経団連では、2007年以来、3次にわたりEUとの経済統合協定(EIA)に関する提言iを取りまとめるとともに、昨年4月には欧州ビジネス協会との間で、本年5月には同協会に加え、欧州情報通信民生電子技術産業協会、欧州商工会議所、欧州商工会との間でEIA交渉の開始を求める共同声明iiを取りまとめた。
さらに、さる7月には、経団連会長を団長とするミッションをEU主要国に派遣し、交渉開始には日本が非関税措置の撤廃に取り組む姿勢を具体的な形で示す必要があると主張するEU側に対して、産業界同士の対話が問題解決に有効であると提案したところであるiii。
このような折、来る11月3〜4日、フランス カンヌにてG20サミットが開催される。その際、日・EU首脳が、本年5月の定期首脳協議で合意した交渉の範囲および野心のレベルを定めるための議論(いわゆるスコーピング作業)の現状について意見交換する見通しである。
そこで、この機会に経団連として産業界同士の対話の促進に引き続き取り組むことを強調するとともに、日・EU間にwin-winの関係を構築するため、交渉において取りあげるべき業界横断的な課題を改めて提示することとした。こうした産業界の動きも踏まえ、スコーピング作業が成功裏に終了し、一刻も早く交渉が開始されることを切に望むものである。
経団連では、上記訪欧ミッションを受けて、主要業界に対し、欧州業界との対話の推進を働きかけてきた。一方、日・EUの産業界においては、これまでにも様々な対話が行われてきており、共通の課題の解決に成果を上げてきている。日・EU間に新たな問題が生じるのを防ぎ、よりシームレスな事業環境を実現するといった課題についても、例えば、日本自動車工業会、電子情報技術産業協会、日本鉄鋼連盟、日本化学工業協会、日本繊維産業連盟、日本製薬工業協会、日本画像医療システム工業会では、欧州の業界団体との既存の枠組みを活用して対話を進めている。
経団連としては、こうした動きを歓迎するとともに、業界同士の対話を引き続き促進するなど、日・EU間に横たわっている非関税措置を含む諸問題について、双方にとって望ましい解決策を見出すための努力を続ける所存である。
これまでも経団連は、日・EU間で締結すべき協定について、経済活動を包括的にカバーし、透明性の高い自由で安定的な事業環境を実現するものでなければならないと主張してきた。また、協定の下で日・EU間の協力を推進することによって第三国との経済関係の強化にも寄与するよう求めてきた。さらに、スコーピング作業を成功裏に終了し、交渉を早期に開始するためには、規制や規格等の国内・域内措置についても、日・EU間の整合性の確保、調和の推進等に取り組む姿勢を明確にすることが不可欠となっている。以上のような経緯および交渉のためのプロセスの現状を踏まえ、以下に示すような業界横断的な課題の実現に日・EU双方が精力的に取り組むよう、改めて求めるものである。