフォローアップに引続きCO2排出量増減についての要因分析を行なったところ、業界努力によるCO2削減割合は昨年度より上昇(99年度:−2.1%→00年度:−4.1%)したものの、景気動向による生産拡大等の影響によるCO2増加割合が拡大(99年度:+4.2%→00年度:+7.5%)した結果として1.2%増となった(別紙3)。
2000年度のエネルギー使用量が90年度比で5.7%増加しているのに対し、CO2排出量の伸びは1.2%に留まっており、産業界のCO2削減対策(炭素含有量の少ないエネルギーへのシフト)が進展している。各業種・企業とも、CO2排出量の削減対策に努めているが、景気が好転し生産量が伸びたことによる排出増がこれを上回ったものと考えられる。
経団連としては、今後とも、参加業種に対して、個々の目標達成に向けた対策の着実な実施を求めるとともに、「2010年度に産業部門およびエネルギー転換部門からのCO2排出量を1990年度レベル以下に抑制するよう努力する」という全体としての統一目標の達成に向けて努力していく。
2000年度は景気拡大が大きく影響し1.2%増加したが、CO2排出原単位やエネルギー原単位の向上あるいは炭素含有量の少ないエネルギーへのシフトの面で着実に成果をあげている。したがって、産業界の温暖化対策は、今後とも自主的取り組みを中心とすべきである。
経団連環境自主行動計画は、毎年、参加業種の拡大や一層の情報開示に努め、政府の審議会のレビューなどを受けるなどして信頼性の確保に努めている。今後とも、一層の信頼性を確保しつつ中長期に自主行動計画の枠組みの中で産業界の取り組みを続けるために、民間による第三者認証を視野に入れたスキームとして、国内登録機関の設置を検討中である 10 。
温暖化対策は長期的には技術開発が鍵となることから、産業界としては技術開発によって産業部門からのCO2排出抑制のみならず、民生・運輸部門での排出抑制に引続き貢献していく方針である。
1 産業部門およびエネルギー転換部門の36業種は以下の通り(50音順);
板硝子協会、住宅生産団体連合会、精糖工業会、製粉協会、石炭エネルギーセンター、石油連盟、石灰石鉱業協会、セメント協会、全国清涼飲料工業会、通信機械工業会・電子情報技術産業協会、電気事業連合会、日本アルミニウム協会、日本衛生設備機器工業会、日本化学工業協会、日本ガス協会、日本ガラスびん協会、日本建設業団体連合会・日本土木工業協会・建築業協会、日本鉱業協会、日本工作機械工業会、日本ゴム工業会、日本産業機械工業会、日本自動車工業会、日本自動車車体工業会、日本自動車部品工業会、日本写真機工業会、日本伸銅協会、日本製紙連合会、日本製薬団体連合会・日本製薬工業協会、日本造船工業会・日本中小型造船工業会、日本鉄鋼連盟、日本鉄道車両工業会、日本電機工業会、日本電線工業会、日本乳業協会、日本ベアリング工業会、ビール酒造組合。2 産業界全体の排出量の算出にあたっての電力原単位は、下記の電事連出所データを利用している。また、個別業種(個別業種版に掲載)が使用している電力原単位についても特に説明のない限り、下記のデータを利用している。
その他の各種エネルギーの換算係数:発熱量については、総合エネルギー統計、資源エネルギー庁「エネルギー源別発熱量表の改定について(2001年3月30日)」、電事連調査データを活用。発熱量表の改定にともない、1999年度以前と2000年度以降では熱量換算係数が異なる。炭素換算係数については、環境庁「二酸化炭素排出量調査報告書(92年)を利用。
〔90年度:0.37、97年度:0.33、98年度:0.32、99年度:0.33、2000年度:0.33、2005年度:0.34、2010年度:0.30、2010年度(BAU):0.33(kg-CO2/kWh)〕 3 環境省発表のわが国のCO2排出量の内、エネルギー転換部門、産業部門、工業プロセスの合計である。 4 CO2排出量の実績値や見通しについては、数字の精度を高めるために毎年見直しを行なっていることから、昨年の結果と比較して、多少の増減が生じることがある。 5 BAU(Business as usual):2001年度時点での自主行動計画を2001年度以降実施しない場合における2010年度のCO2排出量 6 CO2排出量実績とCO2排出原単位を目標として掲げる日本ガス協会とCO2排出量実績とエネルギー排出原単位を目標として掲げる日本ゴム工業会については、それぞれの目標について改善業種数に含めた。 7 エネルギー使用量とエネルギー原単位を目標として掲げる日本電線工業会については、エネルギー使用量のみ改善業種数に含めた。 8 CO2排出原単位とエネルギー使用原単位の両方の目標を掲げる業種については、少なくとも一つの目標が改善されている場合には改善業種数に含めた。 9 民生業務部門の参加業種(50音順):全国銀行協会、日本LPガス協会、日本損害保険協会、日本チェーンストア協会、日本百貨店協会、日本貿易会、日本冷蔵倉庫協会、不動産協会ならびにNTTグループ
運輸部門の参加業種(50音順):全日本トラック協会、定期航空協会、日本船主協会、日本民営鉄道協会ならびにJR九州、JR四国、JR東海、JR西日本、JR東日本、JR北海道10 地球環境問題へのわが国の対応と環境自主行動計画の一層の透明性確保に向けた取組み(2001年9月6日公表の見解書)